ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 D06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F |
---|---|
管理番号 | 1162834 |
審判番号 | 不服2004-23689 |
総通号数 | 94 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-11-18 |
確定日 | 2007-08-16 |
事件の表示 | 特願2003- 5769「脱水兼用洗濯機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月 5日出願公開、特開2004-215830〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、 平成15年 1月14日の出願であって、平成16年10月15日付けで拒絶査定がなされ(平成16年10月19日発送)、これに対し、同年11月18日に審判請求がなされるとともに、同年11月30日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年11月30日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年11月30日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「 外殻の内部に、回転することによって洗濯物の脱水をする回転槽を有するものにおいて、 前記外殻が手掛部を有する蓋を具え、その手掛部が、凹部と、この凹部の上方を覆う位置に存する手掛主部とを具えて成り、 その手掛主部を上方に臨む凹部の底面又は側面に、前記回転槽の内部に対し外気を吸入する多数の孔から成る吸気口を設けたことを特徴とする脱水兼用洗濯機。」と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定する事項である「手掛け部」について「凹部と、この凹部の上方を覆う位置に存する手掛け主部とを具えて成り、」との限定を付加するととも、「吸気口」の設けられる部位について「その手掛け部の上方に臨む凹部の底面又は側面に、」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭49-85866号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ「下方に吸気孔兼排水口を有し、かつ側面に通気孔を有するルーバーを設けた外筐と、この外筐の上部に開閉自在に取付けられ、かつ吸気孔を有する蓋と、この外筐内に回転自在に設置され、かつ周側面に多数の水抜き孔を有する脱水籠と、この脱水籠の中央部に配設され、かつ下方に外部と連通する通気孔を設けた筒状のスペーサーとを備え、前記脱水籠の外側壁に複数個の羽根を設けるとともに、この脱水籠を自動反転させることを特徴とする脱水乾燥機。」(特許請求の範囲) ロ「本発明は脱水と乾燥が行なえる脱水乾燥機に関するもので、効率的な脱水乾燥が行なえ、かつ乾燥効率を高めることを目的とするものである。」(第1頁左下欄第16?18行) ハ「上記構成において動作について述べると、まず脱水蓋5を開き、洗濯物を脱水籠16内の筒状スペーサー19の周囲に投入する。・・・(中略)・・・。この場合、脱水籠16の外側壁に複数個設けられた羽根18の作用により外部の空気が蓋5の吸気孔7を介して矢印Aで示すように吸引されるとともに、・・・。そして脱水機16内に入った空気は多数の水抜き孔17および外筐1の側面に設けられたルーバー4を介して矢印Cで示すように外部に排気される。」(第2頁左上欄第2?20行) ニ「以上のように本発明によれば、・・・、前記羽根の左右反転作用により外部の空気を脱水籠内全体に効果的に吸引することができるため、その乾燥効率は一段と向上するものである。」(第2頁右上欄第16行?同左下欄第1行) 以上の記載及び図面によれば、引用例1には、 外筐1の内部に、回転することによって洗濯物の脱水をする脱水籠16を有するものにおいて、 前記外筐1が(脱水)蓋5を具え、前記蓋5に、脱水籠16の内部に対し外部の空気を吸引する多数の吸気孔7を設けた脱水乾燥機(以下「引用例発明1」という。) が記載されている。 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-179095号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ・「本体上部の天板に形成された洗濯物の投入口に設けた開閉蓋に、打抜きによって下方の開口した凹部を形成して把手とした構造において、前記凹部の周辺に前記開閉蓋上の異物がその内部に転入するのを阻止する突壁を設けたことを特徴とする脱水洗濯機の開閉蓋」(特許請求の範囲) ・「本発明は脱水洗濯機の開閉蓋に関するものである。本発明の適用される脱水洗濯機を第1図について説明する。1は脱水洗濯機の本体で、水受槽2を緩衝吊具3によって防振支持している。4は水受槽2の内部に設けた洗濯脱水槽で、・・・。天板13は洗濯物の投入口15を有し、投入口15には開閉蓋16が開閉自在に取付けてある。」(第1頁左下欄第12行?同右下欄第6行) ・「開閉蓋16はその後部を軸17によりスイッチボックス14に取付けられ、前方が矢印の方向に開閉する。18は開閉蓋16に、打抜きによって形成した凹部で、下方に開口19、打抜き側に突辺20を有し、把手として使用される。」(第1頁右下欄第9行?14行) ・「本発明の開閉蓋は把手孔を形成する凹部18の周辺に突壁21を設けている。・・・。 〔発明の効果〕本発明は以上の構成および作用を有するので、天板又は開閉蓋上におかれたコイン、ボタン、ヘアピン等の小物が洗濯機の振動によって把手孔から内部に転入するのを阻止して、これら小物の転入によって生ずる事故を未然に防止するすぐれた効果を有する。」(第2頁右上欄第10行?同左下欄第3行) 以上の記載及び図面によると、 引用例2には、 本体1の内部に、回転することによって洗濯物を脱水する洗濯脱水槽4を有するものにおいて、前記本体1が、突片20を有する開閉蓋16を具え、その突片20が、凹部18を具えるとともに、この凹部18の上方を覆うものであり、その突片20を上方に臨む凹部18の底面に開口19を設けるとともに、前記凹部18の周辺に開閉蓋16上の異物が内部に転入するのを阻止する突壁を設けた脱水洗濯機(以下「引用例発明2」という。) が記載されている。