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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1161277
審判番号 不服2005-9323  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-19 
確定日 2007-07-20 
事件の表示 特願2000-174788「光拡散部材」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月26日出願公開、特開2001-356207〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年6月12日の出願であって、平成15年12月19日に手続補正がなされた後、平成17年4月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成17年5月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成17年6月3日に手続補正がなされた後、当審において、平成18年11月10日付けで平成17年6月3日付け手続補正の却下の決定がなされるともに、同日付で拒絶理由通知がなされた後、平成19年1月19日に手続補正がなされたものである。

2.拒絶理由通知
平成18年11月10日付けの拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。

「1.特許法第36条第6項第2号違反
(1)請求項1について
ア.・・・・・・・・・・・・・・・・
イ.本願明細書には、本願発明の効果について、「本発明の光拡散部材は、上記の構成を有するから、バックライト側からの透過光を減衰させずに、反対側からの外光を効率よく反射するという優れた光学特性を有する。」と記載されている(段落【0047】)。
しかしながら、請求項1には、光拡散部材とバックライト側及び反対側との関係、並びに、バックライト側と透過光との関係、及び反対側と外光との関係が記載されていない。
したがって、請求項1に係る発明は、本願明細書に記載された上記効果を奏するための発明特定事項を有するとはいえないので、この点において、請求項1に係る発明は、明確とはいえない。
ウ.・・・・・・・・・・・・・・・・

(2)請求項2乃至6について
請求項1を引用する請求項2乃至6に係る発明も、請求項1に係る発明と同様に明確であるとはいえず、本願は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しない。

2.特許法第36条第4項違反
上記「透光性粒子側から入射した光線の全光線透過率と全光線反射率」の測定法が本件補正後の請求項1に記載されたものと仮定しても、「透光性粒子側から入射した光線の全光線透過率と全光線反射率の和が101%以上である」光拡散部材について、本願の発明の詳細な説明は、下記の理由により、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない。
したがって、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
[理由]
ア.本願明細書の段落【0019】には、「本発明の光拡散部材は、透光性粒子側からの全光線透過率と全光線反射率の和が101%以上であることが必要である。全光線透過率と全光線反射率の和が101%より低くなると、全光線透過率または反射率の少なくともいずれかが低いことになり、LCDなどのディスプレイに適用した際に、十分な輝度が得られないという問題がある。本発明において、全光線透過率と全光線反射率の和を101%以上にするためには、使用する透光性基体、結着剤、透光性粒子に関して、前記のような好ましい材料組成、その物性等を適宜選択したり、さらにこれらを組み合わせることにより達成される。また透光性粒子の結着層への埋め込みの度合や、後述する透光性粒子の投影面積や光拡散層表面の比表面積を調整することによって行うことができる。」と記載されている。
イ.同【0024】には、「また本願発明の光拡散部材は、光拡散層における透光性粒子の透光性基体への投影面積が、透光性基体の面積の70%以上であるのが好ましい。透光性粒子の透光性基体への投影面積が透光性基体の面積の70%よりも小さい場合は、本来の拡散の効率が低下するばかりではなく、複数の透光性粒子を介した再帰反射が起こらなくなるため、反射効率が低下し、好ましくない。」と記載されている。 ウ.同【0025】には、「光拡散層の表面の比表面積は1.20?3.00であることが必要であり、好ましくは1.25?1.50の範囲である。」と記載されている。
エ.同【0023】には、「より効率的に反射を起こさせるためには、屈折率が高い透光性粒子を結着層から露出させ、再帰反射を起こさせる必要がある(図5(a))。しかしながら、単純に透光性粒子の屈折率を上げて再帰反射性を上げても、それに伴う全光線透過率の低下が問題となる。そこで本発明においては、透光性粒子の屈折率を全光線透過率が低下しない程度に抑え、その代わりに粒子間の距離を近づけることによって、複数の透光性粒子を介した再帰反射を利用する(図5(b))。本発明の光拡散部材では、透光性粒子の屈折率は、1.40?1.75の範囲にあるようにすればよい。透光性粒子の屈折率が1.40未満または1.75を超える場合には、結着剤および透光性基体との屈折率差が大きくなりすぎるため、前方散乱光が減衰し、全光透過率透過率が低下する。また、本発明において、透光性粒子の屈折率と結着剤および透光性基体の屈折率との差は、0.25以内であるのが好ましい。」と記載されている。

