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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21B
管理番号 1161598
審判番号 不服2006-27554  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-07 
確定日 2007-07-26 
事件の表示 特願2004-202110「防音装置およびこれを備える加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月26日出願公開、特開2006- 22568〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成16年7月8日の出願であって、平成18年10月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、その請求項6に係る発明は、平成18年7月12日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項6】
地盤または岩石を加工対象物とし、アームの一方端に取り付けられて加工対象物に当接されて該加工対象物を加工する加工部と、前記加工部を駆動する駆動部と、前記アームに沿って延設されて前記駆動部からの駆動力を前記加工部に伝達する伝達部とを有する加工装置に装着される防音装置において、
前記伝達部を覆うように、合成樹脂製シートと制振材料とを組み合わせてなる柔軟性および遮音性を有するシート状材料を略円形の断面形状を有する蛇腹管状に形成してなることを特徴とする防音装置。」
(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平6-185055号公報(以下、「引用例1」という。)には、「防音装置」に関して、第1?9図とともに、下記の記載がある。
(イ)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、削孔装置から発生する騒音を抑制するために、削孔装置に対し直接取付けられる防音装置に関する。」
(ロ)「【0007】・・・本発明の主たる課題は、軽量化を図り、運搬、取付け・取外しが容易な削孔機用防音装置を提供するものである。」
(ハ)「【0011】・・・本発明においては、前記穿孔ロッドは徐々に地盤中に貫入されるものであるから、この部分の防音カバーを必要最小限度のものとするために防音性の蛇腹管を用いている。従って、残りのハンマー部およびセントライザー部はそれぞれを個別に覆うものであればよいため小さな函体で済み、全体として装置の小型化、軽量化が図れ、その取付け・取外しが極めて容易に行えるようになる。
【0012】さらに、上記のように穿孔ロッド部の防音カバーとして蛇腹管を使用するものであるから、用途、施工箇所等に応じて穿孔ロッド長さが変わったとしても、これに容易に対応することができる。」
(ニ)「【0013】
【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明する。図1は削孔機Mに対して本発明に係る防音装置の取付け状態図であり、図2はその要部拡大図、図3は要部拡大正面図である。削孔機Mは、クローラ走行台車15からのブーム16に対してガイドセル4が取付けられ、さらにこのガイドセル4上には、該ガイドセル4に沿って移動自在のハンマー5を備えるとともに、ガイドセル4の先端部には穿孔ロッド8の穿孔用ガイドとしてのセントライザー6、7を備えている。そして、装着された穿孔ロッド8の後端を前記ハンマー5によって支持し、打撃力および貫入力を与えて穿孔ロッド8を地盤中に貫入させる。なお、シリンダー17はガイドセル4のスライドのためのものである。
【0014】穿孔に当たっては、ガイドセル4の先端のパッド4aを地盤に当接し、傾動用シリンダー18によってガイドセル4を所定方向に位置決めする。図示の場合には鉛直としている。ガイドセル4が所定の状態に座ったならば、ガイドセル4内に周回して配設されたチェーン等の駆動によりハンマー5を前進させるとともに、穿孔ロッド8に打撃力を与えて徐々に挿入させる。」
(ホ)「【0019】前記防音性函体1および函体2を構成する防音壁材としては、図6に示されるように、最外層を軽量化の観点からアルミ材のカバープレート30ととし、この内面側に防音材としての鉛材51を接着等により積層し、さらに内面側に所定厚のガラスウール層52を設けて防音効果を持たせている。なお、用いる防音性壁材としては、前記構成に限定されることなく、他の防音材を用いた構成を採用することもできる。前記ハンマー5を覆う防音性函体1とセントライザー6、7を覆う防音性函体2との間は、両者を連結しかつ穿孔ロッド8を覆う蛇腹管3によって覆われている。前記蛇腹管3は、図7に示されるように、断面形状が方形であって、両端部のそれぞれに防音性函体1の通孔1aおよび防音性函体2の通孔20aに嵌合する口元部3a、3aを有し、本体部分は穿孔ロッド8の軸方向に伸縮自在に蛇腹構造となっている。前記蛇腹管3の材質としては、重量的にはやや不利となるが、防音性付与のために鉛板を用いている。また、他の防音性材料を用いることもできる。」
(ヘ)「【0023】・・・本試験より、本発明防音装置によっても高い防音効果を発揮することが判明した。
【0024】
【発明の効果】以上詳説の通り、本発明によれば、軽量化が図れ、穿孔機への取付け・取外しが容易な防音装置を提供することができる。」
これらの記載事項および図面を参照すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。
(引用例1記載の発明)
「地盤を穿孔対象物とし、ガイドセル4の一方端に取り付けられて穿孔対象物に当接されて該穿孔対象物を穿孔する穿孔ロッド8の先端部と、前記穿孔ロッド8の先端部を穿孔対象物に挿入させるハンマー5と、前記ガイドセル4に沿って延設されて前記ハンマー5からの力を穿孔ロッド8の先端部に伝達する穿孔ロッド8の先端部以外の部分とを有する削孔装置に装着される防音装置において、
前記穿孔ロッド8の先端部以外の部分を覆うように防音効果のあるシート状材料を角形の断面形状を有する蛇腹管状に形成してなる防音装置。」

