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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05H
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H05H
管理番号 1162075
審判番号 不服2006-11453  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-06 
確定日 2007-08-08 
事件の表示 平成 9年特許願第250113号「プラズマ発生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月30日出願公開、特開平11- 87096〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成9年9月1日の出願であって、平成18年4月28日付けで拒絶査定がなされ、平成18年6月6日に拒絶査定不服審判の審判請求がなされるとともに、平成18年7月6日付けで手続補正がなされたものである。

2 平成18年7月6日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年7月6日付け手続補正を却下する。
[理由]新規事項追加
(1)補正後の本願発明
平成18年7月6日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
プラズマ処理空間が形成された第1機構と、前記第1機構に取着して又はそれと一体的に設けられプラズマ発生空間が形成された第2機構とを具え、前記プラズマ発生空間が前記プラズマ処理空間に隣接し且つ連通しているプラズマ発生装置において、前記第2機構は、外周形状に四辺を有するものであり、前記プラズマ発生空間は、磁性部材を介挿しうる複数に分かれたものであり、且つそれぞれが前記四辺の何れかに対して平行に延びたものとなっていることを特徴とするプラズマ発生装置。」から
「【請求項1】
プラズマ処理空間が形成された第1機構と、前記第1機構に取着して又はそれと一体的に設けられプラズマ発生空間が複数形成された第2機構とを具え、前記プラズマ発生空間が前記プラズマ処理空間に隣接し且つ連通しているプラズマ発生装置において、前記第2機構は、外周形状に四辺を有するものであり、前記プラズマ発生空間に棒状の磁性部材を複数備えるとともに、前記プラズマ発生空間が直線状に形成されており、前記磁性部材と前記プラズマ発生空間とが、交互に配設され、前記四辺の何れかの辺に対して平行状態で並走して延びたものとなっている ことを特徴とするプラズマ発生装置。」
と補正された。

(2)新規事項追加
本件補正による「前記プラズマ発生空間に棒状の磁性部材を複数備える」との補正が新規事項を追加するものか否かを検討する。

本願の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下「当初明細書」という。)には、上記補正に関連して、以下の事項が記載されている。
記載1
「【請求項1】
プラズマ処理空間が形成された第1機構と、前記第1機構に取着して又はそれと一体的に設けられプラズマ発生空間が形成された第2機構とを具え、前記プラズマ発生空間が前記プラズマ処理空間に隣接し且つ連通しているプラズマ発生装置において、前記第2機構は、四辺を有するものであり、前記プラズマ発生空間は、磁性部材を介挿しうる複数に分かれたものであり、且つそれぞれが前記四辺の何れかに対して平行に延びたものとなっていることを特徴とするプラズマ発生装置。」

記載2
「【0010】
[第1の解決手段]
第1の解決手段のプラズマ発生装置は(、出願当初の請求項1に記載の如く)、プラズマ処理空間が形成された第1機構と、前記第1機構に取着して又はそれと一体的に設けられプラズマ発生空間が形成された第2機構とを具え、前記プラズマ発生空間が前記プラズマ処理空間に隣接し且つ連通しているプラズマ発生装置において、前記第2機構は、(平面射影の外周形状に)四辺を有する(正方形・長方形・菱形・平行四辺形やその角部・隅部の丸められたり切り欠かれたりしたようなものをベースにした立体構造の)ものであり、前記プラズマ発生空間は、(分ける際にそれらの間に)磁性部材を介(在させるためにその磁性部材の)挿(入を)しうる(ように適度な間隙をあけて)複数に分かれたものであり、且つ(分かれた)それぞれが前記四辺の(うち同一又は別個の)何れかに対して平行に延びたものとなっていることを特徴とする。」

