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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1159645
審判番号 不服2006-2031  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-06 
確定日 2007-06-19 
事件の表示 特願2002-373114号「分岐を有する血管内移植片を展開する装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年8月5日出願公開、特開2003-220081号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,1992年(平成4年)4月13日(パリ条約による優先権主張1991年4月11日,米国)を国際出願日とする出願である特願平4-119621号の一部を平成14年12月24日に新たな特許出願としたものであって,平成17年11月1日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成18年2月6日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成17年9月7日受付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであると認める。
「第1移植片部品と、拡張性バネ取付手段とを有し、該拡張性バネ取付手段は、前記第1移植片部品が血管内に移植された後、前記第1移植片部品と結合可能である、ことを特徴とする血管内組立移植片。」

3.引用例及びその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第89/08433号パンフレット(以下,「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。
ア.1ページ3-6行
「This invention relates ・・・(中略)・・・vessel or artery.(本発明は,医療用人工器官,特に,血管や動脈のような体腔の内部に載置するための移植人工器官に関するものである。)」(括弧内は当審による訳。以下同じ。)
イ.8ページ4-24行
「As shown in FIG. 2, ・・・(中略)・・・the graft12 is placed.(第2図に図示されたように,2つのステイプルあるいは「固定リング」16及び17が,実質的に円筒形状をした移植片12の周縁部に取り付けられている。
ステイプル16及び17は初期直径からより小さな第2直径へと折り畳み可能である。ステイプルの初期直径は,一般的に,移植片12の直径6と同じ大きさであり,ステイプル16及び17を備えた移植片12が据え付けられる体腔の直径と同じかあるいはそれよりも少し大きくなっている。第2直径はカプセル18の内径と同じかあるいはそれよりも少し小さくなっている。また,ステイプル16及び17は,一般的に,人体の使用に適した金属あるいは生体適合性プラスティックでできている。現時点ではステンレス・スチール・ワイヤー材料が,その優れたバネ特性のために好ましい。第2図で最も良く図示されているように,ステイプル16及び17は,移植片12の内部に位置づけられ,そこに刺し込まれるようにしてもよい。ステイプル16及び17は,移植片12を,それが据え付けられる体腔に内表面に対して,外向きに進めるような大きさとなっている。)」
ウ.8ページ25行-9ページ2行
「In one embodiment,・・・(中略)・・・ within the capsule 18.(1つの実施例において,近位端ステイプル16(第3図)は複数のV字形支持部材60を備えている。V字形支持部材60はそれぞれ2つの「自由端」あるいは脚,例えば60A,60B,60C及び60D,で構成される頂点62を備えている。ある1つの自由端61Aは,隣接点63で,もう1つのV字形支持部材60の自由端61Bと隣接し接続されている。少なくとも3つの複数のV字形支持部材60は相互に接続され,図示されたように,長手方向軸67の周囲に円周状に配置される。第3図のステイプルは,弾性変形可能な材料,あるいは,バネ材料を用いることで,カプセル18内に納めるべくステイプル直径を徐々に縮小できるよう,そのV角度をより小さくするために圧縮可能であることがわかる。)」
エ.16ページ11行-17ページ6行
