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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1160008
審判番号 不服2004-20628  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-06 
確定日 2007-06-27 
事件の表示 特願2002-262967「プローブカードの製造方法及びプローブ用金型の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 2日出願公開、特開2004-101351〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成14年9月9日の出願であって、本願請求項1ないし4に係る発明は、平成16年7月26日付及び平成16年11月5日付の手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 半導体集積回路の電気的特性を測定する際に使用されるものであり、プローブ基板上に複数のプローブが並んで取り付けられた構造のプローブカードの製造方法において、プローブ用金型を柔らかい材質の板状部材に押し当てて当該プローブに対応する形状の複数の凹部を有する型を作成し、当該型にプローブとなる複数のメッキ構造体を形成する工程と、配線パターンが形成されたプローブ基板と前記型とを対向させて位置合わせする工程と、この状態で当該型に形成されたプローブとなる複数のメッキ構造体の上面と前記プローブ基板の配線パターンとを導電性を有する接着剤を用いて接着させる工程と、前記プローブ基板及び複数のメッキ構造体から前記型を除去する工程とを有することを特徴とするプローブカードの製造方法。」
(なお、当該平成16年11月5日付の手続補正書によって補正された請求項1ないし4は、平成16年7月26日付の手続補正書によって補正された請求項1ないし5の請求項1を削除したものであるから、当該補正は特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。)

2.刊行物記載の発明・記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-151557号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下のとおり記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被検査体の電気的特性検査を行う際に用いられるコンタクタ、プローブカード及びコンタクタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】被検査体、例えば半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と称す。)に多数形成されたメモリデバイスやロジックデバイス等のICチップの電気的特性検査を行う場合にはコンタクタを有するプローブカードが用いられる。」
(2)「【0027】まず図4?図7を参照しながらプローブ15の作製工程について説明する。・・・フォトレジスト膜の開口部からシリコン基板100をエッチングし、・・・これにより段差のある第1、第2、第3凹陥部101、102、103が順次形成される。」
(3)「【0029】・・・シリコン基板100の表面に・・・水酸化カリウム水溶液を用いて開口部からシリコン層の異方性エッチングを行ってバンプ14の型105を逆四角錐状に形成した後、緩衝フッ酸を用いてシリコン酸化膜を除去すると、図6の(a)、(b)に示すように梁部13の配列パターンに即したシリコン層104を露出すると共にバンプ14の配列パターンに即した型105を形成する。」
(4)「【0030】・・・図7の(a)に示すように残余の熱酸化膜109を除去した後、シリコン基板100の表面にフォトレジストを塗布してフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜を露光、現像処理によりプローブ15に相当する部分を開口した上で、靭性のある金属(例えば、ニッケル)107をスパッタリングし、シリコン基板100の表面全面をニッケル成膜する。そして、リフトオフによりフォトレジスト膜とその上のニッケル膜を一緒に除去すると図7の(b)に示すようにプローブ15としての梁部13及びバンプ14がシリコン基板100の表面に形成される。」
(5)「【0031】次に、図8及び図9を参照しながらコンタクト基板11の製造工程について説明する。この工程ではコンタクタ基板11としてガラス基板を準備し、このコンタクタ基板11に導通部12を形成する。それにはまず、図8の(a)に示すようにニッケルをコンタクタ基板11の表面にスパッタリングしてニッケル膜からなるシード層11Aを形成した後、フォトレジストを塗布してフォトレジスト膜11Bを形成し、このフォトレジスト膜11Bを露光、現像して導通部12を配置する部分のフォトレジスト膜11Bを残し、他の部分のフォトレジスト膜11Bを除去すると同図の(b)に示すように他の部分ではシード層11Aが露出する。次いで、同図の(c)に示すようにシード層11Aを電極として利用して電解メッキによりシード層11A上にニッケルメッキ層11Cを成膜する。」
(6)「【0034】次に、シリコン基板100上のプローブ15とコンタクタ基板11の導通部12とを陽極接合する。それには、シリコン基板100のプローブ15側の面とコンタクタ基板11の接続用電極16とは反対側の面を対峙させる。そして、図10の(a)に示すように梁部13の基端部と導通部12の位置合わせを行った後、梁部13の基端部13Bとコンタクタ基板11間を陽極接合し、シリコン基板100をコンタクタ基板11から引き離すと、シリコン層13Aの基端部13Bがコンタクタ基板11と陽極接合しているため、梁部13及びバンプ14がシリコン層104部と一緒にシリコン基板100から剥離し、コンタクタ基板11と梁部13及びバンプ14からなるプローブが一体化してコンタクタ10が形成される。」
(7)図面の図6(a)(b)には、梁部13の配列パターンに即したシリコン層104が複数の列の凹部として形成されていることが示されている。
上記摘記事項(6)における「シリコン基板100をコンタクタ基板11から引き離すと、シリコン層13Aの基端部13Bがコンタクタ基板11と陽極接合しているため、梁部13及びバンプ14がシリコン層104部と一緒にシリコン基板100から剥離」することは、接合されているコンタクタ基板11及び金属107からシリコン基板100を除去することに他ならない。
したがって刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。
刊行物1記載の発明
「半導体集積回路の電気的特性を測定する際に使用される、コンタクタ基板11上に複数のプローブ15が並んで取り付けられた構造のプローブカード20の製造方法において、プローブ15の梁部13の配列パターンに即したシリコン層104を露出すると共にバンプ14の配列パターンに即した型105を形成したシリコン基板100を作成し、当該シリコン基板100にプローブ15となる靱性のある金属107をスパッタリングし、プローブ15としての梁部13及びバンプ14をシリコン基板100の表面に形成する工程と、導通部12が形成されたコンタクタ基板11とシリコン基板100とを対向させて位置合わせする工程と、この状態で梁部13の基端部13Bとコンタクタ基板11の導通部12とを陽極接合する工程と、前記コンタクタ基板11及びプローブ15となる靱性のある金属107からシリコン基板100を除去する工程とを有するプローブカードの製造方法。」

