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審決分類 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H04M
審判 全部無効 2項進歩性  H04M
審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  H04M
管理番号 1161686
審判番号 無効2004-80203  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-25 
確定日 2007-08-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第2672085号発明「電話の通話制御システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2672085号の特許請求の範囲に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2672085号に係る発明についての出願は、昭和61年1月13日(パリ条約による優先権主張1985年1月13日、1985年11月10日、イスラエル国)にされたものであって、平成7年4月5日付け及び平成9年5月7日付けで手続補正がなされ、平成9年7月11日にその発明について特許の設定登録がなされ、平成16年10月25日に本件無効審判が請求されたものである。

2.請求人の主張の概要
請求人の主張の概要は次のようなものである。
平成9年5月7日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件出願当初の明細書の要旨を変更するものであり、本件出願は、特許法第40条(平成5年法律第26号による改正前のもの)の規定により本件補正をした平成9年5月7日に出願をされたものとみなされるところ、本件特許の特許請求の範囲第1項ないし第13項に係る本件特許発明は、特開昭61-210754号公報(以下、「甲第1号証」という。)、 特開平5-284257号公報(以下、「甲第2号証」という。)および特開平7-212504号公報(以下、「甲第3号証」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は特許法第123条第1項第2号(平成5年法律第26号による改正後のもの)の規定により、無効とすべきである。
また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、出願日(優先日)をそのままの昭和61年1月13日(昭和60年1月13日および昭和60年11月10日)として、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の構成および効果が記載されておらず、また特許請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていないので、本件特許は、同法第36条第4項および第5項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第3号(昭和60年法律第41号による改正前のもの、改正後のものにあっては同法第36条第3項および第4項)の規定により、無効とすべきである。

3.被請求人の主張の概要
一方、被請求人の主張の概要は次のようなものである。
[平成9年5月7日付け手続補正(本件補正)が要旨変更には該当しない点について]
(1)本件補正(全文訂正明細書)の第5頁第24?26行において、出願当初の明細書第12頁第6?9行の「支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)となり、今後の電話使用ができる。クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される。」を、「上記預託金額は、各預託金額毎に附される特殊コードと共に前記特殊な交換部のメモリー手段に予め記憶されていると共に、通話費用を差し引いた預託金額の残高が記録される。」に変更する補正(補正事項2)については、そもそも、出願当初の明細書には、特殊コードが、預託金額を支払った後に中央局のメモリーに記憶されるとは記載されていない。
出願当初の明細書の実施例には、「支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)となり、今後の電話使用ができる。クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される」(出願当初の明細書第12頁6行?9行)と記載されているだけで、預託金額が支払われた後に、特別のコード(特殊コード)をメモリーが記憶するという経時的な動作が記載されているわけではない。「クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される」という文章が、「支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)となり、今後の電話使用ができる。」という文章の後にあるにすぎない。
しかも、かかる記載は、実施例における記載にすぎないのであるから、本発明の技術的事項が、預託金額の支払い後に特別のコード等がメモリーに記憶されることのみに限定されるものではないことは明らかである。このことは、特別のコード等がメモリーに記憶される時点が、預託金額の支払い前であるか後であるかで、本発明の作用効果に何ら変化を生じないことからも明らかである。
そして、本件補正の第1頁第9?11行において、「その特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から、通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり、」に変更する補正(補正事項1)に見られるように、当該補正は、「特殊コード」の性格について明確にしただけであり、補正事項2は、新たな構成や動作を追加したものではない。
本発明の第1図のブロック12から始まるフローは、クレジットと秘密番号が一体となっているところから始まっているのであって、本発明において、預託金額と特別のコードの組合せがメモリーに記憶されるまでの経緯は全く問題にしていない。そして、それは、ブロック13の、電話をかけるための「受送話器をはずす」の前に行われることしか要求されていないものである。
補正事項2にいう「メモリー手段に予め記憶されている」とは、取得者の電話使用の前にメモリー手段に記憶されている、という意味であり、預託金額の支払い前から記憶されていることに限定された表現ではない。特殊コードや預託金額が、預託金額の支払い前からメモリーに記憶されたとしても、預託金額の支払いがあったことを受けて、すなわち預託金額の支払い後にメモリーに記憶されたとしても、特殊コードや預託金額の取得者が電話を使用しようとするときには既に記憶されていることを意味するのである。
以上のように、そもそも当初明細書においては、メモリーへの記憶と預託金額の支払いの前後関係については限定されておらず、メモリーへの記憶が取得者の電話利用前であることのみが記載されていたところ、請求人が主張する補正事項2において、出願人は、メモリーへの記憶が取得者の電話利用前であることの記載を出願当初明細書の範囲で、より明確にしたものに過ぎない。
(2)本件補正の第10頁第21?23行において、「また、特殊な交換部に予め預託金額及び特殊コードを記憶してあるので、特殊コードの取得時には対応する金額を支払うだけでよく、入金等のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ない。」を新たに追加する補正(補正事項3)については、該補正事項3は、<発明の効果>の欄に記載されていることから明らかなように、特許請求の範囲に記載された発明に対応する効果であるから、特許請求の範囲に対応するものであることは常識的なことであり、実施例中の記載である補正事項2に対応する効果であるという請求人の主張は誤りである。
確かに、補正事項3の「特殊な交換部に予め預託金額及び特殊コードを記憶してあるので、特殊コードの取得時には対応する金額を支払うだけで良く、入金時のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ない。」という記載は、預託金額及び特殊コードの記憶と、対応する金額の支払いとの間の前後関係が記載されているようにも見える。しかし、そもそも当初明細書には、預託金額及び特殊コードのメモリーへの記憶と、対応する金額の支払いの前後関係は規定されていない以上、補正により、前後関係を確定したところで、発明の減縮であるから、補正事項3も出願当初の明細書の要旨を変更するものではない。そもそも本件特許発明において、預託金額と特殊コードの組合せがメモリーに記憶されるまでの経緯は全く問題にしていないのだから、特殊コードの記憶と、対応する金額の支払いとの前後関係は、本件特許発明を確定する技術的事項に属さないのである。
(3)本件補正の第1頁第9?11行における「その特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から、通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり、」との補正(補正事項1)は、補正事項2や3を参酌しようがしまいが、その記載自体が明確である。補正事項1は、「その特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から、通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされる」と明確に記載されている。すなわち、特殊コードが使用可能な期間についての説明がなされている。本件特許発明が期待どおりの作用効果を奏するためには、特殊コードの取得者が電話を使用する時点で、メモリー手段に「特殊コードが所定の預託金額と一連で記憶され、通話費用を差し引いた預託金額の残高が記録され」ればよいものである。特許請求の範囲第1項では、メモリー手段が構成要件になっているが、メモリー手段に預託金額や特殊コードを記憶させる手段が構成要件になっているわけではない。預託金額や特殊コードが記憶されている状態であることを規定しているに過ぎない。言い換えれば、メモリー手段に預託金額や特殊コードが記憶されているという状態さえあればよいのであるが、請求人はメモリー手段に記憶させるための手段が構成要件として存在するかのような誤った議論をしているにすぎない。メモリー手段に預託金額及び特殊コードが記憶される点において、補正は、何ら実質的な変更を加えていない。
本件特許発明において、預託金額と特殊コードの組合せがメモリーに記憶されるまでの経緯は全く問題にしていないのだから、特殊コードの記憶と、対応する金額の支払いとの前後関係は、本件特許発明を確定する技術的事項に属さない。よって、補正により、特許請求の範囲に記載した技術的事項が明細書または図面に記載した範囲内のものでなくなったということはなく、明細書の要旨の変更にはあたらない。
(4)本件補正の第1頁第16?22行において、「比較手段(93)は、メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高と、通話を開始するための最小費用またはその後の通話費用とを比較し、接続・遮断手段(92)は、発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段(86)に記憶されたものと一致したときにおいて、メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高が、通話を開始するための最小費用より多い場合には、被呼者との通話を接続し、その後の通話費用を負担し得なくなった場合には、被呼者との通話接続を遮断する」と追加する補正(補正事項4)は、当初明細書の記載の範囲内での補正であり、要旨変更はない。
明細書の要旨とは、「明細書又は図面に記載された、発明の構成に関する技術的事項(旧審査基準)」をいい、明細書を補正した結果、特許請求の範囲に記載した技術的事項が出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものとなったときに、その補正は要旨変更とされる。
補正が適法であるか否かは、出願当初の明細書又は図面に技術的思想の創作としての発明が記載されているか否かにより判断される。出願時において、いわゆる当業者が補正前の明細書の記載から見て自明な事項であれば要旨変更とならない。この点、補正事項4の「通話を開始するための最小費用」は、補正前の明細書の記載からみて自明な事項である。
出願当初の明細書には、「問題点を解決するための手段」において、「本発明の別の特徴によれば、… 十分であり確かなものであることが確認されると、即ち、呼出者が適切なコード番号を使用しており通話できる十分なクレジットをもっている時には、通常の発信音が呼出局に送られる。」と記載されており(出願当初明細書11頁7行乃至13行)、「実施例」において、「クレジットが有効なものであるなら、…相手先の電話機に接続した時に通常の発信音が呼出局に送られる。」(出願当初明細書13頁5行乃至8行)や、「呼出者のクレジットが通話料を支払うのに十分であるかどうかを連続的に決定する…クレジットが使用された通話時間料に等しい時には、…自動的に終了する」(同書15頁7行乃至11行)等クレジット額と通話開始のための接続の関係は明示されており、また、「メモリー中のクレジットと通話費用とを比較することにより…クレジットを確認し;確認に従い呼出者と相手先とを接続し、そして、クレジット残高が無くなった時は前記通話を断線する」(出願当初の特許請求の範囲第1項)、「…コードがメモリー手段中のコードに対応するかまた呼出者が残額のあるクレジットを有するかを確認する手段;及び、前記確認により呼出局を相手先と接続する手段」(同第10項)等、通話費用を負担し得なくなった場合に通話を切断することが記載されている。
本件補正の第5頁第13?17行において、「メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高が、通話を開始するための最小費用より多い場合には、被呼者との通話を接続して通話状態が維持され、その後の通話費用と預託金額またはその残高とを比較手段で比較して、その後の通話費用を負担し得なくなった場合には、被呼者との通話接続を遮断するように構成されている。」と追加する補正(補正事項5)、同第9頁第1?11行において、「尚、前記レジスタ88には前述した通話距離による料金率や時間変換のための単位が記録されており、発呼者から入力された被呼者への通話のために必要な最小費用及び前記通話を維持するために必要な費用をチェックすると共に、被呼者と接続後の通話費用が記録されるようになっている。そして、符号93で示される比較手段により、前記メモリー手段86に記憶された預託金額またはその残高と、通話を開始するための最小費用、前記通話を維持するために必要な費用及びその後の通話費用とが夫々比較され、該預託金額またはその残高が、通話を開始するための最小費用より多い時のみ、被呼者との接続を行い、接続後は通話費用と上記預託金額またはその残高との関係を比較して、その後の通話費用を負担し得なくなった時には、発呼者と被呼者の通話を切るように前記接続・遮断手段92を作動させるものである。」と追加する補正(補正事項6)、同第10頁第14?20行において、「メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高が、通話を開始するための最小費用より多い場合には、被呼者との通話を接続して通話状態が維持され、その後の通話費用と預託金額またはその残高とを比較手段で比較して、その後の通話費用を負担し得なくなった場合には、被呼者との通話接続を遮断するように構成されているので、特殊コードを入力するだけで事後精算の必要がないキャッシュレス通話を行うことが可能となる。」と追加する補正(補正事項7)について、請求人は、本件補正により新たに導入されたものであり、出願当初の明細書の記載からみて当業者に自明でなく、また、補正事項5?7は補正事項4の技術的事項の実施例または効果に係る事項であるから、特許請求の範囲に記載された技術的事項を実質的に変更するものである、と主張するが、「通話を開始するための最小費用」については、上述したように、当初明細書に明示されているものであり、請求人の主張は誤っている。

