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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない B65D
管理番号 1161212
審判番号 訂正2005-39029  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-02-23 
確定日 2007-07-17 
事件の表示 特許第3380701号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本件審判請求書の要旨は,特許第3380701号(平成14年12月13日設定登録)の明細書)を,本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
上記訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1(以下,「訂正発明」という。)の記載は次のとおりである。
「多孔質膜及び補強用通気層を具備する2層以上の多孔質基材とヒートシール層を有する1層以上の被覆材とを,前記多孔質膜及びヒートシール層が接するように重ね合わせ,その周縁部を前記ヒートシール層でヒートシールしてなる多孔質の袋体において,前記多孔質膜が,無機質充填剤を含有する延伸多孔質膜であり,前記多孔質基材が,50?10,000g/m2・24hrの透湿度を有し,前記ヒートシール層が,活性点の性質が均一なシングルサイト触媒によって重合又は共重合されたポリエチレンで形成されている非通気性のフィルムないしシートであることを特徴とする多孔質袋体。」
2.上記訂正発明は,請求項1の「ポリエチレンで形成されている」と「ことを」との間に,明細書の記載事項である「非通気性のフィルムないしシートである」点を付加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。

3.独立特許要件について
そこで,訂正発明が,特許出願の際独立して特許をうけることができるものであるか検討する。
(1)訂正拒絶理由に引用された刊行物
1.実公平6-42999号公報
2.特開平8-157611号公報
3.特開平7-232418号公報
4.特開平7-314624号公報
5.「プラスチックス」第47巻第2号(1996.2.1),株式会社工業調査会

(2)刊行物の記載事項
上記刊行物1(実公平6-42999号公報,以下「引用発明」という。)には,以下の事項が記載されている。
a.「空気の存在下で発熱しうる発熱体収納用の袋体であって,該袋体が表裏両シートを重ね合わせ,その縁部をヒートシールして形成されて成り,該表裏両シートのうち少なくとも一方が微細孔を有する多孔質体で形成されており,且つ上記袋体にはその一部に通気孔を設けたことを特徴とする多孔質袋体。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)
b.「多孔質体が不織布に多孔質シートをラミネートして形成されたものである実用新案登録請求の範囲第1項ないし第4項のいずれかに記載の多孔質袋体。」(実用新案登録請求の範囲の請求項6)
c.「本考案に用いられる表裏のシートとしては,その縁部をヒートシールによって接合しうる袋体を形成しうるものであればその素材が特に限定されるものではなく,又,無延伸シートや一軸延伸シート,更に二軸延伸シートのいずれのものも用いることができる。」(2頁右欄24?28行)
d.「本考案においては,・・・(2)表シートを通気性微細孔を有する多孔質体で形成する一方,裏シートを通気性の無いシートで形成しても・・・よいのである。」(2頁右欄33?39行)
e.「上記多孔質体には,所望により,充填剤が配合されてものが含まれるが,かかる充填剤としては炭酸カルシウム,タルク,クレー,カオリン,シリカ・・・等が挙げられる。」(3頁左欄27?32行)
f.「本考案の好ましい実施態様としては,多孔質体が不織布に多孔質シートをラミネートして形成されたものであり,これによって,多孔質体の強度,つまり,これによって形成される表シートや裏シートの強度を著しく向上させ得るのである。」(4頁左欄1?5行)
g.「かかるホットメルト系接着シートとしては,エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂,・・・,ポリエチレン系ホットメルト樹脂・・・で形成された接着シートが挙げられる。」(4頁左欄18?29行)
h.「本考案において好ましい実施態様としては,表シートと裏シートを重ね合わせ,(この場合,この表裏両シートのうち少なくとも一方が上記多孔質体で形成されている),その縁部がヒートシールされる・・・ものである。」(4頁右欄4?9行)
i.「表裏両シート(2),(3)としては,・・・第5図に示すように,線状低密度ポリエチレン樹脂製多孔質シート(10)を単独に用いてもよいのである。」(5頁右欄25?30行)
j.第6表と第7表には,表シートあるいは裏シートの透湿度が,400?4600g/m2・24hrであることが開示されている。

そうすると,引用発明には,下記の事項が記載されているものと認められる。
「多孔質シートに不織布をラミネートして形成された2層以上の多孔質体(表シート)とヒートシール層を有する1層以上の裏シートとを,前記多孔質シート及びヒートシール層が接するように重ね合わせ,その周縁部を前記ヒートシール層でヒートシールしてなる多孔質の袋体において,前記多孔質シートが,無機質充填剤を含有する多孔質シートであり,前記多孔質シートが,400?4600g/m2・24hrの透湿度を有し,前記ヒートシール層が,重合又は共重合されたポリエチレンで形成されているシートである多孔質袋体。」

