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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1161901
審判番号 不服2002-22533  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-21 
確定日 2007-08-03 
事件の表示 平成11年特許願第238283号「遊技装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月21日出願公開、特開2001- 70506〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成11年8月25日の出願であって、平成14年10月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後当審において、平成19年1月26日付けで拒絶理由が通知され、同年4月9日付けで手続補正がなされたものであり、その請求項1乃至7に係る発明は、平成19年4月9日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
種々の表示内容を連続的に変化させつつ表示し得る1又は2以上の表示手段と、その表示手段に前記表示内容を固定的に表示させるための表示固定手段とを有し、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するゲームを実行する遊技機であって、
全ての賞又は一部の賞である内部当り対象賞に関し、所定の内部当り条件の達成によって、その内部当り条件に対応する賞について内部当り状態を設定する内部当り設定手段と、
内部当り対象賞の一部である特定の賞について内部当り状態の設定がない場合に、所定の疑似内部当り条件の達成によって、疑似内部当り状態を設定する疑似内部当り設定手段と、
前記特定の賞に内部当り状態が設定されていてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合のゲームのうち一部のゲームについては、特定の賞に内部当り状態が設定されていることを示す確定報知を遊技者に対し行い、前記特定の賞に内部当り状態が設定されていてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合のゲームのうち別の一部のゲーム及び前記疑似内部当り状態が設定されている場合のゲームについては、特定の賞に内部当り状態が設定されている可能性があることを示す可能性報知を遊技者に対し行う報知手段を備え、
前記特定の賞は、内部当り状態が設定されていても入賞が確実ではなく、その内部当り状態が、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでの間又は入賞するまでの何回のゲームにおいても継続されるものであり、
前記特定の賞に設定された内部当り状態が、その特定の賞に入賞せずに2ゲーム以上継続する場合に、報知手段が確定報知を行うか可能性報知を行うか報知を行わないかが、各ゲーム毎に抽選により決定され、
疑似内部当り設定手段による疑似内部当り状態の設定が各ゲーム毎の抽選により行われることにより、疑似内部当り状態の設定による可能性報知が2ゲーム以上連続して行われ得ることを特徴とする遊技装置。」

2.引用刊行物記載事項
(1)当審における平成19年1月26日付けで通知した拒絶理由に引用された特許第2911872号公報(以下、「引用例1」という。)の記載事項
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定の賞、例えば遊技者にとって大きな利益が得られるビッグボーナスなどと言われる賞の入賞率が高くなるいわゆる内部当り状態にあることを遊技者に報知すると共に、前記特定の賞に内部当り状態となっていない場合にも疑似報知を行うことにより、遊技者の興味を継続的に引きつけることのできる、スロットマシン等の遊技装置に関する。」

「【0011】
【課題を解決するための手段】(1) 本発明の遊技装置は、種々の表示内容を連続的に変化させつつ表示し得る1又は2以上の表示手段と、その表示手段に前記表示内容を固定的に表示させるための表示固定手段とを有し、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するゲームを実行する遊技機であって、全ての賞又は一部の賞である内部当り対象賞に関し、所定の内部当り条件の達成によって、その内部当り条件に対応する賞について内部当り状態を設定する内部当り設定手段と、内部当り対象賞の一部又は全てである特定の賞に内部当り状態が設定されている場合においてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合に遊技者に内部当り状態が設定されていることを報知する報知手段と、前記特定の賞について内部当り状態の設定がない場合に、所定の疑似内部当り条件の達成によって、疑似内部当り状態を設定する疑似内部当り設定手段と、疑似内部当り状態が設定されている場合に前記報知手段により報知される内容と同一又は類似の内容を遊技者に報知する疑似報知手段を備えることを特徴とする(請求項1)。
……」

「【0031】疑似内部当り条件は、例えば、各ゲームにおいて乱数サンプリングによる抽選により成否が判定されるものとすることができる。……」

「【0033】……特定の賞について内部当り状態の設定がなく疑似内部当り状態が設定されている場合において特定の賞に入賞しなかったときは、疑似報知手段は、(例えば、その疑似内部当り状態の設定を、対応するフラグにより確認することを条件として)、特定の賞について内部当り状態が設定されている場合に報知手段により報知される内容と同一又は類似の内容を遊技者に報知する。類似の内容というのは、似ているが違いがあり、少なくとも最終的には報知者が特定の賞についての内部当りではないと分かる内容を言い、例えば、少なくとも一部共通する内容、3分の1以上共通する内容、2分の1以上共通する内容、3分の2以上共通する内容等を含む。疑似報知手段による報知は、1度疑似内部当り状態が設定された場合に1度に限り行われるようにすることができる他、複数の回数を設定することもできる。報知手段による報知が行われる回数との間に違いを設ければ、これにより遊技者は、複数回ゲームを続けることによって内部当り状態と疑似内部当り状態を区別することが可能となる。
【0034】疑似報知手段により疑似報知がなされると、遊技者は、内部当り状態が設定されたのではないかという期待をいだくので、特定の賞に内部当り状態となっていない状態においても遊技者の興味を引きつけることができる。疑似内部当り状態に設定されるゲームの比率は、特定の賞に内部当り状態となるゲームの比率との関係で、遊技者が遊技に飽きない程度に設定することが望ましい。従って、特定の賞に内部当り状態となるゲームの比率が比較的低い場合は疑似内部当り状態に設定されるゲームの比率を比較的高くし、特定の賞に内部当り状態となるゲームの比率が比較的高い場合は疑似内部当り状態に設定されるゲームの比率を比較的低くすることが望ましい。より具体的には、例えば特定の賞に内部当り状態となるゲームの比率が1/100乃至1/300程度の場合、疑似内部当り状態となるゲームの比率を1/10乃至1/50程度とすることができる。」

