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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1162096
審判番号 不服2003-14738  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-31 
確定日 2007-08-09 
事件の表示 平成 9年特許願第 41739号「端末間における接続制御方法および顧客側端末ならびに接続制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月11日出願公開、特開平10-240812〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年2月26日の出願であって、平成15年6月26日付で拒絶査定がされ(同年7月1日発送)、これに対し、同年7月31日付で拒絶査定に対する審判請求がされ、同年9月1日付で手続補正がされ、平成18年9月29日付で平成15年9月1日付手続補正が却下され、平成18年10月17日付で拒絶理由が通知され(同年10月24日発送)、これに対し、同年12月24日付で手続補正がされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年12月24日付手続補書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「複数のオペレータ側端末のうちいずれかを選択して端末間で情報の転送を行うことにより種々の申し込み取引を行うべく顧客側端末と回線接続する端末間における接続制御方法において、
予め、前記顧客側端末に、該顧客側端末と前記複数のオペレータ側端末との日付における対応付けを設定した接続先情報を登録しておく工程と、
前記オペレータ側端末から前記顧客側端末へのアクセスによって前記接続先情報を平日設定から休日設定に変更して書き込むことにより、平日であっても休日用のオペレータ端末に接続できるよう切り替える工程と、
前記顧客側端末で前記接続先情報を読み込み、前記日付における対応付けから該顧客側端末と接続できるオペレータ側端末を決定する工程と、
前記複数のオペレータ側端末のうち前記決定したオペレータ側端末と前記顧客側端末とを回線を介して接続する工程と
を備えていることを特徴とする端末間における接続制御方法。」

ここで、前記請求項1の記載における「オペレータ端末」は、明らかな誤記であるので、「オペレータ側端末」と読み替えるものとする。

3.当審の拒絶の理由について
当審において、平成18年10月17日付で通知した拒絶の理由(以下「先の拒絶理由」という。)の概要は以下のとおりである。
「【理由】
本件出願の請求項1乃至6に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物([刊行物一覧]参照)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[刊行物一覧]
引用例1:特開平7-99550号公報
引用例2:「利用が始まるデスクトップ会議 プロミスが新規加入業務に導入,
日経コンピュータ,第370号,日経BP社,
1995年7月24日,第99?101頁」
(以下略)


4.審判請求人の主張の概要
審判請求人は、平成18年12月24日付意見書において、特に、以下の点を主張している。
「しかしながら、本願発明では、オペレータ側端末から顧客側端末へのアクセスによって接続先情報を平日設定から休日設定に変更して書き込むことにより、平日であっても休日用のオペレータ端末に接続できるよう切り替える構成を備えており、このような構成について何ら記載されていない引用例1、2に開示の発明とは相違するものである。
つまり、引用例1には、在宅アダプタ(本願発明の顧客側端末と対応)に、日付と対応付けされたセンタ(本願発明のオペレータ側端末と対応)の通報先電話番号を設定した通報先テーブル(本願発明の接続先情報と対応)を登録しておき、日付に応じて通報先テーブルから選択した接続先となるセンタと回線接続する構成は記載されているものの、センタから在宅アダプタへのアクセスによって通報先テーブルの書き替えを行う構成や、平日であっても接続先を休日用の接続先に切り替える構成については全く記載されていない。
この点は、引用例2についても同じであり、オペレータ側端末から顧客側端末へのアクセスによる接続先情報の書き替えについて、全く示唆するところはない。
このような構成の相違によって、本願発明では、オペレータ側端末の保守等、何らかの都合によって接続先を変更したい場合にも容易に対応することができるといった引用例1、2にはない有利な効果を奏することができる。
したがって、本願発明では、顧客側端末が単に日付に応じた接続先から成るオペレータ側端末との接続を行うだけではなく、オペレータ側端末からの操作によって接続先の選択範囲を容易に切り替えることができ、オペレータ側端末の保守等に都合による接続先に変更について柔軟かつ迅速に対応することが可能となる。
引用例1、2に記載の発明の構成からは、本願特有の作用効果を得ることはできず、当業者であっても本願発明の構成に容易に想到できるものではないと思料する。
(4)以上説明したように、各引用文献に記載される発明の構成は、本願発明の構成とは相違するとともに、各引用文献に記載される発明の構成を組み合わせたとしても本願発明が奏するところの作用効果を得ることはできないことから、本願発明は特許法第29条第2項の規定に該当しないものと思料する。よって、審判官殿の再応の審理によって特許すべき旨の審決となることを希求する次第である。」

