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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1162976
審判番号 不服2006-20405  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-14 
確定日 2007-08-13 
事件の表示 特願2002-24782「澱粉含有冷凍食品」拒絶査定不服審判事件〔平成15年8月5日出願公開、特開2003-219819〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本件発明

本件出願は、平成14年1月31日の特許出願であって、その請求項1乃至3に係る発明は、平成18年7月14日受付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項2に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本件発明2」という。)
「【請求項2】澱粉含有冷凍食品であって、植物蛋白質加水分解物及びスクラロースを含み、植物蛋白質加水分解物の添加量が冷凍食品100重量部中0.01?2重量部、スクラロースの添加量が植物蛋白質加水分解物1重量部に対して0.005?0.05重量部含むことを特徴とする澱粉含有冷凍食品。」

2.引用刊行物記載事項

これに対して、当審における平成19年3月7日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本件出願日前に頒布された下記刊行物(1)乃至(2)(以下、「引用例1乃至2」という。)には 、以下の事項が記載されている。

(1)特開平5-252859号公報
(a)【請求項1】レシチンと、穀物蛋白質の部分分解物であって重量平均分子量が約500?約110,000の範囲で、かつ、分解後の重量平均分子量Mwと分解前の重量平均分子量Moとの比率(Mw/Mo)が0.004?0.85の部分分解物との配合物を添加したでんぷん質食品を冷凍保存処理した、品質の改良されたでんぷん質冷凍食品。・・・
【請求項5】穀物蛋白質の部分分解物が、穀物蛋白質をアルカリ、酸、酵素、還元剤又は酸化剤による分解処理の1種又は2種以上の組合せによる分解処理に付して得られるものである請求項1?4のいずれかに記載の冷凍食品。・・・(【特許請求の範囲】)
(b)これらの配合物が適用できるでんぷん質食品としては、例えばパン、スポンジケーキ、麺類等があり、パンおよびスポンジケーキには特に好適である。これら配合物の添加量としては、例えば、でんぷん質食品の原料である小麦粉に対して通常、レシチン及び蛋白質部分分解物の総量で、0.01?1重量%程度の範囲で用いることが可能であるが、0.2%以下の比較的少量でも良好な効果を期待できる。添加量が0.01重量%未満ではでんぷん質冷凍食品の老化防止効果が不十分となり、1重量%を超えても添加量の増大に見合う効果の向上が期待できないため、好ましくない。添加方法としては、食品の原材料に予め添加することも、処方中の水に対して溶解しこれを添加する方法も可能である。また、食品製造工程中に添加する方法も可能である。(段落【0018】)
(c)冷凍保存後、電子レンジで解凍・加熱した場合の品質に対しては、無添加品が激しい硬化を起こしたのに対し、レシチンや蛋白を単独で添加した比較品8?10においてもある程度の防止効果を示したが、表4の結果に示したように本発明による製品ではさらに顕著な改善が認められた。なお、本発明の製剤を用いた食パンは、焼き上げ直後の評価においてもソフト感が良好であり、組織のきめが細かくボリュームも大きくなった(無添加品と比較して10?20%程度増加した)。(段落【0039】)
(d)【発明の効果】この発明の品質の改良されたでんぷん質冷凍食品は、過酷な保存条件における品質劣化を防ぎ、解凍時において冷凍前と比較して遜色のない食品が得られるという効果を有する。より具体的には、食パン等においてその製品のきめが細かくなるとともに容積が増大し、ソフトな食感が得られる。また、スポンジケーキ等においては、製品の乾燥感がなくなるとともに水分の過度の蒸散が防止され、特に表面のパサツキ発生が抑えられるという効果を有する。このような効果は、これまでの製菓・製パン用や麺用の乳化剤等を添加したでんぷん質食品では認められなかった効果であり、極めて有用であると考えられる。(段落【0040】)

