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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て成立) E02D |
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管理番号 | 1160504 |
判定請求番号 | 判定2007-600013 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2007-02-15 |
確定日 | 2007-06-29 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2958696号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す「水中捨石均し用重錘および水中捨石均し工法」は、特許第2958696号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定請求は,「イ号図面ならびに説明書」に示す「水中捨石均し用重錘および水中捨石均し工法」(以下,「イ号物件」および「イ号工法」という。)が特許第2958696号発明の技術的範囲に属しない,との判定を求めたものである。 2.本件発明 本件特許第2958696号は,平成10年9月25日の出願に係り,平成11年7月30日に設定登録されたものであって,本件発明は,その特許請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 【請求項1】 鋼管と,この鋼管を所要の間隔をおいて囲繞する覆体とを底板の上面に設立固定するとともに,これら鋼管及び覆体内に砂,砂鉄等の重量物を充填してなる重錘ヘッドを,中空ケーシングの下端に固着してなり,上記重錘ヘッドを,これを中空ケーシングを介して吊りワイヤーに吊り下げたとき,それの底板の傾斜角度が水中捨石基礎の予め計画した法面勾配に一致するように形成したことを特徴とする水中捨石基礎法面均し用重錘。(以下,「本件発明1」という。) 【請求項2】 底板の下面には,水中捨石基礎の法面の捨石に掛合する複数の爪部材が突設されている請求項1記載の水中捨石基礎法面均し用重錘。(以下,「本件発明2」という。) 【請求項3】 請求項1又は2記載の水中捨石基礎法面均し用重錘を,クレーンブームの吊りワイヤーに吊下した状態おいて,繰り返し上下動させることによって,水中捨石基礎の余盛り法面を輾圧し,予め計画した法面勾配に均すことを特徴とする水中捨石基礎法面均し工法。(以下,「本件発明3」という。) そして,本件発明1?3は,分説すると以下の構成要件を備えるものである。 [本件発明1] A 鋼管と,この鋼管を所要の間隔をおいて囲繞する覆体とを底板の上面に設立固定するとともに,これら鋼管及び覆体内に砂,砂鉄等の重量物を充填してなる重錘ヘッドを,中空ケーシングの下端に固着してなり, B 上記重錘ヘッドを,これを中空ケーシングを介して吊りワイヤーに吊り下げたとき,それの底板の傾斜角度が水中捨石基礎の予め計画した法面勾配に一致するように形成したことを特徴とする C 水中捨石基礎法面均し用重錘。 [本件発明2] D 底板の下面には,水中捨石基礎の法面の捨石に掛合する複数の爪部材が突設されている本件発明1の水中捨石基礎法面均し用重錘。 [本件発明3] E 本件発明1又は2の水中捨石基礎法面均し用重錘を,クレーンブームの吊りワイヤーに吊下した状態おいて,繰り返し上下動させることによって,水中捨石基礎の余盛り法面を輾圧し,予め計画した法面勾配に均すことを特徴とする F 水中捨石基礎法面均し工法。 3.イ号物件およびイ号工法 後記「4.(2)」のように,被請求人は,イ号物件およびイ号工法の構成が不明確であると主張するが,判定請求書に添付されたイ号図面ならびに説明書には,以下の記載事項がある。 ・「錘2は、起重機船のクレーンにそれぞれ別個に昇降自在に吊下げられた支持台5と錘本体6とで構成している。 支持台5は、捨石4を押圧するための矩形板状の台座7の上面中央部に円筒状の支柱8を垂直に取付け、支柱8の上端部にクレーンに吊下げるための吊下具9を形成している。 