「As the proximal staple ・・・(中略)・・・sebsequent angiogram.(近位端ステイプル16がカプセル18の開口19の中から押し出されると,壁食い込み部材70を体腔90壁に接触させるため,当該近位端ステイプル16はバネで開き拡張する。近位端ステイプル16がカプセル18から完全に取り出された後,壁食い込み部材70は壁に初めて接触し,膨脹膜30が近位端ステイプル16と移植片12の周辺に移動される。その後,当該膨脹膜(いわゆるバルーン)30が膨脹手段36の使用により膨脹させられ(第7図参照),近位端ステイプル16と移植片12がその場所にしっかりと据え付けられるよう,壁食い込み部材70を体腔90の壁表面の中に進ませる。
その後,カプセル18は下流側にさらに移動され,移植片12の遠位部15を当該カプセル18から解放するとともに,遠位端ステイプル17と壁食い込み部材72を体腔の内側表面にさらす。バルーン30は収縮され,ステイプル16に位置を合わせるため移動され,移植片12がしっかりと位置づけられることが確保されるよう膨脹されるものであって差し支えない。遠位部15が解放された後,バルーン30は収縮され,遠位端ステイプル17に位置を合わせるため移動される。その後,バルーン30は再膨脹し,遠位端ステイプル17の壁食い込み部材72を壁に進ませ,遠位端ステイプル17と移植片の遠位端15を体腔90にしっかりと固定する。)」
上記記載事項ア.ないしエ.を総合すると,引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「移植片12と,バネで開き拡張するステイプルとを有し,該ステイプルは,前記移植片12に取り付けられている血管内移植人工器官。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第4872874号明細書(以下,「引用例2」という。)には,以下の事項が記載されている。
オ.9欄28-55行
「For purposes of attaching ・・・(中略)・・・to the graft 14.(移植片14のそれぞれの端部を血管内に取り付ける目的のため,クリップ56の第1の配列が,第15図に図示されるように移植片の端部12に隣接して配置された膨脹体114によって移植片14の一方の端部22に固定される。そして,クリップ56の第2の配列が,第16図に図示されるように移植片の端部20に隣接して配置された膨脹体114によって移植片14のもう一方の端部20に固定される。長尺状手段122が中空コア116及び通路130に摺動可能に取り付けられているので,膨脹性バルブ体134が膨脹して移植片の開口部26に固定された状態に維持されている間に,膨脹体114は,膨脹体114の再位置調整するできるよう,長尺状手段122の長さ方向に沿って位置を変更することができる。
さらに,細長状手段102と長尺状手段122との間のスライド関係は,保持手段110へクリップを再装填するため,移植片14が長尺状手段122やスタイレット98によって静止状態に保持されている間に,保持手段110を血管120の開口部から引き抜いたり血管内に再挿入することを許容する。前述のとおり,細長状手段102の側面に開けられた開口120から引き出されている,長尺状手段122のチューブ123の一部は,長尺状体122のバルブ体134が移植片14に固定されたままで,保持手段110の血管からの引き出しを調整するのに十分な長さを有している。)」
カ.10欄30-52行
「The method of attaching ・・・(中略)・・・by said clips.(次の手順からなる,移植可能なチューブ状の移植片を血管壁に取り付ける方法。
血管に切り込みを入れ,
前記切り込みから血管内にチューブ状の移植片を挿入し,
前記移植片を前記血管に沿って,前記血管に対し所望の位置に移動し,
膨脹可能なバルブを,前記移植片及び血管に関して所望の位置となるように,収縮状態で移植片内に移動し,前記バルブは複数のクリップを外側に端部が向いた状態で解放可能に保持しており,
前記クリップを,前記移植片と血管を突き刺すよう,外側に向けて移動させるため,すばやく前記バルブを膨脹させ,
前記クリップが前記移植片と血管に突き刺さった後,前記クリップを解放し,
前記バルブを収縮させ,
前記血管からこの収縮したバルブを引き抜き,
前記切り込みを閉じ,
以上の手順によって,前記クリップによって前記血管に前記移植片を取り付ける。)」
キ.第10-12図
第10-12図には,クリップ56と移植片14とが別体となっており(第10図),バルブ74の膨脹でクリップ56を移植片14と血管12に突き刺して結合(第11図)することにより,クリップ56で移植片14を血管12内に取り付ける(第12図)点が記載されている。

上記記載事項オ.及びカ.からみて,引用例2には,以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「移植片とクリップを別体とし,移植片を血管内の所望の位置に移動した後,前記クリップを移植片及び血管に突き刺して結合することにより,前記クリップで移植片を血管内に取り付ける手段。」