記載3
「【0013】
しかも、プラズマ発生空間に付される磁性部材を複数のプラズマ発生空間の間へ介挿しうるように適度な間隙をあけてプラズマ発生空間が分割・分散されることから、磁力の強化が可能になるとともに、プラズマ処理空間との連通隣接面さらにはその面に沿ったプラズマ発生空間自身の断面積も、少なくとも磁性部材に明け渡した間隙の分だけは必然的に、プラズマ処理空間のそれより小さくなる。このように双方空間の面積に差があると、連通隣接面の面積とこれに沿ったプラズマ処理空間の断面積との比を第1比とし連通隣接面の面積とこれに沿ったプラズマ発生空間の断面積との比を第2比として、第1比が1未満で且つ第2比よりも小さいことになる。
【0014】
そして、第1比が1未満の場合、プラズマ処理空間からプラズマ発生空間へ流入するガス量が減少する。一方、第2比が1の場合、プラズマ発生空間からプラズマ処理空間へ流出するガス量は減少しない。また、第2比が1未満で流出ガス量が減少する場合であっても、第2比が第1比より大きければ、減少の程度が小さくて済む。何れにしても、相対的には、プラズマ処理空間からプラズマ発生空間へ流入するガスの割合よりもプラズマ発生空間からプラズマ処理空間へ流出するガスの割合の方が高くなる。これにより、不所望なガスのプラズマ発生空間への流入が抑制されるばかりか、ガスがプラズマ発生空間へ入ってしまったときでもそのガスはプラズマ流とともに速やかにプラズマ処理空間へ出されてしまうので、高密度プラズマによるガス変質を防止・抑制することができる。
【0015】
また、複数に分かれたプラズマ発生空間が、第2機構の何れかの辺に対して平行に延びていることから、第2機構さらには第1機構やプラズマ処理空間までもが四辺を有して円く無いものであっても、プラズマ発生空間の分布状態を隅々まで整合させることが比較的楽に行えるので、全範囲に亘ってプラズマ発生空間を一様にさせることが可能となる。
【0016】
これにより、四辺形状等のプラズマ処理空間に対しその辺縁部・周辺部までも一様にプラズマ発生空間からプラズマが送り込まれることとなる。
したがって、この発明によれば、円く無いプラズマ処理空間に対しても良質のプラズマを一様に送り込むことの可能なプラズマ発生装置を実現することができる。
【0017】
なお、複数に分かれたプラズマ発生空間に磁性部材が介挿されることから、プラズマ発生空間とプラズマ処理空間とに磁性部材を介挿する必要が無くなるので、配置設計や、実装作業、さらには後の部品交換等の保守作業も、楽になるという更なる作用効果も有る。」

記載4
「【0033】
さらに、プラズマ発生チャンバ21は、プラズマ発生空間22を囲む側壁と底部とを残すようにしてプラズマ発生空間22開口側の裏の面(縦断面図では上面)が削り取られる。そして、そこに、一方の永久磁石25(縦断面図中下方)とコイル24と他方の永久磁石25(縦断面図中上方)とが順に重ねて詰め込まれる。各永久磁石25は、棒状であって、プラズマ発生空間22とほぼ同じ長さに切断されている(図1(a)参照)。なお、総てのプラズマ発生空間22をコイル24及び永久磁石25で挟むために、両端に位置するプラズマ発生空間22の外側壁にも一対の永久磁石25及びコイル24が付加される。これにより、複数に分かれたプラズマ発生空間22は磁性部材を介挿しうるものとなっている。しかも、複数(図中8対)の永久磁石25と複数(図中7個)のプラズマ発生空間22とが総て交互に配設され左右の短辺と平行状態で並走していて、長方形のプラズマ発生チャンバ21の最外周よりも小さいが被処理物1よりは一回り大きな長方形の範囲に一定間隔で分散配置されたものとなっている。」

そこで、上記記載1?4について検討する。
記載1には、「前記プラズマ発生空間は、磁性部材を介挿しうる複数に分かれたもの」が開示されている。

記載2には、「前記プラズマ発生空間は、(分ける際にそれらの間に)磁性部材を介(在させるためにその磁性部材の)挿(入を)しうる(ように適度な間隙をあけて)複数に分かれたもの」が開示されている。

