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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61N
管理番号 1160093
審判番号 不服2004-12132  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-14 
確定日 2007-07-03 
事件の表示 平成 6年特許願第268025号「病変位置検証システム」拒絶査定不服審判事件〔平成7年 7月25日出願公開、特開平7-185023号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成6年10月7日(パリ条約による優先権主張1993年10月8日、米国)の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。
「患者の身体内の病変を処置するための、放射治療装置と共に使用する、予め存在する放射線治療計画において使用する病変位置検証システムにおいて、
(a)患者の身体における病変の少なくとも一つの超音波画像を生成するための手段と、
(b)超音波画像が生成される時、放射治療装置に対する、少なくとも一つの超音波画像を生成するための手段の位置を指示するための手段と、
(c)少なくとも1つの超音波画像における病変の位置を、予め存在する放射線治療計画における病変位置とを比較する手段と
を含むことを特徴とする病変位置検証システム。」

2.引用例
これに対して、平成15年2月18日付けの拒絶理由通知書に引用した、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開昭59-88160号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次のように記載されている。
「本発明は、放射線照射による治療装置において、被照射体の患部を超音波断層装置により検出し、放射線の照射範囲、照射線量、照射線質等を制御して不必要な放射線照射を防止すると共に治療効果を向上させる放射線照射制御装置に関するものである。」(1ページ右欄1?6行)
「患者9の所定の位置に配置された探触子3及び4で受信された超音波は、超音波送受信部13に入力され、受信波に対応した画像デ-タに変換されて演算処理部14に入力される。また、探触子3及び4の位置を探触子位置検出器3A,3B,3C及び4A,4B,4Cによって検出し、この探触子位置検出信号は、探触子位置検出回路12で探触子位置デ-タに変換されて演算処理部14に入力される。演算処理部14では、複数の超音波画像データと探触子位置デ-タを演算処理して一枚の画像デ-タを合成する。この合成された画像データは、演算処理部14のメモリに記憶される。メモリに記憶されている画像データは順次読み出されて、第3図に示すように、患部9Aが画像表示器15の画面に表示されると共に、放射線照射範囲追従設定装置17に入力される。画像表示器15の画面に表示された患部9Aの画像により放射線照射範囲を決定し、放射線照射範囲設定入力器16により、第3図の破線で示すように、画面に放射線照射範囲マークMを表示すると同時にCPU17にも放射線照射範囲データM′を入力する。CPU17は放射線照射範囲のパターンを認識し、そのデータを放射線制御回路18に送る。放射線制御回路18は、放射線照射開始に先だって、患部9Aに放射線を集束させるように、4重極電磁石11及び双極電磁石20の励磁電流の電流値、極性を制御する。」(2ページ左下欄10行?右下欄16行)

そして、第3図には、患部9Aの僅かに外側を放射線照射範囲マークMが囲んでいる様子が図示されている。

上記記載及び図示内容から、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「放射線照射による治療装置において使用する放射線照射制御装置において、
超音波断層装置の探触子3及び4と、該探触子3及び4の位置を検出する探触子位置検出器3A,3B,3C及び4A,4B,4Cを備え、
探触子3及び4で受信された超音波を変換して得た画像データと、探触子位置デ-タを演算処理部14で演算処理して画像デ-タを合成し、この合成された画像データにより、患部9Aの画像を画像表示器15の画面に表示し、
放射線照射範囲設定入力器16により、画面上に表示される放射線照射範囲マークMが患部9Aの僅か外側を囲むように放射線照射範囲を決定すると同時にCPU17にも放射線照射範囲データM′を入力し、CPU17は放射線照射開始に先だって、放射線照射範囲のパターンを認識する放射線照射制御装置。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「放射線照射による治療装置」、「探触子3及び4」は、その機能ないし構造からみて、それぞれ、前者の「放射治療装置」、「少なくとも一つの超音波画像を生成するための手段」に相当する。
そして、引用発明の「放射線照射による治療装置」は、患者の身体内の病変を処置するためのものであり、「放射線照射制御装置」は治療装置と共に使用するものであるといえる。
また、引用発明において、放射線を照射すべき患部9Aの画像と、放射線照射範囲マークMを同一の画面に表示して放射線照射範囲を設定できるようにしている以上、画像を得るための探触子3及び4と治療装置の相対位置を知る手段があるのは当然であり、したがって、引用発明における、探触子位置検出器3A,3B,3C及び4A,4B,4Cが治療装置に対する探触子3及び4の位置を指示する手段として機能することも明らかである。
更に、引用発明において、患部9Aの画像を画像表示器15の画面に表示することは、病変位置を検証することに相当し、「放射線照射範囲設定入力器16により、画面上に表示される放射線照射範囲マークMが患部9Aの僅か外側を囲むように放射線照射範囲を決定する」ことは、放射線治療を計画することであって、しかも超音波画像における病変の位置を放射線治療計画における病変位置とを比較する手段を備えていなければできないことであるから、引用発明の放射線照射制御装置は、そのような比較手段をも備えた病変位置を検証するシステムといえる。
したがって、両者は、
「患者の身体内の病変を処置するための、放射治療装置と共に使用する、放射線治療計画において使用する病変位置検証システムにおいて、
(a)患者の身体における病変の少なくとも一つの超音波画像を生成するための手段と、
(b)超音波画像が生成される時、放射治療装置に対する、少なくとも一つの超音波画像を生成するための手段の位置を指示するための手段と、
(c)少なくとも1つの超音波画像における病変の位置を、放射線治療計画における病変位置とを比較する手段と
を含む病変位置検証システム。」である点で一致しているといえる。

そして、本願発明においては、放射線治療計画が「予め存在」し、超音波画像における病変の位置と比較するのが、「予め存在する放射線治療計画における病変位置」であるのに対し、引用発明においては、放射線治療計画が予め存在しているといえるか否かが明確でなく、超音波画像における病変の位置が予め存在する放射線治療計画における病変位置と比較されるのか否かが明確でない点で一応相違する。

ところが、本願発明における「予め存在する放射線治療計画」とはどのようなものであるか具体的には何ら特定されておらず、「予め」が、超音波画像を得る前であるとも特定されてない。
また、引用発明において作成される計画も、放射線照射に先だって作成されるものであるから、放射線治療計画が「予め存在」し、その「予め存在する放射線治療計画における病変位置」と超音波画像における病変の位置とが比較されるといえる。
そうすると、上記の相違点は、実質的には相違点ではなく、本願発明は、引用例に記載された発明であるといえる。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

なお、原審において通知された拒絶の理由は、本願発明が引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とするものであったが、本願発明が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたか否かを検討する際に、それらが同じであるか否かは、当然判断されるものであり、請求人もそれを踏まえた上で意見を述べているから、新たな拒絶理由を通知することなく上記のとおり審決した。
 
審理終結日 2007-01-24 
結審通知日 2007-01-30 
審決日 2007-02-13 
出願番号 特願平6-268025
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 芦原 康裕
一色 貞好
発明の名称 病変位置検証システム  
代理人 小田島 平吉  

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