[本件特許発明が特許法第29条第2項の規定に違反しない点について]
請求人の補正事項1?7が要旨変更であるとする主張は誤ったものであり、これら補正事項は要旨変更ではないからこそ、特許庁審判官は補正を認めたのであって、補正は適法なものである。
従って、要旨変更に基づく出願日の繰り下げは無く、本件特許発明の優先日は、昭和60年(1985年)1月13日のままであるところ、請求人が引用した甲第1?3号証の公報は全てこの日以降に公開されたものであるため、先行技術とはなり得ない。
従って、請求人の主張するこれら甲号証に基づく無効主張は理由がない。

[本件特許発明が特許法第36条の規定に適合する点について]
(1)特許公報第1頁右欄第4?5行の「通話を開始するための最小費用」は何をもって最小費用とするかは、明細書を参酌するまでもなく、特許請求の範囲の文言それ自体から明確である。「通話を開始するための最小費用」については、これ以上説明しようもなく、具体的な金額がなければ不明確になるというものでもない。当業者にとって、「通話を開始するための」とは電話システムの接続を開始する場合という意味であり、この場合に必要とされる「最小費用」であることが明確である。すなわち、本件特許発明では、「預託金額の残高」に応じて接続の制御がされるものであるため、預託金額の残高が接続をする際に「必要な費用」より多いことを規定しているのである。すなわち、当業者にとって十分明確な技術的事項の記載となっている。
(2)特許公報第1頁右欄第10?11行の「その後の通話費用を負担し得なくなった場合」は、何をもって負担し得なくなった場合とするかは、「預託金額またはその残高」が通話費用を負担できない場合であることは、明細書を参酌するまでもなく、特許請求の範囲の文言それ自体から明確である。
(3)特許公報第4頁左欄15?18行の「ペグカウンターとして表されている通常の時間/距離計算回路は、…提供し始める。」の時間/距離計算回路の機能が不明瞭であるか否かについては、請求人が上記引用中に省略した箇所には「(ペグカウンターとして表されている通常の時間/距離計算回路は、)使用可能な預託金額またはその残高を通話時間に変換するための情報(を提供し始める。)」と記載されているのであり、時間/距離計算回路の機能が、「使用可能な預託金額またはその残高を通話時間に変換するための情報を提供」するものであることは明白である。
(4)特許公報4頁左欄21?24行の「預託金額またはその残高が、…自動的に終了する。」の「使用されている時間変更のための単位以下になった時には」の技術的意味が不明瞭であるか否かについては、この部分は実施例中の「更に好ましい態様」として比較手段」の動作を説明している箇所であるから、「使用されている時間変更のための単位以下になった時」とはその字義から把握されるように、通話費用を負担し得なくなった場合という意味であることは明白であり、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。
(5)特許公報4頁右欄42?47行の「尚、前記レジスタ88には…なっている。」の「通話距離による料金率や時間変更のための単位」および「発呼者から入力された被呼者への通話のために必要な最小費用及び前記通話を維持するために必要な費用」の技術的意味が不明瞭であるか否かについては、「通話距離による料金率」は、その字義から把握されるように、通話距離に応じた料金率である。「時間変更のための単位」も、その字義から明確に把握される。すなわち、本実施例の更に好ましい形態においては、「預託金額またはその残高が、使用されている時間変更のための単位以下になった時には、通話はブロック31に示されるようにコンピュータにより自動的に終了する。」のであるから、「時間変更のための単位」とは、預託金額またはその残高を時間換算のために一定の単位にしたものであることは明確である。「発呼者から入力された被呼者への通話のための必要な最小費用」とは、通話を開始するために必要な最小費用のことであり、「通話を維持するために必要な費用」が、その字義どおり、通話接続を継続できる金額という意味であることは明確である。
(6)特許公報4頁右欄49行?5頁左欄6行の「通話を開始するための…作動させるものである。」の「通話を開始するための最小費用、前記通話を維持するために必要な費用」および「その後の通話費用を負担し得なくなった時」が、具体的にどういうことなのか技術的意味が不明瞭であるか否かについては、「通話を開始するための最小費用」は、通話を開始するために必要な最小費用であることが、その文言自体から明確であり、「前記通話を維持するために必要な費用」は、通話費用を負担し得るような「預託金額またはその残高」であり、文言それ自体から明確である。また「その後の通話費用を負担し得なくなった時」も、「被呼者との通話を接続し」た後の「預託金額またはその残高」が通話費用を負担できない場合であり、文言それ自体から明確である。