5.引用例
[引用例1]
先の拒絶理由で引用した、特開平7-99550号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(a)
「【請求項1】通報先としての複数のセンタと、これらの複数のセンタと通信回線で接続される通報装置とからなる通報システムにおいて、
運営体制にあるセンタを時間帯または曜日または日付で分けて登録した通報先テーブルと、
時刻または曜日または日付を出力するカレンダー時計と、
通報の要求に応じ、前記カレンダー時計から得た時刻または曜日または日付を基に、その時点で運営体制にある通報先を前記通報先選択テーブルから選択する選択手段と、
この選択されたセンタに対して発信を行う発信手段と、
を具備することを特徴とする通報装置。」(【請求項1】)

(b)
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】このようなシステムでは、一般に、センタは複数設けられ、利用者の便宜が図られている場合が多い。しかしながら、従来は、あるセンタに発信した場合においてそのセンタが運営時間外であった場合は、さらに他のセンタに通報を行わなければならなかった。従って、いずれかのセンタに通報が到達するまでに多数回の通報を繰り返さなければならない場合も生じ、特に一刻を争う緊急通報の場合には手遅れとなるおそれもあった。
【0005】この発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、受信体制にないセンタに対する無駄な通報を防止し、かつ適切なセンタに対して迅速かつ容易に通報を行うことができる通報装置を得ることを目的とする。」(段落【0004】-【0005】)

(c)
「【0015】図1は本発明の一実施例における通報装置を適用した在宅医療管理システムを表わしたものである。この図に示すように、在宅側に設置された在宅アダプタ12は、電話回線13によって複数のセンタ10-1(通報先1)、10-2(通報先2)、10-3(通報先3)、10-4(通報先4)、……のいずれかと接続されて通信が可能となっている。
【0016】在宅側の在宅アダプタ12には回線制御部21が設けられ、電話回線13との回線接続や切断等の制御を行うようになっている。この回線制御部21にはモデム部22及びハンズフリー電話部16が接続され、図示しないリレースイッチによりいずれか一方が選択的に接続される。
【0017】モデム部22は、在宅アダプタ12全体の動作制御を行うための中央処理装置(以下、CPUと呼ぶ。)23に接続されている。CPU23には、利用者が携帯するワイヤレス発信機26からのワイヤレスIDを受信してCPU23に通知するためのワイヤレス受信部24、後述する各種のテーブルやその他の必要な情報(例えば、在宅アダプタ12自身の在宅アダプタID)を記憶するための不揮発メモリ25、及びカレンダー機能を有するリアルタイムクロック(RTC)31が接続されている。
【0018】また、この在宅アダプタ12には、相談ボタン28及び緊急ボタン29が設けられ、共に入出力インタフェイス部27を介してCPU23に接続されている。利用者は、健康状態等についての一般的な相談を行いたい場合には相談ボタン28を押すことによりセンタ側へ相談通報を行うことができ、また、緊急時にはワイヤレス発信機26のボタンあるいは緊急ボタン29を押すことにより、センタ側へ緊急通報を行うことができるようになっている。
【0019】不揮発メモリ25には、通報の要因(ここでは、相談通報か緊急通報かの種別)ごとに、例えば図2に示すような時刻別通報先テーブルが格納されている。同図(A)は、相談用時刻別通報先テーブルであり、2つの時刻(時刻1及び時刻2)と、2つの通報先(通報先1及び通報先2)の電話番号が登録されている。ここでは時刻は時分で表され、時刻1として“0900”、時刻2として“1700”が登録されている。また、通報先はセンタの電話番号で表され、ここでは通報先1として“633389”、通報先2として“615555”が登録されている。また、同図(B)は、緊急用時刻別通報先テーブルであり、2つの時刻(時刻3及び時刻4)と、2つの通報先(通報先3及び通報先4)の電話番号が登録されている。
【0020】これらのテーブルは、通報の要因に応じてそのいずれかが参照され、その時(通報要求時)の時刻(RTC31の示す時刻)の如何によっていずれかの通報先が選択される。例えば相談通報の場合は、同図(A)の相談用時刻別通報先テーブルが参照され、通報が時刻1(9時)から時刻2(17時)までの時間帯に行われたときには通報先1が選択され、それ以外の時間帯に行われたときには通報先2が選択されるようになっている。一方、緊急通報の場合は、同図(B)の緊急用時刻別通報先テーブルが参照され、通報が時刻3(8時)から時刻4(16時)までの時間帯に行われたときには通報先3が選択され、それ以外の時間帯に行われたときには通報先4が選択されるようになっている。なお、ここでは、両テーブルの時刻1と時刻3、及び時刻2と時刻4をそれぞれ異ならせているが、これに限らずその一部または全部が同一であってもよく、任意に設定することができる。また、通報先についても、両テーブル間でその一部が同一であってもよく、任意に設定することができる。」(段落【0015】-【0020】)

