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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1160063
審判番号 不服2006-14610  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-06 
確定日 2007-07-05 
事件の表示 平成11年特許願第350582号「内視鏡」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月22日出願公開、特開2001-166222〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、出願日が平成11年12月9日である特願平11-350582号であって、平成18年5月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成18年7月6日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年8月7日付けで手続補正がなされた。

2.平成18年8月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年8月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由1]新規事項追加
本件補正により請求項1は、
「【請求項1】
細長な挿入部を有する内視鏡本体に着脱自在に接続し、この内視鏡本体に照明光を供給する照明ランプ及びこの照明ランプに電力を供給する充電可能なバッテリを有するバッテリ型光源を備えた内視鏡において、
当該バッテリ型光源が前記バッテリを充電するための充電電力を供給する充電装置に接続された際、前記充電電力に基づいて前記バッテリを充電する充電制御回路と、
前記バッテリの残量を検出する電圧検出部と、
当該バッテリの劣化に寄与する充電行為がなされた際に、当該充電回数をカウントするカウント手段と、
前記バッテリに関する所定の情報を表示する複数のLEDにより構成される表示手段と、
前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数および前記電圧検出部の検出結果に基づいて、前記表示手段に表示する前記情報を制御する表示制御手段と、
を具備し、
前記表示制御手段は、電源オン時に前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数もしくはカウント結果に基づいて予測される前記バッテリの劣化度合いを前記表示手段に対して表示した後に、前記電圧検出部の検出結果に基づく前記バッテリの残量を前記表示手段に対して表示可能に制御することを特徴とする内視鏡。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1の「表示手段」を「複数のLEDにより構成される表示手段」とし、「表示制御手段」に関して「電源オン時に前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数および前記電圧検出部の検出結果に基づいた前記バッテリの残量を前記表示手段に対して表示可能に制御すると共に、前記カウント手段によるカウント結果に基づいて当該バッテリの劣化度を予測する劣化度合を前記表示手段に対して表示可能に制御することを特徴とする」ものから、「電源オン時に前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数もしくはカウント結果に基づいて予測される前記バッテリの劣化度合いを前記表示手段に対して表示した後に、前記電圧検出部の検出結果に基づく前記バッテリの残量を前記表示手段に対して表示可能に制御することを特徴とする」ものに変更したものである。
また、本件補正は、上記に加え、出願当初明細書の、バッテリを充電する「充電回路」を、平成17年8月1日付け手続補正書において「充電制御回路」と補正する補正を含むものである。

上記補正のうち、「表示手段」を「複数のLEDにより構成される表示手段」とする補正は、表示手段を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
「表示制御手段」に関する補正については、補正前の「電源オン時に前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数および前記電圧検出部の検出結果に基づいた前記バッテリの残量を前記表示手段に対して表示可能に制御すると共に、前記カウント手段によるカウント結果に基づいて当該バッテリの劣化度を予測する劣化度合を前記表示手段に対して表示可能に制御する」という、当初明細書に記載されていない発明特定事項を、当初明細書に記載された事項の範囲内に訂正する、誤記の訂正と認められる。
バッテリを充電する「充電回路」を、「充電制御回路」とする補正については、「充電制御回路」が当初明細書に記載されておらず、また、当初明細書の記載から自明なものとも言えないものであるから、この補正は、当初明細書に記載された事項の範囲内でなされたものではない。
したがって、バッテリを充電する「充電回路」を、「充電制御回路」とする補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

[理由2]独立特許要件違反
(1)補正後の本願発明
本件補正は上記のとおり却下されるべきものであるが、仮に本件補正を、当初明細書に記載された事項の範囲内でなされた適法なものであると認め、本件補正は誤記の訂正に加え、補正前の「表示手段」について「複数のLEDにより構成される」との限定を付し、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであるとして、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について、念のため検討する。
本件補正により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、上記[理由1]新規事項追加の項に記載したとおりに補正された。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-224906号公報(以下、引用例1という。)には、以下の点が記載されている。

[記載事項1]
「【0011】本実施の形態の内視鏡1は内視鏡本体2と、この内視鏡本体2に着脱自在で接続されるランプユニット3及びこのランプユニット3に着脱自在で乾電池を内蔵した乾電池式或いは非充電式バッテリユニット4からなるバッテリ型光源5と、ランプユニット3の接続と選択して(前記内視鏡本体2に着脱自在で)接続されるライトガイドケーブル6とを有している。
【0012】この内視鏡本体2は、細長の挿入部7と、この挿入部7の後端に形成された操作部8と、この操作部8の後端に形成された接眼部9と、操作部8から突設されたライトガイド口金10とからなり、このライトガイド口金10の端部にランプユニット3の接続口金11を着脱自在で接続できる。」