4.当審の判断
(1)平成9年5月7日付け手続補正(本件補正)が要旨変更に該当するか否かについて
(1-1)特許請求の範囲第1項において、「その特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から、通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり、」とした補正(補正事項1)について
この補正事項1は、該補正事項1よりも前の「メモリー手段(86)は、特殊コードが所定の預託金額と一連で記憶され、通話費用を差し引いた預託金額の残高が記録され、」との記載(「記載A」という。)に続く記載であるが、上記記載Aと上記補正事項1とを合わせて見ると、まず、上記記載Aは、メモリー手段(86)に何が記憶ないし記録されるのかを示す記載であり、この記載自体では、いつの時点でメモリー手段(86)への記憶ないし記録動作が行われるのかは明らかでない。(ただし、「記録」されるのは、「通話費用を差し引いた預託金額」であり、少なくとも1回目の通話が開始した時点以降であることは理解される。)
しかしながら、上記補正事項1によると、「特殊コード」は、「預託金額に対応する支払いがあった時」から使用可能とされるものであり、そのようにするためには、メモリー手段(86)への特殊コードと所定の預託金額とを一連で記憶する動作は、少なくとも「預託金額に対応する支払いがあった時」と同時ないしはそれよりも前でなければならないことは明らかである。
さて、上記補正事項1に関連する発明の詳細な説明の補正事項2は、次のようなものである。
補正事項2:出願当初の明細書第12頁第6?9行の「支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)となり、今後の電話使用ができる。クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される。」を、「上記預託金額は、各預託金額毎に附される特殊コードと共に前記特殊な交換部のメモリー手段に予め記憶されていると共に、通話費用を差し引いた預託金額の残高が記録される。」に変更する補正。
上記補正事項2の補正前の記載、すなわち出願当初の明細書又は図面において、「特殊コード」が「預託金額に対応する支払いがあった時」から使用可能とされるようにするために、メモリー手段(86)への特殊コードと所定の預託金額とを一連で記憶する動作を、少なくとも「預託金額に対応する支払いがあった時」と同時ないしはそれよりも前とすることが記載ないし示唆されていたかどうかについて検討する。
出願当初の明細書第12頁第6?9行の「支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)となり、今後の電話使用ができる。クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される。」との記載は、素直に読めば、前段の「支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)となり、今後の電話使用ができる。」との記載は、「支払われた額」がどのようなものであるかの説明で、後段の「クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される。」との記載の最初に出てくる「クレジット額」は、前段の記載中の「支払われた額」を指すものと解されることから、該「クレジット額」は、「支払われた」後に「特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される」ものと解される。
仮に、上記出願当初の明細書第12頁第6?9行の記載が、「クレジット額」が「特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される」動作がいつ行われるのかを特定したものでないのだとしても、到底、メモリーへの「特別のコード」(補正後は「特殊コード」)と「クレジット額」(補正後は「預託金額」)とを一連で記憶する動作を、少なくとも「クレジット額(預託金額)に対応する支払いがあった時」と同時ないしはそれよりも前とすることが記載ないし示唆されていたものとは認められない。
これは、出願当初の明細書第1頁第7?9行の「前払いにより特別のコードを取得し;特別交換局のメモリーに、呼出者の呼出しを確認するために使用するよう前払い額を挿入し;」との記載を見ても同様であり、素直に解釈すれば、「前払いにより特別のコードを取得し」た後に「特別交換局のメモリーに、呼出者の呼出しを確認するために使用するよう前払い額を挿入」するのであり、この記載が時系列を特定するものではないのだとしても、到底、メモリーへの「特別のコード」(補正後は「特殊コード」)と「前払い額」(補正後は「預託金額」)とを一連で記憶する動作を、少なくとも「前払い額(預託金額)に対応する支払いがあった時」と同時ないしはそれよりも前とすることが記載ないし示唆されていたものとは認められない。
そして、出願当初の図面を見ても、電話をかける時のフローチャートは示されているものの、「特別のコード」と「クレジット額」とを一連で記憶する動作を、少なくとも「クレジット額(預託金額)に対応する支払いがあった時」と同時ないしはそれよりも前とすることは記載も示唆もされていない。
これに対して、上記補正事項2の補正後の記載は、「上記預託金額は、各預託金額毎に附される特殊コードと共に前記特殊な交換部のメモリー手段に予め記憶されていると共に、通話費用を差し引いた預託金額の残高が記録される。」であり、上記記載中の「予め記憶されている」の「予め」を、「預託金額に対応する支払いがあった時」よりも前と解すれば、「預託金額に対応する支払いがあった時」よりも前に予め「特殊コード」を「特殊な交換部のメモリー手段に」記憶してあるために、補正事項1に見られるように、「特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から、通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされる」ものと解される。
ここで、被請求人は、『補正事項2にいう「メモリー手段に予め記憶されている」とは、取得者の電話使用の前にメモリー手段に記憶されている、という意味である』旨の主張をしている。しかしながら、次の補正事項3と合わせて鑑みれば、上記「メモリー手段に予め記憶されている」の意味は、「預託金額に対応する支払いがあった時」よりも前に予めメモリー手段に記憶する意味であると解するのが相当である。
すなわち、補正事項3は次のようなものである。
補正事項3:本件補正の第10頁第21?23行において、「また、特殊な交換部に予め預託金額及び特殊コードを記憶してあるので、特殊コードの取得時には対応する金額を支払うだけでよく、入金等のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ない。」を新たに追加する補正。
上記補正事項3においても、「特殊な交換部に予め預託金額及び特殊コードを記憶してある」との記載があり、この記載中の「予め」が、上記補正事項2における「予め」と同じ意味で用いられていると解するのが素直な解釈であり、そう解釈すれば、上記補正事項3中の「特殊コードの取得時には対応する金額を支払うだけでよい」旨の記載は、「特殊コードの取得時に対応する金額を支払った時」には、もうすでに「予め預託金額及び特殊コードを記憶してある」から、「入金等のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ない」ことを意味することになり、全く矛盾のない記載となるのである。
以上のとおり、上記補正事項1は、出願当初の明細書又は図面では、メモリー手段(86)への特殊コードと所定の預託金額とを一連で記憶する動作を、「預託金額に対応する支払いがあった時」よりも後に行うかもしくはその時期を特定していなかったものを、「預託金額に対応する支払いがあった時」と同時ないしはそれよりも前に行うことを特定するものであり、しかも上記「同時ないしはそれよりも前」のうちの「それよりも前」に対応する「特殊な交換部に予め預託金額及び特殊コードを記憶してある」という実施例は、「特殊コードの取得時には対応する金額を支払うだけでよく、入金等のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ない」という出願当初の明細書には記載されていない新たな作用効果を奏するのである。
したがって、上記補正事項1は、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更した補正であるとは認められない。

