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審決分類 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1160209
審判番号 不服2006-6688  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-10 
確定日 2007-07-05 
事件の表示 特願2003-80434号「外科用器械」拒絶査定不服審判事件〔平成15年8月26日出願公開,特開2003-235854号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成5年9月10日(パリ条約による優先権主張1992年9月14日,米国)に出願した特願平5-248472号の一部を平成15年3月24日に新たな特許出願としたものであって,平成17年12月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成18年4月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 出願当初の特許請求の範囲
本願の出願当初の特許請求の範囲の記載は,次のとおりのものである。
「【請求項1】 取手部分と操作部分とを具備し,該操作部分は,その遠位端部を形成する一対の発散部材と,該発散部材を略平行アライメントにするために該発散部材上を往復して滑動することができる手段とを具備する組織を操作する際に使用される外科用器械。
【請求項2】 開位置及び閉位置を有する締結器と,
中空管軸によって連結された作動端及び適用端と
締結器が閉位置に有る状態で,器械の適用端に閉塞締結器を供給する手段と
を具備する閉塞締結器を適用するための内視鏡器械。
【請求項3】 閉塞させるために組織に係合し,圧縮する手段を備えた請求項2の内視鏡器械。
【請求項4】 内視鏡締結器適用器械と外科締結手段との組合せにおいて,組織を閉塞するための外科締結手段を具備し,
該器械が,中空管軸によって連結された作動端及び適用端と,
締結器が閉位置に有る状態で,器械の適用端に締結器を供給する手段と,
該適用端と共働する,組織を閉塞するように組織に係合し圧縮する手段と
を具備することを特徴とする組合せ。」

3 平成17年5月19日付け拒絶理由通知書
平成17年5月19日付け拒絶理由通知書によって,本願は,次の理由によって拒絶をすべきものであることが通知された。
「理由
1.この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない。
・・・(中略)・・・
記(引用文献等については引用文献等一覧参照)

A.理由1について
・請求項1
・備考
請求項1には『発散部材』,『発散部材上を往復して滑動することができる手段』が記載されている。しかし,当該部材,手段がどのような働きを有するものであるのかが請求項1の記載からは明確に理解できないため,請求項1に係る発明を明瞭に理解することができない。
請求項1には『操作部分』と記載されているが,当該操作部分は,何をどのように操作するのかが不明瞭である。また,請求項1には『組織を操作する』と記載されているが,組織を操作するとはどのような意味であるのかが不明瞭である。

・請求項2
・備考
請求項2には『締結器』と記載されているが,該締結器は何を締結するものであるのかが不明瞭である。また,請求項2における『締結器』と『閉塞締結器』との関係が不明瞭である。
請求項2には『作動端』と記載されているが,該作動端は何を作動させるためのものであるのかが不明瞭である。
請求項2には『適用端』と記載されているが,該適用端は何を適用するためのものであるのかが不明瞭である。また,請求項2における『作動端』と『適用端』との関係が不明瞭である。
また,請求項2に係る発明における『内視鏡』と他の構成との関係が不明瞭である。

・請求項4
・備考
請求項4における『外科締結手段』と『締結器』と『組織に係合し圧縮する手段』との関係が不明瞭である(それぞれ,同じような機能を有する部材であると認められるが,それぞれの部材の作用が明瞭に把握できない)。
請求項4には『作動端』と記載されているが,該作動端は何を作動させるためのものであるのかが不明瞭である。
また,請求項4に係る発明における『内視鏡』と他の構成との関係が不明瞭である。・・・(以下略)」

4 平成17年11月30日付け手続補正書
この拒絶理由に対し,平成17年11月30日付け手続補正書により,次のとおり,特許請求の範囲の記載が補正された。
「【請求項1】 取手部分と操作部分とを具備し,
該操作部分は,その遠位端部を形成する一対の発散部材と,
該発散部材を略平行にするために該発散部材上を往復して滑動することができる手段とを具備する組織を操作する際に使用される外科用器械。
【請求項2】 開位置及び閉位置を有する締結器と,
中空管軸によって連結された作動端及び適用端と締結器が閉位置に有る状態で,器械の適用端に閉塞締結器を供給する手段とを具備する閉塞締結器を適用するための内視鏡器械。
【請求項3】 閉塞させるために組織に係合し,圧縮する手段を備えた請求項2の内視鏡器械。
【請求項4】 内視鏡締結器適用器械と外科締結手段との組合せにおいて,
組織を閉塞するための外科締結手段を具備し,
該内視鏡締結器適用器械が,中空管軸によって連結された作動端及び適用端と,締結器が閉位置に有る状態で,器械の適用端に締結器を供給する手段と,該適用端と共働する,組織を閉塞するように組織に係合し圧縮する手段とを具備することを特徴とする組合せ。」