[記載事項2]
「【0019】図1に示すように上記ライトガイド口金10にはライトガイドファイバが挿通されたライトガイドケーブル6の前端の接続口金22を接続することができる。そして、このライトガイドケーブル6の後端のライトガイドコネクタ23を、図示しない既存の光源装置に接続することによって、既存の光源装置内部のランプから照明光が供給され、ライトガイドケーブル6内のライトガイドファイバを介して導光し、内視鏡本体2側のライトガイドファイバに導光した照明光を供給できるようにしている。
【0020】ライトガイド口金10に接続可能な接続口金11を設けたランプユニット3はほぼ円柱形状で、その上部側側面には貫通孔を設けて一方の開口端側には接続口金11を固定し、他方の開口端からランプ41を取り付けたランプホルダ24を装着できるようにしている。」

[記載事項3]
「【0021】また、このランプユニット3の底面には図1に示す非充電式バッテリユニット4を着脱自在で装着できる他に、図2に示すように(内部に充電式バッテリを内蔵した)充電式バッテリユニット26、プラグユニット27に給電線を介して充電式バッテリ28が接続されて構成された充電式バッテリユニット29、プラグユニット27に給電線を介してACアダプタ本体30が接続されて構成されたACアダプタユニット31、プラグユニット27に給電線を介して自動車電源用アダプタ32が接続され、さらにこの自動車電源用アダプタ32に自動車のバッテリに接続する、例えばシガレットライタ用接続部33を設けた自動車電源用アダプタユニット34等を選択的に取り付けることができるようにしている。
【0022】つまり、複数種類の電源から任意の電源を選択してランプユニット3に接続して、その光源としてのランプ41を発光させる電源供給手段を形成し、内視鏡検査を行う環境などに応じてそれに適した電源を使用したり、術者の好みなどに応じて使い易い電源で使用したり、またバッテリを使用してその起電力が低下した場合にも別の電源に交換することにより内視鏡検査を直ちに再開あるいは続行することができるようにしている。
【0023】なお、充電式バッテリユニット26或いは29はそのプラグ部或いはプラグユニットをランプユニット3の底部のコンセント47に接続することにより電源を供給し、その起電力が低下した場合には図示しない充電用アダプタを介して商用電源のACコンセントに接続することにより充電できる。充電式バッテリユニット26等に充電用のアダプタ機能を付加しても良い。」

[記載事項1]?[記載事項3]及び【図1】、【図2】、【図8】より、内視鏡本体2は、着脱自在で接続されるランプユニット3を有し、ランプユニット3は、その上部側側面に、ランプホルダ24に装着されたランプ41、その底面に、プラグユニット27及び給電線及び充電式バッテリ28から構成された充電式バッテリユニット29が接続された、着脱自在に装着されるバッテリ型光源5を形成していることがわかる。

[記載事項3]より、充電式バッテリユニット29等、任意の電源を選択してランプユニット3に接続することによって、その光源としてのランプ41を発光させる電源供給手段を形成していることがわかる。
また、ランプユニット3が充電式バッテリユニット29を介して商用電源に接続された際に、充電式バッテリに充電するための充電電力が供給されるものであるから、バッテリ型光源5が、充電式バッテリ28に充電するための充電電力を供給するものである商用電源に接続された際、前記充電電力に基づいて充電式バッテリ28を充電するものであるといえる。また、充電操作が行われている以上、充電を行う手段である充電回路を有していることも自明である。

