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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M |
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管理番号 | 1161435 |
審判番号 | 不服2004-11268 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-05-31 |
確定日 | 2007-07-24 |
事件の表示 | 特願2000-532173号「改良照射カテーテル」拒絶査定不服審判事件〔平成11年8月26日国際公開、WO99/42162、平成14年4月23日国内公表、特表2002-512058号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,1999年2月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年2月20日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成16年2月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年5月31日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同年6月28日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成16年6月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年6月28日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は,請求項1の記載を, 「放射性材料を、ガイドワイヤを伝わらせて血管内の選択位置に配置するためのカテーテルであって、 放射線用管腔を有する可撓性管状本体と、 放射線源を受入れるために前記放射線用管腔の近位端に形成された開放ポートと、 放射線材料を前記放射線用管腔内に保持するために前記放射線用管腔に形成された密封遠位端と、 ガイドワイヤを受入れるために前記管状本体の遠位部分に形成され且つ遠位端及び近位端を有するガイドワイヤチャンネルとを有し、 前記放射線用管腔の前記近位端のところにある前記開放ポートは、開放したままで、前記放射線用管腔の中への放射線材料の手での挿入を可能にするようになっており、前記放射線用管腔の前記近位端は、前記放射線用管腔の前記開放ポートを手術室の非滅菌フィールド内で操縦することを可能にするのに十分な長さだけ前記ガイドワイヤチャンネルの前記近位端を越えて近位方向に延びており、前記ガイドワイヤチャンネルの前記近位端は滅菌フィールド内に残っている、 ことを特徴とするカテーテル。」とする補正を含むものである。(下線部は,補正箇所。) 2 補正の目的の適否 上記補正は,その補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「ポート」について,「開放ポート」及び「前記放射線用管腔の前記近位端のところにある前記開放ポートは、開放したままで、前記放射線用管腔の中への放射線材料の手での挿入を可能にするようになっており、」との限定を追加するものであり,その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,本件補正は,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3 独立特許要件 そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)引用例及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第96/06654号(以下,「引用例」という。)には,放射線治療用カテーテルに関し,次の事項が記載されている。 ア 1ページ4-7行 「The present invention・・・(中略)・・・angioplasty procedure.(本発明は,血管形成術を実施した後の放射線照射領域の再狭窄を防止し,血管の一部を被爆させるために用いる装置の技術分野に属するものである。)」(括弧書きは当審による訳を示す。以下同じ。) イ 2ページ29-34行 「A second disadvantage・・・(中略)・・・ itself can break.(公知のシステムの第2の欠点は、放射線照射リボンが注入カテーテルの中で血流にさらされることであり、さらに,放射性シードの中には注入カテーテルの遠位端から失われるものがあったり,放射線照射リボンそれ自体が壊れる可能性があることである。)」 ウ 4ページ3-11行 「The present invention・・・(中略)・・・radioactive material.(本発明は、血管内の所定の位置にガイドワイヤ上を伝って挿入されるように構成されたカテーテルにおいて,放射線照射リボンとともに使用するカテーテルを提供するものである。カテーテル本体は,放射線照射リボンは挿入される内部管腔を有する。該内部管腔は,放射線照射リボンおよびそれに組み込まれた放射能物質を完全に保持できるよう,カテーテル本体の遠位端で密閉されている。)」 エ 7ページ2行-8ページ5行 「As seen in Figures 1・・・(中略)・・・ is to be used.(図1及び図2に示されるように、本発明の放射線治療用カテーテル組立体10の第1の実施形態は、概して,遠位端13で閉じた内部管腔14を有するカテーテル本体12、該内部管腔14内に挿入自在の放射線照射リボン16、カテーテル本体12をガイドワイヤ20に沿って案内するための遠位側ガイドワイヤ用通路18、ガイドカテーテルのO-リングに対して密封するための近位側ガイドワイヤ用通路19、コイル形状のセンタリング用バルーン22、及びセンタリング用バルーン22が取り付けられる膨張用管腔24で構成される。