• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680060 審決 特許
無効200680029 審決 特許
無効200680197 審決 特許
無効200680012 審決 特許
無効200680050 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A23K
管理番号 1159941
審判番号 無効2006-80134  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-07-28 
確定日 2007-06-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3143403号発明「ペット用ガム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3143403号の請求項1?6に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3143403号の請求項1?6に係る発明は、平成8年11月19日に出願され、平成12年12月22日にその発明について特許の設定登録がされたものであり、その後の平成18年7月28日に株式会社スリーアローズより無効審判の請求がなされたが、これに対して被請求人からは答弁がなかったものである。

2.本件発明
本件特許の請求項1?6に係る発明(以下順に、「本件発明1」等という。)は、本件特許の願書に添付された明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

(本件発明1)
「ペットが喰いつくガム本体を、果肉内に強靱な繊維組織が編目状となっているウリ科のつる性植物の果実を乾燥させた天然繊維により構成したことを特徴とするペット用ガム。」
(本件発明2)
「前記ウリ科のつる性植物はヘチマであることを特徴とする請求項1に記載のペット用ガム。」
(本件発明3)
「ガム本体内部にペットの好む油性香料を注入したことを特徴とする請求項1又は2に記載のペット用ガム。」
(本件発明4)
「ガム本体の両端部を糸又はひもで縛ってボーン型としたことを特徴とする請求項1,2又は3に記載のペット用ガム。」
(本件発明5)
「前記ガム本体が備える孔にロープを挿通したことを特徴とする請求項1,2又は3に記載のペット用ガム。」
(本件発明6)
「ガム本体に挿通した前記ロープを輪状としたことを特徴とする請求項5に記載のペット用ガム。」

3.当事者の主張
(3-1)請求人の主張
審判請求人は、次の証拠を提出するとともに、本件発明1?6は、本件の出願前に頒布された甲第1号証?甲第8号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1?6に係る特許は、特許法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきである旨を主張する。

(証拠)
甲第1号証:実願平1-29613号(実開平2-120155号)のマイクロフィルム
甲第2号証:登録実用新案第3003516号公報
甲第3号証:特開平7-148184号公報
甲第4号証:実願平3-12633号(実開平5-1396号)のCD-ROM
甲第5号証:特開平5-103559号公報
甲第6号証:「6376の化学商品」化学工業日報社、昭和51年1月25日発行、707?708頁
甲第7号証:「広辞苑第四版」、新村出 編者、株式会社 岩波書店、1991年11月15日発行、2308頁
甲第8号証:「大辞林」,松村明 編者、株式会社三省堂発行、1988年11月3日発行、2179頁