「【0046】……
(4) 上記(1) 、(2) 又は(3) の遊技装置は、上記特定の賞の一部又は全てが、内部当り状態が設定されていても入賞が確実ではなく、内部当り状態が、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでの間又は入賞するまでの何回のゲームにおいても継続されるものとすることができる(請求項5)。
【0047】内部当り状態が設定されていて特定の賞への入賞が高入賞率化されていても、例えば上記スロットマシンの例で、各回転体において特定の賞に対応するシンボルの数が少ないと、上記のような引き込みを行っても、遊技者が操作する何れかの停止ボタン等による停止信号を受けた時点から内部当り状態の特定の賞に対応するシンボルが特定位置に表示されるまでのずれが所定範囲外であるとき、そのシンボルを特定位置に表示することができず、その特定の賞に入賞し得ないので、入賞が確実ではない(例えば0.5割乃至7割又は1割乃至6割程度の確実性)ことになる。その特定の賞が、遊技者にとって大きな利益が得られるものである場合、従来のスロットマシンの例によれば、内部当り状態でも入賞率は比較的低くなる。
【0048】このような場合の特定の賞については、例えば、内部当り状態を設定するフラグを、入賞若しくは所定の複数回のゲーム終了まで、又は入賞するまでリセットしないようにすることにより、内部当り状態を、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでの間又は入賞するまでの何回のゲームにおいても継続させることができる。
【0049】内部当り状態が設定されていても入賞が確実ではなく、内部当り状態が、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでの間又は入賞するまでの何回のゲームにおいても継続する特定の賞について、内部当り状態となり、然もその特定の賞に入賞しなかった場合、次のゲームにおいても内部当り状態が継続する。
【0050】遊技者は、報知手段による報知によって、前記特定の賞に内部当り状態が設定されていることがわかるので、次のゲームにおいても内部当り状態が継続することを認識することができ、内部当り状態であることを知らずに遊技を中止して次回以降のゲームにおける特定の賞への入賞のチャンスを自ら放棄することが防がれる。」

「【0090】BBフラグ又は疑似報知フラグがセットされていて入賞なしと判定された場合において、BBフラグがセットされているときは(S11-Y)、内部当り・疑似内部当り表示用デジタル表示器36に表示させる数字として、「3」又は「7」を制御部50でセットする(S12)。また、疑似報知フラグがセットされているときは(S13-Y)、内部当り・疑似内部当り表示用デジタル表示器36に表示させる数字として「0」、「2」、「4」、「6」、「8」又は「9」を、制御部50でセットする(S14)。
【0091】次いで、制御部50の指示により、内部当り・疑似内部当り表示用デジタル表示器36が作動を開始すると共に音声出力部52が制御部50の指示に応じてスピーカ20から「作動開始」効果音を出力する。更に、制御部50は、音声出力部52のスピーカ20から「作動中」効果音を出力すると共に、内部当り・疑似内部当り表示用デジタル表示器36が0乃至9の10種の数字を素早く変更しつつ表示した後約5秒後にセットされた数字を固定的に表示するように指示する。内部当り・疑似内部当り表示用デジタル表示器36の作動開始により、遊技者は、BB内部当りの期待をいだく。そして、BBフラグがセットされているときは「3」又は「7」が表示されると共に、音声出力部52が制御部50の指示に応じてスピーカ20から「BB当選」効果音を出力するので、遊技者はBBに内部当り状態となっていることが分かる。疑似報知フラグがセットされていて疑似内部当りとなっているときは「0」、「2」、「4」、「6」、「8」又は「9」が表示されると共に、音声出力部52が制御部50の指示に応じてスピーカ20から「外れ」効果音を出力するので、遊技者は内部当りでなく疑似内部当りであったことを知ることができる。」

「【0095】
【発明の効果】本発明の遊技装置においては、特定の賞について内部当り状態にあることを遊技者に報知するので、内部当り状態が設定されているのに別の遊技装置に替わって特定の賞に入賞するチャンスを逃すことが防がれると共に、内部当り状態が設定されていない状態でだらだらと遊技を継続してしまうことを避けることが可能になる。然も、その特定の賞に内部当り状態となっていない場合にも、疑似内部当り状態設定により、疑似報知手段が疑似報知を行うので、結果的に特定の入賞についての内部当りになかなかならなかったとしても、疑似報知により遊技者に内部当り状態設定の期待をいだかせて継続的に興味を引きつけ、遊技のメリハリを強めることができる。」

上記記載事項及び図面によれば、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「種々の表示内容を連続的に変化させつつ表示し得る1又は2以上の表示手段と、その表示手段に前記表示内容を固定的に表示させるための表示固定手段とを有し、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するゲームを実行する遊技機であって、
全ての賞又は一部の賞である内部当り対象賞に関し、所定の内部当り条件の達成によって、その内部当り条件に対応する賞について内部当り状態を設定する内部当り設定手段と、
内部当り対象賞の一部である特定の賞について内部当り状態の設定がない場合に、所定の疑似内部当り条件の達成によって、疑似内部当り状態を設定する疑似内部当り設定手段と、
前記特定の賞に内部当り状態が設定されていてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合に遊技者に内部当り状態が設定されていることを報知する報知手段と、
疑似内部当り状態が設定されている場合に前記報知手段により報知される内容と同一又は類似の内容を遊技者に報知(疑似報知)する疑似報知手段を備え、
前記特定の賞は、内部当り状態が設定されていても入賞が確実ではなく、その内部当り状態が、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでの間又は入賞するまでの何回のゲームにおいても継続されるものであり、
疑似内部当り条件は、各ゲームにおいて乱数サンプリングによる抽選により成否が判定されるものであり、
疑似報知手段による報知(疑似報知)は、1度疑似内部当り状態が設定された場合に1度に限り行われ、
疑似報知により遊技者に内部当り状態設定の期待をいだかせて継続的に興味を引きつけることができる遊技装置。」

