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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1162099
審判番号 不服2003-20204  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-16 
確定日 2007-08-09 
事件の表示 特願2001-192780「プログラム実行システム、プログラム実行装置、記録媒体及びプログラム、並びに情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月 2日出願公開、特開2002- 95863〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成13年6月26日に出願された特願2001-192780号の特許出願であって、平成14年10月29日付けの原審における拒絶理由通知に対し、平成15年1月6日付けの意見書とともに手続補正書が提出され、同年9月8日付で拒絶査定がなされたところ、前記拒絶査定を不服として、同年10月16日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1乃至5に係る発明は、平成15年1月6日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項5に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「【請求項5】
(a-1)使用者の第1の指にて押される第1のボタンと、前記使用者の第2の指にて押される第2のボタンと、前記使用者の第3の指にて押される第3のボタンと、前記使用者の第4の指にて押される第4のボタンとが配列され、かつ、前記使用者による操作入力を出力値として出力する操作装置と、
(a-2)前記操作装置からの出力値を方向指示として情報処理する第1の手段と、該第1の手段にて解釈された方向指示に基づく画像を生成する第2の手段とを有するプログラム実行装置と、
(a-3)前記プログラム実行装置から出力された画像を表示する表示装置とを有するプログラム実行システム
(b)における前記第1の手段での情報処理方法において、
前記表示装置の画面上の垂線上向き方向に対する角度をθ、
前記使用者が前記第1のボタンを押す力に対応した出力値をP(1)、
前記使用者が前記第2のボタンを押す力に対応した出力値をP(2)、
前記使用者が前記第3のボタンを押す力に対応した出力値をP(3)、
前記使用者が前記第4のボタンを押す力に対応した出力値をP(4)としたとき、
前記方向指示を前記角度θとして、該角度θを、以下の演算式
θ=225°+90°×P(1)/{P(2)+P(1)}
θ=315°+90°×P(3)/{P(1)+P(3)}
θ=45°+90°×P(4)/{P(3)+P(4)}
θ=135°+90°×P(2)/{P(4)+P(2)}
に基づいて求めることを特徴とする情報処理方法。」
(以降の説明のため分節し、(a-1)?(a-3)、(b)の記号を付した。)

3.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。」というものであり、その理由として、概ね以下の点を挙げている。

請求項に記載された「第1の手段での情報処理方法」は人為的取り決めそのものである。そして「第1の手段」が上記情報処理方法を実行する上で当該方法とハードウェア資源とが協働した具体的手段により実現されているとは言えず、特許法第29条第1項柱書きでいう発明に該当しない。

4.当審の判断
4.1 「特許を受けることができる発明」について
特許法第29条第1項柱書の規定によれば、「特許を受けることができる発明」とは、「産業上利用することができる発明」でなければならない。
また、特許法第2条第1項の規定によれば、「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」である。
したがって、特許法第29条第1項柱書に規定される「産業上利用することができる発明」であるためには、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であることが必要である。
ここで、(1)自然法則以外の法則、(2)人為的な取決め(例えば、ゲームのルールそれ自体)、(3)人間の精神活動それ自体、(4)ビジネスを行う方法それ自体等は、自然法則を利用したものとはいえず、特許法第2条に定義されている「発明」に該当しない(「特許・実用新案審査基準」第II部第1章1.1(4)参照)。

4.2 判断
以上を踏まえ、本願発明が、特許法第2条で定義されている「発明」、すなわち、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かについて検討する。

本願発明の「情報処理方法」は、「プログラム実行システム」を用いて実現される方法であり、当該プログラム実行システムは、ソフトウェアによる処理により機能を実現しているので、本願発明は、その発明の実施にソフトウェアを必要とするところの、いわゆるソフトウェア関連発明であり、「ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」場合に、自然法則を利用した技術的思想の創作であるといえる(「特許・実用新案審査基準」第VII部第1章2.2.1参照)。

