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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 B27D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27D
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 B27D
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B27D
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 B27D
管理番号 1160182
審判番号 不服2005-1265  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-20 
確定日 2007-07-05 
事件の表示 平成10年特許願第251353号「木質仕上材」拒絶査定不服審判事件〔平成12年3月21日出願公開、特開2000-79602〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成10年9月4日の出願であって、平成16年12月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月20日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、同年2月17日付けで手続補正がなされたものである。


【2】平成17年2月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年2月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?4は、
「【請求項1】木質系の台板上に繊維板を接着するとともに繊維板上に木質系の化粧材を接着した木質仕上材であって、
前記繊維板として、密度0.35kg/cm3以上、厚さ5mm以下の繊維板を厚さ方向中間部で厚さ方向に直交するように切って2枚に分断した一方のものを使用し、
さらに前記繊維板と化粧材との間に熱硬化性樹脂を含むプリプレグ状態のシートを設け、温度130?180℃、圧力1?20kgf/cm2、プレス時間2.5?20分のプレス条件で、台板、繊維板、プリプレグシート、化粧材を加熱加圧することによって、シートを硬化させるとともに繊維板と化粧材とに樹脂を含浸させたことを特徴とする木質仕上材。
【請求項2】シートが、紙、織布、不織布のいずれかのシート基材に熱硬化樹脂を含浸させたものであることを特徴とする請求項1に記載の積層仕上材。
【請求項3】熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂のいずれか単独又は、2以上の混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層仕上材。
【請求項4】台板裏面に耐湿シートを接着したことを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の木質仕上材。」から、
「【請求項1】木質系の台板上に繊維板を接着するとともに繊維板上に木質系の化粧材を接着した木質仕上材であって、
前記繊維板として、密度0.60kg/cm3以上、厚さ5mm以下の繊維板を厚さ方向中間部で厚さ方向に直交するように切って2枚に分断した一方のものを使用し、
さらに前記繊維板と化粧材との間に熱硬化性樹脂を含むプリプレグ状態のシートを設け、温度130?180℃、圧力1?20kgf/cm2、プレス時間2.5?20分のプレス条件で、台板、繊維板、プリプレグシート、化粧材を加熱加圧することによって、シートを硬化させるとともに繊維板と化粧材とに樹脂を含浸させ、
前記シートは、1200デニールのガラス繊維を縦方向に3本/cm、横方向に3本/cmとしたガラス織布又は坪量10?1000g/m2で繊維長の短い短繊維と10mm以上50mm以下の長繊維が混合されたガラス不織布に熱硬化性樹脂溶液を含浸させたものであることを特徴とする木質仕上材。
【請求項2】前記ガラス不織布は、坪量50?250g/m2であり、繊維長3mm超の短繊維の割合が20?100%であることを特徴とする請求項1に記載の積層仕上材。
【請求項3】前記ガラス繊維の表面をシランカップリング剤でコートしたことを特徴とする請求項1または2に記載の積層仕上材。
【請求項4】前記熱硬化性樹脂を、含浸後半硬化状態にするための乾燥条件として、シートのできあがり水分含有率を5?15重量%としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の木質仕上材。」と補正された。


[2]判断
そこで、上記補正について検討すると、少なくとも、補正前の請求項1または2を引用している請求項3に係る発明の特定事項の一部である「熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂のいずれか単独又は、2以上の混合物である」との事項、及び、補正前の請求項1?3のいずれか1項を引用している請求項4に係る発明の特定事項の一部である「台板裏面に耐湿シートを接着した」との事項が、当該補正により削除されており、しかも、補正前のもとの各請求項と補正後の新たな各請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものにはなっていないから、本件手続補正は、補正の目的とし得る事項として特許法第17条の2第4項各号に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明の何れにも該当しない。


