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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E05D
管理番号 1159710
審判番号 不服2005-10773  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-09 
確定日 2007-06-21 
事件の表示 平成9年特許願第199303号「引戸のガイド装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年3月10日出願公開、特開平10-68266〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本願は平成7年10月18日に出願した特願平7-294758号の一部を平成9年7月9日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、平成19年3月19日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】引戸が立て付けられる鴨居や枠体の下面に取り付けられるレールと、前記引戸の上面に設けられた長溝に連通し前記レールの平板状のレール板部が嵌合するガイド溝を備えたスライダーとからなる引戸のガイド装置において、
前記スライダーは、調整溝を有するスライダー本体と該スライダー本体内に収納、保持されると共に前記ガイド溝を有するガイド部材との別体に形成され、前記ガイド部材は前記ガイド溝を頂部に有してなり、前記スライダー本体内に前記ガイド部材が引戸の厚み方向に移動可能に組み込まれて構成されるとともに、前記ガイド溝は前記調整溝や前記長溝の溝幅よりも狭小かつ前記レール板部に面接触するガイド溝として形成され、前記ガイド部材が前記スライダー本体に対し溝幅方向に最も移動した調整状態時にも前記ガイド溝が前記調整溝や長溝の溝幅内に位置するように設定され、かつ前記ガイド部材は、該スライダー本体の前壁側から操作されるカムによって該スライダー本体の側壁に嵌挿された支持杆上で摺動可能に設けられることにより溝幅方向に移動することを特徴とする引戸のガイド装置。」(以下、「本願発明」という。)


【2】出願日について
本願は、平成7年10月18日に出願された特願平7-294758号(以下、「原出願」という。)を、平成9年7月9日に分割して、新たな特許出願としたものであるが、
原出願の最初に添付した明細書又は図面(以下、「原明細書等」という。)には、引戸の開閉に当たって接触抵抗が少なくきわめて滑らかな走行を得ること等を目的として、取付片とこの取付片から下方に延びる脚片とで構成したレールにおける上記脚片の構造を、その下端に脚片の幅方向に膨出形成した細長円筒状のガイド部を備えて断面を逆鍵孔状に形成することにより、脚片のガイド部をスライダー或いは嵌挿部材における嵌挿部の両側面或いは両端面に線接触するようにした発明が開示されており、上記脚片(本願発明の「レール板部」に相当する。)の構造を平板状とし、且つ、上記脚片とスライダー或いは嵌挿部材(嵌挿部材が本願発明の「ガイド部材」に相当する。)の嵌挿部(嵌挿部材の嵌挿部が本願発明の「ガイド溝」に相当する。)の両側面或いは両端面とを面接触するようにした発明は開示されていないので、原明細書等には、本願発明における「レールの平板状のレール板部」及び「レール板部に面接触するガイド溝」に相当する事項ついては記載されておらず、且つ、それらの事項が原明細書等の記載から自明なこととも認められないものであり、
また、本願発明における「ガイド部材がスライダー本体に対し溝幅方向に最も移動した調整状態時にもガイド溝が調整溝や長溝の溝幅内に位置するように設定され」との事項は、審査官が平成17年1月5日付け拒絶理由通知書中において原明細書等に記載された事項の範囲内のものではない旨指摘し、請求人も同年3月18日付け意見書においてこれを認めている「ガイド部材がスライダー本体に対し最大に移動した場合でもガイド溝が調整溝や長溝の溝幅内に位置するように設定されている」との事項と実質的に同一内容の事項といえるものであるから、
何れにしても、本願は、原明細書等に記載されていない事項を含む出願ということになり、本願は、原出願からの適法な分割出願とはいえず、現実の出願日である平成9年7月9日に出願されたものとするのが相当である。


【3】刊行物とそれに記載された発明
