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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1162036
審判番号 不服2005-19745  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-13 
確定日 2007-08-10 
事件の表示 特願2003-122935「屋根ユニットにおける構造材連結用金物」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月18日出願公開、特開2004-324312〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年4月25日の出願であって、平成17年9月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年10月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年11月11日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年11月11日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成17年11月11日付けの手続補正を却下する。

〔理由1〕
(1)補正後の本願発明
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を削除して補正前の請求項2を請求項1に繰り上げるとともに、次のように補正することを含むものである。
「【請求項1】
平面視で互いに直交し、屋根に勾配をつけるために傾斜して配置される梁及び横桁を柱の上部に接続する連結用金物であって、柱及び梁の両側面を挟持して締結固定する一対の垂直ベース板と、該各々の垂直ベース板に直角に突設され横桁を支持固定する水平支持板と起立板とからなる水平アングルとを備え、前記各々の垂直ベース板に、水平方向に延びて天井構造を補強する天井用補強金棒と、鉛直方向に延びて側壁構造を補強する長さ調整可能な補強金棒の一端が各々連結されると共に、互いに直交して配される天井用係止板及び側壁用係止板が設けられていることを特徴とする屋根ユニットにおける構造材連結用金物。」

(2)新規事項の追加の検討
上記補正は、補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「梁」について、「屋根に勾配をつけるために傾斜して配置される」との限定を付加し、「垂直ベース板に直角に突設され横桁を支持固定する水平支持板と起立板とからなる水平アングル」について、「各々の垂直ベース板に」との限定を付加し、「係止板」について、「補強金棒の一端が各々連結されると共に、互いに直交して配される天井用係止板及び側壁用係止板」との限定を付加したものである。

しかしながら、上記限定を付加した点における「梁」が「屋根に勾配をつけるために傾斜して配置される」ことについては、本願の願書に最初に添付した明細書、図面のいずれにも明示的な記載はない。
そして、本願の願書に最初に添付した明細書の記載を見ると、柱と梁の接続について、「課題を解決するための手段」について記載された段落番号【0006】には、「梁の一端部は、これを柱の上端に直角に載せて固定する。」及び「柱、梁及び横桁は相互に三次元方向において直交して配置する。」と記載されており、また、図1乃至図3に示す実施例について記載された段落【0017】には、「梁2の一端部は柱1に対し水平な直交方向に延び、梁2の一端部の下面は柱1の上端面に載置されている。」と記載されている。これらの記載によれば、梁は柱の上部に直交して接続される、すなわち、梁は「屋根に勾配をつけるために傾斜して配置される」ものではないと解さざるを得ない。
さらに、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載全体を参照しても、「梁」が「屋根に勾配をつけるために傾斜して配置される」ことが自明な事項であるともいえない。
したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

(3)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

〔理由2〕
(1)独立特許要件についての検討
仮に、本件補正が上記新規事項を含まないものとして、平成18年改正前特許法第17条の2第3項の規定を満たし、かつ、同法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか)否かについても、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭57-51491号(実開昭58-151204号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、「建築用接続金具」について、第1?4図とともに以下の記載がある。
(イ)「2.実用新案登録請求の範囲
梁の側面に当接すべき基板部に、前記梁への掛止縁と前記梁にT字形に交る梁又は柱用抱持縁を連成し、基板部並びに抱持縁には締結ボルト通し用孔を設けたことを特徴とする建築用接続金具。」(明細書第1ページ第4?8行)

(ロ)「3.考案の詳細な説明
この考案は木質建物の軸組における梁とこの梁にT字形に交る他の梁や柱を接続する金具の改良に関するものである。」(明細書第1ページ第9?12行)

(ハ)「この考案は上記従来の接続金物の欠点を解決したもので、その目的とするところは主なる梁、並びにこれに軸組すべき梁や柱の結合面に何らの加工を必要とせずして強固な接続となし得る接続金具とするにある。」(明細書第2ページ第1?5行)

(ニ)「以下この考案の構成を添付図面に基いて説明すれば、第1図第2図においてA-1は本考案の接続金具であり、1aは梁2aの側面に当接すべき基板部であり、この基板部には梁2aへの掛止縁3aと、梁2aの下方にある柱4a用の抱持縁5をそなえ、これらの基板部1a並びに抱持縁5には締結ボルト通し用孔6が形成してある。7は前記孔6以外に設けた、釘打込用孔を示す。」(明細書第2ページ第6?13行)