(2)当審における平成19年1月26日付けで通知した拒絶理由に引用された特許第2903023号公報(以下、「引用例2」という。)の記載事項
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 スタート操作に応答して複数個の回転リールが回転し、ストップ操作に応答して各回転リールが停止し、この停止状態において各回転リールの絵柄が揃うか否かを競うスロットマシンにおいて、
機器内部での抽選処理の結果、特定の当たり状態に当選した場合には、該当する絵柄を停止ライン上に揃えることができるまで、次回のゲーム以降も前記特定の当たり状態を継続させる継続手段と、
前記継続手段の動作中、前記特定の当たり状態に該当する絵柄を揃えることができなかった場合に、所定確率で当たり予告部を駆動させる正当予告手段と、
前記継続手段の非動作中、所定確率で前記当たり予告部を駆動させる虚偽予告手段と、
を備えることを特徴とするスロットマシン。
【請求項2】 正当予告手段と虚偽予告手段は、継続手段の動作中の如何と、機器内部での抽選処理の結果とに基づいて、複数個の抽選テーブルのいずれかを選択し、
選択された抽選テーブルを乱数値に基づいて検索して、前記当たり予告部を駆動するか否かを決定している請求項1に記載のスロットマシン。」

「【0004】
【発明が解決しようとする課題】……本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであって、ボーナスゲームに当選したことを断定的に報知するのではなく、ボーナスゲームに当選したか否かを推理させるようにして新たなゲーム性を実現したスロットマシンを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は、スタート操作に応答して複数個の回転リールが回転し、ストップ操作に応答して各回転リールが停止し、この停止状態において各回転リールの絵柄が揃うか否かを競うスロットマシンであって、機器内部での抽選処理の結果、特定の当たり状態に当選した場合には、該当する絵柄を停止ライン上に揃えることができるまで、次回のゲーム以降も前記特定の当たり状態を継続させる継続手段と、前記継続手段の動作中、前記特定の当たり状態に該当する絵柄を揃えることができなかった場合に、所定確率で当たり予告部を駆動させる正当予告手段と、前記継続手段の非動作中、所定確率で前記当たり予告部を駆動させる虚偽予告手段とを特徴的に備えている。なお、回転リールは、スタート操作に応答して一斉に回転する場合と、そうでない場合とがある。また、当たり予告部の具体的態様は任意であるが、典型的には、ランプ表示部や音声発生部が該当する。
【0006】
【発明の実施の形態】……図1は、本発明に係るスロットマシンSLについて、その一例を示した外観図である。スロットマシンSLには、複数種類の絵柄を描いた3個の回転リール1a?1cが回転自在に設けられており、表示窓2には、各回転リール1a?1cの絵柄が、回転方向に3列程度だけ見えるようになっている。この表示窓2には、水平方向に3本(L1?L3)、斜め方向に2本(L4,L5)の停止ラインが設けられていて、コイン投入口3からのコイン投入枚数に応じて有効な停止ラインの本数が変わるようになっている。表示窓2の上部には、予告ランプLPが帯状に設けられており、機器内部の抽選処理によって大当たり(ビッグボーナス、レギュラーボーナス)状態となった可能性があることを報知するようにしている。コイン投入後、スタートレバー4を操作すると、スタートランプD1が消灯すると共に、3個の回転リール1a?1cが一斉または順次に回転を開始し、ストップボタン5a?5cが押されるごとに、該当する回転リール1a?1cが停止する。そして、停止ライン上に当選絵柄が揃った場合には、受け皿6から所定枚数のコインが払い出されるようになっている。……
【0008】図3は、図1に示す第1実施例に係るスロットマシンSLの動作内容を説明するフローチャートである。スタートレバー4が操作されると(ST1)、第1乱数発生部15から得られる乱数値に基づいて、今回のゲームの絵柄抽選処理が行われる(ST2)。この実施例では、当選状態の場合には揃えるべき絵柄まで決定しており、当選絵柄としては、ビッグボーナス(BB)絵柄、レギューラボーナス(RB)絵柄、リプレイ絵柄、スイカ絵柄、レモン絵柄、チェリー絵柄の6種類を用いることにしている。
【0009】
【表 1】
【0010】今回のゲームについての当否(及び当選絵柄)が決まれば、次に、ステップST2における抽選結果と、持ち越しフラグFLの値とに基づいて予告ランプ抽選テーブルTBLi を選択する(ST3)。具体的には、表1のような選択テーブルSELECT-1を参照して予告ランプ抽選テーブルTBLi を選択するが、例えば、今回のゲームがBB絵柄の当たりであればテーブルTBL1-1が選択され、RB絵柄の当たりであればテーブルTBL1-2が選択される。また、リプレイ絵柄、スイカ絵柄、レモン絵柄、チェリー絵柄のような小役当たり(以下、FRU絵柄と総称する)であればテーブルTBL1-3が選択され、外れゲームであればテーブルTBL1-4が選択される。
【0011】但し、持ち越しフラグFLが立っていれば(FL≠0)、小役当たりであるか外れゲームであるかに係わらず、テーブルTBL1-3が選択される。なお、持ち越しフラグFLは、BB絵柄やRB絵柄の当選状態であるにも係わらず、該当する絵柄を揃えることができなかった場合に、次回以降のゲームにも今回の当選状態を持続させるためのフラグである。つまり、持ち越しフラグFLが「FL≠0」であれば、前回のゲームに引き続き、今回のゲームも、BB絵柄かRB絵柄の当選状態となる。ステップST3の処理に続いて、CPU9は、第2乱数発生部16から、今回の乱数値RNDを取得する(ST4)。第2乱数発生部16としては、適宜なものを用いれば良いが、例えば、CPUとしてZ80を用いる場合には、Rレジスタの値(00H?7FH)とCTCの値(000H?0FFH)とを組み合わせて0000H?7FFFHの乱数を発生させれば良い。なお、添字Hは16進数を意味する。乱数値RNDを取得すれば、この乱数値RNDと選択済みの予告ランプ抽選テーブルTBLi (図4?図7)とに基づいて、予告ランプを点灯(典型的には点滅)させるか否か、点灯させる場合にはどのような予告パターンにするかを決定する(ST5)。
【0012】例えば、ステップST3の処理で、予告ランプ抽選テーブルTBL1-1(図4)が選択された場合には、今回の乱数値RNDからテーブルTBL1-1の第1欄の比較データYP11を減算し(RND←RND-YP11)、減算結果が負であれば、第1欄の予告ランプデータD1 を取得する。一方、減算結果が負でなければ、第2欄の比較データYP12を更に減算し(RND←RND-YP12)、減算結果が負であれば、第2欄の予告ランプデータD2 を取得する。以下同様であり、減算結果が負になるまで減算処理(RND←RND-YP1j)を繰り返し、該当する予告ランプデータDj を取得する。ここで、予告ランプデータD1 ?D4 は、それぞれのパターン(パターンP1?パターンP4 )で予告ランプを点滅させることを意味するデータであり、予告ランプデータD5 は、予告ランプを点滅させない(パターンP5 )ことを意味するデータである。なお、比較データの和(YPi1+YPi2+…+YPi5)は、全ての予告ランプ抽選テーブルTBLi において8000Hになるように設定されているので、予告ランプデータDj のどれかが必ず取得されることになる。
【0013】その後、ステップST2で決定された当選絵柄が揃うように回胴停止処理が行われる(ST6)。なお、ステップST2の抽選動作の結果、外れゲームであった場合には、いずれの当選絵柄も揃わないように回胴停止処理が行われる。……
【0014】
【表 2】