[1]当審の拒絶理由通知に引用し、本願の現実の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-41784号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「引戸、及び引戸構造」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、間仕切扉、収納扉、家具扉等に用いられる引戸、及び、該引戸を用いた引戸構造に関する。」
(2)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、予め方立や隣接する引戸との間隔を狭くして建て付けていても、後になって引戸に反りが生じた場合、方立や隣接する引戸との接触を回避させる手段を有する引戸、及び、該引戸を用いた引戸構造を提供するものである。さらに、本発明は、がたつかないように建て付けていても、引戸が幅方向に反りを生じた場合にも開け閉めがスムーズに行える引戸、及び、該引戸を用いた引戸構造を提供するものである。」
(3)「【0006】以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の引戸1の一実施例を表す断面図(A)、及び上面から見た平面図(B)である。引戸1には、上端面に一定幅の引戸溝2が設けられている。・・・
【0007】引戸1の上端面に設けられた引戸溝2に埋め込まれるレール支持材3は、合成樹脂や金属、或は、木材等によって作ることができ、また引戸1における支持部4の位置を引戸の厚み方向に変えることができればその形状は特に限定されないが、本発明においては、以下の三種類のレール支持材3を具体的に示す。
【0008】一種類目のレール支持材31としては、・・・図2-(A)及び図2-(B)に示すように、支持部41が、突起部311、及び(もしくは)突起部312によってレールの幅とほぼ等しくなるように形成されていることが、レール支持材31を軽量にでき、また少量の材料から成形することができるので好ましい・・・」
(4)「【0012】三種類目のレール支持材として、レール支持材における支持部の位置が引戸の厚み方向に変わることのできるレール支持材を提供する。さらに、このようなレール支持材として、我々は次の二種類のレール支持材33、及び、34を提供する。」
(5)「【0016】次に、レール支持材34として、外枠341と、該外枠341に取り付けられ、ねじ溝を有するシャフト342と、該シャフト342の周囲を回転して移動する移動調節素子343と、支持部44を形成する凹部を有しており、移動調節素子の動きに連動して動く内枠344からなるレール支持材34を提供する。
【0017】該レール支持材34は、支持部44が動く基本的な機構は前記レール支持材33とほぼ同じであるが、シャフト342の回りを直接支持部44を有する内枠344が回転するのではなく、シャフト342の回りを移動調節素子343が回転しながら移動し、これに連動して内枠344が移動する。よって、内枠344は回転する必要がなく、そのためレールを保持するための凹部と、移動調節素子343と連動するための部分を有していれば、その形は特に限定されない。尚、本明細書においては、図5-(A)に示すように、移動調節素子343の端部を嵌め込むための嵌合穴345を有しており、さらに凹部を有する、断面がコの字状の内枠344を例示する。また、移動調節素子343は、シャフト342の周囲を回転しながら移動することが可能で、しかも内枠344にその動きを伝える手段を有していれば、前記支持材33の内枠333のように、支持部43を有する必要がない。そのため、前記支持材33の内枠333よりもかなり小さくても、十分その機能を発揮することができる。本明細書においては、移動調節素子343として、図5-(B)に示すように、中心にシャフト342と螺合することのできる移動調節素子穴346を有し、さらにその端部を内枠344の嵌合穴345に嵌め込むことのできる、円盤状の成形物を例示する。また、外枠341、及び、シャフト342に関しては、前記レール支持材33の外枠331、及び、シャフト332と同様のものを用いることができる。
【0018】本発明によるレール支持材34は、図5-(C)に示すように、移動調節素子343が螺合されたシャフト342が外枠341に取り付けられ、更に該移動調節素子343が、内枠344と連動している。連動手段は、移動調節素子343の動きを内枠344に、十分に伝えることができれば特に限定しないが、本明細書では、内枠344に設けた嵌合穴345に、移動調節素子343の端部を挿入する方法を例示する。尚、内枠344を嵌合穴345に挿入しただけでは、内枠344が不安定である場合は、該内枠344に二個の穴をあけ、これに補助棒347を通し、更に該補助棒347の両端を外枠341に連結するなどしてもよい(図4-(D))。該レール支持材34は、移動調節素子343を回転させると、これに連動して内枠333が外枠331内を引戸1の厚み方向に移動し、引戸1における支持部43の位置を、引戸1の厚み方向に変えることができる。」
