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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02B
管理番号 1160462
審判番号 不服2005-21850  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-11 
確定日 2007-07-11 
事件の表示 平成 8年特許願第 84543号「水路用コンクリートブロック」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月22日出願公開、特開平 9-250118〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年3月14日の出願であって、平成17年9月29日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成17年11月11日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、平成17年12月12日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年12月12日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年12月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「断面U形とされたコンクリートブロック本体の側壁の片方あるいは両側の壁における上下にそれぞれ開口部を形成し、または、側壁の片方あるいは両側の壁に複数個の開口部を形成し、それら開口部の外側にそれぞれ内腔部を形成し、しかも該内腔部がコンクリートブロック本体と一体に形成されたことを特徴とする水路用コンクリートブロック。」
と補正された。

上記補正は、特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「内腔部」を「コンクリートブロック本体と一体に形成された」ものに限定したものであって、特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献に記載された事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、実願平5-63712号(実開平7-34036号)のCD-ROM(以下、「引用文献」という。)には、「多自然型コンクリート水路」に関し、図面の図1?図10とともに、次の事項が記載されている。

(イ)「【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】 コンクリート水路を構築するU型、L型、逆T、床版コンクリート3面柵渠等の水路本体内面側壁で植物が生息出来る様な凹凸保水加工粗面の表面肌とし、この側壁低部に複数個の魚貝類貫通孔を設け、その側壁の外壁低部に魚貝類生息用空洞アタッチメントを組み立てられる様にし、この上部には蔦根又は蔦種子植栽袋をセット出来る様にし、魚貝類貫通孔の上部又は蔦専用貫通孔を通し水路の内面側壁を蔦を這わす様にしてなる漁床を兼た多自然型コンクリート水路。」

(ロ)「【図面の簡単な説明】【図1】は、本考案の代表的U字型状製品の概要を示す全体斜視図。
【図2】は、【図1】の要部断面概要図。・・・
【図4】は、側壁上載荷重の大きい現場に漁床部を仮想背面突出版構成とした製品の施工断面概要斜視図。
【図5】は、一方の漁床部と植栽部を多段とし、一方をU字を横にして漁床部を、中央にも天端花壇、下部漁床壁構成の施工現場概要斜視図。・・・
【図10】は、床版を背面突出版として漁床部と蔦植栽部を構築した状態の要部概要図。」

(ハ)「【0001】【産業上の利用分野】本考案は、U型、L型、逆T、床版コンクリート打設の3面柵渠等の用水路又は排水路の内側壁に蔦を、その低部外壁盛土下に魚貝類を生息出来る組合せ空洞部を構成してなる多自然型コンクリート水路に関するものである。」

(ニ)「【考案の実施例】【0012】実施図面の【図1】は、本考案の代表的U型一体製品の概要を示す全体斜視図である。
【0013】まず、この図面を中心にして説明すると、床版1.を介して、両側壁2.2.が一体とする比較的小断面の水路本体A.の低部に複数個の開孔部3-1.3-1.を設け、その側壁の外壁低部盛土下に成る様に魚貝類生息用アタッチメントB-1.を取り付け手段4.(接着剤でも良いがインサートボルトが一般的に安全で経費が安価である)で固定する。
【0014】このアタッチメントB-1.やB-2.B-5.B-7.は、工場出荷時に組み立て出荷しても良いがアタッチメントB-3.B-4.B-6.B-8.B-9.は、比較的大きい事と運搬、施工が困難なために現地施工とする。」

(ホ)「【0016】この上部には、蔦根又は蔦種子植栽袋C.を嵌設施工出来る様にし、フイルターD.を覆って盛土E.を埋戻し(現地の流用土でも良い)て施工を完了するものである。」

また、引用文献の図面には、以下の態様が示されている。
(へ)図面の【図2】には、U字型状製品の概要を示す全体斜視図である【図1】の要部断面概要図として、U字型状製品の一方の側壁2に設けられた魚貝類貫通孔3-1の上部に蔦生息貫通孔3-2が設けられ、アタッチメントの下部の空洞部が、水路の魚貝類貫通孔3-1の外側に設けられるとともに、アタッチメントの下部空間と仕切られ蔦種子植栽袋Cがセットされた空間が水路の蔦生息貫通孔3-2の外側に設けられた態様が示されている。