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用例発明1とを対比すると、引用例発明1の「外筐1」は本願補正発明の「外殻」に相当し、以下同様に「脱水籠16」は「回転槽」に、「(脱水)蓋5」は「蓋」に、「吸気孔7」は「孔」に、それぞれ相当する。そして、引用例発明1の「脱水乾燥機」は、その機能からみて、本願補正発明の「脱水兼用洗濯機」に相当している。 したがって、両者は、 外殻の内部に、回転することによって洗濯物の脱水をする回転槽を有するものにおいて、 前記外殻が蓋を具え、該蓋に、前記回転槽の内部に対し外気を吸入する吸気口を設けたことを特徴とする脱水兼用洗濯機 の点で一致し、 次の点で相違している。 [相違点] 本願補正発明では、蓋を手掛部を有するものとし、その手掛部が、凹部と、この凹部の上方を覆う位置に存する手掛主部とを具えて成り、その手掛主部を上方に臨む凹部の底面又は側面に、多数の孔から成る吸気口を設けているのに対し、引用例発明1では、該構成がない点。 (4)判断 そこで、上記相違点について検討する。 前記の引用例発明2と本願補正発明とを対比すると、 引用例発明2の「本体1」は本願補正発明の「外殻」に相当し、以下同様に、「洗濯脱水槽4」は「回転槽」に、「突片20」は「手掛部」に、「開閉蓋16」は「蓋」に、「開口18」は「吸気口」に、「脱水洗濯機」は「脱水兼用洗濯機」に、それぞれ、相当している。また、引用例発明2の「突片20」は、「凹部18」と隣接することにより、把手としての機能を有するものであり、この「凹部18」の上方を覆う部位を具えるものである。 したがって、引用例発明2は、 外殻の内部に、回転することによって洗濯物の脱水をする回転槽を有するものにおいて、前記外殻が手掛部を有する蓋を具え、その手掛部が、凹部と、この凹部の上方を覆う位置に存する手掛主部とを具え、その手掛主部を上方に臨む凹部の底面に開口を設けた脱水兼用洗濯機といえる。 引用例発明1も、引用例発明2も、脱水機の蓋に関するものである。 したがって、引用例発明1の蓋に、引用例発明2の手掛部の構成を適用し、蓋を手掛部を有するものとし、その手掛部が、凹部と、この凹部の上方を覆う位置に存する手掛主部とを具えるものとし、その手掛主部を上方に臨む凹部の底面に、吸気口を設けるものとするとともに、吸気口を多数の孔から成るものとしたことは、当業者が容易に想到し得たことである。 この点について、請求人は、平成16年11月30日付け手続補正書(方式)において、「一方、引用例2には、・・・(中略)・・・。しかしながら、その開口19は、突辺20を上下だけの型抜きで形成するものとして開けられたものであり、要するに、型抜きの跡孔にほかなりません。よって、そこには吸気口として多数の孔を形成するのは物理的に不可能であり、その技術思想すら見出せるものではありません。よって、この引用例2から、吸気口を多数の孔から成るものとすることで異物の通過侵入を阻止する本願発明を導き出すことはできるものではありません。又、このために、引用例2のものでは、・・・(中略)・・・、本願発明とは別異の手段にて異物の通過侵入を阻止するようにしておりますから、異物の通過侵入を阻止するについての対処法が本願発明とは全く異なるものであります。しかして、・・・(中略)・・・、本願発明の「・・・」の構成は、決して容易に想到し得るものではありません。更に、引用例1?3を総合しても、上方に手掛主部を有する凹部を上下だけの型抜きで形成するものしか想到し得ず、それらを如何に工夫したとしても、・・・の本願発明の構成は、得られるものではありません。」(第2頁第31?第3頁第3行)と主張しているので、以下に検討する。 前記のとおり、引用例発明2は、異物の通過侵入を阻止するための突壁を具えたものである(「(2)」参照)。 そして、流体経路において、異物の通過侵入を阻止するために、多数の孔を形成する部材(例えば、フィルター等)を設けることは、例を挙げるまでもなく、従来周知の技術である。 そうすると、引用例発明1に、引用例発明2を適用するに際し、突壁に代えて、多数の孔から成る吸気口としたことは、当業者であれば適宜採択し得た設計的事項にすぎない。 してみると、上記請求人の主張は、採用できない。 また、本願補正発明の奏する作用効果をみても、引用例発明1、引用例発明2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例発明1、引用例発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成16年11月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、本願の平成16年9月28日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。 「 外殻の内部に、回転することによって洗濯物の脱水をする回転槽を有するものにおいて、 前記外殻が手掛部を有する蓋を具え、その手掛部に、前記回転槽の内部に対し外気を吸入する多数の孔から成る吸気口を設けたことを特徴とする脱水兼用洗濯機。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「手掛け部」の限定事項である「凹部と、この凹部の上方を覆う位置に存する手掛け主部とを具えてなり、」との構成を省き、「吸気口」の設けられる部位について「その手掛け部の上方に臨む凹部の底面又は側面に、」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例発明1、引用例発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例発明1、引用例発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-06-13 |
結審通知日 | 2007-06-19 |
審決日 | 2007-07-02 |
出願番号 | 特願2003-5769(P2003-5769) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(D06F)
P 1 8・ 575- Z (D06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 金丸 治之 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
間中 耕治 今井 義男 |
発明の名称 | 脱水兼用洗濯機 |
代理人 | 佐藤 強 |
代理人 | 佐藤 強 |
代理人 | 佐藤 強 |