後に説明されるように、これらの部材の中には,他の実施形態において異なる形状をとるものがあったとしても,本発明の精神から逸脱しなければ差し支えない。 カテーテル本体12は、好ましくはプラスチック材料からなる,細長く、中空で、可撓性のチューブ状カテーテルである。カテーテル本体12の近位端15は,放射線照射リボン16を内部管腔14の中へ簡単に挿入できるよう,末広がりの端部を有している。放射線照射リボン16は,放射線源をカテーテル本体12と同心状に配置できるよう,内側管腔14を基本的に満たす寸法となっている。カテーテル本体12の遠位端13は、放射線照射リボン16及びその放射能物質を保持するために密閉されている。 カテーテル本体12上には、内部管腔14とは分離されて,ガイドワイヤ用通路18が形成されている。・・・(中略)・・・図示されたガイドワイヤ用通路部18は、カテーテル本体12の遠位端の近傍だけに形成され、・・・(中略)・・・。 オプションとして、該遠位端のガイドワイヤ用通路部18と基本的に同じような第2のガイドワイヤ用通路部19を,カテーテル本体12の近端端15の近傍に・・・(中略)・・・形成されてもよい。)」 オ 11ページ15-20行 「The catheter body・・・(中略)・・・is in place.(その後,カテーテル本体12は,ガイドワイヤ20上を伝って,再狭窄部位まで挿入される。放射線照射リボン16は,この挿入に先立ってカテーテル本体12内に配置されてもよいし,或いは,カテーテル本体が所定の位置に配置された後にカテーテル本体12内に挿入されてもよい。)」 カ 第1図(FIG.1)には,ガイドワイヤ用通路18が遠位端及び近位端を有する点,内部管腔14の近位端15のところにある末広がりの端部は,開放したままで,内部管腔14の中へ放射線照射リボンの挿入を可能にするようになっている点,ガイドワイヤ用通路18がカテーテル本体12の遠位端側に形成された点,及び,内部管腔14の近位端がガイドワイヤ用通路18の近位端を越えて近位方向に延びている点が,それぞれ図示されている。 上記記載事項アないしオ,及び上記図示事項カによれば,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「放射線照射リボン16とともに使用され,血管内の所定の位置にガイドワイヤ20上を伝って挿入されるように構成された放射線治療用カテーテルにおいて,内部管腔14を有する可撓性のカテーテル本体12と,放射線照射リボン16を挿入するために内部管腔14の近位端15に形成された末広がりの端部と,放射線照射リボン16を保持するために密閉されているカテーテル本体12の遠位端13と,カテーテル本体12の遠位端側に形成され,遠位端及び近位端を有するガイドワイヤ用通路18を有し,内部管腔14の近位端15のところにある末広がりの端部は,開放したままで,内部管腔14の中へ放射線照射リボンの挿入を可能にするようになっており,内部管腔14の近位端はガイドワイヤ用通路18の近位端を越えて近位方向に延びている,放射線治療用カテーテル。」 (2)対比 本願補正発明と引用発明とを対比するに,後者の「放射線照射リボン16」は,その機能及び作用からみて,前者の「放射性材料」,「放射線源」及び「放射線材料」に相当し,以下同様に,後者の「所定の位置」は前者の「選択位置」に,後者の「ガイドワイヤ20」は前者の「ガイドワイヤ」に,後者の「放射線治療用カテーテル」は前者の「カテーテル」に,後者の「内部管腔14」は前者の「放射線用管腔」に,後者の「カテーテル本体12」は前者の「管状本体」に,後者の「挿入する」は前者の「受入れる」に,後者の「末広がりの端部」は前者の「開放ポート」に,後者の「カテーテル本体12の遠位端側」は前者の「管状本体の遠位部分」に,後者の「ガイドワイヤ用通路18」は「ガイドワイヤチェンネル」に,それぞれ相当する。 また,引用発明の「放射線治療用カテーテル(カテーテル)」は,上記記載事項アの記載内容からわかるとおり,血管形成術を施した血管部分を被爆させるためのものであり,また上記記載事項オの記載内容からもわかるとおり,「放射線照射リボン(放射性材料)」を「カテーテル本体12(管状本体)」に配置した後,「ガイドワイヤ20(ガイドワイヤ)」上を伝わらせて血管内の「所定の位置(選択位置)」に配置するものであるから,引用発明の「放射線照射リボン16とともに使用され,血管内の所定の位置にガイドワイヤ20上を伝って挿入されるように構成された放射線治療用カテーテル」が本願補正発明の「放射性材料を、ガイドワイヤを伝わらせて血管内の選択位置に配置するためのカテーテル」に相当することは明らかである。 さらに,引用発明の「放射線照射リボン16(放射性材料)」は「カテーテル本体12(管状本体)」の「内部管腔14(放射線用管腔)」内に挿入されるものであるから,該「放射線照射リボン16(放射性材料)」は「内部管腔14(放射線用管腔)」内に保持されるものである。してみれば,引用発明の「カテーテル本体12の遠位端13」は,本願発明の「放射線材料を前記放射線用管腔内に保持するために前記放射線用管腔に形成された密封遠位端」に相当するといえる。 したがって,本願補正発明と引用発明とは, 「放射性材料を、ガイドワイヤを伝わらせて血管内の選択位置に配置するためのカテーテルであって、 放射線用管腔を有する可撓性管状本体と、 放射線源を受入れるために前記放射線用管腔の近位端に形成された開放ポートと、 放射線材料を前記放射線用管腔内に保持するために前記放射線用管腔に形成された密封遠位端と、 ガイドワイヤを受入れるために前記管状本体の遠位部分に形成され且つ遠位端及び近位端を有するガイドワイヤチャンネルとを有し、 前記放射線用管腔の前記近位端のところにある前記開放ポートは、開放したままで、前記放射線用管腔の中への放射線材料の手での挿入を可能にするようになっており、前記放射線用管腔の前記近位端は、前記ガイドワイヤチャンネルの前記近位端を越えて近位方向に延びている、カテーテル。」である点で一致し,次の点で相違する。 (相違点) 本願補正発明においては,「放射線用管腔の近位端」が「ガイドワイヤチャンネルの近位端を越えて近位方向に延びて」いる程度について「放射線用管腔の開放ポートを手術室の非滅菌フィールド内で操縦することを可能にするのに十分な長さだけ」と限定され,「ガイドワイヤチャンネルの近位端」について「滅菌フィールド内に残っている」と限定されているのに対し,引用発明においては,そのようになっているか明らかでない点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 一般的に,カテーテル手術のみならず,あらゆる手術の過程において患者の感染防止に努めることは,周知の技術的課題である。そして,手術室が無菌或いは滅菌区域とそうでない区域とに分かれていることは,周知の技術的事項(特開平7-132122号公報,特開昭49-76368号公報,特開昭47-2188号公報等を参照)である。 これを踏まえて引用発明について検討するに,まず,引用発明のガイドワイヤ用通路18を含むカテーテル本体12の遠位端側は,体内に挿入される部分であることから,滅菌状態でなくてはならず,手術室の無菌或いは滅菌区域内で使用されなければならないものであることは明らかである。 これに対し,引用発明の内部管腔14の近位端15のところにある末広がりの端部は,カテーテル本体12の内部管腔14がその遠位端13において密閉され,該内部管腔14内の空間と患者の体内とは連通せず隔離されており,該空間を介して患者が感染するおそれのないことから,該末広がりの部分は滅菌状態である必要はなく,手術室内の無菌或いは滅菌区域内で使用されなければならないわけではないことも明らかである。 してみれば,引用発明の末広がりの端部を手術室内の無菌或いは滅菌区域とそうでない区域のいずれの区域においても使用できるものとすることは当業者であれば容易に想起し得ることであり,このために,ガイドワイヤ用通路18の近位端から該内部管腔14の近位端15までの長さを十分に長いものとすることは,当業者が容易になし得ることである。 なお,引用発明をどのように使用するかは使用者の意思によるものであり,発明の実施上の問題であるが,例えば,該内部管腔14内に挿入する放射線照射リボン16が滅菌されていない場合には,施術者が当該リボンを直接触ることはできず,末広がりの端部は無菌(滅菌)でない領域で使用されなければならないことは当然である。 よって,引用発明及び周知の技術的事項に基いて,上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易になし得ることである。 また,本願補正発明が上記相違点によって奏することとなる作用・効果も,引用発明及び周知の技術的事項から予測される範囲内のものであって,格別なものとは認められない。 4 むすび 以上のとおり,本願補正発明は,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明についての判断 1 本願発明 本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成15年12月22日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「放射性材料を、ガイドワイヤを伝わらせて血管内の選択位置に配置するためのカテーテルであって、 放射線用管腔を有する可撓性管状本体と、 放射線源を受入れるために前記放射線用管腔の近位端に形成されたポートと、 放射線材料を前記放射線用管腔内に保持するために前記放射線用管腔に形成された密封遠位端と、 ガイドワイヤを受入れるために前記管状本体の遠位部分に形成され且つ遠位端及び近位端を有するガイドワイヤチャンネルと、を有し、 前記放射線用管腔の近位端は、前記放射線用管腔のポートを手術室の非滅菌フィールド内で操縦することを可能にするのに十分な長さだけ前記ガイドワイヤチャンネルの近位端を越えて近位方向に延び、前記ガイドワイヤチャンネルの近位端は滅菌フィールド内に残っている、前記カテーテル。」 2 引用例及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は,前記「第2[理由]3(1)」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は,前記「第2[理由]1ないし3」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「開放ポート」について,「開放」及び「前記放射線用管腔の前記近位端のところにある前記開放ポートは、開放したままで、前記放射線用管腔の中への放射線材料の手での挿入を可能にするようになっており、」との限定を省いたものに過ぎない。 そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに,他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2[理由]3(2),(3)」で検討したとおり,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 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審理終結日 | 2007-02-14 |
結審通知日 | 2007-02-19 |
審決日 | 2007-03-08 |
出願番号 | 特願2000-532173(P2000-532173) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61M)
P 1 8・ 121- Z (A61M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 門前 浩一 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
森川 元嗣 芦原 康裕 |
発明の名称 | 改良照射カテーテル |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 箱田 篤 |
代理人 | 熊倉 禎男 |