(1-2)特許請求の範囲第1項において、「比較手段(93)は、メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高と、通話を開始するための最小費用またはその後の通話費用とを比較し、接続・遮断手段(92)は、発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段(86)に記憶されたものと一致したときにおいて、メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高が、通話を開始するための最小費用より多い場合には、被呼者との通話を接続し、その後の通話費用を負担し得なくなった場合には、被呼者との通話接続を遮断する」とした補正(補正事項4)について
上記補正事項4において、「メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高が、通話を開始するための最小費用より多い場合には、被呼者との通話を接続し」と記載されており、「被呼者との通話を接続」するための条件として、「メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高」が「通話を開始するための最小費用より多い」ことが挙げられているので、出願当初の明細書又は図面において、そのことが記載ないし示唆されていたかどうかについて検討する。
上記補正事項4の「被呼者との通話を接続」するための条件に関連する出願当初の明細書の記載は次のようなものである。
記載B:「メモリー中のクレジットと通話経費と比較することにより特別のコード及びクレジットを確認し;確認に従い呼出者と相手先とを接続し」(出願当初の明細書の第1頁第14?17行)
記載C:「呼出局から特別交換局に送られるコードに応動して呼出者を確認する手段であって、コードがメモリー手段中のコードに対応するかまた呼出者が残額のあるクレジットを有するかを確認する手段;及び、前記確認により呼出局を相手先局と接続する手段;」(出願当初の明細書の第3頁第17行?第4頁第3行)
記載D:「呼出局と特別の中央局とを接続する手段であって、呼出者が前払いクレジットを持っている場合には呼出局から前記特別の中央局へ送られる確認されたコードに応動して前記呼出者を確認する手段;及び、前記確認に応動して前記呼出局と望む相手先局との接続を可能にする手段;」(出願当初の明細書の第9頁第12?18行)
記載E:「十分であり確かなものであることが確認されると、即ち呼出者が適切なコード番号を使用しており通話できる十分なクレジットをもっている時には、通常の発信音が呼出局に送られる。」(出願当初の明細書の第11頁第9?13行)
記載F:「そしてまだクレジットが残っている場合、彼は再び通常の発信音に接続し」(出願当初の明細書の第16頁第13?15行)
記載G:「この手順はクレジットが残っている限り繰り返される。」(出願当初の明細書の第17頁第4?6行)
上記記載B?D,F,Gからは、「クレジット」の額がいくらあれば被呼者との通話が接続されることになるのかは特定されないが、上記記載Eを参酌すると、「クレジット」の額は、通話できる十分な場合に被呼者との通話が接続されることになる。
それでは、「メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高」が「通話を開始するための最小費用より多い」という条件が、「クレジット」の額が「通話できる十分な場合」という条件と同じもの、あるいは下位概念に含まれるものなのかどうかを検討する。
「通話を開始するための最小費用」といった場合、例えば、日本の公衆電話であれば「10円」という額が「通話を開始するための最小費用」であり、「通話できる十分な」額といった場合は、どのぐらいの時間通話することができれば十分なのかは、個人個人の主観により異なるものであり、また、たとえ多数の人間の平均をとって十分な通話時間を想定したとしても、通話相手との距離に応じてどれだけの額が十分なものなのかは異なってくるものと解される。よって、出願当初の明細書において明確に記載はされていないが、出願当初の明細書では、通話を開始させる「クレジット」の額は、想定される通話相手がかなり遠距離である場合も十分な通話ができるように、「最小費用」よりも多い額を想定していたものと解される。
してみると、「メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高」が「通話を開始するための最小費用より多い」という条件は、「クレジット」の額が「通話できる十分な場合」という条件とは、全く異なる概念であり、同じもの、あるいは下位概念に含まれるようなものではない。
さて、上記記載E以外の上記記載B?D,F,Gでは、「クレジット」の額がいくらあれば被呼者との通話が接続されることになるのかは特定されておらず、「クレジット」の額が少しでもあれば、すなわち、「最小費用」に満たない場合でも、被呼者との通話接続を許容することを含む記載となっているものと解される。しかし、その場合は、課金をすることができなくなってしまうという不都合が生じることから、その不都合を避けるために、出願当初の明細書にはない「最小費用」という文言を入れた補正をしたものと解される。
ただし、「最小費用」に満たない場合に被呼者との通話接続を許容しても、後から料金を請求しさえすれば、課金をすることは全く不可能ではないのであるから、上記のように「最小費用」という文言を入れることが、直ちに自明な補正であるとまでは言えない。
そして、出願当初の明細書の他の箇所の記載や図面を見ても、「被呼者との通話を接続」するための条件を「メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高」が「通話を開始するための最小費用より多い」こととすることは、記載も示唆もされていないことである。
したがって、上記補正事項4は、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更した補正であるとは認められない。

以上、(1-1)、(1-2)で検討したとおり、本件補正は、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更した補正であるとは認められず、明細書の要旨を変更するものである。

(2)本件特許発明が特許法第29条第2項の規定に違反するか否かについて
(2-1)出願日の特定
上記(1)で検討したとおり、本件補正(平成9年5月7日付け手続補正)は、明細書の要旨を変更するものであるので、本件特許出願は、特許法第40条(平成5年法律第26号による改正前のもの)の規定により、本件補正をした平成9年5月7日に出願されたものとみなされ、パリ条約による優先権主張の効果は認められない。

(2-2)請求項毎の検討
上記のように、本件特許出願は、本件補正をした平成9年5月7日に出願されたものとみなされるので、以下、請求項毎に検討する。
(2-2-1)特許請求の範囲第1項について
(2-2-1-1)本件特許発明1
本件特許請求の範囲第1項に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「1.特殊な交換部(A)を有する電話の通話制御システムであって、特殊な交換部(A)は、メモリー手段(86)とコード確認手段(83)と預託金額確認手段(84)と制御手段(88)とを有し、メモリー手段(86)は、特殊コードが所定の預託金額と一連で記憶され、通話費用を差し引いた預託金額の残高が記録され、その特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から、通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり、コード確認手段(83)は、発呼者の入力する特殊コードを確認し、預託金額確認手段(84)は、メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高を確認し、制御手段(88)は、接続・遮断手段(92)と比較手段(93)とを有し、比較手段(93)は、メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高と、通話を開始するための最小費用またはその後の通話費用とを比較し、接続・遮断手段(92)は、発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段(86)に記憶されたものと一致したときにおいて、メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高が、通話を開始するための最小費用より多い場合には、被呼者との通話を接続し、その後の通話費用を負担し得なくなった場合には、被呼者との通話接続を遮断する電話の通話制御システム。」

(2-2-1-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1号証(特開昭61-210754号公報)、甲第2号証(特開平5-284257号公報)、及び甲第3号証(特開平7-212504号公報)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(甲第1号証)
A.「産業上の利用分野
本発明は電話システムに関し、更に詳しくは、前払いが行われた場合には前払い者は市外通話を含む電話通話を行うためのあらゆる電話機を使用することができる電話システムに関する。この電話システムは、前払い者専用の公衆電話を含む。」(第2頁右下欄第9?15行)
B.「1.使用可能ないずれの電話機からでも電話通話をなしうる方法であって、下記段階:
前払いにより特別のコードを取得し;
特別交換局のメモリーに、呼出者の呼出しを確認するために使用するよう前払い額を挿入し;
電話呼出し接続が必要な時、前記特別交換局をダイアルし;
確認のため前記特別のコードを入力し;
相手先の番号を入力し;
メモリー中のクレジットと通話経費と比較することにより特別のコード及びクレジットを確認し;
確認に従い呼出者と相手先とを接続し、そして、
クレジット残額がなくなった時は前記通話を断線する;
段階を含む方法。」(第1頁左欄第5行?右欄第2行)
C.「10.利用可能なあらゆる呼出局からなされる市外通話を含む電話通話を容易にする電話方式であって:
呼出局を特別交換局と接続する手段;
特別予約者コードとクレジットの情報を記憶するための、特別交換局のメモリー手段;
呼出局から特別交換局に送られるコードに応動して呼出者を確認する手段であって、コードがメモリー手段中のコードに対応するかまた呼出者が残額のあるクレジットを有するかを確認する手段;及び、
前記確認により呼出局を相手先局と接続する手段;とを含む電話システム。」(第2頁左上欄第11行?右上欄第3行)
D.「本発明の別の特徴によれば、呼出局のダイアル装置がコンピュータと接続したことを示す中央局からの特別の発信音を発出することを含む。十分であり確かなものであることが確認されると、即ち呼出者が適切なコード番号を使用しており通話できる十分なクレジットをもっている時には、通常の発信音が呼出局に送られる。クレジットは勿論、ある回数の通話をするのに十分な金額を電話会社に預託することによって得ることができる。」(第4頁左上欄第7?15行)
E.「実施例
顧客、例えば正規の電話機使用者或いは旅行者は現金或いはクレジットカード支払いにより特別の中央局で、特別のコード、クレジット額(信用額)及び電話番号を取得する。コード、クレジット額及び電話番号は通常クレジットカード会社を通じて取得し、取得者のクレジットカードから支払われるようにしてもよい。或いはクレジット額、電話番号及び本人特定コードは例えば空港、ホテル、レンタカー事務所等の販売地点で購入できるようにしてもよい。支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)となり、今後の電話使用ができる。クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される。コード及び電話番号は第1図のブロック12に示されている。
次いで、取得者が市内電話或いは市外電話をしたい事態が生ずる。取得者、即ち電話使用者は受送話機をはずし、ブロック13及び14に示すように特別の中央局にダイアルする。この場合の電話機は私用電話機であってもよい。特別な中央局(旅行者用電話サービス局)或いは交換局に接続すると、14、特別の発信音がこの特別の中央局或いは交換局から呼出局に送信される。呼出者が、交換局のコンピュータがOKであることを示す特別の発信音を聴きとると、呼出者はブロック14に示すように、本人特定コード及び呼出者の望む相手先番号をダイアルする。特別の交換局のコンピュータがコードをチェックし呼出者の望む相手先番号を記録する。
コード番号が真正のコードであり、クレジットが有効なものであるなら、ブロック18及び19に示すように、相手先の電話機に接続した時に通常の発信音が呼出局に送られる。特別の交換局のコンピュータはもっとも経済的に得られる線を接続する。従来の構成では市外電話の長距離線のみであった。
呼出者のあらかじめダイアルした番号はブロック21で示されるように伝送される。勿論このシステムは、呼出者が通常の発信音を受取ることに対応して相手先をダイアルするように構成することもできる。
・・・(中略)・・・
この時点でブロック28で示されるように通常の、時間及び距離計算回路はペグカウンターとしてあらわされており、使用可能なクレジットに対する通話時間にかかわる情報を提供するように機能する。ペグカウンターからの情報は比較器29に送られ、呼出者のクレジットが通話料を支払うのに十分であるかどうかを連続的に決定する。クレジットが使用された通話時間料に等しい時には、通話はブロック31に示されるようにコンピュータにより自動的に終了する。」(第4頁左上欄第16行?第5頁左上欄第11行)
F.「第3図では、前払い電話通話システムの基本的な操作がブロック図で示されている。呼出し電話は番号81で示される。電話81は番号82で示される正規の電話システムと接続している。呼出者は特別の料金番号をダイアルし、コード番号が83で示すように確認される。コード番号確認は、コードが有効なものであるかどうかを確認するためコードにより示されるメモリー部分を探査する。有効なコードであることが確認されると、そのコードのクレジットがメモリー中でチェックされ、クレジット残額を決定する。クレジットの確認は番号84に、メモリーは86で示される。流れ図中に示される目的のための報知方式は番号87で示される。」(第6頁右上欄第7?20行)