(ト)施工現場概要斜視図【図5】には、側壁における上下に魚貝類貫通孔3-1及び蔦生息貫通孔3-2を形成し、それぞれの貫通孔の水路の外側の位置に、それぞれ仕切られた空間を設けた態様が示されている。

そして、上記記載事項(イ)?(ト)並びに図面に記載された内容を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
コンクリート水路を構築するU型一体製品の一方の側壁の低部には複数個の魚貝類貫通孔3-1が設けられ、魚貝類貫通孔3-1の上部に蔦生息貫通孔3-2が設けられるとともに、側壁の外壁低部にアタッチメントを組み立て取り付け手段で固定される様にし、アタッチメントの下部には、魚貝類が生息できる空洞部が水路の魚貝類貫通孔3-1の外側の位置に設けられ、さらにアタッチメントには、下部の空洞部と仕切られ蔦種子植栽袋Cがセットされる空間が水路の蔦生息貫通孔3-2の外側の位置に設けられた、漁床を兼た多自然型コンクリート水路。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。引用発明における「コンクリート水路を構築するU型一体製品」が、本願補正発明の「水路用コンクリートブロック」に相当することは、当業者にとって明らかなことである。
また、引用発明の「複数個の魚貝類貫通孔3-1」及びその「上部」の「蔦生息貫通孔3-2」は、本願補正発明の「開口部」に相当する。
また、「魚貝類生息用空洞アタッチメント」の「下部の空洞部」、「下部の空間と仕切られた空間」は、いずれも本願補正発明の「内腔部」に相当する。

してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「断面U形とされたコンクリートブロック本体の側壁の片方の壁における上下に開口部を形成し、それら開口部の外側にそれぞれ内腔部を形成した、水路用コンクリートブロック。」

(相違点1)
本願補正発明では、内腔部がコンクリートブロック本体と一体に形成されているのに対し、引用発明では、取り付け手段で固定している点。

(相違点2)
本願補正発明では、側壁における上下にそれぞれ開口部を形成しているのに対し、引用発明の魚貝類貫通孔3-1とその上部の蔦生息貫通孔3-2は、「それぞれ形成」されたものなのか、両者一体に形成された孔なのか定かではない点。

(4)当審の判断
上記の相違点について検討する。

(相違点1について)
断面U形とされたコンクリートブロック本体の側壁に、魚貝類の棲息を可能とするために形成する内腔部を、コンクリートブロック本体と一体に形成することが、例えば実公平3-42097号公報等にもみられるように従来より周知であることを考慮すれば、引用発明の、魚貝類が生息するためのアタッチメントを取り付け手段でコンクリートU型一体製品に固定する手法に代えて、アタッチメントをコンクリートU型一体製品と一体に形成しようとすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものである。

(相違点2について)
引用文献の施工現場概要斜視図【図5】には、側壁の上下にそれぞれ、「魚貝類貫通孔3-1」及び「蔦生息貫通孔3-2」を形成し、それぞれの貫通孔の水路の外側に、それぞれ仕切られた空間を設けた態様が示されている。
してみれば、引用発明の魚貝類貫通孔3-1とその上部に設けられた蔦生息貫通孔3-2を、引用文献の図5にみられるように、「側壁」に「それぞれ形成」したものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明が奏する作用・効果を検討してみても、引用文献に記載された発明、並びに周知技術から、当業者が予測しうる範囲のものであって、格別なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、引用文献に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項において準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年12月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「断面U形とされたコンクリートブロック本体の側壁の片方あるいは両側の壁における上下にそれぞれ開口部を形成し、それら開口部の外側にそれぞれ内腔部を形成したことを特徴とする水路用コンクリートブロック。」

(1)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献に記載された事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.にて検討した本願補正発明の「内腔部」について、「コンクリートブロック本体と一体に形成された」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含み、さらに他に発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用文献記載の発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献記載の発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-26 
結審通知日 2007-05-08 
審決日 2007-05-22 
出願番号 特願平8-84543
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02B)
P 1 8・ 575- Z (E02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深田 高義西田 秀彦  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 砂川 充
石井 哲
発明の名称 水路用コンクリートブロック  
代理人 白川 一一  

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