(3)対比・判断
訂正発明と引用発明とは,いずれも,多孔質袋体である点で同じである。引用発明の「多孔質シート」「不織布」「多孔質体(表シート)」「裏シート」は,それぞれ訂正発明の「多孔質膜」「補強用通気層」「多孔質基材」「被覆材」に相当する。
そこで,訂正発明と引用発明とを対比すると,両者は,
「多孔質膜及び補強用通気層を具備する2層以上の多孔質基材とヒートシール層を有する1層以上の被覆材とを,前記多孔質膜及びヒートシール層が接するように重ね合わせ,その周縁部を前記ヒートシール層でヒートシールしてなる多孔質の袋体において,前記多孔質膜が,無機質充填剤を含有する延伸多孔質膜であり,前記多孔質基材が,50?10,000g/m2・24hrの透湿度を有し,前記ヒートシール層が,重合又は共重合されたポリエチレンで形成されているフィルムないしシートであることを特徴とする多孔質袋体。」
の点で一致するが,
(A) 訂正発明のヒートシール層が,非通気性のフィルムないしシートであるのに対し,引用発明のヒートシール層が,非通気性のフィルムないしシートであるか否か明らかでない点,
(B) 訂正発明のヒートシール層が,「活性点の性質が均一なシングルサイト触媒によって重合又は共重合されたポリエチレンで形成されている」のに対し,引用発明のヒートシール層は,線状低密度ポリエチレン樹脂で形成されている点,
の二点において,互いに相違する。

そこで,これらの相違点について検討する。
(イ)相違点Aについて
一般に,多孔質袋体等において,ヒートシール層として,ポリエチレンで形成されている非通気性のフィルムないしシートを用いることは,本件出願前周知の事項(例えば,下記刊行物a?d参照)として知られている。したがって,この相違点は,周知の事項を単に転用したにすぎないものであって,格別の意味があるものとはいえない。

a.実願平2-6355号(実開平3-100173号)のマイクロフィルム
(7頁4?6行には,「非通気性シート4には,熱可塑性樹脂のフィルム,例えば,LLDPE,ON/LLDPE積層材等が使用される。」,また,8頁10?13行には,「この通気性シートと,LLDPE100μの非通気性シートとを重ね合わせ,周縁をヒートシールすることにより,第1図に示す使いすてカイロ用の袋が形成できた。」と記載されている。)
b.実願平2-5075号(実開平3-96817号)のマイクロフィルム
(3頁下から2行?4頁6行には,「本考案に用いる非通気性シートとしては,各種のプラスチックフィルムの単体,或いは積層体を用いることができ,例えば,LLDPE,PE・・・等の単体からなるフィルム,・・・等を挙げることができる。また,ここで使用する非通気性シートは,少なくとも片面が熱融着性であることが,ヒートシールにより容易に袋を製造できるので,好ましい。」と記載されている。)
c.実願昭62-87784号(実開昭63-195829号)のマイクロフィルム
(13頁9?12行には,「非通気面は,非通気性フィルム6と不織布5とをラミネートし,非通気性フィルム6を内面にして用いた非通気性包材7である。」,また,19頁1?2行には,「非通気性包材7には,ポリエチレンフィルム6とナイロン不織布5との積層シートを用いた。」と記載されている。)
d.実願昭62-58374号(実開昭62-172419号)のマイクロフィルム
(6頁2?5行には,「非通気面は,非通気性フィルム5と不織布4とをラミネートし,非通気性フィルム5を内面にして用いた包材7である。」,また,9頁4?5行には,「非通気面にはナイロン不織布4とポリエチレンフィルム5との積層フィルムを用いて,」と記載されている。)

(ロ)相違点Bについて
一般に,ヒートシール層がシングルサイト触媒によって重合又は共重合されたポリエチレンで形成されたフィルム同士をシールして,包装用袋を形成することは,本件出願前周知の事項(上記訂正拒絶理由に引用された刊行物2?5参照)として知られている。
訂正発明は,袋体の周縁部をヒートシールする際の当該シール部の破断や裂け更に貫通孔の発生を防止するために,ヒートシール層が,活性点の性質が均一なシングルサイト触媒によって重合又は共重合されたポリエチレンで形成されたものであるが,袋体のヒートシール層としてシングルサイト触媒によって重合又は共重合されたポリエチレンを用いることが本願出願前周知である以上,引用発明の多孔質袋体の線状低密度ポリエチレン樹脂の代わりに,シングルサイト触媒によって重合又は共重合されたポリエチレンを用いることは,当業者が容易になし得た程度であるものといえる。また,訂正発明の「ヒートシールきわのエッジ切れの解消」という作用効果も,引用発明におけるヒートシール部に比べ,格別のものがあるとはいえない。

4.以上のとおりであるから,訂正発明は,引用刊行物1?5の記載,及び周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許をうけることができるものではない。

5.むすび
したがって,本件審判請求は,特許法第126条第5項の規定に適合しない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-03 
結審通知日 2005-06-08 
審決日 2005-06-28 
出願番号 特願平8-356952
審決分類 P 1 41・ 851- Z (B65D)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
市野 要助
登録日 2002-12-13 
登録番号 特許第3380701号(P3380701)
発明の名称 多孔質袋体、これを用いた発熱体、脱酸素体、脱臭体、追熟体、乾燥材、除湿材及び匂い袋  
代理人 岡田 希子  
代理人 前 直美  

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