以下、本願発明の上記(a-1)?(a-3)、(b)の記載事項について順次検討する。

上記(a-1)には、「第1の指」、「第2の指」、「第3の指」、「第4の指」、「第1の指にて押される第1のボタン」、「第2の指にて押される第2のボタン」、「第3の指にて押される第3のボタン」、「第4の指にて押される第4のボタン」の意味するところが不明確ではあるものの、ハードウェア資源として、「第1のボタン」と、「第2のボタン」と、「第3のボタン」と、「第4のボタン」とが配列された「操作装置」が記載されているが、「第1のボタン」乃至「第4のボタン」に関する記載では、使用者の第1(乃至第4)の指にて押されるという、使用者の使用形態を特定しているにすぎず、また、「操作装置」に関する記載では、操作入力を出力値として出力するという、操作装置としての通常の使用形態が示されているにすぎない。
(a-2)には、ハードウェア資源として、「第1の手段」と、「第2の手段」とを有する「プログラム実行装置」が記載されている。
ここで、「第1の手段」に関する記載では、「操作装置からの出力値を方向指示として情報処理する」という、第1の手段で実行しようとする処理の内容を単に特定するに留まり、当該処理をコンピュータを利用して実現するために、コンピュータのハードウェア資源をどのように用いて具体的に実現された技術的手段であるのかを特定するものではない。
同様に、「第2の手段」に関する記載は、「該第1の手段にて解釈された方向指示に基づく画像を生成する」という、第2の手段で実行しようとする処理の内容を単に特定するに留まり、当該処理をコンピュータを利用して実現するために、コンピュータのハードウェア資源をどのように用いて具体的に実現された技術的手段であるのかを特定するものではない。
そして、「プログラム実行装置」に関する記載では、「第1の手段」と、「第2の手段」とを有するという、「プログラム実行装置」が複数の機能実現手段から構成されるということを特定しているにすぎない。
(a-3)には、ハードウェア資源として、「プログラム実行装置」、「表示装置」、「プログラム実行システム」が記載されているが、「プログラム実行装置」に関する記載では、画像を出力するという、プログラム実行装置としての通常の使用形態が示されているにすぎず、「表示装置」に関する記載では、出力された画像を表示するという、表示装置としての通常の使用形態が示されているにすぎず、「プログラム実行システム」に関する記載では、「操作装置」と、「プログラム実行装置」と、「表示装置」とを有するという、「プログラム実行システム」が複数の機能実現手段から構成されるということを特定しているにすぎない。
(b)には、
1)第1の手段での情報処理方法において、出力値Pを
「前記使用者が前記第1のボタンを押す力に対応した出力値をP(1)・・・前記使用者が前記第4のボタンを押す力に対応した出力値をP(4)」
としたとき、
2)方向指示を、角度θとして、該角度θを、以下の演算式
「θ=225°+90°×P(1)/{P(2)+P(1)}・・・
θ=135°+90°×P(2)/{P(4)+P(2)}
に基づいて求める」
ことが特定されている。
ここで、前記「1)」に係る発明特定事項では、「前記使用者が前記第1のボタンを押す力に対応した出力値」を「P(1)」とするなどの、単なる数学上の仮定が特定されているにすぎず、当該仮定には自然法則が利用されていないことは明らかである。
また、前記「2)」で特定されている、P(1)?P(4)という値から上記演算式に基づいて角度θを求めるという事項は、単に演算式そのものを特定しているにすぎず、当該演算式自体は、自然法則を利用していないものであることも明らかである。
そして、前記「1)」及び「2)」によって特定される、「第1の手段での情報処理方法」に係る記載は、第1の手段での「角度θ」を求める処理を、特定の演算式を用いて行うことを特定するに留まり、当該「角度θ」を求める処理をコンピュータを利用して実現するために、コンピュータのハードウェア資源をどのように用いて具体的に実現された技術的手段であるのかを特定するものではない(そもそも、前記(a-2)に記載されている「プログラム実行装置」は、「第1の手段」及び「第2の手段」とを有することが記載されているのみで、ハードウェア資源としての具体的構成も不明確であり、上記「第1の手段」及び「第2の手段」によって処理される情報を、プログラム実行装置のハードウェア資源と関連づけ、どのように出力させてプログラムを実行させるのか、具体的な技術的手段が記載されていない)。

してみれば、上記(b)には、操作装置からの出力値を方向指示、角度θとして演算処理するための情報処理が、(a-1)?(a-3)に記載されているハードウェア資源及び他のハードウェア資源を用いて何ら具体的に特定されていないから、上記(b)の記載では、演算処理のソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。

以上より、上記(a-1)?(a-3)、(b)の記載は、プログラム実行システムにおいて、単に、人為的取決めである(角度θを求める)演算式を実行しようとするものにすぎないから、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。

したがって、本願発明の記載では、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえないから、本願発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作とは認められない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第2条第1項に規定する発明に該当せず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

なお、請求人は、審判請求書の請求の理由中で、審判請求が受け入れられない場合は、面接を希望する旨、記載しているが、このような条件付きの請求は、本来の面接の趣旨を逸脱するものであり、請求人は、面接の内容についても何ら具体的に記載していない。また、本件については、合議体においても、面接を受けなければならない特段の必要性は見あたらない。
 
審理終結日 2007-05-30 
結審通知日 2007-06-05 
審決日 2007-06-22 
出願番号 特願2001-192780(P2001-192780)
審決分類 P 1 8・ 14- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森口 良子
植野 孝郎
発明の名称 プログラム実行システム、プログラム実行装置、記録媒体及びプログラム、並びに情報処理方法  
代理人 土屋 洋  
代理人 千葉 剛宏  

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