(d)
「【0024】CPU23は、ワイアレスIDまたは相談要求信号または緊急信号のいずれかの信号を受信すると、通報要求があったと判断し(図3ステップS101;Y)、まず、その要求がどの要求手段によってなされたものかを判断する(ステップS102)。この結果、通報要求が相談ボタン28によってなされたものであったときは相談通報と判断し(ステップS102;Y)、さらに、その時点での時刻(通報時刻)をRTC32によって調べて、図2(A)の相談用時刻別通報先テーブルを参照する(ステップS103)。ここで、例えば通報時刻tが時刻1(9時)と時刻2(17時)との間であった場合には(ステップS104;Y)、通報先1(センタ10-1)を選択して電話番号“633389”に自動ダイヤルし(ステップS105)、通報時刻tが上記以外の場合には(ステップS104;N)、通報先2(センタ10-2)を選択して電話番号“615555”に自動ダイヤルする(ステップS106)。なお、この通報の際には、在宅アダプタを識別するための在宅アダプタIDや相談通報か緊急通報かを示す通報識別情報等も送出される。
【0025】一方、通報要求がワイヤレス発信機26または緊急ボタン29によってなされたものであったときは緊急通報と判断し(ステップS102;N)、さらに、その時点での時刻をRTC32によって調べて、図2(B)の緊急用時刻別通報先テーブルを参照する(ステップS107)。ここで、例えば通報時刻tが時刻3(8時)と時刻4(16時)との間であった場合には(ステップS108;Y)、通報先3(センタ10-3)を選択して電話番号“635678”に自動ダイヤルし(ステップS109)、通報時刻tが上記以外の場合には(ステップS108;N)、通報先4(センタ10-4)を選択して電話番号“618765”に自動ダイヤルする(ステップS110)。
【0026】在宅アダプタ12からの通報を受けたいずれかのセンタ(例えばセンタ10-1)側では、センタアダプタ11が通報を受信し、所定フォームのコマンドパケットを作成してホストコンピュータに送出する。ホストコンピュータは、受け取ったパケットから在宅アダプタIDや通報種別等を抽出してデータベース19を参照して識別・解析を行い、必要な処理を行う。具体的には、在宅アダプタIDからどこに設置された在宅アダプタからの通報かを判断するとともに、通報種別から相談通報か緊急通報かを判断し、必要な処置を行う。」(段落【0024】-【0026】)