3.対比
本願発明1と刊行物1記載の発明を対比する。
後者の「コンタクタ基板11」は前者の「プローブ基板」に、同様に、「シリコン基板100」は「型」に、「プローブとなる靱性のある金属107」は「プローブとなるメッキ構造体」に相当する。
また、上記の摘記事項(7)に述べた図6(a)(b)に示される構成からみて、後者の「プローブ15の梁部13の配列パターンに即したシリコン層104を露出すると共にバンプ14の配列パターンに即した型105を形成」することは前者の「プローブに対応する形状の複数の凹部」を形成することに相当し、後者の「シリコン基板100にプローブとなる靱性のある金属107をスパッタリングし、プローブ15としての梁部13及びバンプ14をシリコン基板100の表面に形成する工程」は、前者の「型にプローブとなる複数のメッキ構造体を形成する工程」に相当する。
更に、後者の「導通部12」と前者の「配線パターン」とは、プローブと電気的に導通させるために基板に形成した「導電性部分」である限りで共通し、後者の「陽極接合する」ことと前者の「導電性を有する接着剤を用いて接着させる」こととは「導電性を持たせた状態で接合する」限りで共通する。
してみると両者は次の一致点及び相違点を有している。
<一致点>
「半導体集積回路の電気的特性を測定する際に使用される、プローブ基板上に複数のプローブが並んで取り付けられた構造のプローブカードの製造方法において、
プローブに対応する形状の複数の凹部を形成した型を作成し、当該型にプローブとなる複数のメッキ構造体を形成する工程と、
導電性部分が形成されたプローブ基板と型とを対向させて位置合わせする工程と、
この状態で型に形成されたプローブとプローブ基板の導電性部分とを導電性を持たせた状態で接合する工程と、
前記プローブ基板及びプローブとなるメッキ構造体から型を除去する工程とを有するプローブカードの製造方法。」
<相違点1>
本願発明1においては、型を形成する際に、「プローブ用金型を柔らかい材質の板状部材に押し当てて当該プローブに対応する形状の複数の凹部を有する型を作成」するのに対し、刊行物1記載の発明においては、当該構成を具備していない点。
<相違点2>
本願発明1においては、プローブ基板に形成される導電性部分が配線パターンであるのに対し、刊行物1記載の発明においては、導電性部分が配線パターンではない点。
<相違点3>
本願発明1においては、プローブとプローブ基板の配線パターンとを導電性を持たせた状態で接合するのに導電性接着剤を用いた接着を行うのに対し、刊行物1記載の発明においては、陽極接合を行っている点。

