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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1159334
審判番号 不服2005-9272  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-18 
確定日 2007-06-15 
事件の表示 特願2002-375918「温度上昇抑制構造」拒絶査定不服審判事件〔平成16年7月22日出願公開、特開2004-201603〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年12月26日の出願であって、平成17年4月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月18日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年5月18日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成17年5月18日付け手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
(1).本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項3は、次のとおりに補正された。
「貯水部及びこれに載置されるコンテナを敷設面の上に複数並べて敷設し、各コンテナに育成材を充填し、所定のコンテナの育成材に植栽を施す緑化エリアの温度上昇抑制構造であって、植栽が施されていないコンテナの育成材の上に保水石材を設け、貯水部内の水分を、育成材の毛細管現象と保水石材の毛細管現象とで保水石材に導入して、保水石材で蒸散すると共に、育成材の毛細管現象を介して吸水した植物で蒸散することを特徴とする温度上昇抑制構造。」

上記補正は、請求項3に記載した発明を特定する事項である、植栽が施されていないコンテナの育成材の上に設けられる部材を「保水性部材若しくは透水性部材」から「保水石材」に限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項3に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2).引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成13年3月27日に頒布された特開2001-78582号公報(以下「引用例1」という)及び、本願の出願前である平成14年10月22日に頒布された特開2002-305969号公報(以下「引用例2」という)には以下の記載がある。