(e)
「【0029】次に、本発明の第2の実施例に係る通報装置を図5及び図6とともに説明する。
【0030】本実施例では、不揮発メモリ25(図1)内の上記した時刻別通報先テーブル(図2)の代わりに、図5に示すような曜日別通報先テーブルを設け、曜日によって通報先を自動選択する。このテーブルでは、各曜日ごとに指定ビット(“0”または“1”)が設定されており、その値によって通報先が選択される。ここでは、指定ビット“1”の曜日について通報先1が対応し、“0”の曜日について通報先2が対応している。その他の装置構成は図1と同様である。
(中略)
その他の動作は上記した第1の実施例の場合と同様である。
【0033】このように、本実施例では、通報曜日に応じて適切な通報先が自動的に選択され、1回の通報のみで通報が可能となる。
【0034】なお、本実施例では、曜日によって運営体制にある通報先を自動選択することとしたが、これに限るものではなく、例えば日付、あるいは月によって自動選択することも可能である。この場合、例えば日付で選択するには合計31ビットの日付指定ビットを設け、また、月で選択するには12ビットの月指定ビットを設けることで容易に実現できる。
【0035】また、第1の実施例の場合と同様に、通報の要因ごとに曜日別通報先テーブルを設け、通報の要因と曜日という2つの条件に従って、運営体制にある通報先を自動選択するようにしてもよいことはもちろんである。」(段落【0029】-【0035】)

引用例1の記載事項を検討するに、まず、上記摘記事項(b)の【0015】ないし【0018】の記載によれば、引用例1には、複数のセンタのうちいずれかを選択して在宅アダプタ-センタ間で通信を行うべく在宅アダプタと回線接続する在宅アダプタ-センタ間における接続制御方法が記載されているといえる。
次に、段落【0019】-【0020】の記載によれば、引用例1の第1の実施例の在宅アダプタには、時間帯に応じたセンタの通報先を登録した時刻別通報先テーブルをメモリに記憶することにより、時間帯に応じたセンタの通報先が設定登録されることが記載されており、さらに、前記摘記事項(e)によれば、第2の実施例として、通報先を日付によって自動選択するよう、前記時刻別通報先テーブルを日付におけるセンタの通報先を登録する旨記載されている。引用例1の第2の実施例は、通報先テーブルを除いては第1の実施例と同様であるから、引用例1の接続制御方法は、「予め、前記在宅アダプタに、該在宅アダプタと前記複数のセンタとの日付における対応付けを設定した通報先テーブルを登録しておく工程」を有しているといえる。
次に、段落【0020】の記載によれば、引用例1の第1の実施例の在宅アダプタは、通報ボタンが押されると、前記通報先テーブルを参照して、現在の時刻に対応する時間帯の通報先電話番号を選択するものであり、さらに、前記摘記事項(e)の第2の実施例では、通報先を日付によって自動選択することが記載されているから、引用例1の接続制御方法は、「前記在宅アダプタで前記通報先テーブルを参照して、前記日付における対応付けから該在宅アダプタと接続できるセンタを決定する工程」を有しているといえる。
次に、上記摘記事項(d)によれば、引用例1の在宅アダプタは、決定されたセンタに自動ダイヤルをしてセンタと接続をするから、引用例1の接続制御方法は、「前記複数のセンタのうち前記決定したセンタと前記在宅アダプタとを回線を介して接続する工程」を有しているといえる。

してみれば、引用例1には、
「複数のセンタのうちいずれかを選択して在宅アダプタ-センタ間で通信を行うべく在宅アダプタと回線接続する在宅アダプタ-センタ間における接続制御方法において、
予め、前記在宅アダプタに、該在宅アダプタと前記複数のセンタとの日付における対応付けを設定した通報先テーブルを登録しておく工程と、
前記在宅アダプタで前記通報先テーブルを参照して、前記日付における対応付けから該在宅アダプタと接続できるセンタを決定する工程と、
前記複数のセンタのうち前記決定したセンタと前記在宅アダプタとを回線を介して接続する工程と
を備えていることを特徴とする在宅アダプタ-センタ間における接続制御方法。」
の発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されているといえる。