したがって、上記記載事項を参照すれば、引用例1には、
「細長な挿入部7を有する内視鏡本体2に着脱自在に接続される、この内視鏡本体に照明光を供給するランプ41を有するランプユニット3と、このランプ41に電源を供給する充電式バッテリ28を内蔵する充電式バッテリユニット29とを有するバッテリ型光源5を備えた内視鏡において、バッテリ型光源5が充電式バッテリ28を充電するための充電電力を供給する商用電源に接続された際、前記充電電力に基づいて充電式バッテリ28に充電を行う充電回路を有した内視鏡。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平11-49079号(「引用例2」という。)には以下の点が記載されている。
[記載事項4]
「【0012】また、図1,図2に示す11は、充電履歴メモリ3の記憶内容を表示する表示装置であり、この表示装置11はバッテリユニット1に取り付けられ、バッテリユニット1が充電器5又はコントローラ15に接続されたときだけ表示がなされるようになっている。そして、充電時には、図1に示すように、バッテリユニット1を充電器5に配線結合して充電を行なうが、この場合、まず、充電履歴メモリ3に記憶されたバッテリ2の充電前初期蓄電量Q1iを、マイコン7に読み出して、その後の推定蓄電量の演算のベースとする。バッテリ2への充電時には、マイコン7では、充電量に応じてバッテリ2の推定蓄電量を更新するように演算を行なう。すなわち、マイコン7では、充電開始時から電流制御回路9により制御された電流と電圧検出器8で検出された電圧とを取り込みながら、単位時間Δt毎に、充電量Δq1(電流制御回路9で制御された電流と電圧検出器8で検出された電圧との積)と単位時間Δtの積(単位時間当たりの充電量)を計算して、さらに充電前初期蓄電量Q1iと充電量Q1 (=Σ(Δq1 ×Δt))との和を演算して、この値(Q1i+Q1 )が充電履歴メモリ3に送られ、推定蓄電量として更新して書き込まれるようになっている。」

[記載事項5]
「【0016】一方、バッテリの放電時、即ちバッテリ使用時には、バッテリユニット1を自転車に取付け補助駆動モータ18を回すが、この場合、バッテリユニット1をコントローラ15に配線結合し放電を開始すると、まず、充電履歴メモリ3に記憶されたバッテリ2の放電前初期蓄電量Q2iが、マイコン16に読み出されるようになっている。そして、バッテリ2への放電処理が行なわれる際には、マイコン16では放電量に応じてバッテリの蓄電量を更新するように演算を行なう。すなち、マイコン16では、放電開始時から単位時間Δt毎に放電量Δq2 (電流検出器21で検出された電流と電圧検出器19で検出された電圧との積)と単位時間Δtとの積(単位時間当たりの放電量)を計算して、さらに、放電前初期蓄電量Q2iと放電量Q2 (=Σ(Δq2 ×Δt))との差を演算して、この値が充電履歴メモリ3に送られ、更新して書き込まれるようになっている。」

[記載事項6]
「【0018】さらに、バッテリユニット1の充電履歴メモリ3には充電回数も記憶され、この充電回数を表示装置11に表示しうるようになっており、この表示をバッテリ2の寿命を判定する指針とすることができる。また、充電器5のマイコン7において、充電時の電流に対する電圧よりバッテリ2の内部抵抗値を計算し、これよりバッテリ2の寿命を判定することもできる。」

[記載事項7]
「【0023】このように、本補助駆動モータ付き自転車によれば、バッテリ2の使用状態の情報をバッテリ2と一体の充電履歴メモリ3に記憶保存できるので、従来例のように充電器5とコントローラ15との常時組み合わせを要することなく、バッテリ2の充電状態や放電状態(蓄電状態)を監視することができる。従って、充電器5は、バッテリユニット1と配線結合することにより、充電履歴メモリ3より放電状態(蓄電状態)を把握し、高速で安全な充電方法を選択することができる。また、コントローラ15は、バッテリユニット1と配線結合することにより、充電履歴メモリ3より充電状態(蓄電状態)を把握し、過放電によるバッテリ2のダメージを防止することができる。」

[記載事項8]
「【0024】また、バッテリ2の充,放電量(蓄電量)等の充電履歴はメモリ3に記憶されているので、常にバッテリ2の状態を把握することができる。従って、交換用のバッテリユニット1を常に充電済み状態にしておけば、バッテリユニット1を交換することにより直ぐに補助モータ18が利用でき、充電により自転車が充電器5に拘束されることはなく、自転車の運転が可能となる。
【0025】また、充電履歴メモリ3に記憶されたバッテリ2の推定蓄電量の残量をリアルタイムに表示装置11に表示することにより、運転者はバッテリ2の充電時期が容易に把握でき、過放電によるバッテリ2のダメージを防止することができる。さらに、バッテリユニット1の充電履歴メモリ3に記憶された充電回数も表示装置11に表示されるので、バッテリ2の寿命を判定する指針とすることができ、また、充電器5のマイコン7において、充電時の電流に対する電圧よりバッテリ2の内部抵抗値を計算し、これよりバッテリ2の寿命を判定することもできる。」