3.対比・判断
上記本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1記載の発明の「地盤を穿孔対象物とし」、「ガイドセル4」、「穿孔対象物」、「穿孔対象物を穿孔する穿孔ロッド8の先端部」、「穿孔ロッド8の先端部を穿孔対象物に挿入させるハンマー5」、「穿孔ロッド8の先端部以外の部分」、「削孔装置」及び「防音効果のある」は、それぞれ、本願発明の「地盤または岩石を加工対象物とし」、「アーム」、「加工対象物」、「加工対象物を加工する加工部」、「加工部を駆動する駆動部」、「伝達部」、「加工装置」及び「遮音性を有する」に相当する。

してみると、両者は、
「地盤または岩石を加工対象物とし、アームの一方端に取り付けられて加工対象物に当接されて該加工対象物を加工する加工部と、前記加工部を駆動する駆動部と、前記アームに沿って延設されて前記駆動部からの駆動力を前記加工部に伝達する伝達部とを有する加工装置に装着される防音装置において、
前記伝達部を覆うように、遮音性を有するシート状材料を蛇腹管状に形成した防音装置。」
の点で一致し、下記の点で相違している。

相違点1:シート材料が、本願発明では、合成樹脂製シートと制振材料とを組み合わせて成る柔軟性および遮音性を有するものであるのに対して、引用例1記載の発明では、遮音性を有するものの、本願発明のようなシートと制振材料を組み合わせてなるのか定かでない点。
相違点2:防音装置の断面形状を、本願発明では、略円形としているのに対して、引用例1記載の発明では、角形である点。

そこで、上記相違点につき、以下検討する。

相違点1について
防音装置に利用されるシート材料として、合成樹脂製シートと制振材料とを組み合わせて成る柔軟性および遮音性を有するものは、従来周知(特開2003-138696号公報、特開平4-113837号公報、実願昭50-023336号(実開昭51-104608号)のマイクロフィルム等参照)であるから、引用例1記載の発明のシート材料に代えて、前記周知のシート材料を採用し、本願発明のようにすることは当業者であれば容易になし得ることである。

相違点2について
防音装置の断面形状を本願発明のように略円形とした点は、適宜なし得る設計事項に過ぎない。ちなみに、作業機械に装着される蛇腹管状の防音装置において、その形状を略円形としたものは、実願昭56-081643号(実開昭57-193735号)のマイクロフィルム、実願昭56-039884号(実開昭57-151445号)のマイクロフィルム等にみられるように、周知慣用のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明および周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-25 
結審通知日 2007-05-29 
審決日 2007-06-12 
出願番号 特願2004-202110(P2004-202110)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 信也郡山 順  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 西田 秀彦
砂川 充
発明の名称 防音装置およびこれを備える加工装置  
代理人 振角 正一  
代理人 梁瀬 右司  

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