[3]まとめ
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


【3】本願発明について
[1]本願発明
平成17年2月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成16年9月6日付けの手続補正書によって補正された請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】木質系の台板上に繊維板を接着するとともに繊維板上に木質系の化粧材を接着した木質仕上材であって、
前記繊維板として、密度0.35g/cm3以上、厚さ5mm以下の繊維板を厚さ方向中間部で厚さ方向に直交するように切って2枚に分断した一方のものを使用し、
さらに前記繊維板と化粧材との間に熱硬化性樹脂を含むプリプレグ状態のシートを設け、温度130?180℃、圧力1?20kgf/cm2、プレス時間2.5?20分のプレス条件で、台板、繊維板、プリプレグシート、化粧材を加熱加圧することによって、シートを硬化させるとともに繊維板と化粧材とに樹脂を含浸させたことを特徴とする木質仕上材。
【請求項2】?【請求項4】(記載を省略する。上記【2】[1]を参照。)」(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)
(尚、「JIS A 5905」(繊維板)によれば、MDFやハードボードの密度は、それぞれ「0.35g/cm3以上」,「0.80g/cm3以上」となっており、請求項1の記載中、「kg/cm3」との単位は「g/cm3」の誤りと認められるから、同記載中の「密度0.35kg/cm3以上」は、上記のように「密度0.35g/cm3以上」と認定した。)


[2]引用刊行物
1.原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平9-225910号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「化粧板及びその製造方法」に関して、以下の事項が記載されている。
(イ)「【請求項1】少なくとも一つの表面層が木質繊維板である木質基材の該木質繊維板の表面にホルマリン系樹脂以外の高分子化合物の含浸層を形成し、該含浸層の上に接着剤層を介して表面化粧材を貼り合わせてなることを特徴とする化粧板。」(特許請求の範囲【請求項1】)
(ロ)「本発明の目的は、表面層が木質繊維板である木質基材を用いて化粧材を製造する場合に生じがちな衝撃力による木質繊維板のカケの発生をなくし、それにより、基材と表面化粧材との貼り合わせが良好とされる化粧板及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、基材として表面層が木質繊維板である木質基材を用いた化粧材に生じ易い層間剥離現象の発現を低減することのできる化粧板及びその製造方法を提供することにある。・・・」(段落【0008】?【0009】)
(ハ)「木質基材は、・・・針葉樹合板のような他の木質材の一面・・・に木質繊維板を貼り合わせたいわゆる木質繊維板複合板であってもよい。木質繊維板は、従来知られたMDF、HB(ハードボード)等、全ての木質繊維板が含まれる。例えばMDFとしては、・・・比重は0.35g/cm3 ?0.80g/cm3 程度のものである。・・・」(段落【0012】)
(ニ)「木質繊維板の表面に塗布するホルマリン系樹脂以外の高分子化合物は、上記木質繊維板の表層部に高硬度の樹脂含浸層、すなわち、繊維間に剥離が生じにくくしそれにより繊維板層にカケを生じ難くするような含浸層を形成する特性を持つ高分子化合物であればよく、熱硬化型でもよく、湿気硬化型でもよい。好ましくは、不飽和ポリエステル、アクリルウレタン、湿気硬化型ウレタン、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、等が用いられる。・・・これらの樹脂は硬化の際に3次元架橋する。それにより、木質繊維板の素材である木質繊維同志は強く緊締され、木質繊維板の耐衝撃強度及び剥離強度が向上する。」(段落【0013】)
(ホ)「・・・高分子化合物の硬化による木質繊維板表面層の強化と表面化粧材の貼り合わせとを同じ工程で行うことが可能となり、化粧板の製造工程が簡素化される。その際に、熱圧プレス等により加熱と同時に接着することもできる。」(段落【0017】)
(ヘ)「本発明においては、基材の表面層である木質繊維板の表面に、木質繊維板の製造に用いられるホルマリン系樹脂以外の高分子化合物を塗布含浸させて補強層を形成したことにより、木質繊維板の耐衝撃性及び耐剥離性が向上する。そのために、木質繊維板複合板に対して表面化粧材を貼り合わせる際に従来生じていた木質繊維板のカケは回避され、さらに、化粧板表面に外部から衝撃力が加わったとき、その部分から剥離が生じるのも回避される。」(段落【0018】)
(ト)「〔実施例1〕厚さ3mmのMDFと厚さ9mmの針葉樹合板とを貼り合わせたMDF複合板の該MDF表面にポリエステルタイプの湿気硬化型ウレタン樹脂を10g/尺2で塗布した後、該ウレタン樹脂を硬化させることなく直ちに水性であるSBR+尿素メラミン樹脂接着剤を9g/尺2で塗布して厚さ0.3mmのナラ突板を貼り、120℃、7kg/cm2で60秒間プレスした。・・・」(段落【0019】)
これら(イ)?(ト)の記載を含む刊行物1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「針葉樹合板等の木質材上に木質繊維板を接着するとともに木質繊維板上にナラ突板等の表面化粧材を接着した化粧板であって、
前記木質繊維板として、密度0.35g/cm3?0.80g/cm3 程度、厚さ3mmのものを使用し、
さらに前記木質繊維板と表面化粧材との間に不飽和ポリエステル,アクリルウレタン,シリコン系樹脂,エポキシ系樹脂等の熱硬化型の高分子化合物及びSBR+尿素メラミン樹脂等の接着剤の塗布層を設け、温度120℃、圧力7kgf/cm2、プレス時間60秒のプレス条件で、木質材、木質繊維板、塗布層、表面化粧材を加熱加圧することによって、木質繊維板の表面に不飽和ポリエステル,アクリルウレタン,シリコン系樹脂,エポキシ系樹脂等の熱硬化型の高分子化合物を含浸硬化させて補強層を形成するとともにSBR+尿素メラミン樹脂等の接着剤により木質繊維板に表面化粧材を貼り合わせた化粧板。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

