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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41B
管理番号 1162866
審判番号 不服2005-12872  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-07 
確定日 2007-08-16 
事件の表示 特願2002-360285「尿吸収体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月 8日出願公開、特開2004-187966号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年12月12日を出願日とする出願であって、平成17年6月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年7月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成17年8月8日付けで明細書についての手続補正がなされたものであり、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成17年8月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。
「使い捨ておむつや尿取りパッド等の尿吸収体から再生された再生パルプにケナフパルプを所定割合で混合してシート状に成形して吸収シートとした尿吸収体。」

2.引用例の記載事項
(2-1)当審の拒絶の理由に引用された特開2001-238908号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。

(2-1-1)「【0017】
本発明において使用される吸収体は、綿状パルプ、高吸水性高分子物質、親水性シート等によって形成され、吸水性の性質をもっていれば特に制限を受けるものではない。 本発明において使用される吸収体は、従来の使いすておむつその他の吸収性物品に通常使用される公知の吸収性材料から作られている。すなわち、綿状パルプ、レーヨン等の吸収性繊維からなる単層もしくは多層のマットから形成され、さらに親水性シートによってくるまれており、そして、高吸水性高分子物質が各マット中に均一に混合もしくは各マット間に層状に配置されている。また、高吸水性高分子物質を均一に混合された吸収体は、綿状パルプに対して3?60重量%の熱融着性物質を混合した後、熱圧着しても良いし、もしくは高吸水性高分子物質のみが親水性シートによりくるまれているものであっても良い。」

(2-1-2)「【0018】
綿状パルプとしては、化学パルプシート、古紙パルプシート、機械パルプシートを粉砕機で解繊することにより得られる繊維長5mm以下のものが用いられる。パルプ原料としては、針葉樹に限らず、広葉樹、わら、竹及びケナフも適用される。このパルプの使用量は、目的とする吸収体により、例えば、単独に用いるか、複数積層して用いるか、他の吸収材を併用するかなどにより異なるが、一般には、50?400g/m2 である。」

上記(2-1-1)、(2-1-2)より、引用例1には、
「針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、わらパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ、古紙パルプなどを原料として単独層もしくは複数層のシート状に形成して吸収シートとした使いすておむつ」の発明が開示されている。

(2-2)当審の拒絶の理由に引用された特開2000-84533号公報(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。

(2-2-1)「【0003】【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、使用済み紙おむつのパルプ成分の大部分を分離回収して再利用可能にし、森林伐採及び地球温暖化等の環境破壊を少なくする事を可能にする新しい構想による使用済み紙おむつの使用材料の再生処理方法を提供することにある。」

(2-2-2)「【0009】
汚泥処理部7では送られた沈澱物は汚泥として汚泥貯槽7aで収容され、汚泥脱水機7bで脱水されて固形状態で汚泥受槽7cに収容される。水戻し管6a,5aでポリマー分解槽2,パルプ成分分離部4へ戻される水には、ポリマー分解剤のCaCl2が含まれているので、CaCl2 の消費量は少なくできる。モノマーは浄化槽を介して放流される。以上の様に、本実施例では使用済み紙おむつは、破砕して分断した後内部のポリマーをポリマー分解剤でモノマーにしてから他成分を分離回収するので、分離回収が容易に且つ確実になされる。又、浄化槽で浄化されたポリマー分解剤を含んだ水をポリマー分解槽2で再利用するのでポリマー分解剤及び水の消費量を少なくしている。この実施例で回収されたパルプ成分は、紙おむつのパルプとして、ダンボール等の紙製品の原料として利用でき、他に土地の改良剤・燃料・肥料として使用できる。」

上記(2-2-1)、(2-2-2)より、引用例2には、
「使用済み紙おむつからパルプを再生し、これを紙おむつのパルプとして使用する再生処理方法」の発明が開示されている。

3.対比・判断
本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。

○後者の「古紙パルプ」、「使いすておむつ」は、前者の「再生パルプ」、「尿吸収体」それぞれに相当している。

○後者の「針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、わらパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ、古紙パルプ(再生パルプ)などを原料としてシート状に形成して」は、例として、上記の各パルプの内の何れか2つを組み合わせて混合してシート状に形成することを示すものであって、上記組み合わせの一つに「古紙パルプ(再生パルプ)とケナフパルプ」があり、これからして、上記は、「古紙パルプ(再生パルプ)にケナフパルプを混合したものを原料としてシート状に形成して」を含むものであるので、前者の「再生パルプにケナフパルプを混合してシート状に形成して」に相当している。

上記より、両者は、「再生パルプにケナフパルプを混合してシート状に成形して吸収シートとした尿吸収体。」という点で一致し、以下の点で相違している。

◇前者は、尿吸収体に用いられる再生パルプとして、「使い捨ておむつや尿取りパッド等の尿吸収体から再生された再生パルプ」を用いているのに対して、後者は、「古紙パルプ」を用いている点。(以下、「相違点1」という。)

◇前者は、再生パルプにケナフパルプを混合する際、「所定割合」で混合しているのに対して、後者は、「所定割合」で混合することを明らかにしていない点。(以下、「相違点2」という。)

上記両相違点について検討する。
◆相違点1について
上記(2-2)で示したように、引用例2には、「使用済み紙おむつからパルプを再生し、これを紙おむつのパルプとして使用する再生処理方法」、つまり、紙おむつ(使い捨ておむつ、尿吸収体)に用いられる再生パルプとして、「紙おむつ(使い捨ておむつ、尿吸収体)から再生された再生パルプ」を用いることが開示されているので、
引用例1記載の発明の「尿吸収体に用いられる再生パルプ」としても、「古紙パルプ」に代えて「紙おむつ(使い捨ておむつ、尿吸収体)から再生された再生パルプ」を用いるようにする、即ち、該相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることに格別の困難性があるとはいえない。

◆相違点2について
引用例1記載の発明において、再生パルプにケナフパルプを混合する際、混合割合を適当なものにすること自体、当業者であれば当然のことであると認められるので、「適当な混合割合」で混合する、つまり、「所定割合」で混合する、即ち、該相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることに格別の困難性があるとはいえない。

そして、「尿吸収体から再生された再生パルプ」に「ケナフパルプ」を混合することによる効果も、引用例1、2記載の発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用例1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2乃至4に係る発明について、検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-18 
結審通知日 2007-06-19 
審決日 2007-07-02 
出願番号 特願2002-360285(P2002-360285)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 和志内山 隆史  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 田中 玲子
豊永 茂弘
発明の名称 尿吸収体  
代理人 戸島 省四郎  

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