(3)対比
引用発明の「ランプ41」は、本願補正発明の「照明ランプ」に相当する。
同様に、「充電式バッテリ28」は「充電可能なバッテリ」に相当する。 また、本願補正発明の「充電制御回路」は、「2.[理由1]」の項で既に記載したように、本願の当初明細書の「充電回路」に対応するものであることは明らかであるから、引用発明の「充電回路」に相当する。
そして、本願補正発明の「充電装置」と引用発明の「商用電源」とは、ともに充電手段である点で一致している。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「細長な挿入部を有する内視鏡本体に着脱自在に接続し、この内視鏡本体に照明光を供給する照明ランプ及びこの照明ランプに電力を供給する充電可能なバッテリを有するバッテリ型光源を備えた内視鏡において、当該バッテリ型光源が前記バッテリを充電するための充電電力を供給する充電手段に接続された際、前記充電電力に基づいて前記バッテリを充電する充電制御回路を有する内視鏡。」である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点1】
充電手段が本願補正発明は「充電装置」であるのに対し、引用発明では「商用電源」である点。
【相違点2】
内視鏡が、本願補正発明は、「バッテリの残量を検出する電圧検出部」を有しているのに対し、引用発明ではそのような構成は有していない点。【相違点3】
内視鏡が、本願補正発明は、「バッテリの劣化に寄与する充電行為が行われた際に、当該充電回数をカウントするカウント手段」を有しているのに対し、引用発明ではそのような構成は有していない点。
【相違点4】
内視鏡が、本願補正発明は、「バッテリに関する所定の情報を表示する複数のLEDにより構成される表示手段」を有しているのに対し、引用発明ではそのような構成は有していない点。
【相違点5】
内視鏡が、本願補正発明は、「前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数および前記電圧検出部の検出結果に基づいて、前記表示手段に表示する前記情報を制御する表示制御手段」を有し、「前記表示制御手段は、電源オン時に前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数もしくはカウント結果に基づいて予測される前記バッテリの劣化度合いを前記表示手段に対して表示した後に、前記電圧検出部の検出結果に基づく前記バッテリの残量を前記表示手段に対して表示可能に制御」するのに対し、引用発明ではそのような構成は有していない点。

(4)当審の判断
上記相違点1?5について検討する。

相違点1について:
バッテリを充電するための充電電力を供給する充電手段として、建築物等に備えられた商用電源を用いるか、予め装置として形成された充電装置を用いるかは、当業者が必要に応じて選択し得る設計事項である。

相違点2について:
引用例2には、マイコン7により、本願補正発明の「バッテリの残量」に相当する「バッテリの推定蓄電量」を、電流制御回路9により制御された電流と電圧検出器8で検出された電圧とから導かれる蓄電量と、放電量の差を演算して求める構成が記載されている(記載事項3、記載事項4)。
本願補正発明で明確な限定はないが、「バッテリの残量」を、電圧検出部のみから検出する構成は、例えば特開平10-268375号公報【0009】にも記載されているように、バッテリにおける残量検出の手段として広く知られた構成であり、引用例2の上記構成にかえて、当該構成を選択することは設計変更である。
したがって、引用発明の充電回路に、引用例2の「バッテリの推定蓄電量」を求める構成を採用し、相違点2に係る発明特定事項を導くことは当業者にとって容易である。

相違点3について:
引用例2には、バッテリユニット1内に設けられ、バッテリの寿命を判定する指針となる充電回数を記憶する、「充電履歴メモリ3」が記載されている(記載事項5、記載事項7)。
この「充電履歴メモリ3」は、充電が行われた回数を記憶していくものであり、また、充電を繰り返すと劣化に寄与することは技術常識であることから、本願補正発明の「バッテリの劣化に寄与する充電行為がなされた際に、当該充電回数をカウントするカウント手段」に相当するものであるといえる。
したがって、引用発明の内視鏡に、引用例2に記載の構成を採用し、相違点3の発明特定事項に係る構成を導くことは、当業者にとって容易である。

相違点4について:
引用例2には、バッテリユニット1内に、本願補正発明の「バッテリに関する所定の情報」に相当する、バッテリの推定蓄電量及び充電回数を記憶する充電履歴メモリ3を有し、更に、当該記憶内容を表示させる表示装置11を有することが記載されている(記載事項4?記載事項7)。
ところで、引用例2には、表示装置11の表示手段については具体的にどのようなものか明記されていないが、表示手段を複数のLEDにより構成されるものとすることについては広く知られており(例えば特開平4-109831号公報第3ページ左上欄第13?17行目参照)、表示手段として当該構成を用いることについては設計的事項である。
したがって、引用発明の内視鏡に、引用例2に記載の構成を採用し、相違点4の発明特定事項に係る構成を導くことは容易である。