上記A?Fの記載において、構成要件として「制御手段」は明示されていないが、その動作を制御するための何らかの制御手段を有することは明らかである。
また、上記Cの記載において、「呼出局を特別交換局と接続する手段」は構成要件として存在するものの、遮断をも行う「接続・遮断手段」として構成要件が明示されていないが、上記Bの記載において、「クレジット残額がなくなった時は前記通話を断線する」とあり、また、上記Eの記載において、「通話は・・・自動的に終了する。」とあることから、実質的に、「接続・遮断手段」が構成要件として存在するものと解される。
よって、上記A?Fの記載、及び第1,3図を参照すると、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)
「特別交換局を有する電話システムであって、特別交換局は、メモリー手段(86)とコード確認手段(83)とクレジット額確認手段(84)と制御手段とを有し、メモリー手段(86)は、特別のコードがクレジット額と共に記憶され、通話費用を差し引いたクレジット額の残高が記録され、その特別のコードは、通話を行うのに必要なクレジット額の残高がある間使用可能とされるものであり、コード確認手段(83)は、発呼者の入力する特別のコードを確認し、クレジット額確認手段(84)は、メモリー手段(86)に記憶されたクレジット額またはその残高を確認し、制御手段は、接続・遮断手段と比較器(29)とを有し、比較器(29)は、メモリー手段(86)に記憶されたクレジット額またはその残高と通話費用とを比較し、接続・遮断手段は、発呼者の入力した特別のコードがメモリー手段(86)に記憶されたものと一致したときにおいて、メモリー手段(86)に記憶されたクレジット額またはその残高があるかまたは十分な場合には、被呼者との通話を接続し、その後残高がないかまたは十分でなくなった場合には、被呼者との通話接続を遮断する電話システム。」

(甲第2号証)
A.「【産業上の利用分野】本発明は、料金前払いカード(以下、「プリペイドカード」とする)を利用した公衆電話機発信の自動通話の分野において、その残金額・残度数管理機能を有するプリペイドカード残金額・残度数管理装置に関する。」(第2頁左欄第41?45行)
B.「【課題を解決するための手段】前記課題の解決は、本発明が次に列挙する新規な特徴的構成手段を採用することにより、達成される。すなわち、本発明の第1の特徴は、交換機と接続しプリペイドカードの情報を管理する通信接続装置において、各プリペイドカードをユニークに識別するカード番号および当該カード番号に対応する残金額若しくは残度数の情報をあらかじめ記録しておく記録手段と、公衆電話機等の端末器からの呼接続依頼過程で当該端末器に入力したプリペイドカードのカード番号の有効検証を前記記録手段の情報により行う参照手段と、前記プリペイドカード番号が有効の場合は前記端末器より送られてくる相手番号を受領し、当該相手番号と前記記録手段からの情報とにより通信可能時間を算出しかつ前記交換機に対し接続指令を送出するとともに、当該呼が接続された後は、呼が接続されている通信時間を監視し、通信時間が前記通信可能時間に達した場合には、前記交換機に対し当該通信の切断指令を送出する制御手段と、通信切断情報により前記記録手段中の残金額若しくは残度数等情報を更新する更新手段と、前記通信可能時間算出・通信時間監視・接続指令及び切断指令送出処理動作に当って前記制御手段と前記交換機との情報授受を行うインタフェース手段とを備え、プリペイドカードの情報を前記端末器とは別に前記交換機側で管理してなる、プリペイドカード残金額・残度数管理装置である。」(第2頁右欄第17?41行)

上記Bの記載において、ユニークに識別するカード番号を有するプリペイドカードの取得者は、該プリペイドカードを取得した時点、すなわち該プリペイドカードの対価の支払いがあった時から該プリペイドカードを使用することができることは明らかである。
そして、該プリペイドカードを使用するということは、該プリペイドカードをユニークに識別するカード番号が交換機側に送られるということであるから、電話をかけるために該カード番号を使用することに他ならない。
よって、上記A,Bの記載を参照すると、甲第2号証には、次の事項が記載されているものと認められる。
「料金前払いカード(プリペイドカード)方式による電話システムにおいて、交換機側に、各プリペイドカードをユニークに識別するカード番号および当該カード番号に対応する残金額若しくは残度数の情報をあらかじめ記録しておく記録手段を設け、該プリペイドカードの取得者は、該プリペイドカードを取得した時点、すなわち該プリペイドカードの対価の支払いがあった時から電話をかけるための該プリペイドカードのカード番号の使用をできるようにすること。」

(甲第3号証)
A.「【産業上の利用分野】本発明は、カードを用いて通話が可能な電話装置に関する。」(第2頁左欄第20?21行)
B.「【0011】図1は上述した自律課金を行うCPU8の動作を示すフローチャートであり、このフローチャートに従いCPU8の動作をさらに詳細に説明する。カード15がカードリーダ14に挿入されステップST1の判定が「Y」となると、ステップST2ではカード15に記録されている金額情報を読み取り、続いてステップST3では読み取った金額情報、即ちカード15の残額が10円以上か否かを判定する。ここでカード15の残額が1通話に相当する単位通話料金の10円に満たない場合は、通話を許容できないということで、ステップST4でカードリーダ14に指示してカード15を排出させると共に、カード15の排出が完了しステップST5で「Y」となると、ステップST7のオフフック検出判断へ移行する。
【0012】また、カード15の残額が10円以上の場合は、ステップST6で「ZGフラグオン」、つまりカード15に残額があることを示すZGフラグをRAM10の所定領域に設定する。そしてその後、ステップST7で「オフフック?」を判断し、オフフックが検出されるとステップST8で上述のZGフラグのオンを判断のうえ、これが「Y」となれば既にカード15が挿入されこの挿入カード15に残額があるということでステップST9で回線1を捕捉する。」(第3頁左欄第20?42行)

上記A,Bの記載を参照すると、甲第3号証には、次の事項が記載されているものと認められる。
「カード式電話装置において、カードの残額が1通話に相当する単位通話料金の10円に満たない場合は、通話を許容しないようにすること。」