[引用例2]
先の拒絶理由で引用した、利用が始まるデスクトップ会議 プロミスが新規加入業務に導入,日経コンピュータ,第370号,日経BP社,1995年7月24日,第99-101頁(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(f)
自動契約受け付け機と複数のパソコンを有する有人店舗とがISDNまたはLANで接続され、自動契約機による借入申し込みのチェック、与信審査を有人店舗において与信担当者がパソコンで行うこと。(図1,写真3)

[周知例]
本願の技術分野における、技術水準を示す文献である、特開昭62-130463号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(g)
「(a)技術分野
この発明は自動取引処理装置の動作を監視する遠隔監視装置を複数台ネットワーク化した遠隔監視システムに関する。
(b)発明の概要
この発明に係る自動取引処理装置の遠隔監視システムは、複数台の遠隔監視装置を公衆電話回線で接続し、各遠隔監視装置に設定されたスケジュールテーブルに基づいて、自己が監視する自動取引処理装置に関する監視情報を他の遠隔監視装置へ送信する送信手段と、他の遠隔監視装置から監視情報を受信する受信手段とを任意に動作させることを可能にした。これによって、複数の遠隔監視装置の監視情報が集中する主局を日毎または時間毎に任意に変更することができるようにしたものである。」(第1ページ右欄第3行-同欄第18行)

(h)
「(e)発明の構成及び効果
この発明は、自動取引処理装置の動作状態を監視する遠隔監視装置を回線を介して複数台接続した自動取引処理装置の遠隔監視システムにおいて、
前記回線に公衆電話回線を用いるとともに、
前記複数台の遠隔監視装置のそれぞれに、前記公衆電話回線を介して他の遠隔監視装置からその遠隔監視装置が監視している自動取引処理装置に関する監視情報を受信する受信手段と、公衆電話回線を介して他の遠隔監視装置へ自己が監視している自動取引処理装置に関する監視情報を送信する送信手段と、さらに、日または時間別に前記受信手段を動作させるかまたは前記送信手段を動作させるかを定めるスケジュールテーブルを設け、
前記スケジュールテーブルに基づいて各遠隔監視装置の前記送信手段または前記受信手段を動作させるようにしたことを特徴とする。
以上のように構成することによって、この発明によれば、
自動取引処理装置の休日運用時に母店となる店舗に設置された遠隔監視装置が主局となるように、スケジュールテーブルを構成し、その他の店舗(子店)に設置された遠隔監視装置が従局となるようにスケジュールテーブルを構成する。これによって、子店の装置(従局)は母店の装置(主局)に対して公衆電話回線を介して、従局の監視情報を送ることができる。すなわち、従局の監視情報を主局に集中することができる。このようにスケジュールテーブルを任意に構成することによって日または時間毎に主局、従局を任意に設定することができ、休日運用グループ内の店舗を任意に分店、子店とすることができる。これによって、休日運用時の係員駐在をグループ内で輪番側にすることができるとともに、主局に異常が発生したときには、他の装置に監視情報の集中を退避させ、その局を臨時の主局とするような柔軟性のある運用形態を実現することができる。」(第2ページ左下欄第1行-同頁右下欄第18行)