(3-2)被請求人の主張
被請求人は、答弁指令に対して、指定した期間内に何らの答弁もしなかった。

4.各甲号証の記載内容
(4-1)甲第1号証(実願平1-29613号(実開平2-120155号)のマイクロフィルム)
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、図面とともに次のことが記載されている(注;下線は当審が付記した)。
(ア)「[産業上の利用分野]
この考案は口に銜える骨幹部と拳状の骨端部からなる犬猫等のペット用玩具に関する。」(明細書1頁16?18行)
(イ)「[課題を解決するための手段]
この考案は口に銜える骨幹部と拳状の骨端部を繊維策ないしブレードで構成し、拳状の骨端部を繊維策またはブレードの結び目で形成したことを特徴とするペット用玩具である。すなわち…繊維策ないしブレードの撚り、編み、結束等の策ないし紐の特有の構造を利用した玩具を採用したものである。
特にスリーブ状のブレードは、組構造であるため構造的に解け難く補強効果を伴うが、さらに内部に補強繊維等の芯体を挿入できる点で好ましい。またスリーブ構造なのでペットが好む嗜好性の着臭物や、消臭物等の各種の芯体を挿入することもできる。
また繊維材で構成するので全体形状を補強する見地から結び目を縫製することが望ましい。」(同書2頁11行?3頁7行)
(ウ)「[作用]
この考案の玩具は口に街える骨幹部と拳状の骨端部が繊維策ないしブレードで構成されるので、撚り、編み、結束等の繊維材特有の構造により従来のプラスチック製玩具とは一種異なり、噛み易く、また噛んでいると歯が骨幹部に食込むため歯の汚れを取るほか歯茎に対しマーサージ作用もある等歯磨効果を奏し、さらには綿等の天然繊維を用いればたとえ飲込んでも安全である特有の作用効果を奏する。しかも…着臭可能であるためペットが好む様な…着臭された玩具とすることができ、さらには臭いがなくなれば臭いをしみ込ますことで再利用できる利点がある。また汚れても洗濯でき衛生的、経済的であり、家の中でも遊べる。また堅くないので安全でいろいろな形で遊べ、軽く嵩張らないので投げて遊んだり、持ち運びにも便利である。また拳状の骨端部も単に繊維策ないしブレードの結び目として形成できるので簡単に大量製造できる。」(同書3頁8行?4頁7行)
(エ)「[実施例]
第1図は、この考案の一実施例に係る玩具を示す斜視図で、1は犬猫等が口に銜える骨幹部、2は当該骨幹部1の両端部に形成された拳状の骨端部である。全体がスリーブ状のブレードで構成されており、拳状の骨端部2はブレードの結び目で形成してある。なお拳状の骨端部2には解けることを防止するため糸で縫製している。
一方3は第2図に示す如く骨幹部1及び骨端部2の内部に挿入された芯体であり、この実施例では犬猫等のペットが好むチョコレート、ビスケット等の菓子類等の臭いが着臭された繊維が挿入されている。…」(同書5頁3?15行)

上記の記載事項及び図面の記載内容を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「ペットが銜える骨幹部1を、綿等の天然繊維を用いた繊維策ないしブレードにより構成し、骨幹部1の内部に、ペットが好むチョコレート、ビスケット等の臭いが着臭された繊維からなる芯体3を挿入し、骨幹部1の両端部に形成された拳状の骨端部2は繊維策ないしブレードの結び目で形成し、骨端部2を解けることを防止するため糸で縫製したペット用玩具。」

(4-2)甲第2号証(登録実用新案第3003516号公報)
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、図面とともに次のことが記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、犬のストレス解消や歯茎を丈夫にするのに役立つ犬のおもちゃに関するものである。」
(イ)「【0004】
…この考案の目的とするところは、歯茎を丈夫にしストレス解消に役立ち、かつ様々な使い方が可能な犬に優しいおもちゃを提供するところにある。」
(ウ)「【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的達成のため、本願考案者は、ロープとボールを組み合わせ、あるいはロープと他のものとの組み合わせについて検討した。ロープとボールの組み合わせには、棒状のロープの先端あるいは中央にボールを取り付ける構成も考えられるが、持ち運びやドアのノブ等に引っ掛けて整理収納する時等に不便であり、ロープをループ状にして持ち運び等に便利にすることが望まれる。この際、ループ状のロープの一部にボールを取り付ける構成も考えられるが…」
(エ)「【0017】
図1のごとく、犬のおもちゃ1は、エンドレス状態としたロープ2と、このロープ2の両端ループ部3のみを露出するようにロープ中間部に取り付けた繊維製素材の本体4とを備えている。
【0018】
ロープ2は、綿、麻等の天然繊維を素材とするもの、あるいはアクリル繊維等の合成繊維を素材とするものなど種々考えられるが、犬が最も好む綿糸を素材として使用し、適当なよりをかけたストランドを何本かより合わせて製作される。ロープ端部5は互いに接着剤で接合されており、…
【0019】
本体4は、アクリル系繊維等の合成繊維製素材の中に発泡プラスチック製詰め物が施されて、ボール状に形成されたものであり、…
【0020】
上記の犬のおもちゃ1は、以下のようにして製作される。まず、適当な長さに切断したロープ2の両端部を突き合わせて、その突き合わせ端部5を接着剤で接合してエンドレス状態とする。その後、このロープ2を中央位置で交差させた状態で、袋状に形成した本体4の開口部6からロープ2を通し、さらにその開口部6から発泡プラスチック製の詰め物7をした後、その開口部6をロープ2とともに縫製8して、詰め物7が飛び出さないように閉じる。
【0021】
使用時においては、エンドレス状態としたロープ2のループ部3の一端を飼い主が持ちながら、犬が他方のループ部3あるいは本体4を噛みあるいは銜えることができ、…」