(ホ)「第3図第4図は本考案の他例を示し、この接続金具A-2は、主なる梁2bの側面に当接すべき基板部1bに梁2bへの掛止縁3bと、梁2b上に起立する柱4b用の抱持縁9、梁2b下方の柱4c固定用板部10、更に梁2bに丁字形に交る梁2cを受け支え且つ抱き込む抱持縁11をそなえている。尚梁2c用抱持縁11は基板部1bの面に溶接により取付けてある。12はその溶接筋を示す。」(明細書第2ページ第16行?第3ページ第3行)

(ヘ)「この考案は上記したような構造であり、この接続金具は梁の側面に当接すべき基板部に、前記梁への掛止縁と前記梁に丁字形に交る梁又は柱用の抱持縁を連成し、且つ基板部並びに抱持縁には締結ボルト通し用孔を設けたので、主なる梁への固定が強固となり従ってこの梁に丁字形に交る梁や柱の支持に、前記交る部分に従来の如き噛み込み等の加工を必要とせずして強固な接続となり、更に主なる梁に丁字形に交る梁の受け支え強度もきわめて大であるという効果がある。」(明細書第3ページ第4?13行)

(ト)「4.図面の簡単な説明
第1図第3図は本考案に係る接続金具の各例の縦断側面図、第2図第4図は同上のそれぞれ斜視図である。」(明細書第3ページ第14?17行)

(チ)第3図の「本考案に係る接続金具」の「縦断側面図」、及び第4図の「本考案に係る接続金具」の「斜視図」を参照すると、基板部1bに、柱4c固定用板部10が同一平面で一体に連設している態様が示されている。また、第3図には、基板部1bの面に対して梁2c用抱持縁11が直角に突設されている態様が示されている。この梁2c用抱持縁11について、第4図には、基板部1bを正面方向から見たときに梁2c用抱持縁11が凵の字形状である態様が示されている。

これら記載事項及び図面を参照すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

(引用発明)
「主なる梁2bの側面に当接すべき基板部1bに、梁2b下方の柱4c固定用板部10と、梁2bにT字形に交る梁2cを受け支え且つ抱き込む抱持縁11をそなえ、基板部1b並びに抱持縁11には締結ボルト通し用孔6を設けた建築用接続金具。」

また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-280540号公報(以下、「引用例2」という。)には、「木造建築軸組用、差し込み式継ぎ手金具」について、図1?図6とともに以下の記載がある。
(リ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】木材同士の接合に、差し込み式継ぎ手金具を使用して建てる、木造建築。」

(ヌ)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、木材同士の接合に、差し込み式継ぎ手金具を使用して建てる、木造建築に関するものである。」

(ル)「【0005】
【発明の実施形態】……。差し込み式継ぎ手金具は、溶接構造で、一体成型されたものであるから、剛性も強度も強い。又この金具に、筋交い取り付け板を付けておけば、金属製筋交いを付けることも可能である。……
【0006】
【実施例】……。角部で使用する場合、差し込み式継ぎ手金具の寸法を長めにし、コーナーに補強板を付ければ、火打梁の役目もし、火打梁が不要になる。又この補強板を利用し、金属製筋交いを、水平部分に入れると、建て物の捻れに対する強度が、従来の工法に比べ向上する。……」

(ヲ)「【符号の説明】
(1)は差し込み式継ぎ手金具 (2)は柱 (3)は梁
(4)は土台梁 (5)は金属製筋交い (6)はボルト等 (7)はアンカーボルト (8)は筋交い取り付け板 (9)は補強板」

(ワ)図1の「本発明の、側面組立図」を参照すると、図面の右中央に位置する差し込み式継ぎ手金具1(上からの落し込みタイプ)に設けられた筋交い取り付け板8に、鉛直方向に延びて側壁構造を補強する金属製筋交い5の一端が連結されている態様が示されている。
また、図1には、図面の左上方の屋根部分に位置する差し込み式継ぎ手金具が、柱2と梁とを接合しているとともに斜めに延びる木材をも接合している態様が示されている。

(カ)図2の「本発明の、水平面組立図」を参照すると、差し込み式継ぎ手金具1に設けられた筋交い取り付け板8や補強板9に、水平方向に延びる金属製筋交い5の一端が連結されている態様が示されている。

また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-296514号公報(以下、「引用例3」という。)には、「木造建築物の補強法」について、図1?図13とともに以下の記載がある。