【0015】このように本実施例は、回胴停止処理にも特徴があるが、全ての回胴が停止すれば、目標絵柄を揃えることができたか否かが先ず判定される。そして、BB絵柄かRB絵柄が揃った場合(ST7が YES)を除いて、予告ランプデータDj に基づいて予告ランプが点滅される(ST8)。抽選テーブルTBL1-1から抽選テーブルTBL1-4(図4?図7)にも記載の通り、予告ランプデータDj=D5 の場合を除き、所定の予告パターンPj で予告ランプが点灯される。予告パターンP1 ?予告パターンP4 のそれぞれは適宜に設定されるが、例えば、各パターン毎に点滅の周期を変えるなどの方法を採れば良い。次に、CPUは、予告パターンP1 ?予告パターンP4 に対応して、それぞれ異なる予告音を発生させる(ST9)。なお、予告パターンP5 の場合には、点滅動作を行わないのに合わせて予告音も発生させない。そして、最後に、コインの払出し処理などを行えば(ST10)、今回のゲームが終了する。
【0016】続いて、本実施例のスロットマシンが、遊技者に対して、具体的にどのように機能するかを説明する。なお、説明の都合上、BB絵柄の当たり確率BBA/BUA=72/18522、RB絵柄の当たり確率RBA/BUA=34/18522、FRU絵柄の当たり確率FRA/BUA=7000/18522、外れの確率HZA/BUA=11416/18522であるとする。表1の選択テーブルテーブルSELECT-1に示す通り、BB絵柄に当選した場合には、テーブルTBL1-1(図4)が選択されるのであるから、BB絵柄に当選したとき、予告パターンP1 で点滅する確率はYP11/BUP、予告パターンP2 で点滅する確率はYP12/BUP、予告パターンP3 で点滅する確率はYP13/BUP、予告パターンP4 で点滅する確率はYP14/BUPである。なお、BUP=8000Hである。
【0017】同様に、RB絵柄に当選した場合には、テーブルTBL1-2(図5)が選択されるのであるから、予告パターンP1 で点滅する確率はYP21/BUP、予告パターンP2 で点滅する確率はYP22/BUP、予告パターンP3 で点滅する確率はYP23/BUP、予告パターンP4 で点滅する確率はYP24/BUPである。また、FRU絵柄に当選した場合には、テーブルTBL1-3(図6)が選択されるのであるから、予告パターンP1 で点滅する確率はYP31/BUP、予告パターンP2 で点滅する確率はYP32/BUP、予告パターンP3 で点滅する確率はYP33/BUP、予告パターンP4 で点滅する確率はYP34/BUPである。一方、外れゲームの場合には、テーブルTBL1-4(図7)が選択されるので、予告パターンP1 で点滅する確率はYP41/BUP、予告パターンP2 で点滅する確率はYP42/BUP、予告パターンP3 で点滅する確率はYP43/BUP、予告パターンP4 で点滅する確率はYP44/BUPである。
【0018】以上の関係を踏まえて、BB絵柄かRB絵柄に当選したことと、何らかのパターンPj で予告ランプが点滅することの相関を算出する。
(1)BB絵柄に当選して、各パターンPj で予告ランプが点滅する確率を算出すると次の通りである。
(a) BB絵柄に当選してパターンP1 で予告ランプが点滅する確率X11
X11=YP11/BUP × BBA/BUA=13.5/BUA
(b) BB絵柄に当選してパターンP2 で予告ランプが点滅する確率X12
X12=YP12/BUP × BBA/BUA=13.5/BUA
(c) BB絵柄に当選してパターンP3 で予告ランプが点滅する確率X13
X13=YP13/BUP × BBA/BUA=13.5/BUA
(d) BB絵柄に当選してパターンP4 で予告ランプが点滅する確率X14
X14=YP14/BUP × BBA/BUA=13.5/BUA
【0019】(2)RB絵柄に当選して、各パターンPj で予告ランプが点滅する確率を算出すると次の通りである。
(a) RB絵柄に当選してパターンP1 で予告ランプが点滅する確率X21
X21=YP21/BUP × RBA/BUA=11.6875/BUA
(b) RB絵柄に当選してパターンP2 で予告ランプが点滅する確率X22
X22=YP22/BUP × RBA/BUA=6.375/BUA
(c) RB絵柄に当選してパターンP3 で予告ランプが点滅する確率X23
X23=YP23/BUP × RBA/BUA=6.375/BUA
(d) RB絵柄に当選してパターンP4 で予告ランプが点滅する確率X24
X24=YP24/BUP × RBA/BUA=1.0625/BUA
【0020】(3)FRU絵柄に当選して、各パターンPj で予告ランプが点滅する確率を算出すると次の通りである。
(a) FRU絵柄に当選してパターンP1 で予告ランプが点滅する確率X31
X31=YP31/BUP × FRUA/BUA=0.2136/BUA
(b) FRU絵柄に当選してパターンP2 で予告ランプが点滅する確率X32
X32=YP32/BUP × FRUA/BUA=0.2136/BUA
(c) FRU絵柄に当選してパターンP3 で予告ランプが点滅する確率X33
X33=YP33/BUP × FRUA/BUA=0.2136/BUA
(d) FRU絵柄に当選してパターンP4 で予告ランプが点滅する確率X34
X34=YP34/BUP × FRUA/BUA=0.2136/BUA
【0021】(4)外れゲームであるのに、各パターンPj で予告ランプが点滅する確率を算出すると次の通りである。
(a) 外れであるのにパターンP1 で予告ランプが点滅する確率X41
X41=YP41/BUP × HZA/BUA=371.3823/BUA
(b) 外れであるのにパターンP2 で予告ランプが点滅する確率X42
X42=YP42/BUP × HZA/BUA=67.9358/BUA
(c) 外れであるのにパターンP3 で予告ランプが点滅する確率X43
X43=YP43/BUP × HZA/BUA=16.7227/BUA
(d) 外れであるのにパターンP4 で予告ランプが点滅する確率X44
X44=YP44/BUP × HZA/BUA=0.3484/BUA
【0022】上記(1)?(4)の算出結果を踏まえて、予告ランプの点滅の信頼性を算出する。なお、予告ランプは、BB絵柄やRB絵柄の当選状態を報知するものとして機能している。
予告パターンP1 の信頼性
予告パターンP1 で点滅する上記(1)-(a)?(4)-(a)のうち、BB絵柄やRB絵柄の当選状態を正しく報知しているのは、上記(1)-(a)と(2)-(a)の場合だけである。したがって、予告パターンP1 の信頼度は、(X11+X12)/(X11+X12+X13+X14)=6.3%である。
予告パターンP2 の信頼性
予告パターンP2 で点滅する(1)-(b)?(4)-(b)のうち、BB絵柄やRB絵柄の当選状態を正しく報知しているのは、上記(1)-(b)と(2)-(b)の場合だけである。したがって、予告パターンP2 の信頼度は、(X21+X22)/(X21+X22+X23+X24)=22.5%である。
予告パターンP3 の信頼性
予告パターンP3 で点滅する(1)-(c)?(4)-(c)のうち、BB絵柄やRB絵柄の当選状態を正しく報知しているのは、上記(1)-(c)と(2)-(c)の場合だけである。したがって、予告パターンP3 の信頼度は、(X31+X32)/(X31+X32+X33+X34)=53.9%である。
予告パターンP4 の信頼性
予告パターンP4 で点滅する(1)-(d)?(4)-(d)のうち、BB絵柄やRB絵柄の当選状態を正しく報知しているのは、上記(1)-(d)と(2)-(d)の場合だけである。したがって、予告パターンP4 の信頼度は、(X41+X42)/(X41+X42+X43+X44)=96.2%である。
【0023】以上の通りであるので、遊技者は、予告ランプの点滅を注視しながらゲームを進行させ、もし、予告ランプが点滅すれば、その予告パターンに基づいてBB絵柄かRB絵柄に当たっているか否かを推理することができる。すなわち、予告パターンP4 で点滅すれば、BB絵柄かRB絵柄に当たっている可能性が極めて高く、予告パターンP3 で点滅すれば5割程度、予告パターンP2 なら2割程度、予告パターンP1 なら1割未満の可能性でBB絵柄かRB絵柄に当たっていることになる。このように、本発明によれば、スロットマシンに新たな楽しみ方を提供することができる。」

