• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01G
管理番号 1159324
審判番号 不服2004-8176  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-22 
確定日 2007-06-15 
事件の表示 平成10年特許願第 99884号「植物生育基盤およびその形成材料」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月12日出願公開、特開平11-275957〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年3月30日の出願であって、平成16年3月11日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成16年4月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成16年5月20日付で手続補正がなされたものであって、平成18年12月28日付で当審より拒絶理由通知書の通知がなされ、これに対して、平成19年3月16日に意見書および手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年3月16日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「土と、長さが15cm以下、幅が2cm以下及び厚さが1cm以下である、大きさの異なる、未腐熟の多数の木片とを含む混合物からなる、植物生育基盤の形成材料。」

3.引用刊行物および引用刊行物記載の発明
これに対して、当審における、平成18年12月28日付で通知した拒絶の理由に引用した本願出願日前に頒布されている刊行物である、特開平9-298942号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「伐採木材の利用方法」に関して、図面とともに、以下の記載がある。

(イ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】伐採した木材を小片に粉砕し、
この粉砕した破砕片を積み重ねて一定高さの畝を作成し、
この畝を野積み状態のまま一定期間放置して、易分解性成分を1次発酵させて半熟成粉砕木材を製造して行う、
伐採木材の利用方法。
【請求項2】地盤上に木炭の層を敷き、
その上に請求項1記載の方法で製造した、半熟成粉砕木材の層を敷き、
その半熟成粉砕木材の層の上に、砂を一定の厚さで散布して砂層で被覆して客土として使用する、
伐採木材の利用方法
【請求項3】地盤上に木炭の層を敷き、
その上に請求項1記載の方法で製造した半熟成粉砕木材と現場の土とを等量に混合して散布して半熟成粉砕木材の層を敷き、
その半熟成粉砕木材の層の上に、砂を一定の厚さで散布して砂層で被覆して客土として使用する、
伐採木材の客土としての利用。」
(ロ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、伐採した木材を利用する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】山間部での各種の建設工事において多量の伐採木材が発生する場合がある。そのような木材は焼却処分する方法が一般的であった。しかし、焼却に伴う二酸化炭素の発生によって環境を汚染する可能性があり、その他の処分方法の採用が進められている。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】焼却に代わる方法として各種の処分が考えられるが、各々の方法には次のような問題点がある。
<イ>破砕木材を公園などに運搬し、その地表面に散布してマルチング材として使用する方法は、遮光するために植物の繁殖を妨げるという問題がある。
<ロ>木材をそのまま客土として地中に埋める方法では、木材の易分解性成分が土中で腐敗化して植物の根腐れ病を引き起こす。
<ハ>粉砕した木材を客土として用いると、灌水によって地盤沈下を発生する危険性がある。
<ニ>また、粉砕した木材を客土として用いると、土壌内部で木材成分が腐敗化して還元状態となって植物の根腐れ病を誘発する可能性が高い。
<ホ>さらに未分解の木材成分が浸出水とともに溶出し、茶褐色の着色水を生じる。この着色成分は分解が困難であるために、ゴルフ場などの水を汚染する原因となる。
【0004】本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、大量に発生する伐採木材を、有効に利用できるとともに、環境に負荷を与えることのない、伐採木材の利用方法を提供することを目的とする。」
(ハ)「【0008】
【本発明の実施の態様】以下図面を参照しながら本発明の伐採木材の利用方法の実施例について説明する。
【0009】<イ>半熟成粉砕木材の製造。(図1)
伐採した木材をまず小片に粉砕して破砕片1を製造する。小片とは、例えば5cm程度の大きさのものである。木材はその種類は問わず、粉砕に際しては枝、葉、幹、根を含んで粉砕する。この粉砕した破砕片1を積み重ね、例えば高さ1.5m、幅1?2m、長さ2M以上程度の畝を作成する。この畝を野積み状態のまま2か月以上放置しておく。その結果、易分解性成分を1次発酵させた半熟成粉砕木材2を製造することができる。
【0010】<ロ>客土としての利用。(図2)
上記の工程で製造した半熟成粉砕木材2を、土地造成の際の客土として利用することができる。利用対象としては、例えばゴルフ場、サッカー場、公園などであり、このような施設において芝生を張り付ける場合の客土として利用する。その際にまず木炭の層3を敷き詰める。敷設した木炭層3の上に、上記した方法で製造した半熟成粉砕木材2の層を異体の厚さ、例えば20cm以下の厚さで散布する。その際に、半熟成粉砕木材2と現場の土とを等量に混合して用いることも可能である。さらにその半熟成粉砕木材2の層の上に、砂を10sm程度の厚さで散布して砂層で被覆する。その覆砂層4に芝などを植え付ける。」
(ニ)「【0023】
【本発明の効果】本発明の伐採木材の利用方法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ>易分解性成分がすでに発酵している。そのために残留木材の腐敗化が発生せず、芝生の病害を誘発することがない。
<ロ>病害の原因にならないだけでなく、木材の発酵成分が養分となるために芝生が良好に成長した。
<ハ>土からの浸出水が着色する現象は、半熟成粉砕木材と現場の土とを等量に混合することで解消し、透明化をはかることができた。現場の土との混合以外にも、半熟成粉砕木材の下に木炭などを敷き詰めることで代用することができる。
<ニ>客土の厚みを20cm以下にすることで、客土内部の嫌気化を防止できるとともに、地盤沈下の発生を防止することができる。
<ホ>以上のような工程は工事現場で一連の作業によって行うことができる。したがって伐採資源を現場内部で有効に利用することができる。
<ヘ>上記の方法は、ゴルフ場などに芝を張り付ける広域土壌だけではなく、山間部や公園、運動場などの土壌にも利用することができる。」
(ホ)引用文献1において、「半熟成粉砕木材」と「現場の土」とを混合したものは、「利用対象としては、例えばゴルフ場、サッカー場、公園などであり、このような施設において芝生を張り付ける場合の客土として利用する」ものである(上記(ハ)参照)ことから、「植物生育用の客土材料」であることは明らかである。
してみると、上記(イ)?(ホ)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「現場の土と、多数の半熟成粉砕木材2とを混合した植物生育用の客土材料。」