(4-3)甲第3号証(特開平7-148184号公報)
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、図面とともに次のことが記載されている(注;下線は当審が付記した)。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この考案は果肉部を取り除き乾燥圧縮した繊維状ヘチマを利用した歯磨方法に関するものである。」
(イ)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】…本考案は取手付き歯ブラシ状の物を用いず、乾燥ヘチマを任意の大きさに細片となし、口腔内に投入し、そしゃく筋や舌の働き等に依って歯牙に付着した歯垢や食べかすを、擦り除去する様考案したものである。」
(ウ)「【0004】
【課題を解決するための手段】…図1、に於いて…1、は本考案のカム歯ブラシである。…図2、に於いて、1、は本考案の噛む歯ブラシの説明図である。従来ヘチマは昔より風呂等で体の洗浄や、女性の化粧品用に用いられている。特に最近は、ヘチマの果肉部を取り除いた後、圧縮乾燥されたヘチマ繊維質のみを包装し、女性の化粧時の用具として販売されている。乾燥圧縮状態に加工したヘチマは薄い板状に加工する事が出来、口腔内の唾液を含むと、乾燥時の数倍に膨潤するものであり、舌の動作を付加すれば、歯牙の全体部を移動させながら転がす様に磨くことが出来、手の運動を必要としない考案である。又ヘチマの乾燥圧縮工程に有毒物を用いなければ天然の植物繊維のみの細片で作られるので、舌下腺、顎下腺、耳下腺、等から湧き出る唾液を飲み込んでも、害を及ぼす事は無い。…飛行機の搭乗時等の食後又旅行時の食後等水や茶湯等は有るが流し場等の無い場合は本考案の噛む歯磨きを使用すれば、簡単に歯の清掃が出来る、更に唾液に含まれれているプチアリン、パロチン等の消化酵素を多量に摂取できる。又歯牙に付着するヌメリも除去する事が出来、ヌメリに起因する口臭も防止出来る。食後3分後に使用する事は食片残りの炭水化物や糖分澱粉の虫歯形成作用の細菌等の発育防止に有効である。乾燥圧縮ヘチマ繊維の有する繊維は成人が5分間噛み続けても裁断されない特徴を併せ有している考案である。又このカム歯磨き材に、ハッカ、ハーブ、馬油、フィトンチット、キチン、キトサン成分等を含ませれば、口腔内に清涼感や清潔感更に歯槽膿漏症の予防をもたらす事が出来る。更にグルテンやコンニャクやそうめんカボチャ等と合体させれば、磨く機能と歯垢の除去機能をも併せ持つことが出来るヘチマを利用した歯磨き方法である。」
(エ)「【0006】
…(中略)…又小児に於いても安全且健康的で只噛むだけ、という便利さが好評であった。更に使用後はテッシュ紙等に包み、燃えるゴミとして投棄する事が可能であった。特別に歯ブラシや、歯磨粉等の化粧用セットも必要とせず、手軽で便利な小物としてポッケト等に入れておける事も好評であった。」

(4-4)甲第4号証(実願平3-12633号(実開平5-1396号)のCD-ROM)
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、図面とともに次のことが記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、入浴時に垢とりに用いる、ヘチマを利用した洗い具に関する。」
(イ)「【0005】
【実施例】
図1において、1が一本のヘチマの乾燥果実(以下「ヘチマ」と略称する)を三等分の長さに裁断した分断ヘチマで、その断面方向に有する四つの種孔2を利用して耐水性の連結紐3を挿通する。そしてその際、相互のヘチマ1間に結び目3aを形成して、これを節に相互に屈曲自在となるように一連に連結する。そしてさらに、前記連結紐3の両外端には自在継手4を介して所定長さを有する耐水性の把手紐5を繋いで、本考案のヘチマ洗い具が構成される。」

