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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1161805
審判番号 不服2006-591  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-10 
確定日 2007-08-02 
事件の表示 特願2003-23247「穀類成形食品」拒絶査定不服審判事件〔平成16年8月19日出願公開、特開2004-229580〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本件発明

本件出願は、平成15年1月31日の特許出願であって、その請求項1乃至4に係る発明は、平成19年2月19日受付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本件発明1」という。)
「【請求項1】炊飯された単一の穀類(米粒を除く)又は複数種の穀類がシート状に成形された穀類成形食品であって、
穀類又は種実とは別種の原料からなる結着剤を含まずに結着され、
投影面積が49?144cm2、厚さが5?15mm、重量が18?180gである穀類成形食品。」

2.引用刊行物記載事項

これに対して、当審における平成18年12月13日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本件出願日前に頒布された(1)特開昭60-217864号公報(以下、「引用例1」という。)には(a)「調理可能に処理された穀類又は該穀類の加熱調理途中の単独又は2種以上の混合物の重量100部に,添加物として穀類粉又は澱粉類の単独又は2種以上の混合物を重量50部を上限として添加、それに必要水量を添加混和混合して,他に必要に応じ他の食品,調味料香辛料等を添加混合して,その最終混合物を用途に応じた形に成形した成形物を加熱調理して、そのまま穀粒感を有する調理済み食品とするか又は該調理済み食品を冷蔵又は冷凍した後,再加熱調理して穀粒感を有する調理済み食品とすること等を特徴とする成型された保形性、耐水性を有する調理食品の製造方法。」(特許請求の範囲)が記載され、(b)「穀類とは米、麦、ひえ、粟、トウモロコシ、そばの外、豆等の雑穀も含まれる。」(公報第1頁右下欄第16?17行)こと、(c)「該混合物を用途に応じ、膜状、板状、球状、円柱状、麺状等に成形した成形物を、平板又は網にのせるか又はプラスチック膜、布、油紙、アルミ膜で包装して、それをオーブン、湯浴、蒸気蒸し等の方法によって加熱調理する。」(公報第4頁右下欄第16?20行)ことが記載されており、同じく、(2)特開平2-23839号公報(以下、「引用例2」という。)には、(d)「蒸熱処理によってアルファー化された穀粒または破砕穀粒を一旦冷却させた後、これを解ぐして結着剤を混ぜ込み、次いで均一の厚みに圧延した後、再び蒸熱してアルファー化状態に戻し、アルファー化された圧延成形物を加熱乾燥に付し、然る後、適宜サイズにカッティングして焼成・味付などの仕上加工を施すことを特徴とした穀類を粒状のまゝで結着せしめる加工穀物の製造法。」(特許請求の範囲)が記載され、(e)「本発明は、穀類を粒状のままで結着せしめる加工穀物の製造法に関し、更に詳しくは、繻米(もちごめ)・粳米(うるちごめ)、粟などの穀類を材料とし、その粒形の崩壊を最小限に抑制して小米餅(こごめもち)タイプの美味なる加工穀物を量産できる新方法に関するものであって、米・粟(あわ)・稗(ひえ)・玉蜀黍(とうもろこし)など穀類を材料とした新しいタイプの加工穀物を実現するものであり、菓子業界および加工食品業界の有効需要を喚起するのに役立つ。」(公報第1頁左下欄下から4行?右下欄第5行)こと、(f)「ついで、上記冷飯状態に調製された穀粒に万遍に結着剤を混ぜ込ませる。ここに用いられる結着剤としては、デンプン系ないし海藻系の食用糊料をペースト状に調製して用いる。・・・」こと(公報第2頁右下欄第18行?第3頁左上欄第1行)が記載されており、同じく、(3)特開平11-285351号公報(以下、「引用例3」という。)には、(g)「【請求項1】米飯を、飯粒相互間に接着力がある内に、飯粒が2層以下となるように薄く展延してシートとし、このシートを全体としての柔軟性を失わず、かつ、表面に粘着力がなくなる程度に加熱処理してあることを特徴とした米飯シート。・・・」(【特許請求の範囲】)が記載され、(h)「【課題を解決するための手段】米(うるち米やもち米の精白米、半精白米、玄米など)を炊飯し、米飯を得る。炊飯した米粒(飯粒)は十分な水分を吸収していると共に、その表面には炊飯中に米粒から遊離し、また、加熱によってα化した澱粉粒が多く付着しており、飯粒相互間に接着力がある。この接着力は米飯が乾燥したり、常温(15℃)以下とならない限り持続する。接着力が不足する場合には、炊飯直後に飯粒をある程度搗き潰す(半殺しにする)などして遊離澱粉を増やしたり、うるち米にもち米を混入するなどして接着力を増強することができる。」(段落【0005】)ことが記載されている。