また、同じく特開平1-96085号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「マルチ資材」に関して以下の記載がある。
(ヘ)「2.特許請求の範囲
(1).バーク堆肥と、樹木の幹から得られるチップとが配合されていることを特徴とするマルチ資材。」(公報1頁左欄4?6行)
(ト)「〈産業上の利用分野〉
本発明は樹木等の下部やその他の地表部に敷き詰めて、土壌を被覆するマルチ資材に関する。」(公報1頁左欄10?12行)
(チ)「前記バークは、広葉樹や針葉樹の樹皮であるが、樹皮の薄い針葉樹よりも例えばケヤキやクヌギ等の広葉樹が好ましい。・・・またバークの大きさは、例えばたてが5?20cm、幅が5cm程度以下、厚みが1cm程度以下の偏平なものを用いることができるが、寸法的に限定されるものではない。偏平であるので、地面上に敷き易くなり、地面の被覆性がよくなり、またその上を人が歩き易くなる。
前記チップは、広葉樹や針葉樹の原木の幹を剥皮し、切削等によりチップ化したものである。チップの大きさは、前記バークよりも小径のものが好ましく、例えば、たてよこが10mm以下の偏平なものが用いられる。形は細長いものや四角いもの等が混ざっていてよい。前記たてよこが10mm以下のチップは、剥皮した幹から適当な大きさのチップ(例えば、たてよこが10?30mm程度の偏平チップ)を切削等により製造する際に発生する木屑を用いることができる。この木屑は、たてよこが10mm以下の偏平なものであるが、粉ではなく、チップである。なおチップの大きさは、前記バークの大きさ以下であれば、その寸法自体は特に限定されるものではない。」(公報3頁右下欄6行?4頁左上欄8行)
(リ)「バークとチップの混合割合は、特に限定されないが、両者混合の良さを出すためには、バーク堆肥に対してチップが容積比で10?70%程度がよい。
本発明のマルチ資材の用途は、畑といった場所ではなく、庭園、公園、道路のグリーンベルト、法面緑化域などに効果的に用いることができ、植樹した部分やその他の樹木の部分は勿論のこと、それ以外の地表面にも併せて敷くことができる。」(公報4頁右上欄8?15行)
(ヌ)「<作用効果>
本発明のマルチ資材は以上の構成よりなり、バークと、樹木の幹から得られる小径チップとが配合されているので、それが地表面に敷かれることによって、土中の水分の蒸発、乾燥を防ぎ、土中の養分の溶脱を防止し、地温を保持することができる。しかもバークや、それに配合されるチップの何れもが樹木から得られるものであるから、次第に腐って腐葉土の如く、土壌に養分を与え、また土質を改良する効果がある。」(公報4頁左下欄13行?右下欄2行)