(4-5)甲第5号証(特開平5-103559号公報)
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、図面とともに次のことが記載されている(注;下線は当審が付記した)。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、動物や幼児の歯を歯周病から守るため簡単に誰にでも磨けるように考案した装置である。」
(イ)「【0002】
【従来の技術】従来は、線状のブラシ、ゴムマリにブラシを付けたものやペーパーブラシその他色々のものがあるが、いずれも動物が自主的に噛んでブラッシングしても全体を磨くことは出来なかった。又、ペーパーブラシや歯ブラシで飼い主が磨こうとしても動物が嫌がっているとなかなか磨くことが難しかった。そのため、ペットの歯周病が多かった。」
(ウ)「【0004】
【課題を解決するための手段】いま、その構成を説明すると、
(イ)指袋1に弾性のリング2を設ける。
(ロ)指袋1の先端にブラシ3を設ける。
(ハ)ブラシ3の中央付近に給水穴4を設ける。
(ニ)給水穴4と連結したゴム管5を設ける。
(ホ)2本のゴム管5を一本の管にするY型継手6を設ける。
(ヘ)ネジ蓋7とゴム容器8を設けてゴム管に連結する。
(ト)ゴム容器には水又は洗浄液を入れる。
以上のように装置する。」
(エ)「【0007】
【発明の効果】したがって、本装置で動物や幼児の歯を味がいていれば、歯周病を予防することが出来るばかりでなく、口臭も少なくなるので家で飼っているペットには極めて良好な効果が得られる。」

(4-6)甲第6号証(「6376の化学商品」化学工業日報社)
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、次のことが記載されている。
「食品香料の種類
(1)エッセンス=天然香料、合成香料を数種から数十種類調合したもの(オイルベース)を希釈アルコール(通常40から60%)に溶かしたものである。通常飲食品に対する使用量は0.1?0.2%である。水に透明に溶解またはよく分散し、上立ちの良いのが特徴であるが、反面耐熱性に乏しいので主として清涼飲料、冷菓用として用いられる。
アルコールを用いずプロピレングリコールのような水溶性の溶剤にオイルベースを溶かしたものもある。これらは通常フレーバーと呼称されている。
(2)オイル=植物油脂など油溶性の溶剤でオイルベースを希釈したものである。耐熱、保留性の点ですぐれているので、キャンデー、ビスケットなど製造時に熱のかかるものに用いられる。」(708頁左欄7?21行)

(4-7)甲第7号証(「広辞苑第四版」)
甲第7号証には、次のことが記載されている(注;「(マル)」表記部分は、丸で囲んだ数字)。
「へちま【糸瓜・天糸瓜】(マル1)ウリ科の蔓性一年草。…果実は円柱状で…完熟すると果肉内に強靭な繊維組織が網目状に生じ、これをさらして汗除け・垢すりなどに用い、…」(2308頁)

(4-8)甲第8号証(「大辞林」)
甲第8号証には、次のことが記載されている(注;「(マル)」表記部分は、丸で囲んだ数字)。
「へちま(四角0)【(糸瓜)・(天糸瓜)】(マル1)ウリ科のつる性一年草。…果実は細長い円柱形で…熟した果実の網目状の繊維をたわしや草履に利用。…」(2179頁)

5.対比・判断
(4-1)本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「ペットが銜える 」が本件発明1の「ペットが喰いつく」に相当するといえるから、以下同様に、甲1発明の「骨幹部1」が本件発明1「ガム本体」に、甲1発明の「ペット用玩具」が本件発明1「ペット用ガム」に、それぞれ相当するといえる。
また、甲1発明の「綿等の天然繊維を用いた繊維策ないしブレード」の点と本件発明1の「果肉内に強靱な繊維組織が編目状となっているウリ科のつる性植物の果実を乾燥させた天然繊維」の点とは、共に「天然繊維」である点で共通するといえる。

そうすると、両者は、
「ペットが喰いつくガム本体を、天然繊維により構成したペット用ガム。」である点(以下、「一致点の1」という。)で一致し、次の点で相違するといえる。