(6)「【0021】尚、これらレール支持材33、及び、34は、引戸1の上端面と、厚み方向に平行な側面からなる角部に取り付け、内枠333、もしくは、移動調節素子343を引戸1の厚み方向に平行な側面から回転させられるようにすると、支持部43、或は、支持部44の位置を変更する際に、引戸1をいちいちレールから取り外さなくてもよい。・・・」
(7)「【0023】又、本発明の引戸1は、レール支持材3を引戸溝2の全域にわたって埋め込んでもよいが、引戸が幅方向に反りを生じた場合に開け閉めが困難になるので、レール支持材3は引戸溝2の両端の二か所にのみ埋め込むことが好ましい。即ち、引戸溝2の全てにレール支持材3が埋め込まれていると、引戸が幅方向に湾曲した場合、レール支持材3の支持部4によって挟まれているレールが、引戸の中央部付近で該支持部4の一方の内側壁面を強く押し付け、しかも、引戸の両端部では該支持部4のもう一方の内側壁面を強く押し付けるようになり、レールと支持部4の内側壁面との滑り性が悪くなり、引戸の開け閉めに支障をきたすようになる。そこで、レール支持材3は、引戸溝2の両端部にのみ埋め込み、引戸の両端部以外ではレールがレール支持材3の支持部4と接触しないようにするのが好ましい。しかも、本発明による引戸1は、図1-(B)からも明らかなように、引戸の上端面に設けられた引戸溝2の幅がレール支持材3の支持部4の幅よりも広くなっている。そのため、引戸1が幅方向に反って湾曲しても、レール支持材3を、引戸溝2の両端部にのみ埋め込んでおくと、レールが、引戸の中央部付近で引戸溝2の内側壁面を強く押し付けるようなこともなく、引戸の開け閉めが容易である。」
(8)「【0025】・・・本発明の引戸構造は、引戸1の上端面に引戸溝2が設けられ、この引戸溝2にレール支持材3が埋め込まれ、該レール支持材3の支持部4が鴨居6に掘られた鴨居溝61内に取り付けられたレ-ル4を嵌め込む構造になっている。そこで、本発明の引戸構造では、鴨居6も、従来から木質板の引戸に用いられていた鴨居6とは異なり、鴨居溝61内にレール5を取り付けることが大きな特徴になっている。・・・そして、該概略L字状のレールは、図8、及び図9に示すように、L字の一辺を鴨居溝61内に取り付け、残る一辺をレール支持材3の支持部4への嵌め込み用とする。」
(9)そして、【図1】,【図5】,【図6】等の記載からみて、引戸1上端面に一定幅で設けた引戸溝2に埋め込んだ状態で取り付けられたレール支持部材34において、外枠341の引戸溝2に連通した溝に対し内枠344が溝幅方向に最も移動した調整状態時にも、外枠341の上記溝や引戸溝2が内枠344に凹部として形成した支持部44に対して溝幅方向に広がりを有していること、上記支持部44が外枠341の上記溝や引戸溝2の溝幅よりも狭小でありかつレール5の嵌め込み用のL字の一辺に面接触するガイド溝として形成されていることは自明である。
上記(1)?(9)の記載等、特に、一実施例を示す【図5】(A)(B)(D)の記載からみて、刊行物1には、
「引戸1が立て付けられる鴨居6の下面に取り付けられるレール5と、前記引戸1の上面に設けられた引戸溝2に連通し前記レール5の嵌め込み用のL字の一辺が嵌合する内枠344に凹部として形成した支持部44を備えたレール支持部材34とからなる引戸構造において、
前記レール支持部材34は、溝を有する外枠341と該外枠341内に収納、保持されると共に前記支持部44を有する内枠344との別体に形成され、前記内枠344は前記支持部44を頂部に有してなり、前記外枠341内に前記内枠344が引戸の厚み方向に移動可能に組み込まれて構成されるとともに、前記支持部44は前記外枠341の溝や前記引戸溝2の溝幅よりも狭小かつ前記嵌め込み用のL字の一辺に面接触するガイド溝として形成され、前記内枠344が前記外枠341に対し溝幅方向に最も移動した調整状態時にも前記支持部44が前記外枠341の溝や引戸溝2の溝幅内に位置するように設定され、かつ前記内枠344は、引戸1の厚み方向に平行な側面から回転させられる移動調節素子343によって該外枠341の側壁に連結された補助棒347上で摺動可能に設けられることにより溝幅方向に移動する引戸構造。」との発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

[2]同じく、特開平9-112119号公報(本願の原出願の公開公報。以下、「刊行物2」という。)には、「引戸のガイド装置」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、引戸を立て付ける鴨居に取り付けられるレールと、引戸の頂面に取り付けられ且つ前記レールと嵌合して引戸の円滑な開閉が行われるように構成したスライダーとの組み合わせからなる引戸の上方部分におけるガイド装置に関するものである。」、