2.同じく、特開平9-272102号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「木質系積層板の製造方法」に関して、以下の事項が記載されている。
(イ)「【請求項1】板状物を搬送する搬送体と板状物を厚さ方向に分割する分割用刃物とを有する板状物の分割装置を用いて、厚さが3mm以下の薄物中質繊維板を厚さ方向に二分割することにより、厚さが1.5mm以下の極薄中質繊維板を得ると共に、中質繊維板以外の木質系板材の少なくともいずれか片面に前記極薄中質繊維板を接着することを特徴とする木質系積層板の製造方法。
【請求項2】各極薄中質繊維板の分割された側の面を、木質系板材に接着することを特徴とする請求項1記載の木質系積層板の製造方法。」(特許請求の範囲)
(ロ)「【作用】前記請求項1に係る製造方法によれば、常法にては製造が困難であった厚さが1.5mm以下の極薄中質繊維板を、木質系板材の少なくともいずれか片面に接着して成る木質系積層板を得ることができ、また請求項2に係る製造方法によれば、接着が簡便であって、表面の平滑性・表面硬度を損なう虞もない。」(段落【0007】)
(ハ)「斯様な製造方法によれば、常法にては製造が困難であった厚さが1.5mm以下の極薄中質繊維板を、木質系板材の少なくともいずれか片面に接着することが可能となって、従来に比べて軽量性に優れる木質系積層板を得ることができると共に、木質系積層板全体の厚さに対して木質系板材の厚さが占める割合を従来に比べて多くすることができるから、必要に応じて、木質系積層板の特定の方向の曲げ強度の増強化等を図ることも可能となる。」(段落【0013】)
(ニ)「また、常法にて製造される薄物中質繊維板の表裏面には、熱圧に伴って他の部分よりも一段と圧密化された層が形成されるので、極薄中質繊維板の分割された側の面を、木質系板材に接着する構成を採れば、前記圧密化層を木質系積層板の表層に位置させることができ、表面の硬度を重視する使途には好適である。」(段落【0015】)