(2-2-1-3)対比・判断
本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とを対比すると、まず、甲第1号証記載の発明における「特別交換局」、「クレジット額」、「クレジット額確認手段(84)」、「特別のコード」は、それぞれ、本件特許発明1における「特殊な交換部(A)」、「預託金額」、「預託金額確認手段(84)」、「特殊コード」に相当する。
次に、甲第1号証記載の発明における「メモリー手段(86)」において、「特別のコードがクレジット額と共に記憶され」ていることは、本件特許発明1における「メモリー手段(86)」において、「特殊コードが所定の預託金額と一連で記憶され」ていることに対応する事項である。
また、甲第1号証記載の発明における「比較器(29)」と、本件特許発明1における「比較手段(93)」とは、ともに、「メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高と通話費用とを比較する比較手段」であることには変わりない。
さらに、「接続・遮断手段」については、甲第1号証記載の発明も、本件特許発明1も、ともに、「発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段に記憶されたものと一致したときにおいて、メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高に基づいて、被呼者との通話を接続」するものであることには変わりなく、また、「遮断」については、甲第1号証記載の発明において「その後残高がないかまたは十分でなくなった場合には、被呼者との通話接続を遮断する」ことは、本件特許発明1において「その後の通話費用を負担し得なくなった場合には、被呼者との通話接続を遮断する」ことに相当する事項である。
そして、甲第1号証記載の発明における「電話システム」は、電話の通話制御を行っているものであることには変わりなく、「電話の通話制御システム」であるということができる。

したがって、本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とは、ともに、
「特殊な交換部を有する電話の通話制御システムであって、特殊な交換部は、メモリー手段とコード確認手段と預託金額確認手段と制御手段とを有し、メモリー手段は、特殊コードが所定の預託金額と一連で記憶され、通話費用を差し引いた預託金額の残高が記録され、その特殊コードは、通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり、コード確認手段は、発呼者の入力する特殊コードを確認し、預託金額確認手段は、メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高を確認し、制御手段は、接続・遮断手段と比較手段とを有し、比較手段は、メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高と通話費用とを比較し、接続・遮断手段は、発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段に記憶されたものと一致したときにおいて、メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高に基づいて、被呼者との通話を接続し、その後の通話費用を負担し得なくなった場合には、被呼者との通話接続を遮断する電話の通話制御システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:「特殊コード」が、本件特許発明1においては、「預託金額に対応する支払いがあった時から」使用可能とされるものであるのに対し、甲第1号証記載の発明においては、甲第1号証に「預託金額に対応する支払いがあった時から」使用可能とされる旨の記載ないし示唆がされていない点。
相違点2:本件特許発明1においては、「比較手段(93)」が「メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高と、通話を開始するための最小費用またはその後の通話費用とを比較」するものであり、「接続・遮断手段(92)」が「メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高が、通話を開始するための最小費用より多い場合には、被呼者との通話を接続する」ものであるのに対し、甲第1号証記載の発明においては、「比較器(29)」は「メモリー手段(86)に記憶されたクレジット額またはその残高と通話費用とを比較」するものであるものの、甲第1号証に、通話を開始する時点で「通話を開始するための最小費用」との比較を行うことについての記載ないし示唆はされておらず、また、「接続・遮断手段」は、「メモリー手段(86)に記憶されたクレジット額またはその残高があるかまたは十分な場合には、被呼者との通話を接続する」ものであるものの、甲第1号証に、通話を開始する時点でクレジット額またはその残高が「通話を開始するための最小費用」より多い場合に被呼者との通話を接続することについての記載ないし示唆はされていない点。

そこで、上記相違点1,2について検討する。
(相違点1について)
甲第2号証には、料金前払いカード(プリペイドカード)方式による電話システムにおいて、交換機側に、各プリペイドカードをユニークに識別するカード番号および当該カード番号に対応する残金額若しくは残度数の情報をあらかじめ記録しておく記録手段を設けることにより、プリペイドカードの取得者が、該プリペイドカードを取得した時点、すなわち該プリペイドカードの対価の支払いがあった時から電話をかけるための該プリペイドカードのカード番号の使用をできるようにすることが記載されている。
甲第1号証記載の発明においては、メモリー手段に特別のコードとクレジット額とを共に記憶する動作を、クレジット額に対応する支払いを行う時点よりも前に予め行うかどうかは明らかでない。
しかしながら、上記甲第2号証に記載されている技術事項を参酌すれば、甲第1号証記載の発明において、メモリー手段に特別のコードとクレジット額とを共に記憶する動作を、クレジット額に対応する支払いを行う時点よりも前に予め行うようにして、もって該特別のコードを、クレジット額に対応する支払いがあった時から使用可能とすること(本件特許発明1における表現では、「特殊コード」を「預託金額に対応する支払いがあった時から」使用可能とすること)は、当業者が容易に想到し得ることと認められる。

(相違点2について)
甲第3号証には、カード式電話装置において、カードの残額が1通話に相当する単位通話料金の10円に満たない場合は、通話を許容しないようにすること、すなわち、カードの残額が通話を開始するための最小費用よりも少ない場合には、通話を許容しないようにするという技術思想が記載されている。
してみれば、甲第1号証記載の発明に対してこの技術思想を適用し、「比較器(29)」を、通話を開始する時点で「通話を開始するための最小費用」との比較を行うようなものとし、「接続・遮断手段」を、通話を開始する時点でクレジット額(預託金額)またはその残高が「通話を開始するための最小費用」より多い場合に被呼者との通話を接続するようにすることは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。

そして、本件特許発明1の構成によってもたらされる効果も、甲第1?3号証記載の発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2-2)特許請求の範囲第2項について
(2-2-2-1)本件特許発明2
本件特許請求の範囲第2項に係る発明(以下、「本件特許発明2」という。)は、次のとおりのものである。
「2.比較手段(93)は、ペグカウンター手段を有する特許請求の範囲第1項に記載の電話の通話制御システム。」

(2-2-2-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、上記(2-2-1-2)の事項が記載されている。

(2-2-2-3)対比・判断
本件特許発明2は、本件特許発明1において、「比較手段(93)は、ペグカウンター手段を有する」ことを限定したものであるが、上記のように、「比較手段(93)」を、「ペグカウンター手段」を有するようなものとすることは、実質的に、甲第1号証の上記Eの記載中の「時間及び距離計算回路はペグカウンターとしてあらわされており、使用可能なクレジットに対する通話時間にかかわる情報を提供するように機能する。ペグカウンターからの情報は比較器29に送られ、呼出者のクレジットが通話料を支払うのに十分であるかどうかを連続的に決定する。」との記載に見られる事項にすぎない。
したがって、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2-3)特許請求の範囲第3項について
(2-2-3-1)本件特許発明3
本件特許請求の範囲第3項に係る発明(以下、「本件特許発明3」という。)は、次のとおりのものである。
「3.制御手段(88)は、タイミング手段を有し、タイミング手段は、発呼者が被呼者との通話を終了した後、発呼者と特殊な交換部(A)との接続を一定時間保持する特許請求の範囲第1項に記載の電話の通話制御システム。」

(2-2-3-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、上記(2-2-1-2)の事項が記載されており、甲第1号証には、さらに、次の事項が記載されている。
G.「16.呼出局がフックされた後、一定時間前記特別交換局との接続を保持するためのタイミング手段が設けられている特許請求の範囲第12項記載のシステム。」(第2頁右上欄第19行?左下欄第2行)

(2-2-3-3)対比・判断
本件特許発明3における「発呼者が被呼者との通話を終了した後、発呼者と特殊な交換部(A)との接続を一定時間保持する」タイミング手段は、実質的に、甲第1号証の上記Gの記載中に見られる構成にすぎない。
そして、上記「タイミング手段」を「制御手段」中に設けるようにすることが格別なこととは認められない。
したがって、本件特許発明3は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2-4)特許請求の範囲第4項について
(2-2-4-1)本件特許発明4
本件特許請求の範囲第4項に係る発明(以下、「本件特許発明4」という。)は、次のとおりのものである。
「4.制御手段(88)は、特殊な交換部(A)と発呼者との接続を示す特別音発生手段を制御する特許請求の範囲第1項に記載の電話の通話制御システム。」

(2-2-4-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、上記(2-2-1-2)の事項が記載されており、甲第1号証には、さらに、次の事項が記載されている。
H.「17.呼出局と特別交換局が接続されていることを示す特別の発信音発生手段を有する特許請求の範囲第12項記載のシステム。」(第2頁左下欄第3?5行)

