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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A61F |
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管理番号 | 1158741 |
審判番号 | 不服2005-16452 |
総通号数 | 91 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-08-26 |
確定日 | 2007-06-04 |
事件の表示 | 平成5年特許願第52098号「骨置換用の移植組織」拒絶査定不服審判事件〔平成6年2月15日出願公開,特開平6-38994号〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 (1)出願:平成5年3月12日(パリ条約による優先権主張 1992年 (平成4年)3月14日 ドイツ連邦共和国) (2)拒絶理由の通知:平成14年5月1日(発送:同年5月14日) (3)意見書・手続補正書の提出:平成14年6月17日受付 (4)拒絶理由の通知:平成15年6月30日(発送:同年7月8日) (5)意見書の提出:平成15年12月24日受付 (6)拒絶査定:平成17年6月13日(発送:同年6月15日) (7)拒絶査定不服の審判請求:平成17年8月26日受付 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は,上記1.(3)の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「骨置換用であって、骨接触面を有し、その面を少なくとも部分的に被覆する開放網状三次元構造(1、1′)を有する移植組織において、その構造は少なくとも二つの離散領域(A、B、C)を有し、さらにその各領域は骨接触面に沿ってお互いに隣接して順次伸展し、さらに前記構造は海綿体において異なる大きさの細胞及び間隙の内部成長を受けて領域で互いに異なった網目の大きさを有することを特徴とする骨置換用の移植組織。」 3.他の特許出願に係る発明 平成5年改正前の特許法第29条の2第2項の規定によれば,同条第1項に規定された「当該特許出願の日前の他の特許出願」が国際特許出願であって,しかも外国語特許出願である場合,当該他の特許出願の「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明」は,国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲若しくは図面(図面の中の説明に限る。)及びこれらの書類の特許法第184条の4第4項の出願翻訳文又は国際出願日における図面(図面の中の説明を除く。)に基いて認定すべきである。 そうすると,上記国際特許出願がパリ条約による優先権主張をしている場合には,その国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲若しくは図面,及びそれらの出願翻訳文又は国際出願日における図面と,さらには当該優先権主張の基礎となる第一国出願の出願の際の明細書又は図面とに共通して記載されている発明に関しては,第一国出願の出願日に我が国になされたものとみなすべきである。 そこで,原査定の拒絶の理由として,上記1.(4)の拒絶理由に引用された特願平5-507406号(以下,「他の特許出願」という。)について検討すると,当該他の特許出願は,本願の出願日である平成5年3月12日より以前の平成4年10月10日を国際出願日とする外国語出願であって,本願のパリ条約による優先権主張日(1992年(平成4年)3月14日,ドイツ国)より前の1991年(平成3年)10月12日にドイツ国で受理された出願(優先権主張番号 P4133877.4)を第一国出願(以下、「他の特許出願に係る第一国出願」という。)として,パリ条約による優先権の主張がなされている。 してみると,他の特許出願の国際出願日における明細書,請求の範囲及び図面を掲載したWO93/7835号パンフレット,他の特許出願の出願翻訳文及び国際出願日における図面を掲載する特表平6-503990号公報(以下,「他の特許出願に係る公表公報」という。),並びに他の特許出願に係る第一国出願の出願の際の明細書及び図面(請求人が他の特許出願において優先権主張の基礎となったものであると主張する,審判請求書に添付された甲第1号証(以下,「甲第1号証」という。)を参照のこと。)に共通して記載されている発明が,本願の出願日前の他の特許出願であって本願出願後に国際公開されたものの国際出願日における明細書,請求の範囲又は図面に記載された発明として認定されるべきである。 そこで,他の特許出願の国際公開公報であるWO93/7835号パンフレット,他の特許出願に係る公表公報及び甲第1号証に記載された技術的事項を比較検討すると,技術的にみて,次の事項は三者に共通して記載されているものといえる。 (a)「本発明は金属から移植骨を製造する方法であって、表面の少なくとも局部に開孔構造または連続気泡の構造を有する陽原型(Positivmodell)を形成し、開孔構造の孔を充填するセラミックの埋設物質内に陽原型を埋設し、熱を利用して原型材料を除去し、これによって形成されるそれまでは原型材料で占められていた残存コア内のスペースを金属の鋳込み乃至は遠心流し鋳込み処理によって充填する形式の方法に関する。 更に本発明は移植骨それ自体にも関する。 上述した方法は、例えばドイツ連邦共和国特許第3106917号明細書から既に公知となっており、この公知の方法においては、陽原型として開孔形合成樹脂またはプラスチックの成形体、例えば開孔形の天然海綿もしくは人工海綿が用いられる。表面に多数の開孔を有するこの種の陽原型を利用するならば、表面組織が開孔した状態にある構造体を製作することが可能になり、この場合、セルに形成された開孔のサイズは、いづれにせよ天然の、つまり自然骨における海綿状小袋(Spongiosa-B 1kchen)に等しいか海綿状小梁より大きいので、骨組織の成長、ひいてはそれに続く骨の形成が移植直後から開始されることになる。しかしながら、陽原型として使用される合成樹脂の成形体においては、所定の限度範囲内に統計学的数値で分布するような孔サイズか出現すること、しかもこれらの孔は無秩序に配分されていることに基づいて、移植体表面の孔分布が局所的にランダムなものになる。