(2)国際公開第00/24273号パンフレット
(e)・・・
25.スクラロースを、蛋白素材の臭いをマスキングする有効量含有する蛋白素材含有食品。
26.蛋白素材臭が、カゼイン又はその塩、大豆蛋白、乳清蛋白、小麦蛋白、卵蛋白及びこれらの分解物からなる群から選択される少なくとも1種の蛋白素材に由来する臭いである請求項25記載の食品。・・・
42.スクラロースを、ペプチドの不快味をマスキングする有効量含有するペプチド含有経口組成物。・・・
50.澱粉とスクラロースを含有することを特徴とする、食品組成物。・・・
92.食品にスクラロースを配合する食品味質改善方法。・・・(請求の範囲)
(f)本発明は、かかる蛋白素材臭を軽減・緩和した蛋白素材含有食品を提供するものである。本発明において蛋白素材とは、蛋白質またはその分解物を広く意味するものであり、制限はされないが、具体的には卵、牛乳、大豆、小麦または米等に由来する蛋白質またはその分解物を挙げることができる。・・・(公報第33頁第12?16行)
(g)本発明はスクラロースを各種種品に用いることにより、食品の味質自体を有意に改善し、食品の持つ本来の味質をより引き出し、また好ましくない味質を緩和することにより、総合的に食品のおいしさを向上させること、さらに、この効果は、甘味料としては効果が認められない濃度範囲においても顕著に認められるという知見に基づくものである。本発明に係る味質の改善された食品を得るためには、結果的に最終製品にスクラロースが含有されていればよく、スクラロースの配合の時期や順序を問わない。・・・本発明の効果を得るためのスクラロースの食品への配合割合は、食品の種類等によって異なり、一概に特定できないが、通常食品あたりスクラロース0.00001?0.5重量%、好ましくは、0.0001?0.1重量%の範囲から適宜選択して用いることができる。なお、スクラロース自体の甘みはスクラロースの水溶液では0.0006重量%程度以上で感じられてくるため、甘味料を兼ねて甘味の発現を求める場合はその濃度以上で使用し、また甘味を控えたい場合にはその濃度未満で使用すればよく、かかる量は当業者の通常の能力の発揮により任意に調節しうるものである。(公報第104頁第4?21行)
(h)実施例(II-1-2-6)として、大豆ペプチド3.0にスクラロース0.01を添加したところ苦味が少なく大豆臭さのない、風味の良好な飲料が得られた(公報第134?135頁)、実施例(II-2-2-1)として、大豆ペプチド5.00、レシチン0.10にスクラロース0.012を添加したところ、大豆ペプチド含有飲料は、ペプチドの苦味が気にならなかったこと(公報第142?143頁)及び実施例(II-2-2-2)として、大豆ペプチド5.00、にスクラロース0.015を添加した大豆ペプチド含有粉末飲料は、苦味の抑えられた、大豆臭さのない風味良好な飲料であったこと(公報第143頁)が示されている。

3. 対比・判断

本件発明2は、澱粉含有冷凍食品に、植物蛋白質加水分解物及びスクラロースを添加し、植物蛋白質加水分解物の添加量を冷凍食品100重量部中0.01?2重量部、スクラロースの添加量を植物蛋白質加水分解物1重量部に対して0.005?0.05重量部とすることにより、澱粉を含有した冷凍食品の冷凍による澱粉の老化を防止し、しかも凍結解凍後の最終食品の独特の風味を損なわないものである。
これに対して、上記引用例1には、「穀物蛋白質の部分分解物を0.01?1重量%程度添加したでんぷん質食品を冷凍保存処理した、品質の改良されたでんぷん質冷凍食品」が記載されているといえる。(以下、「引用発明」という。)
本件発明2と、引用発明とを対比すると、後者の「穀物蛋白質の部分分解物」は「植物蛋白質加水分解物」の場合も包含するから、
両者は、「澱粉含有冷凍食品に植物蛋白質加水分解物を冷凍食品100重量部中0.01?1重量部程度添加した澱粉含有冷凍食品」である点で一致しており、
前者が、スクラロースを植物蛋白質加水分解物1重量部に対して0.005?0.05重量部添加しているのに対して、後者がそうでない点で相違する。
しかしながら、引用例2には、スクラロースが植物蛋白質分解物の蛋白素材臭をマスキングしすること(上記記載事項(e)乃至(f))、及び、スクラロースを澱粉含有食品に添加すること(上記記載事項(e))が記載され、具体的に大豆ペプチド等の植物蛋白質分解物を含有する食品の苦味を抑え風味を良好なものとしたことが示されている(上記記載事項(h))。
そうすると、同じく澱粉含有食品である引用発明において、植物蛋白分解質の一つである植物蛋白質加水分解物に起因する不快味をマスキングするためにスクラロースを添加することに困難性は見出せず、それを妨げる特段の理由も見出せない。
その際に、スクラロースの配合量は、マスキング効果と食品の味への影響を考慮しつつ食品に応じて、当業者が適宜最適化するものである(上記記載事項(g))から、スクラロースを植物蛋白質加水分解物1重量部に対して0.005?0.05重量部添加することは当業者が適宜なし得るところであり、それにより、当業者が予期し得ない効果を奏するものでもない。
なお、スクラロースの植物蛋白質加水分解物に対する配合比も上記記載事項(g)で示された配合比と大きく相違するものでもない。

そして、本件発明2の明細書記載の効果も、引用例1乃至2から当業者が予期しうる程度のものであり格別のものとすることができない。

したがって、本件発明2は、引用例1乃至2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび

以上のとおり、本件請求項2に係る発明は、当審で通知した上記拒絶理由通知に引用したその出願前に頒布された上記の引用刊行物1乃至2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その他の請求項については判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-05 
結審通知日 2007-06-12 
審決日 2007-06-25 
出願番号 特願2002-24782(P2002-24782)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鈴木 恵理子
鵜飼 健
発明の名称 澱粉含有冷凍食品  

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