(i)
「第4図は上記RAM12の部分構成図である。エリアM1(以下「エリアMi」を「Mi」と言う。)にはこの装置が設置される店舗のコードとこの装置をアクセスするための電話番号が記憶される。M2にはこの店舗と休日運用グループを構成する他の店舗のコードおよび装置アクセスのための電話番号テーブルが設定されている。前記休日運用グループ内でこの店舗が母店とされたとき、テーブル(M2)に記憶されている各店舗のRMCに公衆電話回線でアクセスして自己(母店)のアクセス電話番号等の識別コードを通知する。また、M3には他店舗が母店となったとき、その店舗のRMC(主局)から通知された店舗コード、電話番号が記憶される。M4はスケジュールテーブルである。このエリアには今後の休日運用時にこの店舗が母店となるか子店となるか、すなわち、この装置が主局となるか従局となるかが記憶されるとともに、この店舗が子店となる日の母店となる店舗のコードが記憶される。また、M5はカレンダエリアであり、タイマでカウントされる日付時刻を記憶する。
第5図(A)は上記RMCに休日運用スケジュールを設定するときの動作を示すフローチャートである。ステップn30(以下、ステップniを単にniと言う。)でスケジュール設定開始キー33が押下され、休日の日付が入力されると(n31)、その日付をM4に設定する(n32)。その休日にこの店舗が母店となるか否か、および、母店となるのはグループ内のどの店舗かのデータが前記支店監視キー30またはセンタ監視キー31およびテンキー42等の操作によって人力されると(n33)、その内容をM4に設定する(n34)。n35でスケジュール設定終了キー34が押下されたことを判断するまでn31以下の動作を操り返しスケジュールを設定してゆく。スケジュール設定終了キー34が押下されたことを判断すれば、M4の内容を他の全てのRMCへ送信して(n36)、動作を終える。」(第3ページ左下欄第13行-第4ページ左上欄第10行)

以上より、前記周知例には、装置間における接続制御方法において、日付によって接続先を変更する場合に、従局となる装置に日付と主局となる装置の店舗のコードからなるスケジュールテーブルM4と、店舗コードとアクセス電話番号を記憶する手段M3を設け、主局となる装置から、従局となる装置のM3及びM4の内容を書き換えることにより、日付により、従局となる装置のアクセス先となる主局となる装置を設定する技術が記載されている。
また、他の特開昭62-274462号公報及び特開平1-114997号公報などの周知例も併せて参酌すると、回線接続された装置間において、一方の装置が、他方の装置にアクセスすることにより、前記他方の設定を書き換える技術(以下「周知技術」という。)は周知であって、かつ、当業者にとって常とう手段であると認める。

6.対比
本願発明(以下「前者」という。)と引用例1発明(以下「後者」という。)を対比する。
まず、後者の「在宅アダプタ」は、利用者が利用して複数のセンタのうちいずれかと選択的に接続され、在宅アダプタ-センタ間で通信を行う構成であるから、前者の「顧客側端末」とは、以下の相違点があるものの、「顧客側通信装置」という概念で共通し、同様に、後者の「センタ」は、前者の「オペレータ側端末」と、以下の相違点があるものの、「センタ側通信装置」という概念で共通する。同様に、後者の「在宅アダプタ-センタ間」は、前者の「端末間」と、「通信装置間」という概念で共通するといえる。してみれば、後者の「複数のセンタのうちいずれかを選択して在宅アダプタ-センタ間で通信を行うべく在宅アダプタと回線接続する在宅アダプタ-センタ間における接続制御方法」と、前者の「複数のオペレータ側端末のうちいずれかを選択して端末間で情報の転送を行うことにより種々の申し込み取引を行うべく顧客側端末と回線接続する端末間における接続制御方法」とでは、「複数のセンタ側通信装置のうちいずれかを選択して通信装置間で通信を行うべく顧客側通信装置と回線接続する通信装置間における接続制御方法」との点で共通する。

次に、後者の「通報先テーブル」は、前者の「接続先情報」に相当する。してみれば、後者の「予め、前記在宅アダプタに、該在宅アダプタと前記複数のセンタの通報先電話番号との日付における対応付けを設定した通報先テーブルを登録しておく工程」と、前者の「予め、前記顧客側端末に、該顧客側端末と前記複数のオペレータ側端末との日付における対応付けを設定した接続先情報を登録しておく工程」とでは、「予め、前記顧客側通信装置に、該顧客側通信装置と前記複数のセンタ側通信装置との日付における対応付けを設定した接続先情報を登録しておく工程」との点で共通する。

