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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B29D 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 B29D |
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管理番号 | 1160388 |
審判番号 | 不服2004-13479 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-06-30 |
確定日 | 2007-08-06 |
事件の表示 | 平成10年特許願第290681号「半導電性ゴムベルトの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月25日出願公開、特開2000-117851、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年10月13日の特許出願であって、平成16年1月29日付けで拒絶理由通知がなされ、同年4月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月30日に審判請求がなされ、同年7月27日に手続補正書が提出され、同年10月15日に前置報告がなされ、当審において平成18年12月28日付けで審尋がなされ、平成19年2月28日に回答書が提出されたものである。 2.補正の却下の決定 [結 論] 平成16年7月27日付けの手続補正を却下する。 [理 由] (1)補正の内容 平成16年7月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、 「【請求項1】 体積固有抵抗が104?1012Ω・cmであるシームレスの半導電性ゴムベルトの製造方法であって、 スパイラルフロー型の溝が形成された内筒部を有するクロスヘッドを備えた押出機を使用し、原料未加硫ゴム組成物を可塑化して前記押出機より押し出す押出工程、前記押出機における前記原料未加硫ゴム組成物の押し出し方向と略直交方向に、前記内筒部の内部を筒状金型を移動させつつ前記原料未加硫ゴム組成物を前記筒状金型外面に層状に被覆して未加硫ゴムベルト成形体とする未加硫ゴムベルト成形工程、及び前記未加硫ゴムベルト成形体を加硫して半導電性ゴムベルトとする加硫工程を備えた半導電性ゴムベルトの製造方法。」 から、 「【請求項1】体積固有抵抗が104?1012Ω・cmであるシームレスの半導電性ゴムベルトの製造方法であって、 外筒部と内筒部とを有し、前記外筒部と前記内筒部の間には筒状空間が形成されており、前記内筒部にはスパイラルフロー型の溝(内筒部を1周以上するものを除く)が形成されているクロスヘッドを備えた押出機を使用し、原料未加硫ゴム組成物を可塑化して前記押出機より押し出す押出工程、前記押出機における前記原料未加硫ゴム組成物の押し出し方向と略直交方向に、前記内筒部の内部を筒状金型を移動させつつ前記原料未加硫ゴム組成物を前記筒状金型外面に層状に被覆して未加硫ゴムベルト成形体とする未加硫ゴムベルト成形工程、及び前記未加硫ゴムベルト成形体を加硫して半導電性ゴムベルトとする加硫工程を備えた半導電性ゴムベルトの製造方法。」 とする補正を含むものであり、これにより、補正前の「スパイラルフロー型の溝」を「スパイラルフロー型の溝(内筒部を1周以上するものを除く)」と補正(以下、「補正事項(a)という。」)するものである。 (2)補正の適否の判断 本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書又は図面」という。)には、スパイラルフロー型の溝について次のとおり記載されている。 (ア)「クロスヘッド3の構造の具体例を、図2に示した。クロスヘッド3は、未加硫ゴム組成物6が押出機から押し出される方向とほぼ直交する方向を軸芯として、外筒部21と内筒部23を有し、フランジ29によって押出機の先端部に装着される。外筒部21と内筒部23の間には筒状空間が形成されており、押出機から押し出された未加硫ゴム組成物6は、この空間において筒状に成形され、先端部に押し出される。外筒部21は、中央付近に流れ調整リング17と先端部に厚み調整手段11を備えており、また内筒部23はその内部を金型5が移動可能であり、流れを調整し、均一化するためのエッジリング19とスパイラルフロー型の溝25を備えている。・・・」(段落【0029】) (イ)「クロスヘッドに設けられた、未加硫ゴム組成物の流れを調整し、均一化するための手段としては、上述のスパイラルフロー型の溝のほかに公知の手段を使用してもよく、・・・」(段落【0031】) (ウ) (【図1】) 上記のとおり、当初明細書又は図面には、段落【0029】及び【0031】に、クロスヘッドの内筒部23が「未加硫ゴム組成物の流れを調整し、均一化するための手段」としてスパイラルフロー型の溝25を具備する旨、記載されており、図1には、長辺が金型5の移動方向に対して傾斜したほぼ平行四辺形の複数の溝「25」が互いに平行に隣接して内筒部表面を帯状に取り巻いていることが示されている。 そして、当初明細書又は図面の上記(ア)?(ウ)及びその他の箇所には、上記スパイラルフロー型の溝の長さの技術的意義に関する記載はなされておらず、まして、スパイラルフロー型の溝が内筒部の周囲を1周以上するか否かについては何ら言及されていないので、補正事項(a)により請求項1に係る発明を特定するために必要な事項となった「スパイラルフロー型の溝(内筒部を1周以上するものを除く)」との点が、当初明細書又は図面に記載されていたものということはできない。 