記載3には、「プラズマ発生空間に付される磁性部材を複数のプラズマ発生空間の間へ介挿しうるように適度な間隙をあけてプラズマ発生空間が分割・分散されること」、
「プラズマ発生空間自身の断面積も、少なくとも磁性部材に明け渡した間隙の分だけは必然的に、プラズマ処理空間のそれより小さくなる。」、「複数に分かれたプラズマ発生空間に磁性部材が介挿されること」が開示されている。

記載4には、「プラズマ発生チャンバ21は、プラズマ発生空間22を囲む側壁と底部とを残すようにしてプラズマ発生空間22開口側の裏の面(縦断面図では上面)が削り取られる。そして、そこに、一方の永久磁石25(縦断面図中下方)とコイル24と他方の永久磁石25(縦断面図中上方)とが順に重ねて詰め込まれる。」、
「総てのプラズマ発生空間22をコイル24及び永久磁石25で挟むために、両端に位置するプラズマ発生空間22の外側壁にも一対の永久磁石25及びコイル24が付加される。これにより、複数に分かれたプラズマ発生空間22は磁性部材を介挿しうるものとなっている。しかも、複数(図中8対)の永久磁石25と複数(図中7個)のプラズマ発生空間22とが総て交互に配設され左右の短辺と平行状態で並走していて」が
それぞれ開示されている。

記載1ないし4によれば、当初明細書には、各プラズマ発生空間22の間に磁性部材が介挿される旨が記載されており、また、プラズマ発生空間22と磁性部材とのそのような位置関係が、図1(a),(b)、図3ないし5等にも図示されている。

そして、本件補正の「プラズマ発生空間に棒状の磁性部材を複数備える」における「備える」とは、プラズマ発生空間の中に磁性部材が存在することを意味することは明らかである。
してみると、本件補正の「プラズマ発生空間に棒状の磁性部材を複数備える」と当初明細書に記載された、各プラズマ発生空間22の間に磁性部材が介挿されることとは、プラズマ発生空間と磁性部材との位置関係が異なることは明らかである。

したがって、本件補正の「プラズマ発生空間に棒状の磁性部材を複数備える」は、当初明細書に記載されておらず、また、上記当初明細書の記載から自明なこととも認められないので、本件補正は、当初明細書の記載された事項の範囲内でしたものではない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成18年4月7日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。(「2(1)」項参照、以下「本願発明」という。)

4 引用刊行物に記載された発明
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-106778号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、「粒子線照射装置」の発明に関して、以下の事項が記載されている。
<記載事項1>
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イオン注入やイオン照射などの薄膜形成に用いるイオン源装置あるいはプラズマ源装置において、特に大面積の基板の加工に適した粒子線照射装置に関する。」

<記載事項2>
「【0005】そして、フィラメント3はカソードとしての熱電子放出源であり、フィラメント電源4の抵抗加熱により高温に保持されて熱電子を放出し、その放出された熱電子がアーク電源12によって形成される直流電界により加速され、ガス導入口5から導入されたガス粒子を衝突により電離してプラズマ15を生成する。」

<記載事項3>
「【0010】特に近年求められているような1m四方以上の基板の照射となると、電極の加工難度とコストが飛躍的に上昇する。また、たとえ従来例のようにプラズマ閉じ込めにカスプ磁場を用いても、1m四方以上のイオン源やプラズマ源となると、均一にプラズマを生成することが困難であり、フィラメントの位置などに十分配慮する必要がある。
(略)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記公報に記載のように、装置を複数台併設した場合、装置の外形状が円形であるため、隣接する装置間に大きな隙間を生じ、デッドスペースとなり、有効にイオンビームを照射できないという問題点がある。
【0016】本発明は、前記の点に留意し、種々の大面積の形状に対応し、照射面積の有効化を図るようにした粒子線照射装置を提供することを目的とする。」