次に、後者の「前記在宅アダプタで前記通報先テーブルを参照して、前記日付における対応付けから該在宅アダプタと接続できるセンタを決定する工程」と、前者の「前記顧客側端末で前記接続先情報を読み込み、前記日付における対応付けから該顧客側端末と接続できるオペレータ側端末を決定する工程」とでは、「前記顧客側通信装置で前記接続先情報を読み込み、前記日付における対応付けから該顧客側通信装置と接続できるセンタ側通信装置を決定する工程」との点で共通する。

次に、後者の「前記複数のセンタのうち前記決定したセンタと前記在宅アダプタとを回線を介して接続する工程」と、前者の「前記複数のオペレータ側端末のうち前記決定したオペレータ側端末と前記顧客側端末とを回線を介して接続する工程」とでは、「前記複数のセンタ側通信装置のうち前記決定したセンタ側通信装置と前記顧客側通信装置とを回線を介して接続する工程」との点で共通する。

してみれば、前者と後者とは、
「複数のセンタ側通信装置のうちいずれかを選択して通信装置間で通信を行うべく顧客側通信装置と回線接続する通信装置間における接続制御方法において、
予め、前記顧客側通信装置に、該顧客側通信装置と前記複数のセンタ側通信装置との日付における対応付けを設定した接続先情報を登録しておく工程と、
前記顧客側通信装置で前記接続先情報を読み込み、前記日付における対応付けから該顧客側通信装置と接続できるセンタ側通信装置を決定する工程と、
前記複数のセンタ側通信装置のうち前記決定したセンタ側通信装置と前記顧客側通信装置とを回線を介して接続する工程と
を備えていることを特徴とする通信装置間における接続制御方法。」
との点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
通信装置が、前者は、「顧客側端末」と「オペレータ側端末」であるのに対して、後者は、「在宅アダプタ」と「センタ」であり、通信の態様が、前者は、「情報の転送」を行って「取引」を行うものであるのに対して、後者は、単に通信し申し込みを行うものである点。

[相違点2]
前者は、「前記オペレータ側端末から前記顧客側端末へのアクセスによって前記接続先情報を平日設定から休日設定に変更して書き込むことにより、平日であっても休日用のオペレータ側端末に接続できるよう切り替える工程」を備えるものであるのに対して、後者には、そのような工程は、開示されていない点。

7.判断
前記相違点について検討する。

[相違点1について]
引用例1の摘記事項(c)の【0015】ないし【0018】の記載によれば、後者の「在宅アダプタ」は、CPUを備え、回線によって複数のセンタのいずれかと接続されて通信が可能となるものであるから、端末機としての機能をもつものであることは明らかであり、また、後者の「センタ」は、「在宅アダプタ」からの相談通報や緊急通報を受けて対応するものであるから、対応者が使用する端末を備えることが不可欠であることは明らかである。
そして、後者は、そもそもが、「電話回線等を介してセンタ等の特定の相手に通報を行うための装置」一般についての発明であって、このような、顧客側通信装置とセンタ側通信装置とを回線接続して通信を行うシステムは、本願出願時点においては、既に様々な分野で広く利用されていたものであり、しかも、このようなシステムにおいては、顧客側およびセンタ側の通信装置として、利用分野に応じた様々な構成のものが採用されていたこともまた広く知られていた事項である。また、例えば前記引用例2には、顧客側通信装置およびセンタ側通信装置として、それぞれ「自動契約受け付け機」および「有人店舗」の「複数のパソコン」を採用し、「借入申し込みのチェック、与信審査」を行うこと、即ち、情報の転送を行うことにより種々の申し込み取引する分野への適用例が示されている。
以上のことを勘案すると、後者において、顧客側通信装置およびセンタ側通信装置を、それぞれ「顧客側端末」と「オペレータ側端末」とし、「情報の転送」を行って「取引」を行うようにし、相違点1に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が必要に応じて容易に想到し得た事項である。