そして、本願明細書には、「透光性粒子側から入射した光線の全光線透過率と全光線反射率の和が101%以上である」光拡散部材の実施例として、特定の透光性粒子及び結着剤の材料を用いた実施例1?6が記載されている。
しかしながら、使用する透光性基体、結着剤、透光性粒子に関して、材料組成、その物性等を適宜選択したり、さらにこれらを組み合わせることにより、光線の全光線透過率と全光線反射率の和が101%以上であることが達成されるとは思われない。(本件審判請求人は「要点(4)」としている。)
また、本願明細書には、透光性基体、結着剤、透光性粒子に関して、いかなる物性(値)を具体的に選択し、その物性(値)において望ましい数値範囲のものを用いる点について記載されていない。(本件審判請求人は「要点(5)」としている。)
さらに、本願明細書の発明の詳細な説明は、「光拡散層の表面の比表面積」及び「透明粒子の透明基体への投影面積」の値を実施例に記載された値、又は請求項1に記載された値に調整するために、具体的にどのようにしたのか、又は透光性粒子の粘着層への埋め込み度合いを調整するために具体的にどのようにしたのかが記載されていない。(本件審判請求人は「要点(6)としている」。)

したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、その発明の実施が可能な程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。」

3.平成19年1月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載
「【請求項1】 透光性基体上に、単粒子層状に並べられ結着剤で結着された透光性粒子を含む光拡散層が設けられた光拡散部材において、透光性粒子側から入射した光線のJIS-K7105の測定法Aによる全光線透過率と、透光性粒子側から入射した光線のJIS-K7105の測定法Aによる全光線反射率との和が101%以上であることを特徴とする透過・反射型ディスプレイの光源用光拡散部材。
【請求項2】 透光性粒子の屈折率が1.40?1.75であることを特徴とする請求項1記載の光拡散部材。
【請求項3】 光拡散層における透光性粒子の透光性基体への投影面積が透光性基体の面積の70%以上であることを特徴とする請求項1記載の光拡散部材。
【請求項4】 光拡散層の表面の比表面積が1.20?3.00であることを特徴とする請求項1記載の光拡散部材。
【請求項5】 透光性基体の透光性粒子が結着されていない面がレンズ構造になっていることを特徴とする請求項1記載の光拡散部材。」

4.平成19年1月19日付けの意見書の内容
A.特許請求の範囲に関する特許法第36条第6項第2号違反とする拒絶理由の理由イ.に対して
[要点(2)について]
光拡散部材の用途を限定することにより、光拡散部材、バックライト(光源)、透過光と外光の関係が明確となった。本発明の光拡散部材は、液晶ディスプレイのような透過・反射型ディスプレイの光源用として用いられるものである。光拡散部材はバックライトよりもディスプレイの観察面側に設けられるものであり、透過光とは、バックライト側より光拡散部材を透過してディスプレイの観察面側に抜ける光であり、そして外光とは、ディスプレイの観察面側よりバックライト方向に向けて光拡散部材に入射する光のことである。
透過・反射型ディスプレイは、バックライトの光を、バックライト上に設けた光拡散部材によりバックライト光を(場合により取り込んだ外光を混合して)均一な光として表示装置側に送り出し、送られた均一光が表示装置を通過することにより映像として、観察面側で観察者が見ることができる物である。従って、透過・反射型ディスプレイおけるバックライト、光源用光拡散部材、および液晶等の表示装置の位置関係、ならびに、この構成における光拡散部材に対してバックライト光および外光がどのように透過または反射するか、当業者であれば容易に理解できる。

