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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1158345
審判番号 不服2005-21652  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-10 
確定日 2007-05-28 
事件の表示 平成11年特許願第 3730号「駆虫活性化合物を含む薬剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月21日出願公開、特開平11-255646〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,1999年1月11日(パリ条約による優先権主張1998年1月20日,イギリス)の出願であって,平成17年8月10日付けで拒絶査定がなされ,これに対し平成17年11月10日に拒絶査定不服の審判が請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?18に係る発明のうち,請求項1に係る発明は,平成12年1月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下,「本願発明」という。)

「【請求項1】 少なくとも1種類のシクロデキストリンとの複合体として,アベルメクチン又はミルベマイシンである少なくとも1種類の駆虫活性化合物を含む薬剤組成物。」

3.引用文献の記載の概要
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭62-281826号公報(原査定の引用例C,以下,「引用例1」という。),同じく特開平5-246893号公報(原査定の引用例H,以下,「引用例2」という。)には,以下の事項が記載されている。

引用例1
(1-1)「【特許請求の範囲】
1,次の成分(A)及び(B)
(A)少なくとも1種以上の動物用内部寄生虫駆虫成分。0.5?10重量%
(B)(A)成分の1/2?20重量倍の次の一般式(I)(式省略)
で表わされるメチル化シクロデキストリンを含有する動物用内部寄生虫駆虫剤。」(公報第1頁特許請求の範囲の項)
(1-2)「動物用内部寄生虫駆虫成分をあらかじめ次の式(I)(式省略)
で表わされるメチル化シクロデキストリンで処理することにより駆虫剤の揮発性が防止され,異臭・刺激臭は低減され,呈味も改善されるばかりでなく,熱・光・空気などに対する安定性が向上すること,水溶性となるため,粉剤以外の各種液剤としての利用も可能となり,投与方法の多様化による労力の軽減や薬物量の調節が非常に容易となること及び駆虫成分自体の駆虫効果は包接によっても殆んど変らず,実際の使用に際し極めて有用な動物用内部寄生虫駆虫剤となることを見出し,本発明を完成した。」(公報第2頁左下欄8行?右下欄12行)
(1-3)「従来,環状デキストリンは種々の物質と包接化合物を形成することが知られており,動物内部寄生虫駆虫成分とも包接化合物を形成するといわれていた。この原理を利用して特開昭50-58208号公報には動物用駆虫剤を投与しやすく,かつ安定化する方法が開示されている。かかる発明において形成される動物内部寄生虫駆虫剤においてはその安定性は改善されるが,得られた粉末の包接化合物は水に不溶のため,錠剤等固型剤としてのみ服用が可能であり,水溶液剤としての利用ができなかった。
而して,本発明のメチル化シクロデキストリン(I)はシクロデキストリンと同様に種々の物質と包接化合物を形成する能力を有し,さらに,水溶性が高いため,液剤としての利用が可能となり,悪臭や刺激臭を低減し,味においても良好な水溶液剤を得ることができるものである。」(公報第3頁左上欄4行?右上欄7行)
(1-4)「本発明において内部寄生虫駆虫成分とは,従来動物の内部寄生虫の駆虫に有効に用いられて来たもの全てを指称するが,包接化合物とすることにより,格別に優れた効果を発揮するものとしては,例えば,四塩化エタン,塩化ブチル,四塩化炭素,ヘキサクロロエタン,テトラクロロジフルオロエタン,チモール,二硫化炭素,トルエン,ジクロロフェン,ヘキサクロロフェン,フタール酸塩,サントニン,ベルベリン,メチレンブルー等をあげることができる。」(公報第3頁右下欄7行?第4頁左上欄2行)

引用例2
(2-1)「【0002】【従来の技術】一連のアベルメクチン化合物は,内在性及び外在性寄生虫に対する効果的な駆虫剤ないし抗寄生虫剤である。天然産物のアベルメクチンについては,Albers-Schonberg らの米国特許第4,310,519 号に,22,23-ジヒドロアベルメクチン化合物については,Chabala らの米国特許第4,199,569 号にそれぞれ開示がある。」(段落【0002】)

4.対比
引用例1には,「次の成分(A)及び(B)
(A)少なくとも1種以上の動物用内部寄生虫駆虫成分。0.5?10重量%
(B)(A)成分の1/2?20重量倍の次の一般式(I)(式省略)
で表わされるメチル化シクロデキストリンを含有する動物用内部寄生虫駆虫剤。」(以下,「引用発明」という。)が記載されている(記載事項(1-1))。
メチルシクロデキストリンはシクロデキストリンの一種であり,動物用内部寄生虫駆虫剤は薬剤であるから,本願発明と引用発明を対比すると一致点・相違点は以下のとおりである。

(一致点)
少なくとも1種類のシクロデキストリンと駆虫活性化合物を含む薬剤組成物。

(相違点1)
本願発明では,駆虫活性化合物がアベルメクチン又はミルベマイシンであるのに対し,引用発明では駆虫活性化合物としてこれらのものが記載されていない点。

(相違点2)
本願発明では,駆虫活性化合物がシクロデキストリンとの複合体として含まれているが,引用発明では,複合体であることが記載されていない点。

5.当審の判断
そこでこの相違点について,以下に検討する。本願発明は,駆虫活性化合物がアベルメクチン又はミルベマイシンであるので,アベルメクチンである場合について検討する。
(相違点1について)
引用例1には,動物用内部寄生虫駆虫成分として,どのような動物用内部寄生虫駆虫成分でも使用できることが記載され,具体的な例として,サントニン,ベルベリン,メチレンブルー等の比較的分子量の大きい環状の化合物も挙げられている(記載事項(1-4))。
したがって,引用例2に従来技術として記載されている公知の駆虫活性化合物であるアベルマイシン(記載事項(2-1))を,引用発明において駆虫活性化合物として採用することは当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点2について)
引用例1には,メチル化シクロデキストリンが動物用内部寄生虫駆虫成分と包接化合物を形成することが記載されている(記載事項(1-3))。包接化合物は複合体の1つということができるから,相違点2は実質的な相違点ではない。

また,一般に,シクロデキストリンを薬剤と組み合わせることにより薬剤の安定化を図ることは,周知技術であり(竹本喜一,宮田幹二,木村恵一著,「包接化合物?基礎から未来技術へ?」,株式会社東京科学同人,1989年6月27日発行,第177ページ参照),さらに,引用例1には,動物用駆虫剤をシクロデキストリンと包接化合物を形成することにより,投与方法の多様化や薬剤の安定化が図れることが記載されている(記載事項(1-2),(1-3))のであるから,本願明細書の記載からは,本願発明のアベルメクチンの安定性が得られることや使用形態が広がるといった本願発明の効果が当業者の予想を超えるものとは認められない。

6.むすび
したがって,本願発明は,引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-27 
結審通知日 2007-01-05 
審決日 2007-01-16 
出願番号 特願平11-3730
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 清子守安 智大宅 郁治  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 弘實 謙二
横尾 俊一
発明の名称 駆虫活性化合物を含む薬剤組成物  
代理人 小林 泰  
代理人 千葉 昭男  
代理人 社本 一夫  
代理人 中村 充利  
代理人 富田 博行  
代理人 増井 忠弐  

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