(相違点1)
天然繊維に関して、本件発明1が「果肉内に強靱な繊維組織が編目状となっているウリ科のつる性植物の果実を乾燥させた」ものであるのに対し、甲1発明が「綿等からなる」ものである点
(注;[ ]内には、対応する各甲号証の用語を表記した。以下同様。)

そこで、上記相違点1につき以下検討する。

(イ)相違点の検討
ところで、甲第1号証には、そのペット用玩具を「口に銜える」ことによる効果に関して、「噛み易く、また噛んでいると歯が骨幹部に食込むため歯の汚れを取るほか歯茎に対しマーサージ作用もある等歯磨効果を奏し」(上記「(4-1)」の(ウ)参照)との記載や「綿等の天然繊維を用いればたとえ飲込んでも安全である特有の作用効果を奏する」(同上(ウ)参照)との記載があるように、甲1発明のペット用玩具は、それをペットが「口に銜える」ことによって、飲込んでも安全であるという効果に加えて、ペットの歯の汚れを取る効果が併せて奏されることを期待したものであるということができる。
他方、甲第3号証には、「噛む歯ブラシ」の素材として繊維状ヘチマを利用することにより、「口腔内に投入し、そしゃく筋や舌の働き等に依って歯牙に付着した歯垢や食べかすを、擦り除去する」(上記「(4-3)」の(イ)参照)との記載や「天然の植物繊維のみの細片で作られるので、舌下腺、顎下腺、耳下腺、等から湧き出る唾液を飲み込んでも、害を及ぼす事は無い。」(同「(4-3)」の(ウ)参照)との記載があるように、(小児に於いても)歯牙に付着した歯垢や食べかすを、擦り除去するという歯磨き効果に加えて、飲み込んでも、害を及ぼす事は無い、すなわち安全であるという効果が併せて奏されることが記載されているといえる。
そうすると、甲1発明の綿等の天然繊維を用いた骨幹部と甲第3号証記載の繊維状ヘチマとは、共に天然繊維を用いた噛む素材であって、それを噛むという動作を通じて歯磨き効果を得ると共に飲込んでも安全であるという効果を奏することを期待したものである点で相互に共通するということができる。
そして、甲第5号証にも示されるように、歯を磨く手段を動物や幼児間で共通したものとできることも、従来より、当業者により知られていた事項であるといえる。
してみると、甲1発明の綿等の天然繊維を用いた骨幹部の素材に代えて、甲第3号証に記載の繊維状ヘチマを用いた素材を適用することは、当業者が容易に想到し得たことといわざるを得ない。
なお、甲第7号証にも記載されているように、ヘチマが、「果肉内に強靱な繊維組織が編目状となっているウリ科のつる性植物の果実を乾燥させた」ものであるといえるから、甲第3号証記載の繊維状ヘチマが、本件発明1の「果肉内に強靱な繊維組織が編目状となっているウリ科のつる性植物の果実を乾燥させた天然繊維」に相当するものであることも明らかである。

したがって、本件発明1は、甲第1号証及び甲第3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4-2)本件発明2について
(ア)対比
本件発明2は本件発明1を引用する発明であって、更に「前記ウリ科のつる性植物はヘチマである」という限定を加えた発明であるから、本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記一致点の1で一致し、上記相違点1に加えて更に次の点で相違する。

(相違点2)
天然繊維に関して、本件発明2は「ヘチマ」を用いたものであるのに対し、甲1発明は、ヘチマの天然繊維を用いたものではない点。

そこで、上記相違点1及び2につき以下検討する。

(イ)相違点の検討
上記相違点1及び2に係る本件発明2の構成は、上記相違点1に係る本件発明1の構成である「果肉内に強靱な繊維組織が編目状となっているウリ科のつる性植物の果実」を「ヘチマ」に限定したものといえるから、上記「(4-1)本件発明1について」の相違点1につき検討したのと同様の理由により、上記相違点1及び2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことといえる。
したがって、本件発明2は、甲第1号証及び甲第3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4-3)本件発明3について
(ア)対比
本件発明3は本件発明1又は2を引用する発明であって、更に「ガム本体内部にペットの好む油性香料を注入した」という限定を加えた発明であるから、本件発明3と甲1発明とを対比すると、上記一致点の1に加えて「ガム本体内部にペットの好む香料を注入した」点でも一致する(以下、「一致点の2」という。)とともに、上記相違点1又は上記相違点1及び2に加えて、次の点で相違する。