[相違点2について]
後者の発明は、「一般に、センタは複数設けられ、利用者の便宜が図られている場合が多い。しかしながら、従来は、あるセンタに発信した場合においてそのセンタが運営時間外であった場合は、さらに他のセンタに通報を行わなければならなかった。従って、いずれかのセンタに通報が到達するまでに多数回の通報を繰り返さなければならない場合も生じ、特に一刻を争う緊急通報の場合には手遅れとなるおそれもあった。」という課題を解決するためになされたもので、「受信体制にないセンタに対する無駄な通報を防止し、かつ適切なセンタに対して迅速かつ容易に通報を行うことができる通報装置を得ることを目的とする。」ものである。
そして、後者の発明は、前記目的を達成するために、「在宅アダプタに、該在宅アダプタと前記複数のセンタとの日付における対応付けを設定した通報先テーブルを登録しておく工程と、前記在宅アダプタで前記通報先テーブルを参照して、前記日付における対応付けから該在宅アダプタと接続できるセンタを決定する工程」を備えるようにしたものであるが、社会常識に照らしてみれば、これらセンタにおいて、利用者の通報を受け入れられない様々な不測の事情が生じることは、充分あり得ることであり、そのような場合、「特に一刻を争う緊急通報の場合には手遅れとなるおそれ」がある場合に対処できるようにするため、通報先テーブルにおける複数のセンタとの日付における対応付けの設定を変える必要性が内在することは、引用例1に接した当業者が、容易に推考しうるところである。
ここで、引用例1の段落【0030】ないし【0034】並びに図5に対応する実施例によれば、その時の日付が月曜から金曜の平日であれば、通報先1のセンタに接続するように対応が設定され、土曜日か日曜日の休日であれば、通報先2のセンタに接続するように対応が設定されている。このような設定の場合、平日の通報先1のセンタに利用者の通報を受け入れられない様々な不測の事情が生じた場合、「特に一刻を争う緊急通報の場合には手遅れとなるおそれ」がある場合に対処するために、前述した通報先テーブルにおける複数のセンタとの日付における対応付けの設定を変えるということは、その時の日付が平日であっても、休日用の通報先2のセンタに接続するように、通報先テーブルの設定を変えるということを意味することは明らかである。
ところで、後者の発明のように、一方の通信装置と他方通信装置とを回線接続して通信を行うシステムにおいて、一方の装置が他方の装置にアクセスして、当該他方の装置の設定テーブルを書き換えて変更することは、本願出願時点では、既に、最も料金の安い電話回線ルートが利用できるように設定する各家庭の電話機のLCR機能(Least Cost Routing)の設定テーブルを、センタ側からアクセスして自動的に変更する技術として慣用されており、また、上記周知技術としてあげた各文献にも、一方の装置が他方の装置にアクセスして、当該他方の装置の設定テーブルを書き換えて変更することが記載されていて、慣用技術といえる。
してみれば、引用例1に接し、通報先テーブルにおける複数のセンタとの日付における対応付けの設定を変える必要性を認識した当業者が、多数の利用者の自宅に設置された在宅アダプタの通報先テーブルの設定を書き換えて変更するために、前記慣用技術を適用し、相違点2に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が必要に応じて容易に想到し得た事項である。

以上の検討によれば、相違点1及び相違点2は、いずれも引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できた事項である。また、相違点1及び相違点2を全体としてみた場合でも、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できたと判断せざるを得ない。
そして、請求人が主張する、前記摘記した本願請求項1に係る発明の作用効果も、前記相違点2についての検討において検討した事項である「オペレータ側端末から顧客側端末へのアクセスによる接続先情報の書き替え」により当然得られる効果であるから、当業者が予測できる範囲のものである。そのほかの本願請求項1に係る発明の作用効果も、引用例1及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

8.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用例1、引用例2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-05 
結審通知日 2007-06-12 
審決日 2007-06-27 
出願番号 特願平9-41739
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 満  
特許庁審判長 佐藤 伸夫
特許庁審判官 森次 顕
岩間 直純
発明の名称 端末間における接続制御方法および顧客側端末ならびに接続制御システム  
代理人 船橋 國則  

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