この支持台5は、台座7の底面を水平面とするとともに、支柱8を台座7の底面に対して垂直に立設しており、・・・・・ ・・・・・ また、錘本体6は、略矩形箱型状に形成しており、中央部に支持台5の支柱8を挿通するための断面円形状の挿通孔11を形成する・・・・・ この錘本体6は、挿通孔11に支持台5の支柱8を挿通することで、支持台5の支柱8に上下摺動自在に装着している。」(1頁9?28行) ・「まず、潜水士の指示により起重機船のクレーンで錘2を水中3の所定の捨石4の上部に載置する(図3(a)参照。)。 次に、支持台5を吊下げるワイヤー17の張力を緩和するとともに、錘本体6を吊下げるワイヤー18を巻き上げて錘本体6を支柱8に沿って上方の所定高さまで上昇させる(図3(b)参照。)。・・・・・ 次に、錘本体6を吊下げるワイヤー18の張力を一気に緩和して錘本体6を支柱8に沿って直下方の台座7に向けて落下させる(図3(c)参照。)。 これにより、錘本体6が台座7に落下し衝突して、台座7によって捨石4を押圧することができる。」(1頁34行?2頁9行) ・「最後に、法面均し工程では、図8に示すように、潜水士によって捨石基礎20の法面の捨石4を均等に均していく。これにより、法面均し工程では、下端の縁部W5を若干広げて、捨石基礎20を所定形状の基礎19に仕上げる。このときに、余分な捨石4を潜水士が排除する。」(3頁12?15行) そして,判定請求書および上記「イ号図面ならびに説明書」の記載事項を参酌すれば,「台座(7)の底面を水平面とする」(請求書4頁5行)とは,「台座7を,支柱8を介して,ワイヤー17に吊り下げたとき,台座7の底面が捨石4の予め計画した上端面(水平面)に一致する」ことを意味するものと理解できるから,結局のところイ号物件およびイ号工法は,本件発明1?3の構成と対比するに十分な程度の,次のもの認定することができる。 [イ号物件] a 水中捨石均し用錘2は,起重機船のクレーンにそれぞれ別個に昇降自在に吊下げられた支持台5と錘本体6とで構成しており, 支持台5は,捨石4を押圧するための矩形板状の台座7の上面中央部に円筒状の支柱8を垂直に取付け,支柱8の上端部にクレーンに吊下げるための吊下具9を形成し, この支持台5は,支柱8を台座7の底面に対して垂直に立設し, 一方,錘本体6は,略矩形箱型状に形成しており,中央部に支持台5の支柱8を挿通するための断面円形状の挿通孔11を形成し,この錘本体6は,挿通孔11に支持台5の支柱8を挿通することで,支持台5の支柱8に上下摺動自在に装着し, b 上記台座7を,支柱8を介して,ワイヤー17に吊り下げたとき,台座7の底面が捨石4の予め計画した上端面(水平面)に一致するように形成した c 水中捨石均し用錘。 [イ号工法] e 潜水士によって捨石基礎20の法面の捨石4を均等に均していくことにより,捨石基礎20下端の縁部の間隔W5を若干広げて,捨石基礎20を所定形状の基礎19に仕上げ,このときに,余分な捨石4を潜水士が排除する f 捨石基礎20の法面均し工法。 4.当事者の主張 (1)請求人 請求人は,次のように主張する。 「本件特許発明では、重錘ヘッドを、これを中空ケーシングを介して吊りワイヤーに吊りげたとき、それの底板の傾斜角度が水中捨石基礎の予め計画した法面勾配に一致するように形成している。 これに対して、イ号発明は,錘(2)を支持台(5)と錘本体(6)とで構成し、支持台(5)は、台座(7)の底面を水平面とするとともに、支柱(8)を台座(7)の底面に対して垂直に立設している。 このように、本件特許発明とイ号発明とでは全く異なった構成となっている。そもそも、本件発明は、捨石基礎の法面を押圧するのに適した構成とした技術的思想に基く発明であるのに対して、イ号発明は,捨石基礎の上端部を押圧するのに適した構成であって、法面の押圧までは考慮していない構成とした技術的思想に基く発明となっている点で、両発明は大きく発明の技術的思想において相違する。 そのため、本件発明では、上記した特有の効果を奏するのに対して、イ号発明では、上記本件発明のような効果は奏しない。 ・・・・・ したがって、イ号発明は、本件発明の技術的範囲には属しない。」(請求書4頁15行?5頁5行)。 (2)被請求人 被請求人は,答弁書において,概略,以下のように主張をする。 ・イ号発明の構成の記載と,そのイ号図面ならびに説明書のイ号発明の構成の記載とが,一致していないため,判定請求の対象である肝心の「イ号発明」が特定されていないことになる。 ・イ号発明に係る水中捨石均し装置について,請求の理由(4)イ号発明の説明の項は,「起重機船のクレーンに昇降自在に錘(2)を吊下げて構成した水中捨石均し装置(1)において、錘(2)は、起重機船のクレーンにそれぞれ別個に昇降自在に吊下げられた支持台(5)と錘本体(6)とで構成しており」と記載し、イ号図面ならびに説明書は「水中捨石均し装置1は、起重機船のクレーンに昇降自在に吊下げた錘2で構成しており,この錘2によって予め水中3に投入した捨石4を押圧する装置となっている。錘2は、起重機船のクレーンにそれぞれ別個に昇降自在に吊下げられた支持台5と錘本体6とで構成している。」と記載している。 これらの記載からすると,イ号発明は,起重機船のクレーンに昇降自在に吊下げられた状態の錘2(しかも,この錘2を構成する支持台5と錘本体6とは別個に昇降自在に吊下げられた状態)を必須条件としていることになるが,斯様な記載ではイ号発明の構成が不明確であって,本件特許発明1?3の各構成と対応することができない。 ・イ号発明については,本件特許発明1?3との正確な対比が不可能である。 5.当審の判断 (5-1)本件発明1?3の技術的意義について まず,本件発明1?3の技術思想を把握するために,本件明細書(甲第1号証)を参照すると,次のような「従来の問題点」,「目的」,「解決手段」及び「効果」が記載されている。 ・従来の問題点: 「【0004】…しかし、上記構成の(「従来の」…当審注)重錘1は、水中捨石基礎の天端面を水平に均すことを目的としているために、これを吊りワイヤーに吊り下げた状態において底板2が水平となるように重錘ヘッド8を形成している。従って、その重錘1を吊り下げた状態で上下動させることによっては,傾斜して形成されている水中捨石基礎の法面を均すことはできない。 【0005】このため、水中捨石基礎の法面は、これを潜水士によって手均しするか、あるいはその法面の捨石にチェーン等を巻き付けてウインチで移動する等の方法によって均していたので、いずれにしても作業効率が悪くしかも時間を要するという欠点がある。」 ・目的: 「【0006】そこで本発明は、水中捨石基礎の法面の均しを機械的に効率よく、しかも短時間で行うことができる水中捨石基礎法面均し工法とその重錘を提供しようとするものである」 ・解決手段: 「0007】…本発明にかかる水中捨石基礎法面均し用重錘は、…その重錘ヘッドAを、これを中空ケーシングBを介して吊りワイヤーDに吊り下げたとき、それの底板11の傾斜角度が水中捨石基礎Cの予め計画した法面Ca勾配に一致するように形成している。」 ・効果: 「【0024】本発明方法によれば、上記構成の重錘を、クレーンブームの吊りワイヤーに吊下した状態おいて、繰り返し上下動させることによって、水中捨石基礎の余盛り法面を輾圧し、予め計画した法面勾配に簡単確実に均すことができる。」 上記したように,本件明細書の記載から明確に把握できるとおり,本件発明は,その構成要件Bの,重錘の重錘ヘッドAを,これを中空ケーシングBを介して吊りワイヤーDに吊り下げたとき,それの底板11の傾斜角度が水中捨石基礎Cの予め計画した法面Ca勾配に一致するように形成し,該重錘を,クレーンブームの吊りワイヤーに吊下した状態において,繰り返し上下動させることによって,水中捨石基礎の余盛り法面を輾圧し,予め計画した法面勾配に均すこと,すなわち,錘の底面の傾斜角度を,捨石の予め計画した法面の勾配に一致させ,予め計画した法面勾配に簡単確実に均すことができるようにした点に,技術的特徴を有するものであって,当該特徴部分が本質的部分であると認められる。 (5-2)構成aが構成要件Aを充足するか否か ・構成要件Aについて 本件発明1の「重錘」は,構成要件Aの特定事項から明らかなように,「重錘ヘッド」と「中空ケーシング」とからなり,そして,該「重錘ヘッド」は,「底板],「鋼管」,「覆体」および「重量物」から構成される。また,同特定事項の「・・・・・重錘ヘッドを,中空ケーシングの下端に固着して」からみて,「重錘ヘッド」と「中空ケーシング」とは一体であることも明からであるといえる。 ・構成aについて 一方,イ号物件の「錘2」は,「支持台5」と「錘本体6」とからなり,該「支持台5」は,「台座7」,「支柱8」および「吊下具9」から構成されるといえる。また,「・・・・・起重機船のクレーンにそれぞれ別個に昇降自在に吊下げられた」との特定事項からみて,「支持台5」と「錘本体6」とは別体であることも明からである。 しかし,該「台座7」については,どの様な材質なのか,あるいは,重量物であるか否か,不明であり,また,該「支柱8」についても,どの様な材質なのか,中空であるか否か,不明である。さらに,該「錘本体6」についても,形状が略矩形箱型状であって,中央部に「挿通孔11」が形成されたと特定されているのみであって,どの様な材質・構成なのか不明であるものの,少なくとも,「イ号図面ならびに説明書」の記載のその使用形態からみて重量物であるといえる。 ・構成要件Aと構成aとの対比 上記したとおり,構成要件Aにおいては,「重錘」全体が一体に構成されているのに対し,構成aにおいては,「錘2」が一体に構成されておらず,別個に昇降自在に吊下げられた「支持台5」と「錘本体6」とからなり,「錘2」は,材質等においてその特定が十分であるといえないものの,少なくとも,一体構成ではない点において,本件発明1の「重錘」とは相違するといえる。 してみると,構成aは構成要件Aを充足しないというべきである。 (5-3)構成bが構成要件Bを充足するか否か ・構成要件Bについて 構成要件Bの「底板の傾斜角度」の技術的意義は,上記「(6-1)本件発明1?3の技術思想について」にて述べたように,「該重錘を、クレーンブームの吊りワイヤーに吊下した状態において、繰り返し上下動させることによって、水中捨石基礎の余盛り法面を輾圧し、予め計画した法面勾配に均すこと、すなわち、錘の底面の傾斜角度を、捨石の予め計画した法面の勾配に一致させ、予め計画した法面勾配に簡単確実に均す」ことであると認められる。 そして,水中捨石基礎の余盛り法面は,本件明細書の図6および7から明らかなように,水平面に対して傾斜しているのであるから,吊りワイヤーに吊り下げたとき,「中空ケーシング」が鉛直方向に吊り下げられ,「底板」が水平面に対して傾斜しており,その結果,「底板の傾斜角度」が水中捨石基礎の予め計画した法面勾配に一致することとなるといえる。このことは,「底板」に対して,「中空ケーシング」の長手軸方向が垂直ではないことを意味している。 ・構成bについて それに対し,構成aにも「支柱8を台座7の底面に対して垂直に立設し」と特定されていることからも明らかなように,「錘2」の底面である「台座7」の底面に対し,イ号物件の「支柱8」の長手軸方向が垂直であるから,ワイヤー17に吊り下げたとき,台座7の底面は,水平面と平行であり,すなわち,捨石4の予め計画した上端面(水平面)に一致するであって,捨石4の法面勾配に一致することはないといえる。 ・構成要件Bと構成bとの対比 上記したとおり,構成要件Bにおいては,吊り下げたとき「底板の傾斜角度」が法面に一致するのに対し,構成bにおいては,吊り下げたとき「台座7の底面」が法面に一致しないといえる。 してみると,構成bは,構成要件Bを充足しないというべきである。 (5-4)構成cが構成要件Cを充足するか否か 本件発明1の「重錘」は,「水中捨石基礎法面均し用」であるのに対し,イ号物件は,捨石の法面ではなく,捨石の上端面(水平面)を均す「水中捨石均し用」である点で相違するといえるから,構成cは構成要件Cを充足しないというべきである。 (5-5)イ号物件についてのまとめ 以上検討したとおり,イ号物件は構成要件A?Cを充足しない。 また,本件発明2は,本件発明1において,「底板の下面には,水中捨石基礎の法面の捨石に掛合する複数の爪部材が突設されている」水中捨石基礎法面均し用重錘(本件発明2の構成要件D)に限定したものであるから,イ号物件は,同様に本件発明2の構成要件をも充足しないことは明らかである。 (5-6)イ号工法について さらに,構成要件EおよびFは,構成要件A?Cあるいは構成要件A?Dの水中捨石基礎法面均し用重錘を,クレーンブームの吊りワイヤーに吊下した状態おいて,繰り返し上下動させることによって,水中捨石基礎の余盛り法面を輾圧し,予め計画した法面勾配に均すことを特徴とする水中捨石基礎法面均し工法としたものであり,潜水士によって捨石基礎20の法面の捨石4を均等に均していく構成eおよびfとは,明らかに相違するといえるから,構成eおよびfは,構成要件EおよびFを充足しないというべきである。 