引用例1
(イ)
「【請求項7】 少なくとも底板と外周壁を有し、上方が開口した植物栽培コンテナにおいて、該植物栽培コンテナ内の上部にユニット載置空間を形成すると共に、該植物栽培コンテナ内の下部に育成材充填空間を形成する植物栽培コンテナを複数敷設し、該植物栽培コンテナに複数種類のユニット材を選択的に載置することを特徴とする植物栽培コンテナ群。」
(ロ)
「【0001】 【発明の属する技術分野】
本発明は、屋上、ベランダ等における緑化対策の一貫として使用する植物栽培コンテナ及びその植物栽培コンテナ群に関する。
【0002】 【従来の技術】
現代社会における都市部には自然が不足しているが、人間の自然に対する希求に応えて自然不足を補うべく、都市部における緑化対策が図られている。かかる緑化対策はビルの屋上、ベランダ、テラス、イベント会場等を人工的に緑化することで行われているが、その緑化対策に関する具体的な発明として、例えば実公平1-25558号に床面に載置可能な平坦状の内底板の周縁に沿って枠板を立設して、その内部に芝を植え込むブロック箱体が開示されている。」
(ハ)
「【0021】また、上記ユニット材を少なくとも2種類以上で構成することで、上記植物栽培コンテナを複数敷設して植物栽培コンテナ群を形成する場合に、上記ユニット材を選択して様々なレイアウトの緑化エリアを作り出すことを可能にすると共に、気分転換等でのレイアウト変更、又はユニット材等の破損時の交換を容易にできる。
【0022】 【発明の実施の形態】
以下、本発明の植物栽培コンテナ及びその植物栽培コンテナ群の具体的な実施形態例について、図面に沿って説明する。図1から図5は本発明の第1実施形態例の植物栽培コンテナを示し、図1は植物栽培コンテナの平面図、図2は植物栽培コンテナの斜視図、図3は植物栽培コンテナのA-A矢視断面図、図4は植物栽培コンテナへのユニット材載置作業説明図、図5は植物栽培コンテナへのユニット材載置状態を示す断面図である。」
(ニ)
「【0028】 そして、上記植物栽培コンテナ1に育成材90及びユニット材80を載置するが、これは図4及び図5に示すように、まず最初に植物栽培コンテナ1本体内の下方に設けられた育成材充填空間9に、育成材充填空間9の上端であるユニット支持部7の位置まで育成材90を充填し、その後ユニット材80として例えばウッドデッキ等の板材(板状体)81をユニット支持部7上に載置する。
【0029】 前記育成材90はどのようなものであってもよいが、屋上、或いはベランダ等に敷設する場合は、出来るだけ軽量であればより良く、パーライト、バーミキュライト、ピートモス、バーク堆肥、チャフコン、木質腐朽有機物、ゼオライト等が考えられる。また上記育成材の内の数種類を、又は必要と思われる根腐れ防止用の珪酸塩白土などを植栽の種類、環境などに応じて適宜選定し、これを保水性、排水性を良好にするためバランスよく配合した軽量育成材等が考えられる。かかる通気性良好な軽量育成材を採用することにより、植物の根が傷むことを防止できる。これらの軽量育成材による荷重は、従来の客土の約1/3であり、敷設面への荷重付加を軽減することができる。」
(ホ)
「【0043】 また、図12から図18までは本発明の植物栽培コンテナの第5実施形態例を示し、図12は第5実施形態例の植物栽培コンテナの平面図、図13は第5実施形態例の植物栽培コンテナの斜視図、図14は第5実施形態例の植物栽培コンテナの育成材充填状態の斜視図、図15は第5実施形態例の植物栽培コンテナへのユニット材(板材)載置作業説明図、図16は第5実施形態例の植物栽培コンテナへのユニット材(板材)載置状態を示す斜視図、図17は第5実施形態例の植物栽培コンテナへのユニット材(芝材)載置作業説明図、図18は第5実施形態例の植物栽培コンテナのユニット材(芝材)載置状態を示す斜視図であり、上記第1乃至4実施形態例と異なる箇所を中心に以下説明する。」
(ヘ)
「【0046】 そして、図14に示すように、植物栽培コンテナ1の育成材充填空間9に育成材90を充填する場合、それぞれユニット支持部71、72の頂部である平面部71a、72aが育成材90の上部よりも僅かに高くなるように育成材90を充填すればよく、育成材90の充填量を容易に確認することができるようになっている。また、上記植物栽培コンテナ1内の育成材充填空間9に育成材90を充填した後に、ユニット材80として板材81(木材、石材、鉄材、プラスチック材等材質は問わない)或いは図17及び図18に示すような芝生82aを有する芝材82(天然芝、人工芝等問わない)等を上部から載置するだけで、植物栽培コンテナ1が完成するように構成されている。
【0047】 以上のように第5実施形態例の植物栽培コンテナ1を使用することにより、植物栽培コンテナ1本体の強度が増すと共に、ユニット材80上部からの圧力を分散して受けることができ、植物栽培コンテナ1本体やユニット材80の歪みや破損を極力防止することができる。また、ユニット材80を交換するだけで、植物栽培コンテナ1を使用して植物の栽培ができ、或いはデザインデッキの載置や交換を容易にすることができる。ユニット材80が万一破損した場合も容易に新しいユニット材80と交換することが可能であり、労力や費用面を軽減することができる。」
(ト)
「【0055】 また、図25から28までは第5実施形態例の植物栽培コンテナの使用例を示し、図25は第5実施形態例の植物栽培コンテナと貯水トレーを示す斜視図、図26は第5実施形態例の植物栽培コンテナと貯水トレーとユニット材の育成材がない状態での載置作業説明図、図27は第5実施形態例の植物栽培コンテナと貯水トレーとユニット材の育成材がない状態での載置状態を示す断面図、図28は第5実施形態例の植物栽培コンテナと貯水トレーとユニット材に育成材を充填した状態での載置状態を示す断面図である。
【0056】 上記使用例は、底面灌水型である第5実施形態例の植物栽培コンテナ1を貯水トレー11上に載置し、前記植物栽培コンテナ1上に凸部80aを有するユニット材80を載置する構成であり、前記植物栽培コンテナ1には底板2の下向き凸部(吸水凸部)10が設けられ、前記下向き凸部(吸水凸部)10の頂部には吸水用の吸水孔(開口部)10aが形成されている。これにより、貯水トレー11上に載置された植物栽培コンテナ1は、貯水トレー11内に貯留されている水分を下向き凸部10の吸水孔10aから毛細管現象により吸水するようになっている。」
(チ)
「【0058】 上記使用例において育成材90を充填して使用する場合は、植物栽培コンテナ1を貯水トレー11内に載置し、この植物栽培コンテナ1の育成材充填空間9内に育成材90を充填し、上方からユニット載置空間8にユニット材80を載置することで完成する。」
(リ)
「【0060】 また、図29は本発明におけるユニット材の第4変形例(ライト材)を示す正面図である。ユニット材80であるライト材83は、上記板材81のユニット材80と同様に、裏面に凸部83aを形成された支持板83b上に支柱83cが立設し、支柱83cの上部にライト83dが固設された構成である。
【0061】 上述した各実施形態においては、ユニット材80として板材81、芝材82、ライト材83について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ライト83dの代わりに、支持板上に腰掛け、机、時計台、手摺り、支柱、遊具等に使用する支柱等を固定しても良く、その他に、支持板の略中央部に噴水用の開口部を形成し、この噴水用開口部と水道を管で連結し、噴水材のユニット材80を形成するようにしても良い。又芝材82のかわりに、植木、花等の植物をユニット材80として使用するようにしても良い。」
(ヌ)
「【0063】 次に植物栽培コンテナ1を複数敷設し、植物栽培コンテナ群1aを形成する場合について説明する。図30から図32までは植物栽培コンテナ1を複数敷設し、植物栽培コンテナ群1aを形成する場合の斜視図であり、図30は植物栽培コンテナ群の一部ユニット非載置状態を示す斜視図、図31は植物栽培コンテナ群の一部ユニット非載置状態と縁石を示す斜視図、図32は植物栽培コンテナ群の設置完了状態を示す斜視図である。
【0064】 図に於いて植物栽培コンテナ群1aは、第5実施形態例の植物栽培コンテナ1を複数敷設して形成したものであり、複数連設した植物栽培コンテナ1内には必要に応じて各々育成材90を充填し、ユニット支持部7で支持するようにユニット材80を載置している。植物栽培コンテナ群1aの周囲には必要な側辺に沿って縁石12が敷設されている。前記ユニット材80は好適には少なくとも2種類以上、例えば板材81、芝材82、ライト材83等からなるようにし、任意の植物栽培コンテナ1に前記ユニット材80を選択的に載置できるようにする。好適には、上記植物栽培コンテナ群1aに使用する植物栽培コンテナ1においては、側板3に内向きへこみ部6が形成されているので、前記内向きへこみ部6間及び貯水トレー11上部に空間部が形成され、前記空間部に給水管を敷設する。」
(ル)
「【0066】 さらに、植物栽培コンテナ群1aを貯水槽トレー11上に載置した植物栽培コンテナ1によって形成する場合、例えば貯水トレー11の側壁に鉤型の連係部を形成すると共に、側壁或いは前記連係部に水流用の凹溝を形成し、それぞれの貯水トレー11を前記鉤型の連係部により連結する。この連結された貯水トレー群上に育成材90を充填した植物栽培コンテナ1を載置し、最後に好みのユニット材80をレイアウトに合わせて載置する。これにより、各貯水トレー11間を前記凹溝を介して水分が流れ、少なくとも一箇所に水分を補給すれば全貯水トレーに行き渡り、且つ長期間水分補給をする必要が無くなる。好適には前記凹溝を給水管に直交する一方向に規制して設け、水流方向を前記一方向に規制するようにすると前記作用はより顕著となる。」

