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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04B |
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管理番号 | 1161502 |
審判番号 | 不服2005-18204 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-22 |
確定日 | 2007-07-27 |
事件の表示 | 平成8年特許願第239924号「シーリング材の施工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年3月3日出願公開、特開平10-61038〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年8月22日の出願であって、平成17年3月31日付けの最後の拒絶理由通知に対し、平成17年6月1日付けで手続補正が行われ、平成17年8月12日付けで、平成17年6月1日付け手続補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年9月22日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、平成17年10月24日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成17年10月24日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年10月24日付け手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。 [理由] (1).本件補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として次のとおりに補正された。 「予め、電極間でコロナ放電又はアーク放電を生じさせ、空気流を吹き付けて放電吹出口からコロナ放電又はアーク放電を空気流により吹き出させ、下流側に吹き出したコロナ放電又はアーク放電を被施工体の被施工面に当てる処理(電極と対面電極に放電を生じさせ、その放電空間に被施工体を通過させることにより放電処理を行うコロナ処理を除く)を施した後、シーリング材を直接施工することを特徴とするシーリング材の施工方法。」 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2).引用例 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-146131号公報(以下「引用例1」という)には以下の記載がある。 引用例1 (イ) 「2.特許請求の範囲 (1)フッ素系樹脂フィルムを金属基材の表面に積層してなる樹脂積層金属のシーリングを、シーリング部分に位置するフッ素系樹脂フィルムを表面処理して該表面の表面張力を30dyne/cm以上となした後にフッ素系樹脂フィルムと同色のシーリング材で行うことを特徴とする樹脂積層金属のシーリング方法。 (2)上記表面処理を、コロナ放電処理により行う請求項(1)記載の樹脂積層金属のシーリング方法。」(1頁左下欄4?14行) (ロ) 「[産業上の利用分野] 本発明は、樹脂積層金属のシーリング方法に関し、詳しくは、フッ素樹脂フィルムを積層してなる樹脂積層金属のシーリング方法に関する。 [従来の技術] アルミニウム等の金属基材の表面にフッ素系樹脂フィルムを積層形成し、該金属基材にフッ素系樹脂が有する耐熱性、耐薬品性、電気的性質、機械的性質等の優れた性質を付与してなる樹脂積層金属が知られている。 上記樹脂積層金属は、種々の用途に利用できるが、装飾性とともに優れた耐候性を有していることから、外装用建材として特に好適に用いることができる。 上記樹脂積層金属を、例えば、上記のように外装用建材として使用する場合には、通常、隣接する樹脂積層金属同志間や、該樹脂積層金属と他の部材との間をシーリングすることが必要となる。 [発明が解決しようとする課題] しかしながら、金属基材に積層されているフッ素系樹脂フィルムは、ぬれ性が極めて低いため、上記樹脂積層金属をシーリングすることができないという問題があった。 従って、本発明の目的は、フッ素系樹脂フィルムを積層してなる樹脂積層金属を確実にシーリングするこができる樹脂積層金属のシーリング方法を提供することにある。」(1頁右下欄8行?2頁左上欄15行) (ハ) 「上記の如き、表面処理を行った後、シーリング部分に適用するシーリング材としては、フッ素系フィルムと同色のシーリング材ならば、特に制限はないが、建築材料用に用いられるフッ素系樹脂フィルムと同色のシーリング材、例えば、ポリジメチルシロキオン等のシリコン系、フェニル、ビニル等の変性シリコン系、ポリサルファイド系、ポリウレタン系、アクリル系、フルオロアルキルアクリレート重合物、パーフルオロアルキルアクリレート重合物等のフッ素含有アクリル系の種々のシーリング材を適用することができる。」