<記載事項4>
「【0017】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明の粒子線照射装置は、プラズマを発生しイオンビームを生成するプラズマ室と、前記プラズマ室に磁場を発生させる磁場発生手段と、前記プラズマ室で生成されたイオンを電界で引き出しイオンビームを生成する引き出し電極を備えたイオン源を、隣接して複数個配列したイオン源装置、
【0018】あるいは前記引き出し電極のかわりに前記プラズマを試料台方向に拡散放出させるプラズマ放出口を備えたプラズマ源を、隣接して複数個配列したプラズマ源装置において、
【0019】前記プラズマ室外形状、あるいはイオン引き出し電極形状またはプラズマ源形状を多角形状としたものである。従って、各イオン源あるいは各プラズマ源を隙間なく近接させることができ、デッドスペースを生じなく、大面積形状に対応でき、照射面積の有効化を図ることができる。さらに、個々のイオン源あるいはプラズマ源の構造を共通化することもでき、量産化効果により低価格化を図ることができる。しかも、共通化により予備として準備しておくことができ、故障時にも瞬時の交換が可能となる。」

<記載事項5>
「【0028】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図1ないし図10を参照して説明する。それらの図において、同一符号は同一もしくは相当するものを示す。
【0029】(形態1)形態1を図1ないし図3について説明する。図1は複数個のバケット型イオン源を密接して配列した場合の断面図、図2Aは図1のSーS’線断面図、図2Bは図1のT矢視図、図3A及びBはそれぞれ各イオン源及び各プラズマ源からのビームプロファイルの形状を示している。
【0030】断面正方形の筐体16に導入された熱フィラメント17を通電加熱して熱電子を放出させ、熱フィラメント17を負電位に、筐体16を正電位にして直流電界を印加することにより、プラズマ室18にプラズマ19を生成するこのプラズマ19中で生成されたイオンは、加速電極20,減速電極21,接地電極22からなるイオンビーム引き出し電極23によって形成される電界によって引き出され、イオンビームが形成され、筐体16および引き出し電極23により区切られる構成体が1個のイオン源を形成し、このイオン源が複数個碁盤の目のように配列されている。」

<記載事項6>
「【0039】一方、プラズマ源は、基本的にイオン源と引き出し電極が異なるだけであり、開口端あるいは1枚電極としているものが大半であり、イオン源と同様の本発明が適用できる。」

<記載事項7>
「【0045】その上、イオン源あるいはプラズマ源の断面形状は、配列したときに実質的な照射面積が小さくならないように、即ち無駄な面積が極力少なくなるように、図2に示すような正方形状ないしは長方形状あるいは六角形状,三角形状など多角形状が望ましい。」

そして、
(1)「前記プラズマを試料台方向に拡散放出させるプラズマ放出口を備えたプラズマ源を、隣接して複数個配列したプラズマ源装置」(段落【0018】)との記載から、プラズマ源装置には、試料台を備えたプラズマ処理装置が接続されており、プラズマ装置を構成していることは明らかである。

(2)「1m四方以上のイオン源やプラズマ源となると、均一にプラズマを生成することが困難であり、フィラメントの位置などに十分配慮する必要がある。」、「【発明が解決しようとする課題】ところで、前記公報に記載のように、装置を複数台併設した場合、装置の外形状が円形であるため、隣接する装置間に大きな隙間を生じ、デッドスペースとなり、有効にイオンビームを照射できないという問題点がある。」、「本発明は、前記の点に留意し、種々の大面積の形状に対応し、照射面積の有効化を図るようにした粒子線照射装置を提供することを目的とする。」(いずれも記載事項3)との記載から、プラズマ源装置の外形は基板の形状に対応した四辺形であることは明らかである。

(3)「イオン源が複数個碁盤の目のように配列され」(記載事項5)との記載及び記載事項4の記載からみて、プラズマ源についても複数個碁盤の目のように配列されているといえる。

したがって、上記記載事項1ないし7及び図面の記載に基づけば、引用刊行物1には、
「試料台を備えたプラズマ処理装置と、前記プラズマ処理装置に接続されプラズマ室を有するプラズマ源装置とを具えたプラズマ装置において、前記プラズマ源装置の外形は四辺形であり、プラズマ源が複数個碁盤の目のように配列され、各プラズマ源の間には永久磁石24が設けられたプラズマ装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