3.対比
本願発明と引用発明1とを対比すると,その機能・作用からみて,後者の「移植片12」は前者の「第1移植片部品」に,後者の「バネで開き拡張するステイプル」は前者の「拡張性バネ取付手段」に,それぞれ相当する。
また,後者の「血管内移植人工器官」と前者の「血管内組立移植片」とは,血管内移植片である点で共通する。

してみれば,本願発明と引用発明1とは,本願発明の文言で表すと,「第1移植片部品と,拡張性バネ取付手段とを有する血管内移植片」である点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点)本願発明においては,「拡張性バネ取付手段は,前記第1移植片部品が血管内に移植された後、前記第1移植片部品と結合可能であ」り,血管内移植片について「血管内組立」であるのに対し,引用発明1においては,そのような構成でない点。

4.判断
相違点について検討する。
本願発明の「拡張性バネ取付手段は,前記第1移植片部品が血管内に移植された後、前記第1移植片部品と結合可能である」とは,第1移植片部品と拡張性バネ取付手段とが別体として構成されており,その使用形態として,第1移植片部品が血管内に移植された後,拡張性バネ取付手段と当該第1移植片部品とが血管内において結合されることを意味することは,明細書及び図面(特に,段落【0045】-段落【0050】,【図15】-【図19】参照)の記載を参酌すれば,明らかである。
このことは,「本件発明に係る血管内組立移植片について、段落番号[0045]?[0048]の記載及び図15?図16を参照しつつ、例示として説明する。まず、移植片20を拡張性バネ取付け手段126、127によって血管に固着させて移植し、その後、小展開装置22を血管の中に前進させ、内部に拡張性バネ取付け手段163が収容されているカプセル172を移植片20内に導入し、拡張性バネ取付け手段163をカプセルから引き出す。拡張性バネ取付け手段163がカプセル172から離れるやいなやこの拡張手段が開いて、それが移植片と血管の壁体と結合する。」(平成18年5月8日付けの審判請求書を補正対象とする手続補正書2ページ5ないし11行)という出願人の主張を踏まえても明らかである。
ここで,上記記載事項イ.ないしエ.によれば,引用発明1の移植片12とステイプルは,別の部材ではあることは明らかである。しかし,血管内に挿入する前の時点ではすでに,移植片12にステイプルが刺し込まれており,カプセル18にこれらが一体となって納められていることも明らかである。
ところで,引用発明2は,移植片とクリップを別体とし,その使用形態として,移植片を血管内の所望の位置に移動した後,前記クリップを移植片及び血管に突き刺して結合することにより,前記クリップで移植片を血管内に取り付けるものである。
引用発明1と引用発明2とは血管内に移植片を移植する技術である点で共通することから,引用発明1において,別体である第1移植片部品(移植片12)と拡張性バネ取付手段(バネで開き拡張するステイプル)の使用形態として,引用発明2のように,第1移植片部品(移植片12)を血管内の所望の位置に移動した後,前記拡張性バネ取付手段(バネで開き拡張するステイプル)を第1移植片部品(移植片12)及び血管に突き刺して結合することにより,前記拡張性バネ取付手段(バネで開き拡張するステイプル)で第1移植片部品(移植片12)を血管内に取り付けるようにすることは,当業者が容易になし得ることである。そして,これら第1移植片部品(移植片12)及び拡張性バネ取付手段(バネで開き拡張するステイプル)は,血管内で結合されることから,血管内で組み立てられる血管内組立移植片であるということができる。
よって,引用発明1及び2に基いて,上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。

また,上記相違点によって,本願発明が奏する作用,効果も,引用発明1及び2から予測される範囲のものであって,格別なものとは認められない。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明1及び2に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-17 
結審通知日 2007-01-22 
審決日 2007-02-06 
出願番号 特願2002-373114(P2002-373114)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 弘實 謙二渡辺 仁  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 一色 貞好
芦原 康裕
発明の名称 分岐を有する血管内移植片を展開する装置および方法  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 小川 信夫  
代理人 中村 稔  
代理人 大塚 文昭  

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