• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1161965
審判番号 不服2003-24328  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-16 
確定日 2007-08-01 
事件の表示 平成11年特許願第369284号「メダル遊技設備用不正払い出し検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 3日出願公開、特開2001-178872〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成11年12月27日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成15年6月2日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対して、拒絶査定不服の審判が請求され、平成16年1月13日に手続補正がなされたものである。



第二.平成16年1月13日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年1月13日付の手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
平成16年1月13日付の手続補正(以下「本件補正」という)により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された(以下「本願補正発明」という)。
「メダルを投入してゲームを行うゲーム機の内部に設けられたメダル払い出し器からメダル受皿へのメダル搬送路の途中にメダルの通過を検知するメダル通過センサーを設け、同メダル通過センサーからの信号をカウントするメダルカウンターを設け、不正なメダル払い出しを光・音・信号によって知らせる警報装置を設け、前記メダル払い出し器のメダルを払い出す連続した一回の限度設定量と前記メダルカウンターのカウント数を比較して同カウント数が多い場合が所定時間内に複数回発生すると前記警報装置に警報するよう信号を送る不正検出回路を設け、しかも前記所定時間をクレジットの払い出しが二回以上行うことはないと考えられる時間に設定したメダル遊技設備用不正払い出し検出装置。」


[2].補正要件(目的)の検討
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「所定時間」について、「クレジットの払い出しが二回以上行うことはないと考えられる時間」との限定を付加するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。


[3].補正要件(独立特許要件:特許法第36条)の検討
(1).本願補正発明は、「所定時間をクレジットの払い出しが二回以上行うことはないと考えられる時間に設定した」との構成が不明瞭である。 すなわち、
クレジット数の払い出しに関して出願当初の明細書には、段落【0016】に、「ゲーム機30のクレジット装置のクレジット数が払い出されるのは、ゲーム終了の場合が多く、さらに連続して行われることはまれであるため、図7に示すこのような処理を行うようにすれば、設定した設定限度超過時間t1 内に15枚を超える払い出しが2回以上行われると警報されるようにして、通常のクレジットの払い出しに反応しないようにしてより不正な払い出しを確実に検出できるようにし、また人手を要さないようにできる。
表2に示すように、所定時間内ではあれば第1回目に15枚の払い出し、第2回目に15枚を超える払い出しがあった場合及び、第1回目に15枚を超える払い出し、第2回目に15枚の払い出しがあった場合には警報しない。このようにすることによってクレジットの払い出しによる50枚までの払い出しが所定時間内に1度行われても警報しないようにできる。」と記載され、
(i).前記「設定限度超過時間t1」と「所定時間」とは同一意義であるのか否か不明瞭であり、
(ii).「クレジット数が払い出されるのは、ゲーム終了の場合」において、再度クレジットが払い出される「所定時間」とはゲーム終了後どの程度の時間経過を意味するのか当該時間が不明瞭である。

(2).まとめ
以上のように、本願補正発明は、特許法第36条第6項第2号の規定に反し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