(2-2-4-3)対比・判断
本件特許発明4における「特殊な交換部(A)と発呼者との接続を示す特別音発生手段」は、実質的に、甲第1号証の上記Hの記載中に見られる構成にすぎない。
そして、上記「特別音発生手段」を「制御手段」が制御するようにすることが格別なこととは認められない。
したがって、本件特許発明4は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2-5)特許請求の範囲第5項について
(2-2-5-1)本件特許発明5
本件特許請求の範囲第5項に係る発明(以下、「本件特許発明5」という。)は、次のとおりのものである。
「5.制御手段(88)は、複数の特殊な交換部(A)間に亙って特殊コード及び預託金額の情報を相互に交換可能に接続する手段を有する特許請求の範囲第1項に記載の電話の通話制御システム。」

(2-2-5-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、上記(2-2-1-2)の事項が記載されており、甲第1号証には、さらに、次の事項が記載されている。
I.「20.コード及びクレジットの情報を相互に交換することができるよう、複数の特別交換局相互間を内部接続する手段を含む特許請求の範囲第12項記載のシステム。」(第2頁左下欄第13?16行)

(2-2-5-3)対比・判断
本件特許発明5における「複数の特殊な交換部(A)間に亙って特殊コード及び預託金額の情報を相互に交換可能に接続する手段」は、実質的に、甲第1号証の上記Iの記載中に見られる構成にすぎない。
そして、上記「・・・接続する手段」を「制御手段」中に設けるようにすることが格別なこととは認められない。
したがって、本件特許発明5は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2-6)特許請求の範囲第6項について
(2-2-6-1)本件特許発明6
本件特許請求の範囲第6項に係る発明(以下、「本件特許発明6」という。)は、次のとおりのものである。
「6.特殊な交換部(A)は、接続・遮断手段(92)が発呼者と被呼者との通話を接続している間に、別の特殊コードの追加入力を認める手段を有する特許請求の範囲第1項に記載の電話の通話制御システム。」

(2-2-6-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、上記(2-2-1-2)の事項が記載されており、甲第1号証には、さらに、次の事項が記載されている。
J.「22.特別交換局に接続している間にクレジットを加える手段を有する特許請求の範囲第12項記載のシステム。」(第2頁右下欄第2?4行)
K.「彼は通話中、通話前そして通話後に別のコード番号に変え、そしてなお特別中央局に接続したままの状態にすることができる。」(第7頁左上欄第4?6行)
L.「別の特別コード、例えば888を、別のコード番号によるより大きなクレジットを入力するために使用することができる。」(第7頁左上欄第16?18行)

(2-2-6-3)対比・判断
本件特許発明6における「接続・遮断手段(92)が発呼者と被呼者との通話を接続している間に、別の特殊コードの追加入力を認める手段」は、実質的に、甲第1号証の上記J?Lの記載中に見られる構成にすぎない。
そして、上記「・・・追加入力を認める手段」を「特別交換局」(特殊な交換部(A))中に設けるようにすることが格別なこととは認められない。
したがって、本件特許発明6は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2-7)特許請求の範囲第7項について
(2-2-7-1)本件特許発明7
本件特許請求の範囲第7項に係る発明(以下、「本件特許発明7」という。)は、次のとおりのものである。
「7.特殊な交換部(A)は、同時に二つの相異なる発呼者から同一の特殊コードの使用を阻止する手段を有する特許請求の範囲第1項に記載の電話の通話制御システム。」

(2-2-7-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、上記(2-2-1-2)の事項が記載されており、甲第1号証には、さらに、次の事項が記載されている。
M.「23.二つの相異なる電話機から同時に同じ特別コードを使用することを阻止する手段を有する特許請求の範囲第12項記載のシステム。」(第2頁右下欄第5?7行)

(2-2-7-3)対比・判断
本件特許発明7における「同時に二つの相異なる発呼者から同一の特殊コードの使用を阻止する手段」は、実質的に、甲第1号証の上記Mの記載中に見られる構成にすぎない。
そして、上記「・・・阻止する手段」を「特別交換局」(特殊な交換部(A))中に設けるようにすることが格別なこととは認められない。
したがって、本件特許発明7は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2-8)特許請求の範囲第8項について
(2-2-8-1)本件特許発明8
本件特許請求の範囲第8項に係る発明(以下、「本件特許発明8」という。)は、次のとおりのものである。
「8.特殊な交換部(A)は、コード確認手段(83)が、発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段(86)に記憶されたものと一致したことを確認した後に、発呼者の電話番号の入力を許可する手段を有する特許請求の範囲第1項に記載の電話の通話制御システム。」

(2-2-8-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、上記(2-2-1-2)の事項が記載されている。

(2-2-8-3)対比・判断
本件特許発明8は、本件特許発明1において、「特殊な交換部(A)は、コード確認手段(83)が、発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段(86)に記憶されたものと一致したことを確認した後に、発呼者の電話番号の入力を許可する手段を有する」ことを限定したものであるが、上記のような「コード確認手段(83)が、発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段(86)に記憶されたものと一致したことを確認した後に、発呼者の電話番号の入力を許可する手段」は、実質的に、甲第1号証の上記Eの記載中の「コード番号が真正のコードであり、クレジットが有効なものであるなら、ブロック18及び19に示すように、相手先の電話機に接続した時に通常の発信音が呼出局に送られる。・・・・・・勿論このシステムは、呼出者が通常の発信音を受取ることに対応して相手先をダイアルするように構成することもできる。」との記載に見られる事項にすぎない。
そして、上記「・・・許可する手段」を「特別交換局」(特殊な交換部(A))中に設けるようにすることが格別なこととは認められない。
したがって、本件特許発明8は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2-9)特許請求の範囲第9項について
(2-2-9-1)本件特許発明9
本件特許請求の範囲第9項に係る発明(以下、「本件特許発明9」という。)は、次のとおりのものである。
「9.特殊な交換部(A)は、発呼者と特殊な交換部(A)の接続を保持したまま、被呼者との接続を切る一方、発呼者が別の被呼者の電話番号を入力可能にする手段を有する特許請求の範囲第1項に記載の電話の通話制御システム。」

(2-2-9-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、上記(2-2-1-2)の事項が記載されており、甲第1号証には、さらに、次の事項が記載されている。
N.「21.相手先局を断線する一方、呼出局を特別交換局と接続したままに保持し、呼出者が特別交換局を通じて別の相手局をダイアルすることができるようにする手段を有する特許請求の範囲第12項記載のシステム。」(第2頁左下欄第17行?右下欄第1行)

(2-2-9-3)対比・判断
本件特許発明9における「発呼者と特殊な交換部(A)の接続を保持したまま、被呼者との接続を切る一方、発呼者が別の被呼者の電話番号を入力可能にする手段」は、実質的に、甲第1号証の上記Nの記載中に見られる構成にすぎない。
そして、上記「・・・入力可能にする手段」を「特別交換局」(特殊な交換部(A))中に設けるようにすることが格別なこととは認められない。
したがって、本件特許発明9は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2-10)特許請求の範囲第10項について
(2-2-10-1)本件特許発明10
本件特許請求の範囲第10項に係る発明(以下、「本件特許発明10」という。)は、次のとおりのものである。
「10.特殊な交換部(A)は、報知手段(87)を有し、報知手段(87)は、使用可能な預託金額の残高を発呼者に報知する特許請求の範囲第1項に記載の電話の通話制御システム。」

(2-2-10-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、上記(2-2-1-2)の事項が記載されており、甲第1号証には、さらに、次の事項が記載されている。
O.「18.呼出者に使用可能なクレジット額を告知する手段を有する特許請求の範囲第12項記載のシステム。」(第2頁左下欄第6?8行)

(2-2-10-3)対比・判断
本件特許発明10における「使用可能な預託金額の残高を発呼者に報知する」報知手段(87)は、実質的に、甲第1号証の上記Oの記載中に見られる構成にすぎない。
そして、上記「報知手段(87)」を「特別交換局」(特殊な交換部(A))中に設けるようにすることが格別なこととは認められない。
したがって、本件特許発明10は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2-11)特許請求の範囲第11項について
(2-2-11-1)本件特許発明11
本件特許請求の範囲第11項に係る発明(以下、「本件特許発明11」という。)は、次のとおりのものである。
「11.特殊な交換部(A)は、報知手段(87)を有し、制御手段(88)は、預託金額またはその残高に対応する使用可能な通話時間を計算し、報知手段(87)は、使用可能な通話残り時間を発呼者に報知する特許請求の範囲第1項に記載の電話の通話制御システム。」

(2-2-11-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、上記(2-2-1-2)の事項が記載されている。

