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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1159751
審判番号 不服2004-18408  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-06 
確定日 2007-06-20 
事件の表示 平成10年特許願第260451号「造影用カテーテル」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月28日出願公開、特開2000- 84087〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年9月14日の出願であって、その請求項1ないし3に係る発明は、平成16年10月6日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認めるところ、請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「生体の冠動脈内に挿入して造影剤を射出するための造影用カテーテルであって、前記カテーテルの先端に設けられた先端孔と、前記カテーテルの先端部側面の、前記先端孔を冠動脈に挿入した状態で当該冠動脈内に位置する場所に設けられた小孔とを有することを特徴とする造影用カテーテル。」

2.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用した、特開平2-102666号公報(以下、「引用例」という。)には、次のa.?d.の事項が、図面とともに記載されている。
a.「本発明は、シースを用いて右上腕動脈より導入される右冠動脈造影用のカテーテルに関する。」(第1ページ右下欄第16行?第18行)
b.「なお、金属メッシュ9を設けない部分の長さは、カテーテル本体2の材質、内、外径(内、中、外層の合計厚)等により適宜決定される。・・・。このようなチューブ本体2のほぼ中心部には、ルーメン10が形成されている。このルーメン10はチューブ本体2の先端へ開放しているとともに、先端部24の任意の位置の外周に形成された側孔4へも連通している。カテーテル1を目的部位へ挿入してゆく際には、このルーメン10内にガイドワイヤが挿通されるものであり、また造影剤の注入時にはこのルーメン10を介してルーメンの先端開口より目的部位へ造影剤を注入する。」(第4ページ左上欄第1行?第17行)
c.「先端部24を右冠動脈の入口付近に挿入留置し、造形剤を噴出する前後において、先端部24が冠動脈に深く入り過ぎず、かつその入口から離脱しない程度の長さとして、好ましくは7?15mm程度とするのがよい。」(第4ページ左下欄第20行?右下欄第4行)
d.「第6図に示すように、カテーテル1の先端が右冠動脈孔付近に達したところで、カテーテル1に回転あるいは前後の進退操作を加え、カテーテル先端を右冠動脈19の入口191に挿入する。このような操作により、カテーテル1の先端が右冠動脈19内に挿入された後は、・・・ルーメン10の基端にコネクタを接続して造影剤を注入する。注入された造影剤はルーメン10内を通りその先端開口から目的部位である右冠動脈19内に噴出される。これにより右冠動脈19の造影が可能になる。・・・造影剤噴出の前後において、カテーテル本体2の先端部24が右冠動脈19の入口191から外れて離脱することはない。」(第5ページ左上欄第10行?右上欄第8行)
そして、第2図には、カテーテル本体2の断面中央部にルーメン10が形成された状態が図示されている。

上記記載a.?d.および図示内容から、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「右冠動脈に挿入して造影剤を噴出する右冠動脈造影用のカテーテルであって、カテーテル本体の中心部に該カテーテル本体の先端へ開放するように形成されたルーメンの先端開口と、前記カテーテル本体の先端部の外周に形成された側孔とを有する右冠動脈造影用のカテーテル。」

3.対比
本願発明と引用例に記載された発明とを対比する。
引用例に記載された発明の「右冠動脈に挿入して造影剤を噴出する右冠動脈造影用のカテーテル」は、その機能からみて、生体の冠動脈に適用するものであることは明らかであるから、本願発明の「生体の冠動脈内に挿入して造影剤を射出するための造影用カテーテル」に相当し、また、前者の「ルーメンの先端開口」は、該ルーメンが、カテーテル本体の中心部に位置して該カテーテル本体の先端へ開放するように形成されるものであることから、後者の「カテーテルの先端に設けられた先端孔」に相当する。さらに、前者の「側孔」は、カテーテル本体の先端部の外周に形成されるものであるから、後者における「カテーテルの先端部側面」の「小孔」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
「生体の冠動脈内に挿入して造影剤を射出するための造影用カテーテルであって、前記カテーテルの先端に設けられた先端孔と、前記カテーテルの先端部側面に設けられた小孔とを有する造影用カテーテル。」
そして、両者は次の点で相違する。
本願発明においては、カテーテルの先端部側面に設けられた小孔が、カテーテルの先端孔を冠動脈に挿入した状態で当該冠動脈内に位置する場所に設けられているのに対し、引用例に記載された発明では、小孔がそのような場所に設けられているか否か不明である点。

4.判断
上記相違点について検討する。
カテーテルを用いた造影剤の供給に際して、造影剤を造影対象物の隅々にまで確実に供給すべきことは、造影用カテーテルの分野における本願出願前の周知の技術課題にすぎないから(例えば、米国特許第5480392号明細書を参照)、引用例に記載された発明においても、該技術課題を考慮し、冠動脈内に造影剤を供給するにあたり、小孔の形成箇所を、カテーテルの先端孔を冠動脈に挿入した状態で当該冠動脈内に位置する場所に定め、冠動脈内への造影剤供給の確実性を高めようとすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

また、小孔を形成することは、結果として、冠動脈内でのカテーテル先端孔からの造影剤の噴射圧を弱めて該噴射圧による血管内膜の損傷防止効果をも必然的に生じさせるものであるから、かかる作用効果も当業者が予測し得る範囲のものである。

5.むすび
したがって、本願発明すなわち請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知の技術課題に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

以上のとおりであるから、本願出願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-18 
結審通知日 2007-04-23 
審決日 2007-05-08 
出願番号 特願平10-260451
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 謙一  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 一色 貞好
鏡 宣宏
発明の名称 造影用カテーテル  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 木村 秀二  
代理人 木村 秀二  

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