5 平成17年12月26日付け拒絶査定
上記補正後の特許請求の範囲の記載に対し,平成17年12月26日付けで拒絶査定がなされた。
「この出願については,平成17年 5月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由1,2によって,拒絶をすべきものである。
なお,意見書並びに手続補正書の内容を検討したが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。

備考
平成17年11月30日付手続補正書により,請求項1における『略平行アライメントにする』の記載が『略平行にする』と補正され,請求項4における『該器械』の記載が『該内視鏡締結器適用器械』と補正された。しかし,これらの補正は,特許請求の範囲の記載の内容を実質的に変更する補正ではなく,補正後の請求項1-4に係る発明が,平成17年 5月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由1,2の拒絶理由を解消しているとは認められない。」

6 拒絶査定不服審判の請求及び平成18年5月10日付け手続補正書
この拒絶査定に対し,平成18年4月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,平成18年5月10日付け手続補正書により,次のとおり,特許請求の範囲が補正された。
「【請求項1】 身体組織に外科用締結器を適用する外科用器械において,
該外科用締結器が,常閉組織クランプ位置と開組織受容位置との間で可動な対面組織クランプ部分を有し,
該外科用器械が,近位端と遠位端とを有するハウジングと,上記閉位置において,組織クランプ部分で複数の該外科用締結器を可動に支持する,該ハウジング内の支持部と,該組織クランプ部分を上記開位置に移動せしめるように,該外科用締結器の各々の組織クランプ部分に係合可能な,該ハウジングの遠位端におけるオープナーと,該ハウジングの近位端に設置された手動作動ハンドルと,該外科用締結器の各々を該ハウジング内においてその遠位端の方に軸方向の移動せしめ,(1)該組織クランプ部分を,組織を受容するように,上記閉位置から上記開位置に移動せしめるように,該オープナーと係合せしめ,(2)該組織クランプ部分を,上記開位置から上記閉位置に戻すように,該オープナーとの係合を外す,該作動ハンドルによって作動可能で,該ハウジング内のドライバーとを具備することを特徴とする外科用器械。
【請求項2】 互いの方にバイアスを受けている組織把持部分を各々有するクリップを身体組織に適用する外科用器械において,
複数のクリップを貯蔵するクリップホルダーと,器械の遠位端に位置する組織圧縮機構と,クリップの該把持部分を,圧縮された組織と間隔を置き,該器械の遠位端方向で相互に広がるようにして,クリップを該ホルダーから該組織圧縮機構に供給する供給機構と,該組織把持部分が,圧縮された組織と把持関係になるように,クリップと協働する開放手段とを具備することを特徴とする外科用器械。」

7 当審の判断
平成17年5月19日付け拒絶理由通知書(上記3を参照)の拒絶理由は,出願当初の請求項1に記載の発明の構成である「発散部材」,「発散部材上を往復して滑動することができる手段」についてはどのような働きであるか,「操作部分」についてはどのように操作するか,そして「組織を操作する」とはどのような意味であるかが,同請求項の記載からでは明確でないこと(以下,「拒絶理由指摘1」という。),同請求項2に記載の発明の構成である「締結器」が何を締結するものであるか,「締結器」と「閉塞締結器」はどのような関係であるか,「適用端」は何を適用するためのものなのか,「作動端」と「適用端」はどのような関係であるか,「内視鏡」と他の構成はどのような関係であるかが,明確でないこと(以下,「拒絶理由指摘2」という。),同請求項4に記載の発明の構成である「外科締結手段」と「締結器」と「組織に係合し圧縮する手段」はどのような関係であるか,「作動端」は何を作動させるためのものであるか,「内視鏡」と他の構成はどのような関係であるかが,明確でないこと(以下,「拒絶理由指摘3」という。)から,請求項1,2,4の記載が特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていないとしたものである。
これに対し,出願人は,平成17年11月30日付け手続補正書(上記4を参照)により,同請求項1ないし4の記載を補正したが,拒絶理由の指摘の対象となっている構成である,請求項1の「発散部材」,「発散部材上を往復して滑動することができる手段」,「操作部分」及び「組織を操作する」,請求項2の「締結器」,「閉塞締結器」,「適用端」,「作動端」,「内視鏡」,請求項4の「外科締結手段」,「締結器」,「組織に係合し圧縮する手段」,「作動端」,「内視鏡」に関しては,何ら補正しなかった。
そして,本願は,平成17年12月26日付けで,「平成17年 5月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由1,2の拒絶理由を解消しているとは認められない。」として,拒絶査定(上記5参照)された。
なお,上記手続補正書と同日付けの意見書において,「審査官殿の上記の通りの御見解に鑑み,出願人は,本意見書と同日付けの手続補正書によって,本願明細書の特許請求の範囲の欄の記載を訂正し,本願発明の要旨を,より明確に致しました。」と主張するが,上記拒絶理由指摘1ないし3に対して何ら補正も対応もしていないのであるから,この主張は明らかに失当である。