ここにおいて、芝材、植木、花等の植物のユニット材が載置される際には、育成材中から植物に水分が供給されることは自明である。
また、記載(ニ)の【0028】欄に、「まず最初に植物栽培コンテナ1本体内の下方に設けられた育成材充填空間9に、育成材充填空間9の上端であるユニット支持部7の位置まで育成材90を充填し、その後ユニット材80として例えばウッドデッキ等の板材(板状体)81をユニット支持部7上に載置する。」と、記載(ヘ)の【0046】欄に「また、上記植物栽培コンテナ1内の育成材充填空間9に育成材90を充填した後に、ユニット材80として板材81(木材、石材、鉄材、プラスチック材等材質は問わない)或いは図17及び図18に示すような芝生82aを有する芝材82(天然芝、人工芝等問わない)等を上部から載置するだけで、植物栽培コンテナ1が完成するように構成されている。」と、記載(ヘ)の【0047】欄に「また、ユニット材80を交換するだけで、植物栽培コンテナ1を使用して植物の栽培ができ、或いはデザインデッキの載置や交換を容易にすることができる。」と記載され、図30乃至図32において、ユニット材80として板材81、ライト材83を使用する植物栽培コンテナにおいても育成材を充填したものが図示されていることからみて、引用例1に記載のコンテナ群は、芝のような植物のユニット材以外のユニット材が設置されるコンテナにも予め育成材を充填しておくものであることが明らかである。
したがって、各記載及び全図面を総合勘案すると、引用例1には以下の発明(以下「引用例1に記載の発明」という)が記載されている。
「貯水トレー及びこれに載置される植物栽培コンテナを屋上、ベランダ等の上に複数並べて敷設し、各植物栽培コンテナに育成材を充填し、所定の植物栽培コンテナの育成材上に芝材のような植物ユニットを載置し、他の植物栽培コンテナの育成材上に板材のようなユニットを載置する緑化エリアであって、貯水トレーの水分を育成材の毛細管現象を介して吸水した植物で蒸散する緑化エリア。」