4.判断
<相違点1について>
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-13168号公報(以下「刊行物2」という。)の段落【0033】には、基板200より硬い材料のツール210を基板200の上面202に押し付け、ツール210の形状に整合する押圧部216を複数形成することが、段落【0037】?【0038】及び図21には、押圧部216内に導電性材料250を形成し、当該部分を検査装置のコンタクト部260を含む装置300とすることが、それぞれ記載されている。同刊行物2に記載の製造装置は集積回路を検査するのに用いられる装置の製造方法に関するものであり(同刊行物2の段落【0003】、【0030】参照)、ツール210を基板200の上面202に押し付けて形成する押圧部216は複数形成されるものであることからすれば、刊行物1記載の発明において「プローブ15に対応する形状の配列パターンに即したシリコン層104を露出させて型105を形成」する際に、当該刊行物2に記載の技術を適用して上記相違点1に係る技術事項を得ることは当業者が容易に想到し得たものといえる。
<相違点2について>
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-21581号公報(以下「刊行物3」という。)には、プローブ領域14の第1の導電体層20を、電気絶縁性の板状部材又はシート状部材30の一方の面に平行に伸びる状態に形成した多数の配線28と電気的に接続する技術が記載されている(刊行物3の段落【0023】?【0024】参照)。そして、同刊行物3に記載の技術は刊行物1と同様、集積回路の検査に用いるプローブ組立体の製造方法に関するものであることからすれば(刊行物3の段落【0001】参照)、刊行物1記載の発明における、コンタクタ基板11に形成される「導通部12」に、当該刊行物3に記載の技術を適用して上記相違点2に係る技術事項を得ることは当業者が容易に想到し得たものといえる。
<相違点3について>
上記刊行物3の段落【0023】には、各プローブ領域14の第1の導電体層20が第1の接続体26に設けられた第1の配線28に結合材24より後方側の曲げられた部位において半田のような導電性接着剤により電気的に接続されることが記載されている。そして、同刊行物3に記載の技術は刊行物1と同様、集積回路の検査に用いるプローブ組立体の製造方法に関するものであることからすれば、刊行物1記載の発明における、「梁部13の基端部13Bとコンタクタ基板11の導通部12とを陽極接合する工程」する際の接合技術に、当該刊行物3に記載の技術を適用して上記相違点3に係る技術事項を得ることは当業者が容易に想到し得たものといえる。
<本願発明の作用効果について>
そして、本願発明1の作用効果は、刊行物1に記載の発明、及び刊行物2ないし3に記載の事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではない。

5.むすび
よって、本願請求項1に係る発明は、刊行物1に記載の発明、及び刊行物2ないし3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-19 
結審通知日 2007-04-24 
審決日 2007-05-08 
出願番号 特願2002-262967(P2002-262967)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠崎 正羽飼 知佳  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 小川 浩史
上原 徹
発明の名称 プローブカードの製造方法及びプローブ用金型の製造方法  
代理人 大西 孝治  
代理人 大西 孝治  
代理人 大西 正夫  
代理人 大西 正夫  

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