B.特許法第36条第4項違反とする拒絶理由の理由の要点(4)?(6)に対して
[要点(4)について]
本願請求項1の発明にかかる全光線透過率と全光線反射率の和が101%以上となるためには、段落[0023]および平成15年12月19日付の意見書の記載にあるとおり、[図5](b)のような複数の透光性粒子を介した再帰反射が必要となる。そのために必要な技術手段としては、この図からも分かるように、光拡散層の結着剤から透光性粒子の一部が飛び出し、かつ飛び出した部分に結着剤で覆われていないことが必要となる。このように光拡散層を形成する方法は、段落[0027]および実施例1?6にあるように、「離型性の基材上に粒子を整列させた後、結着剤を塗布する方法」、「振動等の方法で運動エネルギーを与えた加圧媒体に透光性粒子を担持させ、結着剤を塗布した透光性基体を接触させて透光性基体を埋め込む方法」、「透光性基体上に結着層、透光性粒子を順次積層し、この上に離型性基材を載せ、ローラー等で加圧プレスして結着層に透光性粒子を埋め込む方法」等のように、a)埋め込む透光性粒子が結着剤の層の表面で回転したり、透光性粒子同士の隙間から結着剤が染みあがったりしないようTgが-60℃?-15℃の範囲にある結着剤を選択し、b)埋め込む透光性粒子が結着剤の層に埋没しない程度の厚さにあらかじめ結着剤の層を形成させ、c)結着剤の層に透光性粒子を埋め込む、ことが必要である。そしてこの方法により、粒子間に別の粒子を更に埋め込み易く、その結果として透光性粒子の粒子間距離を近づけた単粒子層を形成させることができる。さらに、透光性粒子の屈折率が1.40?1.75の範囲で、透光性粒子の屈折率と結着剤および透光性基体の屈折率との差を0.25以内に抑えることにより、透光性粒子と結着剤間の屈折率差よりも、透光性粒子と大気間の屈折率差の方が明らかに大きくなり、前述の透光性粒子の粒子間距離を近づけた単粒子層と組み合わせることで、複数の透光性粒子による再帰反射をより大きくすることが可能となるものであり、それゆえに「101%以上」が可能となる。

[要点(5)について]
本発明に使用される透光性基体として選択される物性としては、明細書の段落[0012]に記載のとおり、屈折率、光線透過率、ヘーズおよび厚さが挙げられる。この内、屈折率としては、JIS-K7142による測定値で1.45?1.70のものが望ましい。又、光線透過率はJIS-C6714による測定値で80%以上、好ましくは85%以上のものが望ましい。又、ヘーズは、JIS-K7105による測定値で3.0以下、より好ましくは、1.0以下、最も好ましくは0.5以下のものが望ましい。更に又、厚さは1μm?5mmのものが望ましい。
本発明に使用される結着剤として選択される物性としては、明細書の段落[0015]及び[0016]に記載のとおり、屈折率、Tg(ガラス転移点)および重量平均分子量が挙げられる。この内、屈折率としては、JIS-K7142による測定値で1.42?1.60のものが望ましい。
又、Tg(ガラス転移点)は、-60??15℃の範囲、重量平均分子量は20万?200万の範囲にあるものが好ましい。
又、本発明に使用される透光性粒子として選択される物性としては、明細書の段落[0014]に記載のとおり、屈折率と粒子径が挙げられる。この内、屈折率としてはJIS-K7142による測定値で1.40?1.75のものが望ましい。又、粒子径は0.3?20μmのものが望ましい。