これに対し,出願人は,拒絶査定不服審判を請求し,平成18年5月10日付け手続補正書により,特許請求の範囲の記載を補正した(上記6参照)。
しかし,補正後の請求項1の記載は,次の(1)及び(2)の理由により明りょうであるとはいえない。
(1)「該組織クランプ部分を,組織を受容するように,上記閉位置から上記開位置に移動せしめるように,該オープナーと係合せしめ,」という記載について,「オープナー」という用語の意味が明りょうでなく,本願明細書の発明の詳細な説明で説明されていないので,その記載内容が明りょうでない。
(2)「該組織クランプ部分を,上記開位置から上記閉位置に戻すように,該オープナーとの係合を外す,該作動ハンドルによって作動可能で,該ハウジング内のドライバー」という記載について,日本語として理解できないだけでなく,「組織クランプ部分」「オープナー」「作動ハンドル」という用語は本願明細書の発明の詳細な説明で説明されておらず,これらが互いにどのような関係を有するのか不明であるので,その記載内容が明りょうでない。
また,補正後の請求項2の記載は,次の(3)ないし(5)の理由により明りょうであるとはいえない。
(3)「互いの方にバイアスを受けている」という記載について,日本語として理解できないだけでなく,この記載自体が本願明細書で説明されておらず,どのような状態を意味しているのか不明であるので,その記載内容が明りょうでない。
(4)「クリップの該把持部分を,圧縮された組織と間隔を置き,該器械の遠位端方向で相互に広がるようにして,クリップを該ホルダーから該組織圧縮機構に供給する供給機構」という記載について,日本語として理解できないだけでなく,「クリップの把持部分」「ホルダー」「組織圧縮機構」「供給機構」という用語は本願明細書で説明されておらず,これらが互いにどのような関係を有するのか不明であるので,その記載内容が明りょうでない。
(5)「該組織把持部分が,圧縮された組織と把持関係になるように,クリップと協働する開放手段」という記載について,「組織把持部分」「開放手段」という用語は本願明細書で説明されておらず,これらが互いにどのような関係を有すれば,「圧縮された組織と把持関係になるように,クリップと協働する」こととなるのか不明であるので,その記載内容が明りょうでない。

よって,補正後の請求項1及び2の記載が明りょうであるとはいえないので,本願は,依然として,特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない。

なお,平成18年6月22日付け手続補正書により補正された審判請求書において,出願人は,「(3)理由1について 本願の特許請求の範囲の記載は,平成18年5月10日付け手続補正書によってされた。これによって,理由1は解消したと確信します。・・・(中略)・・・(4-2)補正の根拠 上記補正された外科用器械の構成の一例が,本願明細書の段落0012に説明されており,その動作の一例が,本願明細書の段落0013-0015に説明されている。」と主張する。
しかしながら,上述のとおり補正後の請求項1及び2の記載自体が明りょうであるとはいえず,また,補正後の請求項1で用いられた「外科用締結器」「常閉組織クランプ位置」「開組織受容位置」「対面組織クランプ部分」「ハウジング」「支持部」「オープナー」「手動作動ハンドル」という用語,補正後の請求項2で用いられた「互いの方にバイアスを受けている」「組織把持部分」「クリップホルダー」「組織圧縮機構」「供給機構」「開放手段」という用語は,明細書の発明の詳細な説明(特に,出願人が補正の根拠であると主張する,段落【0012】-【0015】を参照)に記載されたものともいえないので,出願人の主張は採用できない。
また,上記の平成18年6月22日付け手続補正書により補正された審判請求書の「(4)(4-1)本願発明の要旨」(2ページ参照)において,出願人は,補正後の請求項1及び2の記載について図番を付して説明しているが,それによれば,補正後の請求項1の「外科用締結器」は同請求項2の「クリップ」に相当し,以下同様に,前者の「組織クランプ部分」は後者の「組織把持部分」に,前者の「支持部」は後者の「クリップホルダー」に,前者の「オープナー」は後者の「組織圧縮機構」に,前者の「供給機構」は後者の「ドライバー」に,それぞれ相当することとなっている。しかし,これでは,同請求項1,2の記載において用語が統一されておらず,また,当該用語の一部は発明の詳細な説明に記載されたものでもないので,本願は,特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていないおそれがあるといえる。

8 むすび
以上のとおり,本願は,特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていないから,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-19 
結審通知日 2007-01-30 
審決日 2007-02-14 
出願番号 特願2003-80434(P2003-80434)
審決分類 P 1 8・ 534- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内藤 真徳石川 太郎  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 芦原 康裕
森川 元嗣
発明の名称 外科用器械  
代理人 小田島 平吉  

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