上記記載事項及び図面によれば、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「機器内部での抽選処理の結果、特定の当たり状態に当選した場合には、該当する絵柄を停止ライン上に揃えることができるまで、次回のゲーム以降も前記特定の当たり状態を継続させる継続手段と、
前記継続手段の動作中、前記特定の当たり状態に該当する絵柄を揃えることができなかった場合に、所定確率で当たり予告部を駆動させる正当予告手段と、
前記継続手段の非動作中、所定確率で前記当たり予告部を駆動させる虚偽予告手段を備え、
正当予告手段と虚偽予告手段は、継続手段の動作中の如何と、機器内部での抽選処理の結果とに基づいて、複数個の抽選テーブルのいずれかを選択し、
選択された抽選テーブルを乱数値に基づいて検索して、前記当たり予告部を駆動するか否かを決定し、パターンP1?パターンP4で予告ランプを点滅させるか、予告ランプを点滅させない(パターンP5)ものであり、
予告パターンP4 で点滅すれば、特定の当たり状態(BB絵柄かRB絵柄)に当たっている可能性が極めて高く(96.2%)、予告パターンP3 で点滅すれば5割程度(53.9%)、予告パターンP2 なら2割程度(22.5%)、予告パターンP1 なら1割未満(6.3%)の可能性で特定の当たり状態(BB絵柄かRB絵柄)に当たっていることになるスロットマシン。」