また、「(内筒部を1周以上するものを除く)」との記載を付加する補正事項(a)が、いわゆる「除くクレーム」の補正に当たるか否かについてみると、「除くクレーム」の補正とは、請求項に係る発明が先行技術と重なるために新規性等(特許法第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条)を失うおそれがある場合に、補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで当該重なりのみを除く補正(特許庁編「特許・実用新案 審査基準」第III部第I節4.2(4)参照。)をいうのであるが、本件補正により回避しようとする拒絶査定の理由は進歩性欠如に係る特許法第29条第2項違反についてであるから、本件補正は、請求項に係る発明が先行技術と重なるために新規性等を失うおそれがある場合に該当しない。 ゆえに、補正事項(a)は、いわゆる「除くクレーム」の補正にあたるものとすることもできない。 したがって、本件補正は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 3.本願発明 平成16年7月27日付けの手続補正は上記のとおり却下された。 本願の請求項1ないし2に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、同年4月2日付け手続補正により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された以下の事項により特定されるとおりのものと認める。 「【請求項1】 体積固有抵抗が104?1012Ω・cmであるシームレスの半導電性ゴムベルトの製造方法であって、 スパイラルフロー型の溝が形成された内筒部を有するクロスヘッドを備えた押出機を使用し、原料未加硫ゴム組成物を可塑化して前記押出機より押し出す押出工程、前記押出機における前記原料未加硫ゴム組成物の押し出し方向と略直交方向に、前記内筒部の内部を筒状金型を移動させつつ前記原料未加硫ゴム組成物を前記筒状金型外面に層状に被覆して未加硫ゴムベルト成形体とする未加硫ゴムベルト成形工程、及び前記未加硫ゴムベルト成形体を加硫して半導電性ゴムベルトとする加硫工程を備えた半導電性ゴムベルトの製造方法。 【請求項2】 前記加硫工程にて得られた半導電性ゴムベルトを所定厚みまで研磨する研磨工程を備えた請求項1に記載の半導電性ゴムベルトの製造方法。」 4.原査定の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、請求項1及び2に係る発明は、引用文献1(特開平8-300507号公報)及び引用文献2(特開昭60-190323号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 5.引用文献の記載事項 引用文献1の特許請求の範囲、請求項1には、次のとおり、記載されている。 「導電材が混入されたゴムを押出し成形し未加硫ゴムチューブを成形する押出し成形工程と、押出し工程後の未加硫ゴムチューブを中子に嵌合後、加硫装置により加硫する加硫工程とからなり、加硫工程では、ゴムチューブの外側面を空気との接触を遮断するよう弾性体で覆い、この弾性体にゴムチューブが中子に密着する程度の流体圧をかけるとともに、ゴムチューブを加熱加硫することを特徴とする導電性ベルトの製造方法。」 次に、引用文献2の特許請求の範囲、第1項には、次のとおり、記載されている。 「外周に凹凸模様を施した芯金を押出し成形機のクロスヘッドダイを通過させて芯金の外周に液状ゴム、又は液状樹脂を付着させ、該材料層(7)が固化した後、芯金(4)をクロスヘッドダイから外して内面に凹凸模様を有する弾性チューブを形成し、該チューブを裏返して外面に凹凸模様(71)を表出させることを特徴とする外表面に凹凸模様を有する弾性チューブの製法。」 6.対比・判断 引用文献1及び2のいずれにも、本願発明1における、「半導電性ゴムベルトの製造方法」であって「クロスヘッドを備えた押出機」を使用し「筒状金型を移動させつつ」「原料未加硫ゴム組成物を前記筒状金型外面に層状に被覆」する点について、記載も示唆もするところがない。 そして、本願発明1は、本願明細書に記載のとおりの作用・効果を奏するものと認められる。 よって、本願発明1は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 次に、本願発明2は、本願発明1を引用して更に技術的限定を付加したものであり、本願発明1が引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本願発明2も同様の理由により、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、拒絶査定に引用された特開平9-117953号公報及び特開平9-39069号公報の記載事項は、上記判断に影響を及ぼすものではない。 7.むすび 以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2007-07-25 |
出願番号 | 特願平10-290681 |
審決分類 |
P
1
8・
561-
WY
(B29D)
P 1 8・ 121- WY (B29D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 杉江 渉、亀ヶ谷 明久 |
特許庁審判長 |
井出 隆一 |
特許庁審判官 |
野村 康秀 高原 慎太郎 |
発明の名称 | 半導電性ゴムベルトの製造方法 |
代理人 | 尾崎 雄三 |
代理人 | 梶崎 弘一 |
代理人 | 谷口 俊彦 |