相違点5について:
「相違点4について」の項で既に記載したとおり、引用例2の表示装置11は、電圧検出器8からの検出値等に基づいて導かれ、充電履歴メモリ3に記憶されたバッテリの推定蓄電量及びをカウントされた充電回数とを表示するものであるから、それらの情報を表示するための制御を行う制御手段を有していることは明らかである。してみれば、引用例2には、本願補正発明に係る「前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数および前記電圧検出部の検出結果に基づいて、前記表示手段に表示する前記情報を制御する表示制御手段」が開示されているといえる。
そして、表示手段による表示を、電源オン時に行うようにさせることは当業者が必要に応じて選択する設計事項である。また、バッテリに関する所定の情報のうち、まずバッテリの寿命判定の指針となる充電回数を表示し、その後バッテリの残量を表示可能に制御する点については、充電回数は、次の充電まで変化しないので一度表示すればよく、バッテリの残量は常時確認できるようにすることが技術常識であることに鑑みれば、格別な限定ではない。
なお、上記判断において、本願補正発明では「充電回数」と「カウント結果に基づいて予測される前記バッテリの劣化度合い」とは選択的に記載されているので、「充電回数」について検討を行ったが、「カウント結果に基づいて予測される前記バッテリの劣化度合い」についても、念のため検討を加える。
上記「カウント結果に基づいて予測される前記バッテリの劣化度合い」の表示は、充電回数が500回以内の場合は充電回数の表示をするが、500回を上回った場合には点滅表示を行うものである(当初明細書【0022】?【0028】参照)。
そして、引用例2も、バッテリの寿命を判断する指針として充電回数を表示させる構成を有しており(記載事項6、記載事項8)、特定の充電回数を閾値として点滅表示をさせるか否かは設計事項であるから(必要であれば特開平10-268375号公報【0021】?【0028】、【図5】参照)、引用発明に引用例2に記載の構成を採用して、相違点5に係る当該構成を導くことは当業者にとって容易である。

以上のことから、引用発明の内視鏡に、引用例2に記載の構成を採用し、相違点5の発明特定事項に係る構成を導くことは当業者にとって容易である。

そして、本願補正発明の作用・効果も、引用例1及び引用例2に記載された発明、及び従来周知の技術事項から、予測される範囲内のもので、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許請求の範囲を限定的に減縮することを目的とするものとしても、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するもので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成18年8月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年8月1付けの手続補正書の記載からみて、次のとおりのものである。
「【請求項1】
細長な挿入部を有する内視鏡本体に着脱自在に接続し、この内視鏡本体に照明光を供給する照明ランプ及びこの照明ランプに電力を供給する充電可能なバッテリを有するバッテリ型光源を備えた内視鏡において、
当該バッテリ型光源が前記バッテリを充電するための充電電力を供給する充電装置に接続された際、前記充電電力に基づいて前記バッテリを充電する充電制御回路と、
前記バッテリの残量を検出する電圧検出部と、
当該バッテリの劣化に寄与する充電行為がなされた際に、当該充電回数をカウントするカウント手段と、
前記バッテリに関する所定の情報を表示する表示手段と、
前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数および前記電圧検出部の検出結果に基づいて、前記表示手段に表示する前記情報を制御する表示制御手段と、
を具備し、
前記表示制御手段は、電源オン時に前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数および前記電圧検出部の検出結果に基づいた前記バッテリの残量を前記表示手段に対して表示可能に制御すると共に、前記カウント手段によるカウント結果に基づいて当該バッテリの劣化度を予測する劣化度合を前記表示手段に対して表示可能に制御することを特徴とする内視鏡。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び引用例2の記載事項、引用発明は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、上記「2.[理由2]補正後の本願発明」で述べた、本願補正発明から、「表示手段」に関する「複数のLEDにより構成される」との限定を省き、また、本願補正発明の「表示制御手段」に関する「電源オン時に前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数もしくはカウント結果に基づいて予測される前記バッテリの劣化度合いを前記表示手段に対して表示した後に、前記電圧検出部の検出結果に基づく前記バッテリの残量を前記表示手段に対して表示可能に制御する」との限定を「電源オン時に前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数および前記電圧検出部の検出結果に基づいた前記バッテリの残量を前記表示手段に対して表示可能に制御すると共に、前記カウント手段によるカウント結果に基づいて当該バッテリの劣化度を予測する劣化度合を前記表示手段に対して表示可能に制御する」との限定に戻したものである。