[4].補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1).引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-96061号公報、および周知事項を例示するための刊行物、特開平11-296224号公報、特開平9-219985号公報には、以下の事項が記載されている。
(A).特開平7-96061号公報(以下、「刊行物A」いう).
(A-1).「【0018】上記ホッパー本体32には、上記メダル排出口28に連通する連通路(図示せず)に払出メダルセンサー(図1)が配置されている。前記制御ユニット40には、その上部位置に、ホッパー装置30の電源をオン・オフさせる電源スイッチ41を備え、その下方には、管理者が操作することにより、ホッパー装置30を駆動させ、ゲームの状況とは無関係にメダルを払い出させる回収スイッチ42とを備えている。」
(A-2).「【0021】なお、メダル数比較手段74と、不正信号発生手段81とで不正検出手段90が構成されている。つぎに、本発明の一実施例におけるメダル遊技機10の動作を、図3,4に示したフローを用いて説明する。まず、ステップ100において、ホッパー装置30からメダルが払い出されているか否かの判定が行われる。この判定は、主制御部70のメダル数比較手段74によって行われ、メダル数比較手段74においては、カウント手段73からカウント信号bが出力されているか否かが監視されている。
【0022】ホッパー装置30からメダルが払い出されていると判定された場合には、次のステップ101に進む。このステップ101においては、カウント手段73のカウント値が、遊技制御手段71からのメダル払出信号aにもとづいて払い出されるメダル数を超えるか否かが判定される。この判定は、メダル数比較手段74によって行われ、メダル数比較手段74においては、カウント手段73のカウント値とメダル払出信号aとが比較されている。なお、遊技制御手段71からメダル払出信号aが出力されるのは、例えば入賞によるメダルの払い出しや清算スイッチ26の操作によるクレジットメダルの清算などの場合である。また、メダル払出信号aは、上記したように、払い出すメダルの枚数を内容とし、例えば入賞した場合には、入賞の態様に応じて予め定められていたメダルの数(例えば15枚)の払い出しを内容とする。
【0023】したがって、入賞によって払い出されるメダルの枚数が、「15」枚であるにもかかわらず、例えば遊技者が、異物を挿入して回転ディスク(図示せず)のブレーキ(図示せず)の作動を阻止し、回転ディスクを慣性で回転させることにより、ホッパー装置30から「17」枚のメダルを払い出させると、メダル払出信号aは、メダルの「15」枚の払い出しを内容とするのに対して、実際にカウント手段のカウント値は、「17」枚であるから、「a<b」であると判定される。
(A-3).「【0025】なお、遊技制御手段71からメダル払出信号aが出力されていないにもかかわらず、カウント手段において、メダルがカウントされる場合には、例えば回収スイッチ42の操作によってホッパー装置30を駆動され、メダルがメダル排出口28から排出されている場合が該当する。ステップ101において、「a<b」であると判定された場合には、次のステップ102に進み、このステップ102においては、メダル数比較手段74から超過信号が出力される。」
(A-4).「【0028】ステップ201において、受信した信号が超過信号であると判定された場合には、次のステップ202に進む。ステップ202においては、不正報知手段60により、不正が報知される。具体的には、警報音がスピーカー29から出力される。一方、上記ステップ201において、受信した信号が超過信号でないと判定された場合には、当該処理を終了する。」
(A-5).してみると、刊行物Aには以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「メダル数比較手段74と不正信号発生手段とから構成される不正検出手段と、警報音をスピーカより発生させる不正報知手段とを具備し、
入賞により予め定められていた払出メダル数(例えば15枚)aの払い出をホッパー30から行なうとき、メダル排出口28に連通する連通路に配設された払出メダルセンサー33からのメダル検出信号に基づいてカウント手段が払い出されたメダルをカウントし、当該カウント値bと、前記払出メダル数(例えば15枚)aとをメダル数比較手段74にて比較し、前記カウント値bが当該払出メダル数(例えば15枚)aよりも大であるときは、当該メダル数比較手段74から超過信号が出力されて、不正報知手段により不正が報知されるメダル遊技機」

(B).特開平11-296224号公報(以下、「刊行物B」という).
(B-1).「【0009】エラー状況のデータの集計、集計したデータの処理、およびオペレータへの報知方法の一例を次に示す。(1)リトライが発生したエラーコードを集計し、既定時間区切りにおける発生回数の増加比率を算出して、既定値以上の増加傾向がある場合には、異常として警報を発する。
(2)リトライが発生したエラーコードを集計し、既定時間内の発生回数を算出し、既定値以上の発生がある場合には、異常として警報を発する。
(3)エラー発生回数を集計し、既定時間区切りにおける発生回数の増加比率を算出し、既定値以上の増加傾向がある場合には、異常として警報を発する。
(4)エラー発生回数を集計し、既定時間内の発生回数を算出し、既定値以上の発生がある場合には、異常として警報を発する。」

(C).特開平9-219985号公報(以下、「刊行物C」という)
(C-1).「【0006】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明におけるモータ制御の保護方法を示すフローチャートである。以下、このフローチャートの説明をする。最初にモータの通常制御中において、マイコンがスイッチング素子の短絡保護回路から短絡保護信号が異常レベルであることを一定時間検出した場合、インバータを停止させる。そこで再度マイコンが短絡保護信号のレベルを確認し、正常レベルならトルク指令=0であることを確認した後、通常制御に復帰させる。逆に一定時間異常レベルなら短絡保護異常としてインバータを停止させる。またスイッチング素子の異常等で、一定時間内にマイコンが、数回異常レベルを検出すれば異常処理、例えばスイッチング素子駆動用電源の入力を切るなどの処理を行い、通常復帰不可能なエラーとする。」