(相違点3)
ペットの好む香料に関して、本件発明3が「油性香料」であるのに対し、甲1発明が「チョコレート、ビスケット等の臭いが着臭したもの」である点。

そこで、上記相違点1?3につき以下検討する。

(イ)相違点の検討
相違点1及び2については、上記「(4-2)本件発明2について」で検討したとおりである。
また、相違点3につき検討すると、食品の香料として油性香料を用いることは、例えば、甲第6号証に油性香料[食品香料の種類の項の「(2)オイル」]が示されているように、従来より周知の技術であるといえる。
そうすると、甲1発明のペットの好む香料として、従来より周知の油性香料を採用することは、当業者により適宜採用し得たことといえる。

したがって、本件発明3は、甲第1号証及び甲第3号証記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4-4)本件発明4について
(ア)対比
本件発明4は本件発明1,2又は3を引用する発明であって、更に「ガム本体の両端部を糸又はひもで縛ってボーン型とした」という限定を加えた発明であるから、本件発明4と甲1発明とを対比すると、上記一致点の1又は一致点の2で一致するとともに、上記相違点1又は上記相違点1及び2又は上記相違点1?3の相違点に加え、次の点で相違する。

(相違点4)
ガム本体に関して、本件発明4が「ガム本体の両端部を糸又はひもで縛ってボーン型とした」のに対し、甲1発明が「ガム本体[骨幹部1]の両端部に形成された骨端部2は結び目で形成し、骨端部2は糸で縫製」した点。

そこで、上記相違点1?4につき以下検討する。

(イ)相違点の検討
相違点1及び2については、上記「(4-2)本件発明2について」で検討したとおりである。
また、相違点3については、上記「(4-3)本件発明3について」で検討したとおりである。
さらに、相違点4について検討する。
ところで、本件発明4における「ボーン型」につき、本件の特許明細書の記載を参酌すると、「【0002】【従来の技術】従来、ペット用ガムには、綿製紐を略球状に巻き、外周面の左右対象位置に環状部を形成したもの、或いは綿製紐を太い綱状にしてその両端部に結び目を作ったものや木製のボーン型のものがある。なお、合成樹脂によりペット用ガムを製造することも考えられるが、ペットが食べてしまい、害を及ぼす恐れがある。」、「【0007】そして、前記ガム本体の両端部を、たこ糸やひもで縛ってボーン型(棒状骨型)とする…」、「【0021】このペット用ガム2の製造に際しても、乾燥ヘチマを所望の長さに切断したガム本体2を、水で濡らして柔らかくした後、図11に示すように、たこ糸5をガム本体2の両端部にその径方向に複数回縫い通してから、外周に複数回強く絞るように巻き付けて硬く縛り、更にたこ糸5の巻回終端をガム本体2の径方向に複数回縫い通し、たこ糸5の両端を結び合わせ、結び目5Aから端までの長さが約1cmになるように切り揃えることにより、図9に示すボーン型のペット用ガム21が得られる。」及び「【0024】…そして、ガム本体の両端部を糸又はひもで縛ってボーン型とする…」との記載がある。
そうすると、本件発明4における「ボーン型」は、ペット用ガムの両端部を、例えば、たこ糸やひも等で縛って棒状骨型とした形状を意味するものと解することができ、また、このような「ボーン型」の形状を備えたペット用ガムも、従来より周知の形態のものであったということができる。
そして、甲第1号証の図面の第1図に示されるように、甲1発明における骨幹部1の両端部に「拳状の骨端部2」を形成したものが棒状骨型の形状を備えていることは明らかであるから、本件発明4における「ボーン型」なる構成に相当するものを甲1発明は実質的に備えているということができる(なお、仮に、甲1発明がこのような「ボーン型」なる構成を備えていないとしても、上述したように、このような「ボーン型」の形状を備えたペット用ガムは従来より周知であるから、甲1発明にこのような形状を採用することも当業者が適宜採用し得たことといえる)。
また、甲第1号証には、甲1発明における結び目で形成された「骨端部2」を、これが解けることを防止するため糸で縫製していることが記載されている(上記「(4-1)」の(エ)参照)ように、ペット用玩具においても、糸やひもを用いて所定の形態を形成したり、当該形態を保持させたりすることは、従来より周知の技術であったといえる。
以上のことから、相違点4に係る本件発明4の構成は、甲1発明に周知の技術を適用することにより当業者が容易に想到し得たものといえる。