してみると,イ号工法は,本件発明3の構成要件を充足しないことは明らかである。 6.被請求人の主張について 答弁書の「被請求人の主張1.」および「被請求人の主張2.」について検討すると,確かに,「請求理由(4)」(請求書3頁下3行?4頁13行)記載のイ号物件と「イ号図面ならびに説明書」記載のイ号物件とが文章上整合せず,分説されていないものの,前記「3.」のとおり,「イ号図面ならびに説明書」からイ号物件およびイ号工法を本件発明1?3と対比できる程度に把握できるから,被請求人の「イ号物件およびイ号工法が特定されていない」との主張には理由がない。 次に,同「被請求人の主張3.」について検討すると,被請求人の請求理由(4)「イ号発明の説明」の項の記載ではイ号物件の構成が不明確というが,前記「3.」のとおり,この点に関するイ号物件の構成は明確であり,しかも,前記「5.(5-2)」のとおり,イ号物件の「錘2」と本件発明1の「重錘」とは構成が明らかに相違する。 さらに,同「被請求人の主張4.」について検討すると,被請求人は,本件発明3は方法の発明に関するものであり,請求の理由(4)「イ号発明の説明」の項には方法に関する記載がないと主張するが,「イ号図面ならびに説明書」の1頁3行には,「…水中捨石均し工法」と明確に記載されており,前記「3.」のとおり,「イ号工法」は本件発明3と対比できる程度に特定できるというべきである。 また,同「被請求人の主張5.」について検討すると,「イ号図面ならびに説明書」には,錘2を起重機船のクレーンに吊り下げたときに台座7の底面を傾斜状態にするとの記載は見当たらず,しかも,法面均しは潜水士により行うとの記載があることから,法面均しは重錘によるものとはいえず,イ号物件が,台座7の底面が傾斜状態になることができる取付け構造ないし立設構造を包含するとの被請求人の主張には,理由がない。また,仮に,イ号物件を法面に載置したところで,支柱8が傾斜状態になり,錘本体を自由落下させたとしても,傾斜の水底21側に負荷がかかり,法面の均しができるとは到底考えられないし,円滑に法面を重錘により輾圧するためには,本件発明1のように重錘の底板の傾斜角度を法面勾配に一致させるとか,特開平62-164917号公報の実施例1に記載されているように重錘の対角線上の端部を連結したロープを支持する滑車5を備えて重錘10を法面勾配に一致させるとかの構成を備えることが必要であり,「イ号図面ならびに説明書」にはそのような構成が記載されていない以上,イ号物件が,台座7の底面が傾斜状態になることができる取付け構造ないし立設構造を包含するとの被請求人の主張には理由がない。 さらに,被請求人は,「もともと別の次元の技術事項であるから,これらを対比して『全く異なった構成となっている』といってもナンセンスというほかない。」と主張するが,本件発明1の「重錘」とイ号物件の「錘2」とは,前者が捨石基礎の法面均しを行い,後者が捨石基礎の上端面の均しを行うという違いがあるとしても,重錘の構成部材としては共通するのであるから,これらを対比・判断することは可能であるというべきである。 以上のとおり,イ号物件と本件発明1あるいは2,また,イ号工法と本件発明3と対比は可能であり,本件判定の請求を却下すべき旨の主張は,採用できない。 7.むすび 以上のとおりであるから,イ号物件およびイ号工法は,本件発明の技術的範囲に属しない。 よって,結論のとおり,判定する。 |
判定日 | 2007-06-19 |
出願番号 | 特願平10-271825 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZA
(E02D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 陽 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
峰 祐治 岡田 孝博 |
登録日 | 1999-07-30 |
登録番号 | 特許第2958696号(P2958696) |
発明の名称 | 水中捨石基礎法面均し工法とその重錘 |
代理人 | 内野 美洋 |
代理人 | 原田 信市 |
代理人 | 原田 敬志 |