5 対比
本願発明と引用発明とを比較する。
(1)引用発明の「試料台を備えたプラズマ処理装置」は、プラズマ源装置が接続されており、プラズマ処理空間が形成されていることは明らかであるので、本願発明の「プラズマ処理空間が形成された第1機構」に相当する。
(2)引用発明のプラズマ源装置の「プラズマ室」には、本願発明と同じくプラズマ発生空間が形成されるので、引用発明の「前記プラズマ処理装置に接続されプラズマ室を有するプラズマ源装置」は、本願発明の「プラズマ発生空間が形成された第2機構」に相当し、また、本願発明のように「プラズマ処理空間に隣接し且つ連通している」ことは明らかである。
(3)引用発明のプラズマ処理装置に「接続され」は、本願発明の、前記第1機構に「取着して又はそれと一体的に設けられ」に相当する。
(4)引用発明の「前記プラズマ源装置の外形は四辺形であり」は、本願発明の「前記第2機構は、外周形状に四辺を有するものであり」に相当する。
(5)引用発明の「各プラズマ源の間には永久磁石24が設けられ」との構成からみて、各プラズマ源には、本願発明の磁性部材(永久磁石24)を介挿しうる複数に分かれた「プラズマ発生空間」の内の1つが形成されていることは明らかである。
(6)引用発明の対象である「プラズマ装置」は、プラズマ源装置を具えているので、本願発明の対象である「プラズマ発生装置」に相当する。

したがって、両者は、
「プラズマ処理空間が形成された第1機構と、前記第1機構に取着して又はそれと一体的に設けられプラズマ発生空間が形成された第2機構とを具え、前記プラズマ発生空間が前記プラズマ処理空間に隣接し且つ連通しているプラズマ発生装置において、前記第2機構は、外周形状に四辺を有するものであり、前記プラズマ発生空間は、磁性部材を介挿しうる複数に分かれたものであることを特徴とするプラズマ発生装置。」の点で一致するが、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明は、前記プラズマ発生空間は、それぞれが前記四辺の何れかに対して平行に延びたものとなっているのに対して、引用発明は、そのような限定がなされていない点。

6 当審の判断
相違点1に係る本願発明の発明特定事項である、前記プラズマ発生空間は、それぞれが前記四辺の何れかに対して平行に延びたものとなっているについて、言葉を補ってみると、第2機構に形成されたプラズマ発生空間は、それぞれが第2機構の有する外周形状の四辺の何れかに対して平行に延びたものとなっているとなる。

一方、引用発明においては、プラズマ源装置の外形は四辺形であり、また、引用刊行物1には、プラズマ源の断面形状は、正方形状、長方形状が望ましいこと(記載事項7)、及び列方向に細分化して配列した断面が正方形状のプラズマ源の列が記載されている(図2)。

してみると、引用刊行物1には、プラズマ源として正方形状の他に長方形状のものが記載されている以上、図2に記載された正方形状のプラズマ源の列に変えて、上記細分化をせずに連通した複数の正方形状のプラズマ源の列を用いること、すなわち、プラズマ源のプラズマ発生空間についてみれば、本願発明でいう「前記プラズマ発生空間は、それぞれが前記四辺の何れかに対して平行に延びたものとなっている」とすることは、引用刊行物1の記載に基づいて当業者が容易に想到し得る事項であるといえる。

したがって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用刊行物1に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものである。

そして、本願発明の効果は、引用刊行物1の記載から当業者が予測し得る範囲内のものである。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-06 
結審通知日 2007-06-11 
審決日 2007-06-25 
出願番号 特願平9-250113
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H05H)
P 1 8・ 121- Z (H05H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 尚英岡▲崎▼ 輝雄  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 森内 正明
辻 徹二
発明の名称 プラズマ発生装置  
代理人 牛木 護  

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