3.同じく、特開平9-117903号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「木質仕上材」に関して、以下の事項が記載されている。
(イ)「【請求項1】樹脂の含浸を可能とする台板上に熱硬化性樹脂を含むプリプレグ状態のシートを重ね合わせ、このシート上に樹脂の含浸を可能とする突き板を重ね合わせて熱プレスして互いに接着したことを特徴とする木質仕上材。」(特許請求の範囲【請求項1】)
(ロ)「図1に示す実施例では、台板1上に熱硬化性樹脂を含むシート2を貼り、このシート2上に突き板3を貼ってある。台板1としては、樹脂の含浸を可能とする材質、例えば合板,木質系繊維ボード,パーティクルボード,ウエハーボード等あるいはこれらの複合板が好適に使用される。シート2は、紙,織布,不織布のいずれかのシート基材20(図2参照)に熱硬化性樹脂を含浸させたものである。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂,エポキシ樹脂,ウレタン樹脂,ユリア樹脂のいずれか1又は2以上の混合物である。シート基材20としての紙は、石膏ボード紙,クラフト紙,レーヨン紙等が好適に使用できる。また不織布や織布の繊維材料としては、ガラス繊維,ビニロン繊維,ポリエステル繊維等が好適に使用できる。樹脂の含浸を可能とする突き板3は化粧張り用の木の薄板が好適に使用でき、厚みは1mm以下が好ましい。」(段落【0007】)
(ハ)「台板1、プリプレグシート2、突き板3のプレス条件としては、温度130?180℃が好ましく、さらには140?160℃が好ましい。130℃より低いと樹脂の硬化が充分でなく耐傷性が発現できず、180℃より高いと樹脂の硬化が速すぎて台板1や突き板3との接着が不十分となり、かつ台板1の反りも大きくなってしまうためである。また、圧力としては、1?20kgf/cm2 が好ましく、さらに好ましくは5?15kgf/cm2 であり、1kgf/cm2 より低いと樹脂の突き板3へのしみ出しが充分でないために耐傷性が低くなり、20kgf/cm2 より大きいと台板1の反りが大きくなる等の不都合が生ずる。さらにまた、プレス時間としては、2.5?20分間が好ましくさらに好ましくは4?12.5分である。2.5分より短いと樹脂の硬化が充分ではなく、耐傷性が低下し、20分より長いと樹脂の劣化が生じ耐傷性も低下し、台板1の反りも大きくなる。」(段落【0015】)


[3]対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「針葉樹合板等の木質材」、「木質繊維板」、「ナラ突板等の表面化粧材」、「化粧板」は、本願発明の「木質系の台板」、「繊維板」、「木質系の化粧材」、「木質仕上材」にそれぞれ相当し、
また、刊行物1記載の発明の「密度0.35g/cm3?0.80g/cm3 程度、厚さ3mmのもの」と、本願発明の「密度0.35g/cm3以上、厚さ5mm以下の繊維板を厚さ方向中間部で厚さ方向に直交するように切って2枚に分断した一方のもの」とは、「密度0.35g/cm3以上、所定厚さのもの」である点で技術的に共通し、
また、刊行物1記載の発明の「不飽和ポリエステル,アクリルウレタン,シリコン系樹脂,エポキシ系樹脂等の熱硬化型の高分子化合物及びSBR+尿素メラミン樹脂等の接着剤の塗布層」と、本願発明の「熱硬化性樹脂を含むプリプレグ状態のシート」とは、「熱硬化性樹脂を含む接着層」である点で技術的に共通し、
さらに、刊行物1記載の発明の「温度120℃、圧力7kgf/cm2、プレス時間60秒」と、本願発明の「温度130?180℃、圧力1?20kgf/cm2、プレス時間2.5?20分」とは、「圧力7kgf/cm2」が「圧力1?20kgf/cm2」に含まれるので、「所定温度、圧力7kgf/cm2、所定時間」である点で技術的に共通し、
そして、刊行物1記載の発明の「木質繊維板の表面に不飽和ポリエステル,アクリルウレタン,シリコン系樹脂,エポキシ系樹脂等の熱硬化型の高分子化合物を含浸硬化させて補強層を形成するとともにSBR+尿素メラミン樹脂等の接着剤により木質繊維板に表面化粧材を貼り合わせ」と、本願発明の「シートを硬化させるとともに繊維板と化粧材とに樹脂を含浸させ」とは、「熱硬化性樹脂を含む接着層により繊維板と化粧材とを接着させ」である点で技術的に共通するから、両者は、
「木質系の台板上に繊維板を接着するとともに繊維板上に木質系の化粧材を接着した木質仕上材であって、
前記繊維板として、密度0.35g/cm3以上、所定厚さのものを使用し、
さらに前記繊維板と木質系の化粧材との間に熱硬化性樹脂を含む接着層を設け、所定温度、圧力7kgf/cm2、所定時間のプレス条件で、台板、繊維板、接着層、化粧材を加熱加圧することによって、熱硬化性樹脂を含む接着層により繊維板と化粧材とを接着させた木質仕上材。」の点で一致し、下記の点で相違している。
<相違点1>
使用する繊維板が、本願発明では、密度0.35g/cm3以上、厚さ5mm以下の繊維板を厚さ方向中間部で厚さ方向に直交するように切って2枚に分断した一方のものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、密度0.35g/cm3以上のものではあるが、厚さ3mmであり、厚さ5mm以下の繊維板を厚さ方向中間部で厚さ方向に直交するように切って2枚に分断した一方のものではない点。
<相違点2>
繊維板と化粧材との間に設けられる熱硬化性樹脂を含む接着層が、本願発明では、熱硬化性樹脂を含むプリプレグ状態のシートであって、温度130?180℃、圧力1?20kgf/cm2、プレス時間2.5?20分のプレス条件で加熱加圧することによって、シートを硬化させるとともに繊維板と化粧材とに樹脂を含浸させたものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、接着層が不飽和ポリエステル,アクリルウレタン,シリコン系樹脂,エポキシ系樹脂等の熱硬化型の高分子化合物及びSBR+尿素メラミン樹脂等の接着剤の塗布層であり、プレス条件が温度130?180℃、プレス時間2.5?20分ではなく、加熱加圧することによって、シートを硬化させるとともに繊維板と化粧材とに樹脂を含浸させるものではない点。