引用例2
(ヲ)
「【0014】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。図1、2は本発明を適用した屋上部1を示すもので、両側にバラペット2aを一体に立設した天版コンクリート2の上面には、防水層3および断熱層4を介して押えコンクリート(またはアスファルトコンクリート)5が打設されており、これによって屋上部1に防水性を与えている。また、屋上部1の片隅において、押えコンクリート5には溝5aが切られ、この溝5a内に給水パイプ6が配管されている。 【0015】 押えコンクリート5の上面は、水拡散性のある導水シート7(例えば織布や不織布)によって全面を覆われており、かつこの導水シート7の一端縁は図3に示すように、前記溝5a内に垂下されている。また、導水シート7の上面には図2、3に示すように、揚水性ブロック8が一面に敷詰められている。この揚水性ブロック8は、例えばタイルの粉砕物を焼結すること等により形成されたものであり、その上下面間を貫通する、毛細管現象が生ずるような微細な連続空隙を無数に含んでいる。」
(ワ)
「【0018】 また、日照りなどによって揚水性ブロック8または導水シート7が乾燥してきた場合には、同じくこの乾燥状態の検出により、給水パイプ6に対する水源の弁を開けることにより、水が導水シート7の繊維内に吸収され、揚水性ブロック8を通じて表面に放出し、表面を湿潤状態に保持すると同時に、その蒸発潜熱により屋上部の過度な温度上昇を抑制する。」(カ)
「【0023】 図6は、本発明の第三実施形態を示すものである。本実施形態は、前記第一実施形態における揚水性ブロック8に替えて植物の根張り可能な厚み、硬度に設定された植物用ブロック30を(a)に示すように、導水シート7上に敷詰め、これに適宜間隔で植物31の種子または苗を植設したものであり、経時により植物31は成長し、同図(b)に示すように植物用ブロック30内に根張りすることで、屋上緑化を図るようにしている」(ヨ)
「【0028】 以上の第三、第四実施形態においては、植物31、40の葉から水分が蒸散するので、前記と同様の屋上部の冷却効果を得ると同時に、光合成による空気浄化なども図れるほか、植生による保養効果なども得ることが出来る。
【0029】 さらに、屋上部全体を緑化することなく、第一、第二実施形態の材料と組合わせることにより、屋上部1を緑化空間と遊歩道、広場などの多彩な空間に形成することができることも勿論である。」

(3).対比
引用例1に記載の発明と本願補正発明とを比較検討すると、
引用例1に記載の発明における「貯水トレー」、「植物栽培コンテナ」、 「植物栽培コンテナ」が敷設される屋上あるいはベランダの表面は、それぞれ、本願補正発明の「貯水部」、「コンテナ」、「敷設面」に相当するから、本願補正発明と引用例1に記載の発明とは、
「 貯水部及びこれに載置されるコンテナを敷設面の上に複数並べて敷設し、各コンテナに育成材を充填し、所定のコンテナの育成材に植栽を施した緑化エリアであって、育成材の毛細管現象を介して吸水した植物で蒸散する緑化エリア」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明は、緑化エリアが「植栽が施されていないコンテナの育成材の上には保水石材を設け、貯水部内の水分を、育成材の毛細管現象と保水石材の毛細管現象とで保水石材に導入して、保水石材で蒸散する温度上昇抑制構造」であるのに対して、引用例1に記載の発明は、このような温度上昇抑制構造を有しない点。

(4).判断
[相違点1について]
引用例2を見るように、導水シートによって導水された水が植物によって蒸散されるようにされた植生部と、該導水シートによって導水された水が揚水性ブロックに導入され該揚水性ブロックによって蒸散されるようにされた遊歩道、広場とが組み合わされ、全域から蒸散が行われるようにされた湿潤システムとすることが公知であり、引用例1に記載の発明において、育成材が充填された各コンテナの内、育成材上に板材等のブロックが載置されるコンテナにおいて、当該ブロックを水を蒸散させる保水石材とすることで、結果、育成材の毛細管現象によって貯水部から育成材内に導入されている水分が、保水石材の毛細管現象で保水石材に導入され、保水石材で蒸散されるものとし当該コンテナにおいても植栽部と同様に蒸散が行われ、緑化エリアにおける温度上昇がさらに抑制される構造、即ち相違点1の構成とすることは引用例2に記載の事項から当業者が容易に想到し得ることであり、その作用効果も、引用例1に記載の発明及び引用例2に記載の事項から当業者が予測可能な範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載の発明及び引用例2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5).むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1).本願発明
平成17年5月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明は、平成17年3月31日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「貯水部及びこれに載置されるコンテナを敷設面の上に複数並べて敷設し、各コンテナに育成材を充填し、所定のコンテナの育成材に植栽を施す緑化エリアの温度上昇抑制構造であって、植栽が施されていないコンテナの育成材の上に保水性部材若しくは透水性部材を設け、貯水部内の水分を、育成材の毛細管現象と保水性部材若しくは透水性部材の毛細管現象とで保水性部材若しくは透水性部材に導入して、保水性部材若しくは透水性部材で蒸散すると共に、育成材の毛細管現象を介して吸水した植物で蒸散することを特徴とする温度上昇抑制構造。」(以下、「本願発明」という。)

(2).引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3).対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、植栽が施されていないコンテナの育成材の上に設けられる部材を、「保水性部材若しくは透水性部材」から「保水石材」とする限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1に記載の発明及び引用例2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載の発明及び引用例2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4).むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載の発明及び引用例2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-16 
結審通知日 2007-04-18 
審決日 2007-05-02 
出願番号 特願2002-375918(P2002-375918)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A01G)
P 1 8・ 121- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関根 裕  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 西田 秀彦
峰 祐治
発明の名称 温度上昇抑制構造  
代理人 元井 成幸  
代理人 高橋 隆二  

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