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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F |
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管理番号 | 1159335 |
審判番号 | 不服2005-12821 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-07-06 |
確定日 | 2007-06-15 |
事件の表示 | 特願2001-97374「エネルギ高効率タイル」拒絶査定不服審判事件〔平成14年9月6日出願公開、特開2002-250109〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成13年2月22日の出願であって、平成17年6月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「太陽方向にほぼ直角となる面を連続して設けた事を特徴とするエネルギ高効率タイル。」 (以下、「本願発明」という。) 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-204741号公報(以下、「引用例」という。)には、次の(イ)ないし(ヨ)の事項が記載されている。 (イ)「表面の化粧面に少なくとも受光面と折り返し面からなる突出部を形成し、さらに受光面には太陽電池を一体に装着したことを特徴とする壁パネル。」(【特許請求の範囲】【請求項1】) (ロ)「【発明の属する技術分野】本発明は、建築物、構築物に利用される乾式の壁パネルに太陽電池を一体に組み込んだパネルに関するものであり、さらに、詳しくは受光効率と発電効率を向上できる壁パネルに関するものである。」(段落【0001】) (ハ)「【従来の技術】従来、壁パネルに太陽電池を一体に装着した例としては、・・・単に垂直なパネルの化粧面にそのまま、太陽電池ユニットを装着したものであった。」(段落【0002】) (ニ)「【発明が解決しようとする課題】・・・従来の壁パネルでは、太陽電池が垂直に設置されているものであり、受光効率や発電効率に劣るものであった。」(段落【0003】) (ホ)「【課題を解決するための手段】本発明は、・・・表面の化粧面に少なくとも太陽に面する受光面と、その折り返し面からなる突出部を形成し、さらに傾斜させた受光面に太陽電池を一体に装着した壁パネルとすることで、受光効率や発電効率を向上させることのできる壁パネルを提案するものである。」(段落【0004】) (ヘ)「・・・壁パネルAは面材Bを様々加工、成形して、・・・受光面3には太陽電池5を一体に装着した長尺品、もしくは定尺品からなるものである。・・・」(段落【0006】) (ト)「面材Bは金属板、例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)、(勿論、これらを各種色調に塗装したカラー板を含む)の一種や、プラスチック薄板、FRP、塩化ビニル、ポリカーボネイト等の合成樹脂板、各種無機質板、セラミック板等からなるものである。」(段落【0007】) (チ)「・・・受光面3は太陽と向き合う面で、・・・太陽電池5を一体に装着し、効率よく採光、発電するための突出傾斜部分でもある。」(段落【0008】) (リ)「また、受光面3の突出角度としては、・・・水平面から任意の角度θで傾斜させたものである。好ましい角度θの値としては、壁パネルAが用いられる地域の緯度により異なるが、例えば東京都を例にとれば、年間を通じて効率よく採光、発電できる角度はθ=32.7度、冬期の効率を考えるとθ=57度程度が好ましい。」(段落【0009】) (ヌ)「この場合、図6に示すように、下段の壁パネルAの雄型連結部6を釘等の固定具αで壁下地βに固定し、上段の壁パネルAの雌型連結部7を落とし込んで連結し、壁面を形成するものである。さらに、この際は突出部2により、壁下地βと面材Bとの間に空隙γが形成されるので、この部分を通気させることにより太陽電池5を冷却し、発電効率をさらに高めることができるものである。」(段落【0019】) (ル)「・・・図9、図10は突出部2を複数形成した壁パネルAの例を示すものである。」(段落【0021】) (ヲ)「図11は面材Bの裏面に裏打材Cを一体に積層した壁パネルAの例を示すものである。すなわち、裏打材Cは各種合成樹脂発泡体(ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリアフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム等)や無機系ボード(石膏ボード、珪酸カルシウム板、水酸化アルミニウム板等)からなるものであり、面材Bとは裏打材Cの自己接着性を利用して、もしくは別途接着剤(図示せず)等を介して一体に成形するものである。」(段落【0022】) (ワ)「図16(a)、(b)は、面材Bを中空押出形状のセラミック板、無機質板とした例である。図17(a)、(b)は面材Bを窯業系サイディング等の無機質板とした壁パネルAの例を示すものである。」(段落【0026】) (カ)「【発明の効果】・・・本発明に係る壁パネルによれば、表面の化粧面に少なくとも太陽に面する受光面と、その折り返し面からなる突出部を形成し、さらに傾斜させた受光面に太陽電池を一体に装着した壁パネルとすることで、受光効率や発電効率を向上させることのできる壁パネルとなる。等の特徴、効果がある。」(段落【0030】) (ヨ)図9(a)(b)、10(a)(b)、16(b)には、「太陽と向き合う受光面3と折り返し面4からなる突出部2を複数形成した壁パネル」が図示されている。 これらの記載から、引用例には、「太陽と向き合う受光面3と折り返し面4からなり、受光面3には太陽電池5を一体に装着し、効率よく採光、発電するための突出傾斜部分でもある突出部2を複数形成した長尺品、もしくは定尺品の壁パネルA」という発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (3)対比 そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「(突出傾斜部分でもある突出部2を)複数形成した」、「受光面3には太陽電池5を一体に装着し、効率よく採光、発電するための」は、本願発明の「連続して設けた」、「エネルギ高効率」に相当する。 また、効率よく採光するためには、太陽方向に面をほぼ直角に向けることは、技術常識といえるから、引用発明の「太陽と向き合う受光面3」と、本願発明の「太陽方向にほぼ直角となる面」とは、同じことを意味しているものであり、引用発明の「タイル」と、本願発明の「長尺品、もしくは定尺品の壁パネル」とは、ともに「外装材」である点で共通する。 よって両者は、 「太陽方向にほぼ直角となる面を連続して設けたエネルギ高効率外装材」である点で一致し、以下の点で相違している。 〈相違点〉 外装材が、本願発明では、タイルであるのに対して、引用発明では、長尺品、もしくは定尺品の壁パネルである点。 (4)判断 〈相違点について〉 本願発明のタイルに関しては、発明の詳細な説明において「本タイルは関東ロームを蒸したり焼いたりして成形したり、微粒子シリカを成形したりしてつくる。・・・本発明タイルは上記のほか種々の応用があるが、これらもすべて本発明に含まれる。本明細書でタイルと表現したがセラミック以外の他の材料を使用しても本発明に含まれる。」(段落【0010】)と記載されている。他方、引用発明に関する上記2.(ト)(ル)(ヲ)には、壁パネルとして、それぞれ「各種無機質板、セラミック板等」、「無機系ボード(石膏ボード、珪酸カルシウム板、水酸化アルミニウム板等)」「中空押出形状のセラミック板、無機質板、・・・窯業系サイディング等の無機質板」などが例示されている。 これからすると、引用発明の壁パネルも、本願の発明の詳細な説明に記載されたものと同様の材料が使われている。 ところで、引用発明の壁パネルは「長尺品、もしくは定尺品」であって、これを複数枚用いて壁面を形成するものであり、そして、タイルを複数枚用いて壁面を形成することは普通に行われていることであるから、引用発明の壁パネルに代えて、本願発明のタイルを採用することは、当業者ならば容易になし得ることである。 また、本願発明が奏する作用効果は、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 よって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-03-30 |
結審通知日 | 2007-04-10 |
審決日 | 2007-04-24 |
出願番号 | 特願2001-97374(P2001-97374) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E04F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中田 誠 |
特許庁審判長 |
伊波 猛 |
特許庁審判官 |
西田 秀彦 小山 清二 |
発明の名称 | エネルギ高効率タイル |