したがって、隣接する骨の組織内部で天然の秩序構造を有する海綿状小梁を成長させることは移植体表面のランダムな孔分布によって必然的に困難ならしめられている。」(先の特許出願に係る公表公報第3頁右上欄3行?同頁左下欄6行を参照のこと。) (b)「移植体表面の孔のサイズ/又は孔の密度に、それぞれ移植体を定着させる骨周辺部の骨梁構造に適合せしめられた局部的な分布が与えられる。 本発明において特筆されるのは、孔サイズ及び孔密度の局部的な分布状態(配分率)を従来では実現され得なかったほと効果的に移植床内の海綿状小梁(Trabekel)構造に適合させた開孔表面構造の移植体か製造できるという利点である。本発明によれば、孔のサイズ、密度及び深さに関するこの適合化は移植体の表面で達成され、各孔のサイズもしくはセルのサイズは、周辺の骨組織における海綿状小梁構造に適合せしめられて、多数の海綿状小梁か天然の所与条件に応じて配列された多数の孔にも申し分なく当嵌まるようになる。ところで、骨の内部における海面状小梁のサイズ及び密度とその局部的な位置とに関する分布状態は整然としており、本発明による移植体表面の孔はその分布状態に応じて適正に配置されるので、移植体の定着効果をより一層顕著なものにすることができる。 」(同第3頁左下欄18行?同頁右下欄5行を参照のこと。) (c)「例えば、股関節エンドプロテーゼの大腿骨部分を移植体として構成しようとする場合、本発明によれば、陽原型にライニング構造もしくは編物/織物またはメツシュを次のような形式で載設すること、ひいては各孔が、大腿骨の上部における海綿状組織の定角軌跡に等しい曲線に沿って陽原型上に配置され、従って、この定角軌跡に沿って位置する海綿状小梁が自然な成長傾向に応じて移植体の孔内で成長せしめられるような形式で載設することかできる。 更に本発明の特に有利な実施例によれば、構成しようとする大腿骨部分の陽原型における孔のサイズ及び/又は孔の深さを、これらの数値がプロテーゼ軸部の遠位側端部に向かって縮小するように且つ近位側部ではその領域における比較的大きな海綿状小梁に適応するようにそれぞれ設定することが可能である。」(同第4頁左上欄3?15行参照を参照のこと。) 以上の記載事項を総合すると,移植骨は,まさに骨に移植するためのものであって,開孔表面構造において周辺の骨組織が成長するものであるから,骨接触面を有することは明白である。 したがって,他の特許出願の国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1991年(平成3年)10月12日 ドイツ連邦共和国)における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面には,次のような発明(以下,「他の特許出願に係る発明」という。)が記載されているものと認められる。 「骨に移植するためのものであって,骨接触面を有し,その面を被覆する開孔表面構造を有する移植骨において,その開孔表面構造における孔のサイズ及び深さが周辺の骨組織における海綿状組織の構造に適合せしめられた移植骨。」 4.対比 そこで,本願発明と他の特許出願に係る発明とを対比すると,その文言の技術的意義,機能などからみて,他の特許出願に係る発明の「骨に移植するための」「移植骨」は,本願発明の「骨置換用の移植組織」に相当し,また,他の特許出願に係る発明の「開孔表面構造」は,周辺の骨組織における海綿状組織の構造に適合させたサイズ及び深さの孔を有し,周辺の骨組織における海面状組織が,移植体の孔内で自然に成長させるようにしたものであるから,本願発明の「開放網状三次元構造」に相当し,その構造は骨組織における海綿状組織,すなわち海綿体において異なる大きさの細胞及び間隙の内部成長に対応するよう,骨接触面に沿って異なった網目の大きさを有するものといえる。 したがって,本願発明と他の特許出願に係る発明とは, 「骨置換用であって,骨接触面を有し,その面を少なくとも部分的に被覆する開放網状三次元構造を有する移植骨において,その構造は骨接触面に沿って,海綿体において異なる大きさの細胞及び間隙の内部成長を受けて異なった網目の大きさを有する骨置換用の移植骨。」 で一致し,次の点で一応相違する。 〈相違点〉 開放網状三次元構造に関して,本願発明においては,少なくとも二つの離散領域(A、B、C)を有し,各領域は骨接触面に沿ってお互いに隣接して順次伸展し,互いに異なった網目の大きさを有しているのに対して,他の特許出願に係る発明においては,孔のサイズ及び深さが周辺の骨組織における海綿状組織の構造に適合せしめられている点。 5.判断 上記3.の記載事項(a)?(c)によれば,他の特許出願に係る発明の技術的課題は,開孔表面構造における孔のサイズ及び深さを,周辺の骨組織における海綿状組織の構造に適合させることにより,周辺の骨組織における海面状組織が移植骨の孔内で自然に成長させることにあるから,開孔表面構造の網目の大きさを,周辺の骨組織との接触面に沿ってお互いに隣接して順次伸展させることにより,骨組織の海面状組織の大きさに適合させるようにしていることは明白である。 その際,開孔表面構造における網目の大きさを,例えば,個々の海面状組織の大きさに適合させて骨接触面に沿って連続的に変化させたり,あるいは所定領域における海面状組織の平均的な大きさに適合させて,当該領域毎に変化させるなど,どのような態様で変化させるかは,当業者が他の特許出願に係る発明を具体化するに当たり,適宜選定し得る程度の設計的事項にすぎないから,上記相違点は実質的なものはいえない。 6.むすび 以上のとおりであるから,本願発明は他の特許出願に係る発明と同一であり,また,本願の特許出願の時に,本願出願人と他の特許出願の出願人とが同一のものではないから,本願発明は,平成5年改正前の特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができないものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-18 |
結審通知日 | 2007-01-05 |
審決日 | 2007-01-22 |
出願番号 | 特願平5-52098 |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(A61F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡辺 仁、弘實 謙二 |
特許庁審判長 |
石原 正博 |
特許庁審判官 |
平上 悦司 芦原 康裕 |
発明の名称 | 骨置換用の移植組織 |
代理人 | 浜田 治雄 |