4.対比
本願発明と引用発明を対比を対比する。
引用発明における「現場の土」、「植物生育用の客土材料」は、本願発明の「土」、「植物生育基盤の形成材料」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明における「多数の半熟成粉砕木材2」と、本願発明の「未腐熟の多数の木片」とは、「多数の木片」である点で共通している。
そうすると、両者は、
「土と、多数の木片とを含む混合物からなる、植物生育基盤の形成材料。」
である点で一致して、次の点で相違している。

[相違点1]多数の木片が、本願発明においては、長さが15cm以下、幅が2cm以下及び厚さが1cm以下である、大きさの異なる、ものであるのに対して、引用発明においては、そのようなものであるのか明確ではない点。
[相違点2]多数の木片が、本願発明においては、未腐熟のものであるのに対して、引用発明では、半熟成のものである点。

5.判断
[相違点1について]
引用文献2には、相互に大きさの異なるバーク(例えばたてが5?20cm、幅が5cm程度以下、厚みが1cm程度以下の偏平なもの)とチップ(例えば、10mm以下の偏平なものであり、バークの大きさ以下であれば、その寸法自体は特に限定されない)を混合して用いるマルチング資材が記載されていることから、引用発明において、多数の木片として、これと同様に相互に大きさの異なる多数の木片が混合されたような資材を用いるものとすることは、当業者にとって容易に想到することができる事項であるといえる。
[相違点2について]
本願発明における「未腐熟(の多数の木片)」としているものが、どのような程度に腐熟した状態(の多数の木片)を意味しているかについて、平成19年3月16日付意見書の「【意見の内容】(5)」を参照すると、請求人は、「本願発明によれば、前記木片が未腐熟であるため、前記植物生育基盤を形成したときに前記土に存在する微生物の数は比較的少ない。・・・
また、樹木の破砕片を腐熟させることなく植物生育基盤の形成材料に用いることができるため、前記樹木の破砕片を腐熟させる手間を要しない。このため、植物生育基盤の形成材料の製造コストの低減を図ることができる。」(当審注:下線は当審が付与)との主張をしている。そうすると、請求人の主張によれば、本願発明における「未腐熟」としているものは、樹木の破砕片(即ち、木片)を全く腐熟させていない状態(即ち、樹木を破砕したままの状態)を意味したものということができる。
ところで、引用文献1に、「山間部での各種の建設工事において多量の伐採木材が発生する場合」の「焼却に代わる(処分)方法」として、
「<ハ>粉砕した木材を客土として用いると、灌水によって地盤沈下を発生する危険性がある。
<ニ>また、粉砕した木材を客土として用いると、土壌内部で木材成分が腐敗化して還元状態となって植物の根腐れ病を誘発する可能性が高い。」(上記、「3.(ロ)」参照、当審注:下線は、当審が付与)
と記載されているように、破砕した木材を全く腐熟させていない状態で客土として用いるということも、広く知られている事項であるということができる。
そうすると、引用発明における植物生育基盤の形成材料として用いる多数の木片を、未腐熟のものとするか、半腐熟のものとするかは、植物生育基盤の形成材料の土に対する補強効果や土壌改良効果、用いる環境、植物生育基盤の形成材料を製造する際の手間や製造コストなどを考慮して、当業者が適宜選択し得る事項であるということができる。

そして、本願発明の奏する作用効果も引用発明、引用文献2に記載されている事項から当業者が予測し得るものであって格別のものということができない。
したがって、本願発明は、引用発明および引用文献2に記載されている事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-04 
結審通知日 2007-04-10 
審決日 2007-04-24 
出願番号 特願平10-99884
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 宮川 哲伸
西田 秀彦
発明の名称 植物生育基盤およびその形成材料  
代理人 松永 宣行  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