(3頁右下欄14行?4頁左上欄5行) (ニ) 「また、上記シーリングを行う前に、シーリング部分にブライマー処理を行ってもよい。その際、適用可能なブライマーとしては、シーリング材に合ったものであれば、特に制限はなく、例えば、合成ゴム系、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、シリコーンレンジ系、シラン又は変性シラン系等積々のブライマーを適用することができる。…」(4頁左上欄11?18行) (ハ)(ニ)の記載においては、プライマーを使用することなく、シーリング材を直接適用することが実質開示されているから、これら(イ)?(ニ)の記載を含む引用例1全体の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識を勘案すると引用例1には以下の発明が記載されている。 「フッ素系樹脂フィルムを金属基材の表面に積層してなる樹脂積層金属のシーリング部分に位置するフッ素系樹脂フィルム表面をコロナ放電によって表面処理を施した後、シーリング材を直接施工することを特徴とするシーリング方法 」(以下「引用例1に記載の発明」という) (3).対比 まず、その選択的記載からみて、本願補正発明には、 「予め、電極間でコロナ放電を生じさせ、空気流を吹き付けて放電吹出口からコロナ放電を空気流により吹き出させ、下流側に吹き出したコロナ放電を被施工体の被施工面に当てる処理(電極と対面電極に放電を生じさせ、その放電空間に被施工体を通過させることにより放電処理を行うコロナ処理を除く)を施した後、シーリング材を直接施工することを特徴とするシーリング材の施工方法。」が含まれる。 ここにおいて、引用例1に記載の発明と本願補正発明とを比較検討すると、引用例1に記載の発明における「樹脂積層金属」は本願補正発明の「被施工体」に、同じくコロナ放電によって表面処理される「フッ素系樹脂フィルム表面」は「被施工面」に相当し、「シーリング方法」とは「シーリング材の施工方法」に外ならないから、両者は、 「コロナ放電を被施工体の被施工面に当てる処理を施した後、シーリング材を直接施工することを特徴とするシーリング材の施工方法」である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点 本願補正発明においては、コロナ放電を被施工体の被施工面に当てる処理(以下、単に「コロナ放電処理」という)が、「予め、電極間でコロナ放電を生じさせ、空気流を吹き付けて放電吹出口からコロナ放電を空気流により吹き出させ、下流側に吹き出したコロナ放電を被施工体の被施工面に当てる処理(電極と対面電極に放電を生じさせ、その放電空間に被施工体を通過させることにより放電処理を行うコロナ処理を除く)」であるのに対して、引用例1に記載の発明においては、このような処理を実施していない点。 (4).判断 この相違点について検討するに、樹脂材料の表面改質を実施するためにコロナ放電処理を実施する際に、予め、電極間でコロナ放電を生じさせ、空気流を吹き付けて放電吹出口からコロナ放電を空気流により吹き出させ、下流側に吹き出したコロナ放電を樹脂材料表面に当てるようにすることは、実願平4-68792号(実開平7-43730号)のCD-ROM、特開平7-62124号公報(【0007】?【0012】)、特開平7-18101号公報、特開平5-59198号公報【0008】?【0013】)に例をみるように周知の事項であり、コロナ放電処理において相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、周知の事項から当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本願補正発明の効果も、引用例1に記載の発明及び周知の事項から当業者が予測可能な範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例1に記載の発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5).むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1).本願発明 平成17年10月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年2月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「被施工体の被施工面に対して、予め、電極間でコロナ放電又はアーク放電を生じさせ、ガス流を吹き付けてコロナ放電又はアーク放電をガス流により吹き出させ、下流側に吹き出した放電を当てる処理を施した後、シーリング材を直接施工することを特徴とするシーリング材の施工方法。」(以下、「本願発明」という。) (2).引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1の記載事項は、前記「2.(2).」に記載したとおりである。 同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-54442号公報(以下「引用例2」という)には以下の記載がある。 (ホ) 「本第一発明の目的は従来技術を改良してさらに成形品等の被処理物の表面改質効果を飛躍的に向上させることができ、また、該被処理物の表面に特定の性質を付与することができるコロナ放電処理方法の提供を目的とする。 また、本第二発明の目的は前記の方法を効果的に実現できるコロナ放電処理装置を提供することにある。 発明の構成 (問題点を解決するための手段) 本第一発明は前記の目的を達成するためにコロナ放電領域に気体を強制的に吹き込むという技術的手段を採用する。 また、本第二発明は前記の目的を達成するためにコロナ放電電極の近傍において被処理物側に向って開口する気体噴出ノズルを設けるという技術的手段を採用する。」(2頁左上欄4?20行) (ヘ) 「前記コロナ放電電極1の下方において基台A上に設置されている対向電極手段Dは合成樹脂のように絶縁体で形成された電極台7と、表面側に絶縁体からなる被覆層9を有する対向電極8とから構成され、該被覆層9の上面にコロナ放電処理される被処理物10が載置されるようになっている。」(3頁左下欄4?9行) (ト) 第1図には、コロナ放電電極1と対向電極8で形成される放電領域に、コロナ放電電極1の近傍において設けられた被処理物10側に向って開口する気体噴出ノズル2から、対向電極上8に載置された被処理物10に向かってガス流を下向きに噴出させる処理方法が開示されている。 上記の記載事項によれば、本願発明同様に、コロナ放電が発生している領域にガス流を噴出するものである引用例2に記載のコロナ放電による処理方法においては、コロナ放電電極側から対向電極上に載置された被処理物へ向い、被処理物に沿って流れるガス流によって、当該ガス流に沿ったコロナ放電の吹き出しも当然存在していると考えられるから、引用例2に記載の処理方法は、結果として、「ガス流を吹き付けてコロナ放電をガス流により吹き出させ、下流側に吹き出した放電を当てる」ものでもあるということができる。 (3).対比 まず、その選択的記載からみて、本願発明には、 「被施工体の被施工面に対して、予め、電極間でコロナ放電を生じさせ、ガス流を吹き付けてコロナ放電をガス流により吹き出させ、下流側に吹き出した放電を当てる処理を施した後、シーリング材を直接施工することを特徴とするシーリング材の施工方法。」が含まれる。 ここにおいて、引用例1に記載の発明と本願発明とを比較検討すると、引用例1に記載の発明における「樹脂積層金属」は本願発明の「被施工体」に、同じくコロナ放電によって表面処理される「フッ素系樹脂フィルム表面」は「被施工面」に相当し、また、「シーリング方法」とは「シーリング材の施工方法」に外ならないから、両者は、 「被施工体の被施工面にコロナ放電を当てる処理を施した後、シーリング材を直接施工することを特徴とするシーリング材の施工方法」である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点 本願発明においては、コロナ放電処理が、「予め、電極間でコロナ放電を生じさせ、ガス流を吹き付けてコロナ放電をガス流により吹き出させ、下流側に吹き出した放電を当てる処理」であるのに対して、引用例1に記載の発明においては、このような処理を実施していない点。 (4).判断 相違点について検討するに、引用例1に記載の発明において、コロナ放電処理において相違点に係る本願発明の構成とすることは、引用例2に記載された事項から当業者が容易に想到し得ることである。 すなわち、3.(2).で述べたように、引用例2に記載の処理方法は、結果として、「ガス流を吹き付けてコロナ放電をガス流により吹き出させ、下流側に吹き出した放電を当てる」ものでもあるから、引用例1に記載の発明において、コロナ放電処理に引用例2に記載の処理方法を採用したものは、電極と対面電極に放電を生じさせ、その放電空間に被施工体を通過させることにより放電処理を行うコロナ処理を除くものではないところの本願発明に外ならない。 また、本願発明の効果も、引用例1及び引用例2の記載から予測される以上の格別なものとは認められない。 したがって、本願発明は、引用例1に記載の発明及び引用例2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5).むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載の発明及び引用例2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-05-24 |
結審通知日 | 2007-05-30 |
審決日 | 2007-06-12 |
出願番号 | 特願平8-239924 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E04B)
P 1 8・ 575- Z (E04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡邉 聡、家田 政明 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
峰 祐治 小山 清二 |
発明の名称 | シーリング材の施工方法 |
代理人 | 小島 隆司 |
代理人 | 石川 武史 |
代理人 | 小林 克成 |
代理人 | 重松 沙織 |