(2)「【0009】図1および図2は本発明の好ましい実施の形態の一つを示すものであり、鴨居1の下端面2に取り付けられるレール3と、引戸6の頂面7に沿って取り付けられるスライダー8とから構成される。
【0010】レール3は鴨居1の幅方向に延びて鴨居1の下端面2に取り付けられる取付片9と、この取付片9の一端から下方に延びる脚片10とによって、端面L字形に構成され、脚片10は下端に脚片10の幅方向に膨出形成された細長円筒状のガイド部11が備えられて断面が逆鍵孔状に形成されている。
【0011】そして、レール3は取付片9を固定ねじ31を用いて鴨居1の下端面2に沿って取り付けられる。」
(3)「【0016】次に、本発明の異なる実施の形態を図3乃至図10に就いて説明する。
【0017】この発明の実施の形態におけるレール23は前記図1および図2に示した実施の形態と同様であり、スライダー28の構成が異なる。即ち、スライダー28は主として頂面40を開口させた函状のスライダー本体32と、スライダー本体32に内装される溝状の嵌挿部25を備えた嵌挿部材33と、カム34と、操作部片35とから構成される。
【0018】そして、スライダー本体32は、二枚の対向する側壁36,36と、これら側壁36,36の両端部を塞ぐ2枚の端壁37,38と、これら側壁36,36、端壁37,38の底面を塞ぐ厚肉の底壁39とによって頂面40を開口した薄型の函状に形成されているもので、内部に中空部41を形成している。また、対向する二つの端壁37,38の上部には中心に沿って前記スライダー本体32が嵌挿可能な幅を有する頂面40と中空部41とに連通している長方形の開口部42,42が形成されているとともに、一方の端壁37の開口部42の下方には、内周面が歯車状を呈する前記操作部片35の嵌挿孔47が形成されている。」
(4)「【0020】そして、嵌装部材33はその頂面24をスライダー本体32の頂面40と同一面となる位置において中空部41に配置されるとともに、スライダー本体32の両側端36,36およびこれに連通して嵌装部材33の支持部43に形成された挿通孔45を貫通する支持杆46により、スライダー本体32に幅方向に移動可能に架設支持されている。
【0021】また、支持杆46はスライダー本体32の一方の側壁36に穿設された挿通孔44に挿入する主管71と、他方の側壁36に側壁36の挿通孔44に挿入される副ねじ72とからなり、主管71の内部に先端から軸線方向へ穿設された雌ね
じ孔71に副ねじ72が螺入して構成される。」
(5)「【0024】また、前記カム34の本体52には本体52と同径または小径で表面にドライバ等の工具を差し込む係止溝56を有する歯車状の係止突起55を呈する操作部片35が固着されており、この操作部片35が前記スライダー本体32の一方の端壁37に形成された嵌挿孔47に嵌挿している。
【0025】更に、前記室51にはカム34がその中心軸線において回転可能に装入されている。このカム34は円形の本体52と、この本体52の中心から偏心して突設された軸53とからなり、この軸53が前記端壁49の係合孔50に遊嵌されている。また、嵌挿部材33の端壁49とカム34の本体52との間にはカム34を操作孔47を形成した端壁37側へ付勢させるばね54が装入され、本体52が端壁37の裏面に圧着している。
【0026】そして、ドライバ等の工具を係止溝56に差し込んで、操作部片35をばね54のばね力に抗して室51の内部に押し込み、左右いずれかの方向へ回すと、カム34が回動して軸53が係合孔50内を移動して嵌挿部材33を幅方向へ摺動させるのである。即ち、ドライバ等の工具を操作部片35を押し込んで回すことにより、カム34の動作によって嵌挿部25をスライダー本体32の幅方向に摺動させて、嵌挿部25の幅方向の調整が行われるのである。」
(6)「【0033】以上のように構成した本実施の形態は、ガイド部31が嵌挿部25の両端面68,68とほぼ線接触することから、引戸26の開閉にあたって、抵抗が少なくきわめて滑らかな走行が得られるという効果があるとともに、殊に、操作部片35を回すことにより、ガイド部31を嵌合させた嵌挿部25を引戸26の厚さ方向へ調整して立て付けることが可能となるものである。」


【4】対比・判断