そうすると、本願発明と引用発明とは、上記「2.(3)」で記載したように、
「細長な挿入部を有する内視鏡本体に着脱自在に接続し、この内視鏡本体に照明光を供給する照明ランプ及びこの照明ランプに電力を供給する充電可能なバッテリを有するバッテリ型光源を備えた内視鏡において、当該バッテリ型光源が前記バッテリを充電するための充電電力を供給する充電手段に接続された際、前記充電電力に基づいて前記バッテリを充電する充電制御回路を有する内視鏡。」である点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点1】
充電手段が本願発明は「充電装置」であるのに対し、引用発明では「商用電源」である点。
【相違点2】
内視鏡が、本願発明は、「バッテリの残量を検出する電圧検出部」を有しているのに対し、引用発明ではそのような構成は有していない点。
【相違点3】
内視鏡が、本願発明は、「バッテリの劣化に寄与する充電行為が行われた際に、当該充電回数をカウントするカウント手段」を有しているのに対し、引用発明ではそのような構成は有していない点。
【相違点4】
内視鏡が、本願発明は、「前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数および前記電圧検出部の検出結果に基づいて、前記表示手段に表示する前記情報を制御する表示制御手段」を有し、「前記表示制御手段は、電源オン時に前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数および前記電圧検出部の検出結果に基づいた前記バッテリの残量を前記表示手段に対して表示可能に制御すると共に、前記カウント手段によるカウント結果に基づいて当該バッテリの劣化度を予測する劣化度合を前記表示手段に対して表示可能に制御する」のに対し、引用発明ではそのような構成は有していない点。
上記相違点1?4について検討する。
相違点1?相違点3についての検討は、上記「2.(4)」に同じ。
相違点4について:
引用例2の表示装置11は、電圧検出器8からの検出値等に基づいて導かれ、充電履歴メモリ3に記憶されたバッテリの推定蓄電量及びカウントされた充電回数とを表示するものである。したがって、それらの情報を表示するための制御を行う制御手段を有していることは明らかである。
また、上記充電履歴メモリ3に記憶される「バッテリの推定蓄電量」とは、バッテリの残量に相当するものであり、表示装置11に表示されるものである(記載事項5、8)。
さらに、電圧検出器8からの検出値等に基づいて導かれ、表示装置に表示される上記「カウントされた充電回数」は、バッテリの寿命を判断する指針として表示させるものであって(記載事項6、記載事項8)、充電回数の増加に伴ってバッテリが劣化することは技術常識であるから、バッテリの充電回数が表示されれば、バッテリがどのくらい劣化しているか、その度合いを予測することが可能となるものである。すなわち、引用例2の「カウントされた充電回数」を(充電履歴メモリ3に記憶し)表示装置11に表示する構成は、充電回数を表示すると同時に「バッテリの劣化度を予測する劣化度合い」も同時に表示するものであるといえる。
そして、表示手段による表示を、電源オン時に行うようにさせることは当業者が必要に応じて選択する設計事項である。
してみれば、「前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数および前記電圧検出部の検出結果に基づいて、前記表示手段に表示する前記情報を制御する表示制御手段」を有し、「前記表示制御手段は、電源オン時に前記カウント手段によりカウントされた前記充電回数および前記電圧検出部の検出結果に基づいた前記バッテリの残量を前記表示手段に対して表示可能に制御すると共に、前記カウント手段によるカウント結果に基づいて当該バッテリの劣化度を予測する劣化度合を前記表示手段に対して表示可能に制御する」構成は、引用例2に開示されているといえる。
以上のことから、引用発明に引用例2に記載の構成を採用して、相違点4に係る本願発明の発明特定事項を導くことは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明の作用・効果も、引用例1及び引用例2に記載された発明、及び従来周知の技術事項から、予測される範囲内のもので、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-25 
結審通知日 2007-05-01 
審決日 2007-05-23 
出願番号 特願平11-350582
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柏崎 康司山下 崇  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 辻 徹二
森口 良子
発明の名称 内視鏡  
代理人 伊藤 進  

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