(3)当審における平成19年1月26日付けで通知した拒絶理由に引用された特開平10-263160号公報(以下、「引用例3」という。)の記載事項
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ遊技機やスロットマシン等の遊技機に用いられる遊技用表示装置、及びこの表示装置の原理を適用した遊技機(弾球遊技機やスロットマシンのほか、TVゲーム機を含む)に関する。」

「【0007】従って、本発明の目的は、本来の遊技に用いられる図柄の種類や数を増やしたり、それらの図柄の表示制御を複雑化したりすることなく、リーチアクションのような予兆表示を、大当たりがどの位の可能性で出現するかという情報まで含めて多様に実現できる遊技用表示装置を提供することである。」

「【0010】本発明の第2の態様として、所定の入力信号に応じて2つの乱数を発生する乱数発生手段と、該乱数発生手段から発生した第1の乱数が所定値であるか否かを判定する判定手段と、遊技者に対して利益が与えられる状態であることを表す第1の図柄群及び遊技者に対して利益が与えられる状態になる確率を表す第2の図柄群を格納した図柄記憶手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記図柄記憶手段に格納されている第1の図柄群の中から表示すべき第1の図柄を決定する第1の表示図柄決定手段と、前記判定手段の判定結果と前記乱数発生手段から発生した第2の乱数とに基づいて、前記図柄記憶手段に格納されている第2の図柄群の中から表示すべき第2の図柄を決定する第2の表示図柄決定手段と、前記第1及び第2の表示図柄決定手段によって決定された第1及び第2の図柄を表示する図柄表示手段と、前記第2の表示図柄決定手段によって決定された第2の図柄を表示した後、前記第1の表示図柄決定手段によって決定された第1の図柄を表示するように前記図柄表示手段を制御する図柄表示制御手段とを備えた遊技用表示装置が提供される。
【0011】ここで、第2の図柄を決定するための条件の1つである判定手段の判定結果は、第1の乱数が所定値である場合とそうでない場合のいずれかであるが、そのいずれにしても、上記判定結果には、第1の乱数の値に応じて決定した第1の図柄を含む。そして、この第1の図柄と第2の乱数の値に応じて第2の図柄を決定することになる。」

「【0023】第2の態様によれば、乱数発生手段は2つの乱数を発生する。そして、判定手段で第1の乱数が所定値であるか否かを判定し、その判定結果に基づき、第1の図柄決定手段により、遊技者に対して利益が与えられる状態であることを表す第1の図柄群の中から表示すべき第1の図柄を決定する。更に、上記判定結果により決定した第1の図柄と、乱数発生手段から発生した第2の乱数とに基づき、第2の図柄決定手段により、遊技者に対して利益が与えられる状態になる確率を表す第2の図柄群の中から表示すべき第2の図柄を決定する。具体的には、第1の乱数の値に応じて決定した第1の図柄群から、第2の乱数の値に応じた第1の図柄を選択することで、目的の第2の図柄が決定される。そして、図柄表示制御手段は、図柄表示手段にこの決定した第2の図柄を表示した後第1の図柄を表示する。
【0024】この第2の態様においては、第1の図柄の前に表示される第2の図柄は、当該第1の図柄に対応している第2の図柄群の中からランダムに決定されるので、遊技者は、先に表示された第2の図柄を見た時点で、その後第1の図柄がどのような組み合わせ(パターン)で停止表示されるかを、一応予測できる。すなわち、1つの第1図柄に対して複数の第2図柄が対応づけられているので、例えば1対2の場合には、特定の第1図柄が決定された時、第2の図柄は50%の確率でランダムに決定される。そして、その決定された第2の図柄が表示された時点で、次に表示される第1の図柄が予測できる。ここで、1つの第2図柄が特定の1つの第1図柄のみに対応づけられている場合には、当該第2図柄が表示された時点で、次に表示される第1の図柄が特定の図柄となる確率は100%である。従って、例えば「大当たり」の第1図柄に対応した第2図柄が表示された時には、遊技者は、その後に100%の信頼度で「大当たり」が出現することを認識できる。
【0025】しかしながら、ある第2図柄が複数の第1図柄に対応づけられている場合、例えば1:2の場合には、当該第2図柄が表示された時点で、次に表示される第1の図柄が特定の図柄となる確率は50%である。従って、例えば「大当たり」とそれ以外のパターンを予兆させる第2の図柄を表示した時には、遊技者は、その後に50%の信頼度で「大当たり」が出現することを認識できる。
【0026】従って、上記第1の態様と同様に、遊技者は、先に表示される第2の図柄とその後表示される第1の図柄とを対応づけて認識することにより、利益が与えられる状態となる可能性がどの位あるかを知ることができるのに加えて、第1の図柄に対応している第2の図柄がランダムに決定されることにより、遊技者は、利益となる第2図柄の表示を期待するゲームも行うこととなり、遊技の興趣が一層高められる。」