[1]本願発明と刊行物1記載の発明との対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「引戸1」が本願発明の「引戸」に、以下同様に、「鴨居6」が「鴨居や枠体」に、「レール5」が「レール」に、「(レール5の)嵌め込み用のL字の一辺」が「(レールの)平板状のレール板部」に、「引戸溝2」が「長溝」に、「(内枠344に凹部として形成した)支持部44」が「ガイド溝」に、「引戸構造」が「引戸のガイド装置」に、「レール支持体34」が「スライダー」に、「外枠341」が「スライダー本体」に、「内枠344」が「ガイド部材」に、「外枠341の側壁に連結された補助棒347」が「スライダー本体の側壁に嵌挿された支持杆」に、それぞれ相当し、
また、刊行物1記載の発明の「外枠341」の「溝」は、「外枠341」内に「内枠344」を収納、保持し、「外枠341」に対する「内枠344」の溝幅方向への移動調整を可能にしたものであるから、本願発明の「調整溝」に相当し、
そして、刊行物1記載の発明の「引戸1の厚み方向に平行な側面から回転させられる移動調節素子343」と本願発明の「スライダー本体の前壁側から操作されるカム」とは、ともに、「スライダー本体に対するガイド部材の移動手段」である点で技術的に共通するから、両者は、
「引戸が立て付けられる鴨居や枠体の下面に取り付けられるレールと、前記引戸の上面に設けられた長溝に連通し前記レールの平板状のレール板部が嵌合するガイド溝を備えたスライダーとからなる引戸のガイド装置において、
前記スライダーは、調整溝を有するスライダー本体と該スライダー本体内に収納、保持されると共に前記ガイド溝を有するガイド部材との別体に形成され、前記ガイド部材は前記ガイド溝を頂部に有してなり、前記スライダー本体内に前記ガイド部材が引戸の厚み方向に移動可能に組み込まれて構成されるとともに、前記ガイド溝は前記調整溝や前記長溝の溝幅よりも狭小かつ前記レール板部に面接触するガイド溝として形成され、前記ガイド部材が前記スライダー本体に対し溝幅方向に最も移動した調整状態時にも前記ガイド溝が前記調整溝や長溝の溝幅内に位置するように設定され、かつ前記ガイド部材は、スライダー本体に対するガイド部材の移動手段によって該スライダー本体の側壁に嵌挿された支持杆上で摺動可能に設けられることにより溝幅方向に移動する引戸のガイド装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
スライダー本体に対するガイド部材の移動手段について、本願発明が、「スライダー本体の前壁側から操作されるカム」であるのに対し、刊行物1記載の発明は、「引戸1の厚み方向に平行な側面から回転させられる移動調節素子343」である点。

[2]相違点についての検討
上記相違点について検討するために刊行物2をみると、刊行物2には、「嵌挿部材33」(本願発明のガイド部材に相当する。以下同様。)が、「スライダー本体32」(スライダー本体)の端壁37(前壁)側から操作されるカム34(カム)によって、「スライダー本体32」の側壁36(側壁)に嵌挿された支持杆46(支持杆)上で摺動可能に設けられることにより溝幅方向に移動できるようにした引戸のガイド装置の技術が記載されているから、
刊行物1記載の発明における、スライダー本体に対するガイド部材の移動手段としての「引戸1の厚み方向に平行な側面から回転させられる移動調節素子343」に換えて、刊行物2記載の上記技術を適用して、本願発明の上記相違点に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到できたものと認められる。

[3]作用効果・判断
そして、本願発明によって奏する効果も、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術から普通に予測できる範囲内のものであって、格別なものがあるとは認められないから、本願発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。


【5】むすび
以上のように、本願発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基づき当業者が容易に発明できたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-13 
結審通知日 2007-04-17 
審決日 2007-05-07 
出願番号 特願平9-199303
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長島 和子  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮川 哲伸
西田 秀彦
発明の名称 引戸のガイド装置  
代理人 笹島 富二雄  

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