[要点(6)について]
本発明において、「光拡散層の表面の比表面積」を調整するための方法は、上記「A.要点(4)について」で述べた、透光性粒子を埋め込む前の結着剤の層の厚さの調整がある。光拡散層の比表面積は、明細書の段落[0025]に記載のとおり、透光性粒子の露出度合いの指標となるものであり、埋め込む透光性粒子が結着剤の層に埋没しない程度の厚さにあらかじめ結着剤の層の厚さを調整することで、1.20?3.00の範囲内に調整可能となる。
又、本発明において、「透光性粒子の透光性基体への投影面積」を調整するための方法は、本発明の光拡散部材のように透光性粒子が単粒子層の場合、光拡散部材の表面の単位面積あたり透光性粒子数の調整がある。70%以上とするためには、単位面積あたりの透光性粒子数を多くする必要がある。そのためには、明細書の段落[0027]に記載の通り、「離型性の基材上に粒子を整列させた後、結着剤を塗布した透光性基体を圧着し、離型性の基材を剥離除去する方法」の粒子の整列状態を調整したり、「振動等の方法で運動エネルギーを与えた加圧媒体に透光性粒子を担持させ、結着剤を塗布した透光性基体を接触させて透光性粒子を埋め込む方法」の接触時間を調整することにより先に埋め込まれた透光性粒子の間に更に別の透光性粒子を埋め込む量を調整したり、「透光性基体上に結着層、透光性粒子を順次積層し、この上に離型性基材を載せ、ローラー等で加圧プレスして結着層に透光性粒子を埋め込む方法」の透光性粒子の積層状態を調整したりする方法等により、単位面積あたりの透光性粒子数を調整可能となるものであり、それゆえに「70%以上」が可能となる。
更に又、本発明において、透光性粒子の粘着層への埋め込み度合いを調整するための方法は、埋め込む透光性粒子数については、上記「透光性粒子の透光性基体への投影面積」を調整するための方法があり、透光性粒子が埋め込まれる深さについては、上記「光拡散層の表面の比表面積」を調整するための方法のほか、「離型性の基材上に粒子を整列させた後、結着剤を塗布した透光性基体を圧着し、離型性の基材を剥離除去する方法」における透光性基体を圧着させる際の圧力を調整する方法がある。

5.当審の判断
A.特許請求の範囲に関する特許法第36条第6項第2号違反とする拒絶理由の理由イ.について

(1)補正後の請求項1について
a 本件審判請求人は、意見書の「要点(2)について」の項において、光拡散部材の用途を透過・反射型ディスプレイの光源用に限定することにより、光拡散部材、バックライト(光源)、透過光と外光の関係が明確となり、また、透過・反射型ディスプレイおけるバックライト、光源用光拡散部材、および液晶等の表示装置の位置関係、ならびに、この構成における光拡散部材に対してバックライト光および外光がどのように透過または反射するか、当業者であれば容易に理解できる旨主張している。

例えば、透過・反射型ディスプレイにおいては、バックライト、光拡散部材、LCD等のディスプレイの順に設けられ、光拡散部材はディスプレイを通して入射した外光をディスプレイの方向に反射するとともに、バックライト光をディスプレイの方向に透過することは当業者ならば、理解できるといえる。

しかしながら、本願発明のような「透光性基体上に、単粒子層状に並べられ結着剤で結着された透光性粒子を含む光拡散層が設けられた光拡散部材」では、その透光性粒子をバックライト側に設けるか、その反対側に設けるかによって、透過・反射型ディスプレイにおいて機能する光学特性が著しく異なることは明らかである。
しかも、本願明細書の段落【0047】には「本発明の光拡散部材は、上記の構成を有するから、バックライト側からの透過光を減衰させずに、反対側からの外光を効率よく反射するという優れた光学特性を有する。」という記載はあるものの、本願明細書には、透光性粒子をバックライト側に設けるか、その反対側に設けるかについて明確に説明されていない。
してみると、本願の特許請求の範囲の請求項1において、透光性基体上に、単粒子層状に並べられ結着剤で結着された透光性粒子を含む光拡散層が設けられた光拡散部材と、バックライト側、又はその反対側との位置関係が規定されていないので、請求項1に係る発明は、依然として明確であるとはいえない。

b 請求項1に係る発明の「透光性粒子側から入射した光線のJIS-K7105の測定法Aによる全光線透過率と、透光性粒子側から入射した光線のJIS-K7105の測定法Aによる全光線反射率との和が101%以上である」という発明特定事項について検討する。

