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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60L |
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管理番号 | 1158659 |
審判番号 | 不服2006-2076 |
総通号数 | 91 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-02-06 |
確定日 | 2007-06-07 |
事件の表示 | 特願2003-200514「電気車の駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開、特開2004- 7991〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年10月18日に出願した特願平8-275948号の一部を平成15年7月23日に新たな特許出願としたものであって、平成17年12月26日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月8日付で手続補正がなされたものである。 2.平成18年3月8日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年3月8日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「交流電力を直流電力に変換する3レベルPWMコンバータと、 前記3レベルPWMコンバータの直流出力端子間に設けられたコンデンサと、 前記3レベルPWMコンバータと前記コンデンサを介して接続され、前記3レベルPWMコンバータによって変換された直流電力を交流電力に変換する2レベルPWMインバータと、 前記2レベルPWMインバータの直流入力端子間に設けられたコンデンサと、 前記2レベルPWMインバータの交流出力端子に接続された電動機とを備えることを特徴とする電気車の駆動装置。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「コンバータ」及び「インバータ」について「PWM」との限定を付加するもの、及び、「インバータ」の動作に関して「変換可能な」を「変換する」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用文献 (2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-205587号公報(以下「引用文献1」という。)には、「電動機駆動システム」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、中性点電位を持つ直流電圧を交流電圧に変換するNPCインバータと通常のインバータを用いて電動機を駆動するシステムに係り、特に上記直流電圧を共通化して複数のインバータへ供給するようにした電動機駆動システムに関する。」 ・「【0004】すなわち、交流電源1から直流電源11により中性点電位Cを持つ直流電圧P1、N1を得、この直流電圧P1、N1を複数のNPCインバータ12A、12Bでそれぞれ交流電圧に変換し交流電動機13A、13Bを駆動する。また、これとは別に直流電源14により交流電源1から中性点電位を持たない通常の直流電圧P2、N2を得、この通常の直流電圧P2、N2を複数の通常のインバータ15A、15Bでそれぞれ交流電圧に変換し交流電動機16A、16Bを駆動するように構成している。」 ・「【0016】請求項9の発明として、前記直流電源は、交流電源から直流電圧を得るコンバータと、前記直流電圧の正極と負極間に直列接続される2組のコンデンサで構成し、前記コンデンサの直列接続点から前記直流電圧の中性点を得る。」 ・「【0027】 図1に示すように、直流電源21はNPCインバータ12A、12Bと通常のインバータ15A、15Bへ直流電圧を供給し、直流電源の共有化を図っている。また、通常のインバータ15Aへは直流電源の正極Pと中性点C間の直流電圧を与え、通常のインバータ15Bへは直流電源の中性点Cと負極N間の直流電圧を与え、通常のインバータ15Aと15Bの負荷をバランスさせるように設定する。」 ・「【0035】トルク電圧指令Eq1*,Eq2*と励磁電圧指令Ed1*,Ed2*は、それぞれ2相3相変換器38A,38Bによりベクトル演算されるとともに3相の制御信号に変換され、PWM制御部39A,39BでPWM信号が生成され、インバータ15A,15BのPWM制御を行う。」 ・「【0055】図6(b)は1つのコンバータを用いた実施例で、19は交流電源1から絶縁された交流電圧を得る変圧器、20は絶縁された交流電圧を直流電圧P,Nに変換するコンバータ、22A,22Bは直流電圧P,Nの正極Pと負極N間に直列接続され、直流電圧を平滑するとともに中性点電圧Cを得るコンデンサである。この実施例によれば、1つのコンバータで直流電源を構成することができ、更に、低コスト・省スペース化を実現することができる。」 ・図1及び図6(b)には、コンバータ20とコンデンサ22A,22Bを介して接続されたインバータ15A,15Bが開示されている。 また、図1に記載された直流電源21は、コンバータ20を用いて、交流電源から中性点電位Cを持つ直流電圧P,Nを得るものであるから、3レベルコンバータであるといえる。 したがって、これらの記載によれば、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「交流電源から中性点電位Cを持つ直流電圧P,Nを得る3レベルコンバータと、 前記3レベルコンバータから得られる直流電圧の正極と負極間に直列接続される2組のコンデンサと、 前記3レベルコンバータと前記コンデンサを介して接続され、前記3レベルコンバータの正極と中性点間の直流電圧を与えられ、PWM制御される通常のインバータと、 前記PWM制御される通常のインバータで変換された交流電圧で駆動される電動機とを備える装置。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「交流電源から中性点電位Cを持つ直流電圧P,Nを得る」は前者の「交流電力を直流電力に変換する」に相当し、同様に「直流電源から得られる直流電圧の正極と負極間に直列接続される2組のコンデンサ」は「直流出力端子間に設けられたコンデンサ」に、「PWM制御される通常のインバータ」は「2レベルPWMインバータ」に、それぞれ相当する。 