[4]作用効果・判断
<相違点1について>
相違点1について検討するために刊行物2をみると、刊行物2には、厚さが1.5mm以下の極薄中質繊維板(本願発明の「繊維板」に相当する。以下同様。)を、中質繊維板以外の木質系板材(「木質系の台板」)の少なくともいずれか片面に接着することで、表面硬度を高め、軽量化、曲げ強度の増強化等を図った木質系積層板(「木質仕上材」)において、厚さが1.5mm以下の極薄中質繊維板を、厚さが3mm以下の薄物中質繊維板(「厚さ5mm以下の繊維板」)を厚さ方向に二分割することにより得るようにした技術が記載されており、当該技術を、刊行物1記載の発明の密度0.35g/cm3以上の繊維板に適用して、本願発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が格別の技術的困難性を要することなしに容易になし得たものと認められる。
<相違点2について>
相違点2について検討するために刊行物3をみると、刊行物3には、熱硬化性樹脂を含むプリプレグ状態のシートであって、樹脂の含浸を可能とする木質形繊維ボード(「繊維板」)、プリプレグシート、樹脂の含浸を可能とする化粧張り用の木の薄板が好適に使用できる突き板(「化粧材」)を、温度130?180℃、圧力1?20kgf/cm2、プレス時間2.5?20分のプレス条件で加熱加圧することによって、シートを硬化させるとともに木質形繊維ボード等と突き板とに樹脂を含浸させた木質仕上材についての技術が記載されており、当該技術を、刊行物1記載の発明の繊維板と化粧材との接着に適用して、本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が格別の技術的困難性を要することなしに容易になし得たものと認められる。

そして、本願発明全体の効果も刊行物1記載の発明及び刊行物2,3記載の技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。


[5]むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2,3記載の技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-08 
結審通知日 2007-05-10 
審決日 2007-05-22 
出願番号 特願平10-251353
審決分類 P 1 8・ 572- Z (B27D)
P 1 8・ 574- Z (B27D)
P 1 8・ 571- Z (B27D)
P 1 8・ 121- Z (B27D)
P 1 8・ 573- Z (B27D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 常見 優佐藤 健史  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 石井 哲
西田 秀彦
発明の名称 木質仕上材  
代理人 増田 竹夫  

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