ア 本願明細書の段落【0004】には「【発明が解決しようとする課題】・・・「その目的はバックライト側からの透過光を減衰せずに、反対からの外光を効率よく反射する光拡散媒体を提供することにある。」と記載されている。
そこで、上記発明特定事項をみるに、透光性粒子側から入射した光線のJIS-K7105の測定法Aによる全光線透過率とを規定しているが、例えば、透光性粒子側とバックライト側との位置関係が規定されていないので、
上記発明特定事項は、上記目的における、バックライト側からの透過光を減衰しないことを達成するための発明特定事項であるとはいえない。
また、光拡散媒体が外光を効率よく反射するための発明特定事項が請求項1には、記載されていない。

したがって、本願明細書に記載した発明が解決しようとする課題との関係において、請求項1に係る発明が明確であるとはいえない。

イ 「透光性粒子側から入射した光線のJIS-K7105の測定法Aによる全光線透過率と、透光性粒子側から入射した光線のJIS-K7105の測定法Aによる全光線反射率との和が101%以上である」との発明特定事項において、透光性粒子側から入射した光線のJIS-K7105の測定法Aによる全光線反射率を選定した理由、及び上記発明特定事項が不明である。
すなわち、上記全光線反射率が従来よりも大きくなるように光拡散部材を構成すれば、上記全光線透過率は、従来よりも小さくなる場合も想定されることになり、その結果、バックライト側からの透過光が減衰してしまうことは明らかであり、本願明細書に記載した発明が解決しようとする課題との関係において、請求項1に係る発明が明確であるとはいえない。

したがって、請求項1に係る発明が明確であるとはいえない。

c さらに、請求項1に係る発明は、「透光性粒子側から入射した光線のJIS-K7105の測定法Aによる全光線透過率と、透光性粒子側から入射した光線のJIS-K7105の測定法Aによる全光線反射率との和が101%以上である」ことを発明特定事項としているが、請求項1には、前記全光線透過率と前記全光線反射率との和が101%以上であることを達成するための発明特定事項、すなわち、使用する透光性基体、結着剤、透光性粒子の材料組成、その物性、透光性粒子の結着層への埋め込みの度合、透光性粒子の透光性基体への投影面積の度合い及び光拡散層表面の比表面積の度合い等の記載が何等なされていない。
したがって、この点においても、請求項1に係る発明は、明確であるとはいえない。

d 本願明細書の段落【0019】には、「本発明の光拡散部材は、透光性粒子側からの全光線透過率と全光線反射率の和が101%以上であることが必要である。全光線透過率と全光線反射率の和が101%より低くなると、全光線透過率または反射率の少なくともいずれかが低いことになり、LCDなどのディスプレイに適用した際に、十分な輝度が得られないという問題がある。」と記載されている。

この記載は、全光線反射率の観点からみれば、透光性粒子側からの全光線反射率が高いほど十分な輝度が得られると解釈できる。しかしながら、バックライトからの光は、透光性粒子側により反射することによりバックライト側に戻ってしまい、ディスプレイの十分な輝度を得るためには寄与しないことは明らかである。
してみると、透光性粒子側からの全光線反射率の数値の持つ技術的な意義が不明であるといえる。

したがって、「本発明の光拡散部材は、透光性粒子側からの全光線透過率と全光線反射率の和が101%以上」なる発明特定事項は、技術的な意義が不明である「透光性粒子側からの全光線反射率」を含むので、請求項1に係る発明も明確であるとはいえない。

以上、aないしdの観点からみて、請求項1に係る発明が明確であるとはいえないから、本願は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しない。
(2)補正後の請求項2乃至5について
補正後の請求項1を引用する補正後の請求項2ないし5に係る発明も、同請求項1に係る発明と同様に明確であるとはいえないから、本願は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しない。