(ヨ)「【0010】補強材7の種類については、ターンバックル、ワイヤーロープ、チェーン、カーボンワイヤーなどが調整可能なの作業性も良く、望ましい。」

(タ)「【0014】屋根裏の補強方法として、水平方向に部材5又は部材6を補強材7を繋ぎ止めているが同様に垂直方向同士、又水平方向と垂直方向同士も補強出来る。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「柱4b」、「T字形に交る」、「梁2c」及び「建築用接続金具」は、本願補正発明の「柱」、「直角に突設」、「横桁」及び「構造材連結用金物」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「主なる梁2bの側面に当接すべき基板部1b」には、「締結ボルト通し用孔6」が設けられているから、この「基板部1b」と、これに同一平面で一体に連設された「柱4c固定用板部10」(上記「(2)」の(チ)参照)とは、両者で本願補正発明の「垂直ベース板」に相当する。

そして、引用発明の「梁2b」と、本願補正発明の「梁」とは、「柱の上部に接続」されるものである点において共通し、引用発明の「梁2cを受け支え且つ抱き込む抱持縁11」と、本願補正発明の「水平アングル」とは、「横桁を支持固定する」点、及び「水平支持板と起立板とからなる」点において共通している。
また、第4図を見れば、梁と横桁が平面視で互いに直交していることは明らかである。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「平面視で互いに直交する梁及び横桁を柱の上部に接続する連結用金物であって、柱及び梁の側面に締結固定する垂直ベース板と、該垂直ベース板に直角に突設され横桁を支持固定する水平支持板と起立板とからなる水平部材とを備えた構造材連結用金物。」
で一致し、以下の点で相違する。

〔相違点1〕
本願補正発明では、構造材連結用金物が、屋根ユニットに使用されるものであって、屋根に勾配をつけるために傾斜して配置される梁及び横桁を柱の上部に接続するものであるのに対して、引用発明では、構造材連結用金物が、屋根ユニットに使用されるものではなく、屋根に勾配をつけるために傾斜して配置される梁及び横桁を柱の上部に接続するものでもない点。

〔相違点2〕
連結用金物が、本願補正発明では、柱及び梁の両側面を挟持して締結固定する一対のものであるのに対して、引用発明では、連結用金物が柱及び梁の側面に締結固定されるものではあるものの、連結用金物が柱及び梁の片面にしか設けられておらず、一対の連結用金物で柱及び梁の両側面を挟持するものではない点。

〔相違点3〕
横桁を支持固定する部材が、本願補正発明では、水平支持板と起立板とからなる水平アングルであるのに対して、引用発明では、水平支持板と起立板とからなる抱持縁であり、この抱持縁は、正面視で凵の字形状であって、アングル形状ではない点。

〔相違点4〕
本願補正発明では、垂直ベース板に、水平方向に延びて天井構造を補強する天井用補強金棒と、鉛直方向に延びて側壁構造を補強する長さ調整可能な補強金棒の一端が各々連結されると共に、互いに直交して配される天井用係止板及び側壁用係止板が設けられているに対して、引用発明では、垂直ベース板には、補強金棒の一端が連結される天井用係止板や側壁用係止板が設けられていない点。

前記相違点についてそれぞれ検討する。
〔相違点1について〕
引用例1の実用新案登録請求の範囲には、「梁の側面に当接すべき基板部に、前記梁への掛止縁と前記梁にT字形に交る梁又は柱用抱持縁を連成し」という記載がある(上記「(2)」の(イ)参照)。この記載では、基板部に柱用抱持縁を連成することが選択的事項として記載されている。そうすると、引用例1には、基板部に柱用抱持縁を設けずに、「梁の側面に当接すべき基板部に、前記梁への掛止縁と前記梁にT字形に交る梁を連成」することが併せて記載されていると認められる。
同じく引用例1には、「この考案は木質建物の軸組における梁とこの梁にT字形に交る他の梁や柱を接続する金具の改良に関するものである。」(上記「(2)」の(ロ)参照)という記載があることから、引用例1の「金具」は、「木質建物の軸組における梁とこの梁にT字形に交る他の梁や柱を接続する」箇所にも適用できることが明らかである。
また、引用例2(上記「(2)」の(ワ)参照)の図1には、図面の左上方の屋根部分に位置する差し込み式継ぎ手金具が、柱2と梁とを接合しているとともに斜めに延びる木材、すなわち、木造建築物の最も上部に位置し、屋根を構成する木材をも接合している態様が示されているように、木造建築物等に使用される柱と梁とを接合する金具を屋根に勾配をつけるための金具として使用することは従来より普通に採用されていたことといえる。
そうすると、引用発明の構造材連結用金物を、屋根の構造材を連結する用途に転用し、「屋根ユニットにおける構造材連結用金物」とするとともに「平面視で互いに直交し、屋根に勾配をつけるために傾斜して配置される梁及び横桁を柱の上部に接続する」ものとすることは、当業者が適宜なしうるものである。その際、引用発明の構造材連結用金物において、屋根に勾配をつけるために傾斜して配置される梁を連結するのに支障がないように(例えば、梁の傾斜に合わせて掛止縁(第4図における3a。明細書では3b)を傾斜させたり、あるいは掛止縁を省略したりする等の設計変更を)することも、当業者が適宜なしうるものである。
したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、当業者が容易に想到しうるものである。