3.対比・判断

本件発明1は、炊飯された単一の穀類(米粒を除く:本件明細書の段落【0037によれば】玄米、麦、豆、粟、稗、キビ、蕎麦など)又は複数種の穀類が、穀類又は種実とは別種の原料からなる結着剤を含まずに結着され、投影面積が49?144cm2、厚さが5?15mm、重量が18?180gである穀類成形食品であって、穀類の粒々感などを楽しむことができるだけでなく、見た目から様々な食べ方がイメージでき、消費者が手にして口に運ぶまでの間の食べ方を自由な発想の下で様々に楽しむことのできる穀類成形食品を提供するものである。
これに対して、上記引用例1乃至2に記載されたように、炊飯された麦、ひえ、粟、トウモロコシ、そば等の穀類を主成分とした、穀粒感を有するシート状穀類成形食品は周知のものである。(以下、「引用発明」という。)
本件発明1と引用発明とを対比すると、
両者は「炊飯された単一の穀類(米粒を除く)又は複数種の穀類がシート状に成形された穀類成形食品」である点で一致しており、
(1)前者が、穀類又は種実とは別種の原料からなる結着剤を含まないと特定している点、
(2)シート状穀類成形食品の形状・重量に関して、前者が「投影面積が49?144cm2、厚さが5?15mm、重量が18?180gである」と特定しているのに対して、後者にそのような特定がない点で相違している。

そこで、上記相違点について検討する。

相違点(1)
本件請求項3には、「前記穀類成形食品が割れ米を含む、請求項1に記載の穀類成形食品。」と記載され、本件明細書の段落【0051】には、「また、逆に、本発明に従うシート状穀類成形食品の結着力が不足するようであれば、タンパク質層の厚みを小さくするために穀類の搗精度を高くしたり、酒米や割れ米を混入して結着力を高める、タピオカやコーングリッツを混入して結着力を高めるようにしてもよい。」と記載されており、「穀類又は種実とは別種の原料からなる結着剤を含まずに結着され」という限定は「粉体の結着剤を含まない」を意味するものではなく、「コンニャクゼリーによる結着やこれと同等の結着剤(寒天やゼラチンなど)のような、穀類又は種実とは別種の原料からなる結着剤を含まずに結着され」という意味であると解するのが自然である。
そうすると、引用発明は、澱粉類を結着剤として使用するものである(上記記載事項(a)及び(f))から、この点は相違点とはいえない。
この点について、請求人は、平成19年2月19日受付けの意見書において「旧引用文献1の『コンニャクゼリーによる結着やこれと同等の結着剤(寒天やゼラチンなど)』を本願発明では使用するものではないことを『穀類又は種実とは別種の原料からなる結着剤を含まない』という表現で主張したものです。この点を更に明確にするために、本書と共に提出した手続補正書により請求項1に『穀類又は種実とは別種の原料からなる結着剤を含まずに結着され』という表現に変更し、『粉体の結着剤』を含まない意図を明確にしました。」旨主張している。
前記のとおり、「穀類又は種実とは別種の原料からなる結着剤を含まずに結着され」という記載の意味が、「粉体の結着剤を含まない」という意味であるとは到底考えられないが、本件発明1が「粉体の結着剤」を含まないものであると解したとしても、玄米などを炊飯した飯粒は十分な水分を吸収していると共に、その表面には加熱によってα化した澱粉粒が多く付着しており、飯粒相互間に接着力があることは周知のこと(必要なら、引用例3の上記記載事項(h)参照)であるから、澱粉等の結着剤を使用せず、炊飯された穀類粒相互間の接着力を利用して穀粒類同士を接着せしめることは、穀類成形食品の周知技術の適用にすぎず、当業者が適宜なし得ることである。

相違点(2)
シート状穀類成形食品の形状・重量は、シート状穀類成形食品の見栄え、取扱い易さ、食し易さ等を考慮して当業者が適宜最適化するものである、
ここで、本件発明1の「投影面積が49?144cm2、厚さが5?15mm、重量が18?180gである」とするシート状穀類成形食品の形状・重量に関して、通常の食パンの形状と重複するものであり、特に「投影面積が49?144cm2、厚さが5?15mm、重量が18?180gである」とすることにより当業者が予期し得ない効果を奏するものでもないから、当業者が適宜なし得ることにすぎない。

そして、本件発明1の明細書記載の効果も、引用例1乃至3から当業者が予期し得るものであって、格別のものとすることはできない。

したがって、本件発明1は、上記引用例1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび

以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、当審で通知した上記拒絶理由通知に引用したその出願前に頒布された上記の引用刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その他の請求項については判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-04 
結審通知日 2007-06-05 
審決日 2007-06-18 
出願番号 特願2003-23247(P2003-23247)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鵜飼 健
高堀 栄二
発明の名称 穀類成形食品  
代理人 平井 正司  
代理人 窪田 英一郎  
代理人 神津 堯子  

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