(2).引用発明と本願補正発明との対比
(ア).両者の対応関係
(i).引用発明における「払出メダルセンサー」は、本願補正発明における「メダル通過センサー」に対応し、以下同様に「カウント手段」は「メダルカウンター」に、「入賞により予め定められていた払出メダル数(15枚)a」は、「メダルを払い出す連続した一回の限度設定量」に、「不正報知手段(例えばスピーカー29)」は「警報装置」に各々対応する。
(ii).引用発明における「不正検出手段」と、本願補正発明における「不正検出回路」とは、一回の限度設定量とメダルカウンターのカウント数を比較して同カウント数が多い場合に警報を発生させる信号を送出する「不正検知手法」で共通する。

(イ).一致点
「メダルを投入してゲームを行うゲーム機の内部に設けられたメダル払い出し器からメダル受皿へのメダル搬送路の途中にメダルの通過を検知するメダル通過センサーを設け、同メダル通過センサーからの信号をカウントするメダルカウンターを設け、不正なメダル払い出しを音によって知らせる警報装置を設け、前記メダル払い出し器のメダルを払い出す連続した一回の限度設定量と前記メダルカウンターのカウント数を比較して同カウント数が多い場合、前記警報装置に警報するよう信号を送る不正検知手法を設けたメダル遊技設備用不正払い出し検出装置」

(ウ).相違点
不正検知手法に関して、本願補正発明は、限度設定量より払出カウント数の多い場合が「所定期間内に複数回発生した場合」との条件、および当該「所定期間」が「前記所定時間をクレジットの払い出しが二回以上行うことはないと考えられる時間」とされているのに対し、引用発明は、当該条件は付されていない点。


(3).相違点の検討
異常状態の発生に対する異常対応処理を行う場合において、当該異常の発生が所定時間内に複数回発生したことを条件として異常対応処理を実行することは、刊行物B、Cに示されるように周知の異常対応処理であり、この場合の所定時間とは、当該異常状態の発生が通常複数回発生する可能性のない時間であることは、当然の技術的事項である。
してみると、引用発明における不正検知手法として、前記周知の異常対応処理を採用することは、検出の信頼性等を考慮して適宜選択採用する程度の設計的事項である。
さらに、
当該所定時間を「クレジットの払い出しが二回以上行うことはないと考えられる時間」と限定する点は、前記「第二.[3]」のように明確ではないから、結局のところ、前記所定の時間内と格別変わるとは認められない。
したがって、本願補正発明は、引用発明、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定に反し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(4).むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。



第三.本願発明について
[1].本願発明
平成16年1月13日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年6月2日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「メダルを投入してゲームを行うゲーム機の内部に設けられたメダル払い出し器からメダル受皿へのメダル搬送路の途中にメダルの通過を検知するメダル通過センサーを設け、
同メダル通過センサーからの信号をカウントするメダルカウンターを設け、不正なメダルの払い出しを光・音・信号によって知らせる警報装置を設け、
前記メダル払い出し器のメダルを払い出す連続した一回の限度設定量と前記メダルカウンターのカウント数を比較して同カウント数が多い場合が所定時間内に複数回発生すると前記警報装置に警報するよう信号を送る不正検出回路を設けたメダル遊技設備用不正払い出し検出装置。」


[2].特許法第29条第2項の拒絶の理由
(1).引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、および、その記載事項は、前記「第二.[4].(1)」に記載したとおりである。


[3].引用発明と本願発明との対比
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から「所定時間」の限定事項である「クレジットの払い出しが二回以上行うことはないと考えられる時間」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.[4]」に記載したとおり、引用発明、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


[4].むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-31 
結審通知日 2007-06-05 
審決日 2007-06-20 
出願番号 特願平11-369284
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 年彦池谷 香次郎  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 川島 陵司
中槙 利明
発明の名称 メダル遊技設備用不正払い出し検出装置  
代理人 戸島 省四郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