(2-2-11-3)対比・判断
本件特許発明11は、本件特許発明1において、「特殊な交換部(A)は、報知手段(87)を有し、制御手段(88)は、預託金額またはその残高に対応する使用可能な通話時間を計算し、報知手段(87)は、使用可能な通話残り時間を発呼者に報知する」ことを限定したものであるが、上記のように「制御手段(88)」を「預託金額またはその残高に対応する使用可能な通話時間を計算」するようなものとすること、及び、「使用可能な通話残り時間を発呼者に報知する」報知手段(87)を設けるようにすることは、実質的に、甲第1号証の上記Eの記載中の「時間及び距離計算回路はペグカウンターとしてあらわされており、使用可能なクレジットに対する通話時間にかかわる情報を提供するように機能する。」との記載、及び、上記Fの記載中の「流れ図中に示される目的のための報知方式は番号87で示される。」との記載に見られる事項にすぎない。
そして、上記「報知手段(87)」を「特別交換局」(特殊な交換部(A))中に設けるようにすることが格別なこととは認められない。
したがって、本件特許発明11は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2-12)特許請求の範囲第12項について
(2-2-12-1)本件特許発明12
本件特許請求の範囲第12項に係る発明(以下、「本件特許発明12」という。)は、次のとおりのものである。
「12.特殊な交換部(A)は、再ダイアル手段(89)を有し、再ダイアル手段(89)は、コード確認手段(83)が発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段(86)に記憶されたものと一致したことを確認した後に、特殊コードの入力に続けて入力された被呼者の電話番号をダイアルする特許請求の範囲第1項に記載の電話の通話制御システム。」

(2-2-12-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、上記(2-2-1-2)の事項が記載されており、甲第1号証には、さらに、次の事項が記載されている。
P.「番号及びクレジット残額が確認されると、呼出者は番号88で示されるレジスタを通じて再ダイアル部89に接続される。レジスタは呼出者から受取る相手先番号を記憶しており、確認後再ダイアル部89に指令して番号をダイアルし、」(第6頁左下欄第4?9行)

(2-2-12-3)対比・判断
本件特許発明12における「コード確認手段(83)が発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段(86)に記憶されたものと一致したことを確認した後に、特殊コードの入力に続けて入力された被呼者の電話番号をダイアルする」再ダイアル手段(89)は、実質的に、甲第1号証の上記Pの記載中に見られる構成にすぎない。
そして、上記「再ダイアル手段(89)」を「特別交換局」(特殊な交換部(A))中に設けるようにすることが格別なこととは認められない。
したがって、本件特許発明12は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2-13)特許請求の範囲第13項について
(2-2-13-1)本件特許発明13
本件特許請求の範囲第13項に係る発明(以下、「本件特許発明13」という。)は、次のとおりのものである。
「13.特殊な交換部(A)は、ルート選定手段(91)を有し、ルート選定手段(91)は、最も安価なルートを選定する特許請求の範囲第1項に記載の電話の通話制御システム。」

(2-2-13-2)甲第1?3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、上記(2-2-1-2)の事項が記載されており、甲第1号証には、さらに、次の事項が記載されている。
Q.「11.前記接続する手段が、もっとも安価なルートを選定する手段を含む特許請求の範囲第10項記載のシステム。」(第6頁左下欄第4?9行)

(2-2-13-3)対比・判断
本件特許発明13における「最も安価なルートを選定する」ルート選定手段(91)は、実質的に、甲第1号証の上記Qの記載中に見られる構成にすぎない。
そして、上記「ルート選定手段(91)」を「特別交換局」(特殊な交換部(A))中に設けるようにすることが格別なこととは認められない。
したがって、本件特許発明13は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許発明13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

以上のとおり、本件特許発明1?13は、いずれも、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明1?13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)本件特許明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明が特許法第36条の規定に適合するか否かについて
(3-1)特許公報第1頁右欄第4?5行の「通話を開始するための最小費用」について
上記記載が意味するところは、電話システムの接続を開始する場合に必要とされる「最小費用」であることは明らかであり、具体的な金額がなければ不明確になるというものでもなく、その技術的意味が不明瞭であるとは言えない。

(3-2)同第1頁右欄第10?11行の「その後の通話費用を負担し得なくなった場合」について
上記記載が意味するところは、「預託金額またはその残高」が通話費用を負担できなくなった場合であることは明らかであるから、その技術的意味が不明瞭であるとは言えない。

よって、上記(3-1),(3-2)に係る記載をもって、本件特許明細書の特許請求の範囲第1項の発明を明瞭に把握することができないとは言えない。

(3-3)同第4頁左欄第15?18行の「ペグカウンターとして表されている通常の時間/距離計算回路は、使用可能な預託金額またはその残高を通話時間に変換するための情報を提供し始める。」について
上記記載において、時間/距離計算回路の機能は、「使用可能な預託金額またはその残高を通話時間に変換するための情報を提供」するということであることは明らかであり、その機能が不明瞭であるとは言えない。

(3-4)同第4頁左欄第21?24行の「預託金額またはその残高が、使用されている時間変更のための単位以下になった時には、・・・自動的に終了する。」について
上記記載において、「預託金額またはその残高が、使用されている時間変更のための単位以下になった時」とは、「預託金額またはその残高」が、「使用されている時間変更のための単位」、すなわち、例えば、3分あたり10円等の1単位の金額以下になった時と解され、この記載が不明瞭であるとは言えない。

(3-5)同第4頁右欄第42?47行の「尚、前記レジスタ88には前述した通話距離による料金率や時間変換のための単位が記録されており、発呼者から入力された被呼者への通話のために必要な最小費用及び前記通話を維持するために必要な費用をチェックすると共に、被呼者と接続後の通話費用が記録されるようになっている。」について
上記記載において、「レジスタ88には通話距離による料金率や時間変換のための単位が記録されて」いるとは、例えば、10円等の金額が1単位であれば、その1単位の金額で通話できる時間は、当然通話距離によって異なることが想定されるので、それらの情報をレジスタ88に記録しておくことを言い表しているものと解され、特にこの記載が不明瞭であるとは言えない。
また、「発呼者から入力された被呼者への通話のための必要な最小費用」とは、通話を開始するために必要な最小費用のことであり、さらに、「前記通話を維持するために必要な費用」とは、通話接続を継続できる金額という意味であることは明らかであり、この記載が不明瞭であるとも言えない。

(3-6)同第4頁右欄第49行?第5頁左欄第6行の「通話を開始するための‥・作動させるものである。」の「通話を開始するための最小費用、前記通話を維持するために必要な費用」及び「その後の通話費用を負担し得なくなった時」について
上記記載において、「通話を開始するための最小費用」は、(3-1)で述べたように、電話システムの接続を開始する場合に必要とされる「最小費用」であることは明らかであり、また、「通話を維持するために必要な費用」は、(3-5)で述べたように、通話接続を継続できる金額という意味であることは明らかであり、この記載が不明瞭であるとは言えない。
また、「その後の通話費用を負担し得なくなった時」は、(3-2)で述べたように、「預託金額またはその残高」が通話費用を負担できなくなった時であることは明らかであるから、この記載が不明瞭であるとも言えない。

よって、上記(3-3)?(3-6)に係る記載をもって、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の構成および効果が記載されていないとは言えない。

したがって、本件特許明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明は、特許法第36条の規定に適合する。

5.まとめ
以上のとおり、本件特許明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明は、特許法第36条の規定に適合するものの、平成9年5月7日付け手続補正(本件補正)は、本件出願当初の明細書の要旨を変更するものであり、本件出願は、特許法第40条(平成5年法律第26号による改正前のもの)の規定により本件補正をした平成9年5月7日に出願をされたものとみなされるところ、本件特許発明1?13は、甲第1?3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1?13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-27 
結審通知日 2005-06-30 
審決日 2005-07-29 
出願番号 特願昭61-6163
審決分類 P 1 113・ 121- Z (H04M)
P 1 113・ 532- Z (H04M)
P 1 113・ 531- Z (H04M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松野 高尚吉見 信明  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 望月 章俊
長島 孝志
登録日 1997-07-11 
登録番号 特許第2672085号(P2672085)
発明の名称 電話の通話制御システム  
代理人 田中 香樹  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  
代理人 飯塚 暁夫  
代理人 田邉 壽二  
代理人 根本 浩  
代理人 森▲崎▼ 博之  
代理人 尾崎 英男  

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