「【0039】次に、図3は、本発明の第2の態様に相当する遊技用表示装置を示す。これは、以下の構成要素(図1と同じものには同一の符号を付してある)から成る。
【0040】所定の入力信号に応じて乱数を発生する乱数発生手段101、この乱数発生手段101から発生した第1の乱数が所定値であるか否かを判定する判定手段102、遊技者に対して利益が与えられる状態であることを表す第1の図柄群及び遊技者に対して利益が与えられる状態になる確率を表す第2の図柄群を格納した図柄記憶手段104、判定手段102の判定結果に基づいて、図柄記憶手段104に格納されている第1の図柄群の中から表示すべき第1の図柄を決定する第1の表示図柄決定手段103a、判定手段102の判定結果と乱数発生手段101から発生した第2の乱数とに基づいて、図柄記憶手段104に格納されている第2の図柄群の中から表示すべき第2の図柄を決定する第2の表示図柄決定手段103b、第1及び第2の表示図柄決定手段103a,103bによって決定された第1及び第2の図柄を表示する図柄表示手段107、及び第2の表示図柄決定手段103bによって決定された第2の図柄を表示した後、第1の表示図柄決定手段103aによって決定された第1の図柄を表示するように図柄表示手段107を制御する図柄表示制御手段106。
【0041】図3の構成において、図柄記憶手段104に格納される第1の図柄群と第2の図柄群は、次のように対応している。
【0042】図4に示すように、第1図柄は、図2の例と同様に“7-7-7”(大当たり),“7-7-6”,“7-7-5”,…,のような数字、或いは文字、絵柄その他の図柄の組み合わせを表わすデータとして、格納される。これらのデータで表される第1の図柄(特別図柄)の組み合わせにより、第1の図柄群が構成される。一方、第2の図柄は、上記第1の図柄(特別図柄)の各組み合わせにそれぞれ複数の図柄(組み合わせ)が対応して格納される。すなわち、第1の図柄群の“7-7-7”(大当たり)には第2の図柄(A),(D),…が、“7-7-6”には(B),(E),…が、“7-7-5”には(A),(C),…が、それぞれ対応している。そして、この例では、第2の図柄(A)は、第1の図柄群の1番目の“7-7-7”のほかに3番目の“7-7-5”にも対応している。
【0043】上記構成によれば、前述の第1の乱数の値によって第1の図柄が決定された場合、それに対応した第2の図柄群の中から、第2の乱数の値によって第2の図柄が決定される。従って、決定された第1の図柄が“7-7-7”の場合には、第2の図柄として(A),(D)のいずれかが表示されるが、(D)が表示された時には、その後に必ず“7-7-7”が表示されるので、遊技者には(D)の表示により“7-7-7”が100%の確率で出現することがわかる。しかし、第2の図柄として(A)が表示された時には、その後に“7-7-7”或いは“7-7-5”が表示される可能性があるから、遊技者には(A)の表示により“7-7-7”が50%の確率で出現することがわかる。
【0044】こうして、遊技者は、第2の図柄が表示された時点で、いかなる第1の図柄が出現するかということとその確率を予測できるほか、遊技者にとって利益となる第1図柄を必ず出現させる第2図柄を探すというゲームも楽しむことができる。」

「【0066】図7は、本発明における第2の図柄として上記パチンコ遊技機の特別図柄表示装置3に表示される「予兆図柄」を決定する処理を示す。ここで、予兆図柄とは、遊技者に対して利益が与えられる状態を予兆させる図柄であり、表示される予兆図柄により、前記「特別図柄」が100%大当たりの図柄(組み合わせ)となって停止表示されること、或いは大当たりの出現する確率が50%とか5%であることが示される。」

「【0083】上記の表示例では、図17のように停止表示された9個の図柄が全て同じ「矢印」の場合には、特別図柄は確実に(100%の確率で)“3-3-3”が並ぶように表示制御される。すなわち、図17の表示図柄は「大当たり」が出ることを予兆する表示である。
【0084】他に、例えば、図20に示すように上段右に「月」,下段左に「星」の図柄を表示し、残りを「矢印」の図柄とすることにより、「大当たり」が出る確率が50%であることを表すことができる。」

上記記載事項及び図面によれば、引用例3には以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。
「予兆図柄により、特別図柄が100%大当たりの図柄となって停止表示されること、或いは大当たりの出現する確率が50%であることが示されるパチンコ遊技機やスロットマシン等の遊技機。」

3.対比
引用発明1は「特定の賞に内部当り状態が設定されていてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合に遊技者に内部当り状態が設定されていることを報知する」ものであるのに対して、本願発明は「特定の賞に内部当り状態が設定されていてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合のゲームのうち一部のゲームについては、特定の賞に内部当り状態が設定されていることを示す確定報知を遊技者に対し行」うものであるから、両者は、特定の賞に内部当り状態が設定されていてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合のゲームのうち所定のゲームについては、特定の賞に内部当り状態が設定されていることを示す確定報知を遊技者に対し行うものである点で共通する。

また、引用発明1は「疑似内部当り状態が設定されている場合に前記報知手段により報知される内容と同一又は類似の内容を遊技者に報知する」ものであるのに対して、本願発明は「疑似内部当り状態が設定されている場合のゲームについては、特定の賞に内部当り状態が設定されている可能性があることを示す可能性報知を遊技者に対し行う」ものであるから、両者は、疑似内部当り状態が設定されている場合のゲームについては、特定の賞に内部当り状態が設定されている期待を持たせる報知を遊技者に対し行うものである点で共通するものといえる。

さらに、引用発明1は「疑似内部当り条件は、各ゲームにおいて乱数サンプリングによる抽選により成否が判定されるものであり、疑似報知手段による報知は、1度疑似内部当り状態が設定された場合に1度に限り行われ」るものであるのに対して、本願発明は「疑似内部当り設定手段による疑似内部当り状態の設定が各ゲーム毎の抽選により行われることにより、疑似内部当り状態の設定による可能性報知が2ゲーム以上連続して行われ得る」ものであるから、両者は、疑似内部当り設定手段による疑似内部当り状態の設定が各ゲーム毎の抽選により行われることにより、疑似内部当たり状態の設定による報知が2ゲーム以上連続して行われ得るものである点で共通するものといえる。

そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、両者は
「種々の表示内容を連続的に変化させつつ表示し得る1又は2以上の表示手段と、その表示手段に前記表示内容を固定的に表示させるための表示固定手段とを有し、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するゲームを実行する遊技機であって、
全ての賞又は一部の賞である内部当り対象賞に関し、所定の内部当り条件の達成によって、その内部当り条件に対応する賞について内部当り状態を設定する内部当り設定手段と、
内部当り対象賞の一部である特定の賞について内部当り状態の設定がない場合に、所定の疑似内部当り条件の達成によって、疑似内部当り状態を設定する疑似内部当り設定手段と、
前記特定の賞に内部当り状態が設定されていてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合のゲームのうち所定のゲームについては、特定の賞に内部当り状態が設定されていることを示す確定報知を遊技者に対し行い、前記疑似内部当り状態が設定されている場合のゲームについては、特定の賞に内部当り状態が設定されている期待を持たせる報知を遊技者に対し行う報知手段を備え、
前記特定の賞は、内部当り状態が設定されていても入賞が確実ではなく、その内部当り状態が、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでの間又は入賞するまでの何回のゲームにおいても継続されるものであり、
疑似内部当り設定手段による疑似内部当り状態の設定が各ゲーム毎の抽選により行われることにより、疑似内部当り状態の設定による報知が2ゲーム以上連続して行われ得る遊技装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明は、特定の賞に内部当り状態が設定されていてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合のゲームのうち一部のゲームについては、特定の賞に内部当り状態が設定されていることを示す確定報知を行い、特定の賞に内部当り状態が設定されていてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合のゲームのうち別の一部のゲームについては、疑似内部当り状態が設定されている場合のゲームと共に、特定の賞に内部当り状態が設定されている可能性があることを示す可能性報知を行うものであるのに対して、引用発明1は、特定の賞に内部当り状態が設定されていてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合のゲームのうち全部のゲームについて、特定の賞に内部当り状態が設定されていることを示す確定報知を行い、疑似内部当り状態が設定されている場合のゲームについては、確定報知と同一又は類似の内容の報知(疑似報知)を行うものである点。

<相違点2>
本願発明は、特定の賞に設定された内部当り状態が、その特定の賞に入賞せずに2ゲーム以上継続する場合に、報知手段が確定報知を行うか可能性報知を行うか報知を行わないかが、各ゲーム毎に抽選により決定され、疑似内部当り設定手段による疑似内部当り状態の設定が各ゲーム毎の抽選により行われることにより、疑似内部当り状態の設定による報知が2ゲーム以上連続して行われ得るものであるのに対して、引用発明1は、疑似内部当り設定手段による疑似内部当り状態の設定が各ゲーム毎の抽選により行われることにより、疑似報知が2ゲーム以上連続して行われ得るものの、特定の賞に設定された内部当り状態が、その特定の賞に入賞せずに2ゲーム以上継続する場合は、常に確定報知を行うものである点。

4.当審の判断
<相違点1について>
引用発明2は、特定の当たり状態を継続させる継続手段の動作中、前記特定の当たり状態に該当する絵柄を揃えることができなかった場合に、所定確率で当たり予告部を駆動させ、前記継続手段の非動作中、所定確率で前記当たり予告部を駆動させるものであるから、特定の賞に内部当り状態が設定されていてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合のゲームのうち一部のゲーム及び疑似内部当り状態が設定されている場合のゲームについては、特定の賞に内部当り状態が設定されている可能性があることを示す可能性報知を遊技者に対し行う報知手段を備えたものといえる。

そして、引用発明1と引用発明2は、同一の技術分野であるスロットマシンに属し、内部当たり状態設定の期待をいだかせて遊技者の興味を継続的に引きつけるという共通の作用効果を有するものであるから、内部当り設定手段と疑似内部当り設定手段を備えた引用発明1の報知手段として、引用発明2の可能性報知を採用することは、当業者なら容易になし得るものである。

ここで、引用発明2は、確定報知とはいえないが極めて確定報知に近い予告パターンP4(96.2%)とその他の可能性報知であるP1乃至P3を備えること、及び、引用発明1及び2と同一の技術分野であるパチンコ機やスロットマシン等の遊技機において、予兆図柄により100%の大当たり或いは大当たりの出現する確率が50%であることが示される引用発明3を考慮すれば、確定報知と可能性報知を共存させて、本願発明の相違点1に係る構成に想到することは、当業者が容易になし得るものである。

<相違点2について>
引用発明2は、継続手段の動作中、特定の当たり状態に該当する絵柄を揃えることができなかった場合に、所定確率で当たり予告部を駆動させ、確定報知とはいえないが極めて確定報知に近い報知である予告パターンP4、その他の可能性報知であるP1乃至P3、報知しない(P5)のいずれかを乱数値に基づいて選択するものであり、各ゲーム毎の抽選により行われるものといえるから、上記相違点1の検討を勘案すれば、特定の賞に設定された内部当り状態が、その特定の賞に入賞せずに2ゲーム以上継続する場合に、報知手段が確定報知を行うか可能性報知を行うか報知を行わないかが、各ゲーム毎に抽選により決定されるようにして本願発明の相違点2に係る構成に想到することは、当業者が容易になし得るものである。

そのうえ、本願発明の作用効果も、引用発明1、引用発明2及び引用発明3から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-21 
結審通知日 2007-05-29 
審決日 2007-06-14 
出願番号 特願平11-238283
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 尚  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 藤田 年彦
渡部 葉子
発明の名称 遊技装置  
代理人 高良 尚志  

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