したがって、本件発明4は、甲第1号証及び甲第3号証記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4-5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1,2又は3を引用する発明であって、更に「前記ガム本体が備える孔にロープを挿通した」という限定を加えた発明であるから、本件発明5と甲1発明とを対比すると、上記一致点の1又は一致点の2で一致するとともに、上記相違点1又は上記相違点1及び2又は上記相違点1?3の相違点に加え、次の点で相違する。

(相違点5)
本件発明5が「前記ガム本体が備える孔にロープを挿通した」のに対し、甲1発明がそのような構成を備えていない点。

そこで、上記相違点1?3及び5につき以下検討する。

(イ)相違点の検討
相違点1及び2については、上記「(4-2)本件発明2について」で検討したとおりである。
また、相違点3については、上記「(4-3)本件発明3について」で検討したとおりである。
さらに、相違点5について検討する。
甲第2号証には、ペット用ガム[犬のおもちゃ]において、ガム本体[本体4]が備える孔[開口部6]にロープ[ロープ2]を挿通するように構成したことが記載されている(上記「(4-2)」の(エ)の段落【0020】参照)。
してみると、相違点5に係る本件発明5の構成は、甲1発明に甲第2号証に記載の上記構成を適用することにより、当業者が容易に採用し得たものといえる。
(ちなみに、甲第4号証には、ヘチマからなる器具[ヘチマ洗い具]において、ヘチマ1が備える孔[種孔2]にロープ[把手紐5]を挿通した点が記載されており、ペット用ガム本体にヘチマを用いることが、上述したところの甲1発明に甲第2号証に記載の上記構成を適用することにつき阻害要因となるものでないことも明らかである。)

したがって、本件発明5は、甲第1号証?甲第3号証記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4-6)本件発明6について
本件発明6は、本件発明5を引用する発明であって、更に「ガム本体に挿通した前記ロープを輪状とした」という限定を加えた発明であるから、本件発明6と甲1発明とを対比すると、上記一致点の1又は一致点の2で一致するとともに、上記相違点1又は上記相違点1及び2又は上記相違点1?3並びに上記相違点5に加え、次の点で相違する。

(相違点6)
本件発明6が「ガム本体に挿通した前記ロープを輪状とした」のに対し、甲1発明がそのような構成を備えていない点。

そこで、上記相違点1?3,5及び6につき以下検討する。

(イ)相違点の検討
相違点1及び2については、上記「(4-2)本件発明2について」で検討したとおりである。
また、相違点3については、上記「(4-3)本件発明3について」で検討したとおりである。
さらに、相違点5については、上記「(4-5)本件発明5について」で検討したとおりである。
さらに、相違点6について検討する。
甲第2号証には、ペット用ガム[犬のおもちゃ]において、ガム本体[本体4]に挿通したロープ[ロープ2]を輪状[エンドレス状態]の形態とした構成が記載されている(上記「(4-2)」の(エ)の段落【0020】及び【0021】参照)。
してみると、相違点6に係る本件発明5の構成は、甲1発明に甲第2号証に記載の上記構成を適用することにより、当業者が容易に採用し得たものといえる。
したがって、本件発明6は、甲第1号証?甲第3号証記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?6は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-12 
結審通知日 2007-04-16 
審決日 2007-04-27 
出願番号 特願平8-308276
審決分類 P 1 113・ 121- Z (A23K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長井 啓子  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 宮川 哲伸
西田 秀彦
登録日 2000-12-22 
登録番号 特許第3143403号(P3143403)
発明の名称 ペット用ガム  
代理人 三觜 晃司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