B.特許法第36条第4項違反とする拒絶理由の理由について
(1)
ア 本願明細書の段落【0019】には、「本発明の光拡散部材は、透光性粒子側からの全光線透過率と全光線反射率の和が101%以上であることが必要である。全光線透過率と全光線反射率の和が101%より低くなると、全光線透過率または反射率の少なくともいずれかが低いことになり、LCDなどのディスプレイに適用した際に、十分な輝度が得られないという問題がある。本発明において、全光線透過率と全光線反射率の和を101%以上にするためには、使用する透光性基体、結着剤、透光性粒子に関して、前記のような好ましい材料組成、その物性等を適宜選択したり、さらにこれらを組み合わせることにより達成される。また透光性粒子の結着層への埋め込みの度合や、後述する透光性粒子の投影面積や光拡散層表面の比表面積を調整することによって行うことができる。」と記載されている。

イ 本願明細書には、使用する透光性基体の屈折率、光線透過率、ヘーズ及び厚さの好ましい範囲(段落【0012】)、結着剤の屈折率、Tg(ガラス転移点)及び重量平均分子量の好ましい範囲(段落【0015】)、段落【001】)、及び透光性粒子の屈折率、粒径の好ましい範囲(段落【0014】)が記載されている。
ウ 本願補正明細書の段落【0024】には、光拡散層における透光性粒子の透光性基体への投影面積が、透光性基体の面積の70%以上であるのが好ましいこと、同段落【0025】には、「光拡散層の表面の比表面積は1.20?3.00であることが必要であり、好ましくは1.25?1.50の範囲である。」と記載されている。

エ 同段落【0027】には、「本発明の光拡散部材は、例えば、以下の方法で製造することができる。結着剤を塗布した透光性基体上にエアー等を用いて透光性粒子を吹き付ける方法、離型性の基材上に粒子を整列させた後、結着剤を塗布した透光性基体を圧着し、離型性の基材を剥離除去する方法、振動等の方法で運動エネルギーを与えた加圧媒体に透光性粒子を担持させ、結着剤を塗布した透光性基体を接触させて透光性粒子を埋め込む方法,透光性基体上に結着層、透光性粒子を順次積層し、この上に離型性基材を載せ、ローラー等で加圧プレスして結着層に透光性粒子を埋め込む方法等が挙げられる。しかしながら、本願発明の光拡散部材はその製造方法によって限定されるものではない。」と記載されている。

オ 本願明細書には、「透光性粒子側から入射した光線のJIS-K7105の測定法Aによる全光線透過率と、透光性粒子側から入射した光線のJIS-K7105の測定法Aによる全光線反射率との和が101%以上である」光拡散部材の実施例として、特定の透光性基体、透光性粒子及び結着剤の材料を用い、光拡散部材の比表面積の値、透光性粒子の透光性基体への投影面積の割合を示す実施例1?6が記載されている。

しかしながら、本願明細書には、使用する透光性基体、結着剤、透光性粒子のそれぞれの具体的な材料組成、その具体的な物性値、透光性粒子の結着層への埋め込みの具体的な度合い、透光性粒子の透光性基体への投影面積の具体的な度合い及び光拡散層表面の比表面積の具体的な度合い等が記載されておらず、本願の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない。

(2)
「5.A.(1)d」の項で述べたように、本願明細書の段落【0019】は、全光線反射率の観点からみれば、透光性粒子側からの全光線反射率が高いほど十分な輝度が得られると解釈できる。しかしながら、バックライトからの光は、透光性粒子側により反射することによりバックライト側に戻ってしまい、ディスプレイの十分な輝度を得るためには寄与しないことは明らかである。
してみると、透光性粒子側からの全光線反射率の数値の持つ技術的な意義が不明であり、上記段落【0019】の意味が不明である。

したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない。
以上(1)及び(2)の観点からみて、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

6.むすび
したがって、本願は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しないし、また、同法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-08 
結審通知日 2007-05-15 
審決日 2007-05-30 
出願番号 特願2000-174788(P2000-174788)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G02B)
P 1 8・ 537- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 良子越河 勉  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 青木 和夫
辻 徹二
発明の名称 光拡散部材  

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