また、後者の「PWM制御される通常のインバータで変換された交流電圧で駆動される電動機を備える装置」と、前者の「2レベルPWMインバータの交流出力端子に接続された電動機を備える電気車の駆動装置」とは、「2レベルPWMインバータの交流出力端子に接続された電動機を備える駆動装置」との概念で共通し、後者の「3レベルコンバータと前記コンデンサを介して接続され、前記3レベルコンバータの正極と中性点間の直流電圧を与えられ、PWM制御される通常のインバータ」と前者の「3レベルPWMコンバータと前記コンデンサを介して接続され、前記3レベルPWMコンバータによって変換された直流電力を交流電力に変換する2レベルPWMインバータ」とは、「3レベルコンバータとコンデンサを介して接続され、前記3レベルコンバータによって変換された直流電力を交流電力に変換する2レベルPWMインバータ」との概念で共通する。 したがって両者は、 [一致点] 「交流電力を直流電力に変換する3レベルコンバータと、 前記3レベルコンバータの直流出力端子間に設けられたコンデンサと、 前記3レベルコンバータと前記コンデンサを介して接続され、前記3レベルコンバータによって変換された直流電力を交流電力に変換する2レベルPWMインバータと、 前記2レベルPWMインバータの交流出力端子に接続された電動機とを備える駆動装置。」 である点で一致し、 [相違点] (イ)3レベルコンバータが、本件補正発明では、3レベルPWMコンバータであるのに対して、引用発明では、PWMと限定されていない点、及び、 (ロ)2レベルPWMインバータが、本件補正発明では、その直流入力端子間にコンデンサが設けられているのに対し、引用発明ではその点が明確でない点、及び、 (ハ)電動機の負荷に関して、本件補正発明では、電気車の駆動装置としているのに対して、引用発明では、負荷が特定されていない点、 で相違している。 (4)相違点に対する判断 相違点(イ)について インバータに3レベルの直流電圧を供給するコンバータの構成として、3レベルPWMコンバータを用いることは、特開平8-168101号公報(以下「周知例1」という。)の段落【0013】に「図13に示す電力変換装置は、図1のPWMコンバータ4、PWMインバータ6の代わりに3レベルPWMコンバータ13、3レベルPWMインバータ14としたものである。」と記載され、また、特開平8-66041号公報(以下「周知例2」という。)の段落【0021】に「また、図1では多重電力変換器が図2(a)のような2レベルの電力変換器で構成される場合を図示したが、図2(b)のように3レベルの電力変換器で構成されていても同様の効果が得られる。」と記載され、その図2(b)には、3レベルの電力変換器として、本件補正発明のものと同様の3レベルPWMコンバータが記載されており、周知の事項と認められるのでこの点の相違は必要に応じて適宜設計し得る事項と認めざるを得ない。 相違点(ロ)について PWMコンバータの直流出力端子間にコンデンサが設けられ、このコンデンサを介して接続される可変電圧可変周波数インバータの直流入力端子間にもコンデンサを設けた構成が、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-328519号公報(以下「引用文献2」という。)に記載されている。 この引用文献2に記載された発明は、交流電源を直流電圧に変換し、変換した直流電圧をインバータで交流電力に変換して電動機を駆動する装置である点で引用発明と共通の技術分野に属するものであるから、引用発明においてもこの構成を用いて、相違点(ロ)に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。 相違点(ハ)について 電気車の駆動装置として、交流電力をコンバータで直流電力に変換し、この直流電圧を交流電圧に変換するインバータの出力で駆動される電動機を用いる構成は、引用文献2の他、前記周知例1、及び、周知例2にも記載されており周知の事項と認められるので、引用発明において相違点(ハ)に係る本件補正発明の構成とすることは当業者に容易である。 また、本件補正発明の奏する効果は、引用発明、引用文献2に記載された発明及び上記周知の事項から予測しうる程度のものと認められる。 したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成18年3月8日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年6月20日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「交流電力を直流電力に変換する3レベルコンバータと、 前記3レベルコンバータの直流出力端子間に設けられたコンデンサと、 前記3レベルコンバータと前記コンデンサを介して接続され、前記3レベルコンバータによって変換された直流電力を交流電力に変換可能な2レベルインバータと、 前記2レベルインバータの直流入力端子間に設けられたコンデンサと、 前記2レベルインバータの交流出力端子に接続された電動機とを備えることを特徴とする電気車の駆動装置。」 (1)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、上記したとおりであって、前記2.で検討した本件補正発明から「PWM」との限定、及びインバータに関して「変換する」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用文献1,2に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1,2に記載された発明および周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1,2に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-04-11 |
結審通知日 | 2007-04-13 |
審決日 | 2007-04-24 |
出願番号 | 特願2003-200514(P2003-200514) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B60L)
P 1 8・ 121- Z (B60L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 根本 徳子、長馬 望、高橋 学 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
渋谷 善弘 高木 進 |
発明の名称 | 電気車の駆動装置 |
代理人 | 堀口 浩 |