〔相違点2について〕
木造建築物等に使用される一対の連結用金物が柱及び梁の両側面を挟持する態様で締結固定するという技術は、例えば、実公昭54-29128号公報(第2図(a)参照)、登録実用新案第3058639号公報(図3参照)、及び実願昭60-175752号(実開昭62-82601号)のマイクロフィルム(第1,2図参照)に記載されているように従来より周知の技術である。
そうすると、引用発明において、連結用金物を柱及び梁の両側面を挟持して締結固定する一対のものとすることは、当業者が容易に想到しうるものである。

〔相違点3について〕
ところで、引用例1の第4図には、接続金具の柱4b用の抱持縁9をアングル(L字形)形状とした態様が示されている。また、本願の明細書の段落【0003】に記載された従来技術である「特開2001-241136号公報」にも柱への取付部分をL字形とした構成が示されている。そうすると、引用発明の抱持縁11の形状をアングル形状とすることは、当業者が適宜採用しうる設計的事項であるといえる。

〔相違点4について〕
構造材連結用金物に、水平方向又は鉛直方向に延びて側壁構造を補強する補強棒の一端を連結することや当該補強棒にターンバックル等の長さ調節手段を設けることは、引用例2、引用例3、及び実願昭51-14637号(実開昭52-107007号)のマイクロフィルム(以下、「周知例」という。特に、明細書第6ページ第6?12行参照)に記載されているように従来より周知の技術である。
(ちなみに、引用例2の図2を参照すると、梁3又は土台梁4に取り付けられた差し込み式継ぎ手金具1間に水平方向に金属製筋交い5が架設されている。前記梁3が、天井を構成する梁であってもよいことは自明である。また、引用例3には、水平方向の補強材7が屋根裏の補強をするものであることが記載されている。)
さらに、このような補強棒を構造材連結用金物に設けた板部材に連結することは、引用例2及び前記周知例に記載されているように、また、このような板部材を水平方向の補強棒を連結するものと垂直方向の補強棒を連結するものの2種類設けることは、前記周知例に記載されているように、従来より周知の技術である。
そうすると、相違点4に係る本願補正発明の構成は、引用発明に上記の周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到しうるものといわざるを得ない。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであって、格別なものということができない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)独立特許要件についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、仮に上記新規事項を含まないものとして、平成18年改正前特許法第17条の2第3項の規定を満たし、かつ、同法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下するべきものである。

3.本願発明について
平成17年11月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成17年6月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1を引用する形式で記載されているところの当初明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、これを独立形式で表すと次のとおりのものである。

(本願発明)
「平面視で互いに直交する梁及び横桁を柱の上部に接続する連結用金物であって、柱及び梁の両側面を挟持して締結固定する一対の垂直ベース板と、該垂直ベース板に直角に突設され横桁を支持固定する水平支持板と起立板とからなる水平アングルとを備え、前記垂直ベース板に、長さ調整可能な補強金棒の一端が連結される係止板が設けられており、補強金棒には、水平方向に延びて天井構造を補強する天井用補強金棒と、鉛直方向に延びて側壁構造を補強する側壁用補強金棒が含まれることを特徴とする屋根ユニットにおける構造材連結用金物。」

(1)引用例
引用例の記載事項は、前記「2.〔理由2〕(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「梁」について、「屋根に勾配をつけるために傾斜して配置される」との限定を省略し、「各々の垂直ベース板に直角に突設され横桁を支持固定する水平支持板と起立板とからなる水平アングル」について、「各々の」との限定を省略し、「補強金棒の一端が各々連結されると共に、互いに直交して配される天井用係止板及び側壁用係止板」について、「各々」、「互いに直交して配される」、「天井用」及び「側壁用」との限定を省略したものである。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含むものに相当する本願補正発明が、前記「2.〔理由2〕(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-30 
結審通知日 2007-06-05 
審決日 2007-06-20 
出願番号 特願2003-122935(P2003-122935)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (E04B)
P 1 8・ 121- Z (E04B)
P 1 8・ 575- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩田 裕介  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 西田 秀彦
砂川 充
発明の名称 屋根ユニットにおける構造材連結用金物  
代理人 衞藤 彰  

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