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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1163328 |
審判番号 | 不服2005-10520 |
総通号数 | 94 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-06-08 |
確定日 | 2007-08-23 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第332860号「エアロゾル表面処理」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月12日出願公開、特開平 8-298252〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願は、平成7年11月7日(パリ条約による優先権主張、1994年11月7日アメリカ合衆国)の特許出願であって、同年6月7日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月16日に手続補正がなされ、同16年11月26日付けで拒絶の理由が通知され、同17年1月12日に手続補正がなされたが、同年4月25日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年6月8日に本件審判の請求がなされ、当審において同19年1月19日付けで拒絶理由が通知され、同年3月22日に手続補正がなされ、同年4月10日付けで拒絶理由が通知され、同年6月1日に意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項5に係る発明は、平成19年3月22日に補正された特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。 「キャリアガス中に、少なくとも部分的に凍結した粒子を含むエアロゾル噴出物を、真空室内に導入する工程と、 前記エアロゾル噴出物内の粒子の速さよりも速い少なくとも音速の高速ガス流を、前記真空室内に導入する工程と、 前記エアロゾル噴出物を前記高速ガス流と交差させることにより、前記エアロゾル内の粒子を加速し、基板表面の除去すべき異物に向かわせて、該異物を除去する工程と を有する表面処理方法。」 3.刊行物記載の発明 これに対し、本願優先権主張日前に頒布された刊行物であって、当審で平成19年4月10日付けで通知した拒絶理由に引用された特開平6-224172号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。 ア.第4ページ第6欄第15?19行 「本発明は、マイクロ電子産業に必要なレベルに基質及び他の表面を清浄にするために、高い純度の不活性な微細粒煙霧質(エーロゾル)を供給することにより、その清浄化エーロゾル自体の粒子による再汚染を回避しながら、従来技術の欠点を克服する。」 イ.第4ページ第6欄第23?41行 「本発明は、膨脹に先立って加圧された液体アルゴンもしくはガス状及び/又は液状窒素を含有するその圧力の温度の流れを、その膨脹から得られる冷却により、その流れの中に少なくとも実質的に固体のアルゴン又は窒素の粒子を形成させるように膨脹させて少なくとも実質的に固体のアルゴン又は窒素粒子-含有エーロゾルを形成させること、及びそのエーロゾルを粒子及び/又はフィルム-含有表面に向けてぶつけ、その汚染粒子及び/又はフィルムを除去することからなる汚染粒子及び/又はフィルム-含有表面からそれらを除去する方法に向けられている。 好ましくは、アルゴンエーロゾルの場合には、本発明は窒素キャリアガスが膨脹後にガス状で残り、その窒素キャリアガス中の少なくとも実質的に固体のアルゴン粒子エーロゾルを形成するようにアルゴン-含有流をもった窒素キャリアガスを包含する。 好ましくは、アルゴン又は窒素-含有流の膨脹は、高真空乃至大気圧より大きい圧力範囲に保持された区域に行なわれる。」 上記記載を、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「窒素キャリアガス中に、冷却により得られる実質的に固体のアルゴン又は窒素粒子-含有エーロゾルを、高真空区域に導入する工程と、 前記エーロゾルを、マイクロ電子産業における基質表面の除去すべき汚染粒子に向かわせて、該汚染粒子を除去する工程と を有する表面処理方法。」 同じく当審で通知した拒絶理由に引用された特開平4-253331号公報(拒絶理由に整合させ、以下「刊行物3」という。)には、次のように記載されている。 ア.第2ページ第1欄第18?27行 「本発明は、一般的にいえば二酸化炭素の雪状粒子を凝集し、かつ該雪状粒子を清浄化すべき表面に対して加速するための装置並びに方法に関する。 【従来技術】基板表面からサブミクロン粒子などの破片(debris)を浄化するために種々の方法が工夫されている。半導体工業では、半導体ウエハから微細な粒状汚染物質を除去するために、高圧液体を単独でもしくは微細な植毛ブラシと組み合わせて使用している。」 イ.第5ページ第8欄第28?30行 「大きな膨張チャンバー20の出口21から出てくる凝集雪状片は加速チャンバー22に導入されて、そこで加速され、かつ更に該雪状片の凝集がおこる。」 ウ.第5ページ第8欄第44行?第6ページ第9欄第11行 「加速チャンバー22は、一般に円錐形の流入口、くびれたスロートおよび径が徐々に増大する流出口を有する。圧縮ガスは、フィードライン42、バルブ40、環状チャンバー34、およびリングノズル36を介して、高速で加速チャンバー22に導入される。リングノズル36からの形成された最初の高速ガス流はコアンダプロフィール(coanda profile)に従って、加速チャンバー22の流出口44に向かって導かれる。低圧領域が加速チャンバー22の流出口44に形成される。この低圧領域は、大きな膨張チャンバー20の流出口21と加速チャンバー22の流入口との間の空間への高体積の第二のガスの侵入、および該ガス流と流出口21から現れる大きな雪状片の流れとの併合を誘起する。この第二のガスの第二の流れと大きな雪状片の流れとは、リングノズル36を介して加速チャンバー22に導入されるガスの第一の流れと併合する。該第一、第二および雪状片の流れの併合流は、高体積かつ高速の流れとして、加速チャンバー22の流出口44から排出される。」 上記記載を、技術常識を踏まえ整理すると、上記刊行物3には、次の発明(以下「刊行物3発明」という。)が記載されているものと認められる。 「基板表面の汚染物質除去のため、雪状片が加速チャンバーに導入され、雪状片の速さよりも速い圧縮ガスを加速チャンバーに導入し、雪状片を圧縮ガスと合流させて、雪状片を加速されるもの。」 4.対比・判断 刊行物1発明の「窒素キャリアガス」、「冷却により得られる実質的に固体のアルゴン又は窒素粒子-含有エーロゾル」、「高真空区域」、「マイクロ電子産業における基質表面」、「汚染粒子」は、それぞれ本願発明の「キャリアガス」、「少なくとも部分的に凍結した粒子を含むエアロゾル噴出物」、「真空室内」、「基板表面」、「異物」に相当する又は含まれる。 そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。 「キャリアガス中に、少なくとも部分的に凍結した粒子を含むエアロゾル噴出物を、真空室内に導入する工程と、 前記エアロゾル噴出物を、基板表面の除去すべき異物に向かわせて、該異物を除去する工程と を有する表面処理方法。」 そして、以下の点で相違する。 本願発明は、「エアロゾル噴出物内の粒子の速さよりも速い少なくとも音速の高速ガス流を、前記真空室内に導入する工程」を有し、「エアロゾル噴出物を前記高速ガス流と交差させることにより、前記エアロゾル内の粒子を加速」するものであるが、刊行物1発明は、そのようなものではない点。 上記相違点について、検討する。 刊行物1発明は、粒子を吹き付けて異物を除去するものであるから、除去効果の観点からは、粒子を高速で吹き付けた方が望ましいことは明らかである。 刊行物3発明は、刊行物1発明と同様、基板表面の異物除去に関するものであって、異物除去のための雪状片を圧縮ガスと合流させて加速するものである。 したがって、刊行物1発明において、粒子の高速化、加速するための手段として、刊行物3発明の手段を適用することは、当業者が必要に応じてなしうる設計的事項にすぎない。 加速のために導入される高速ガス流が「少なくとも音速」である点については、加速する以上、より高速であることが望ましいことは当然であり、この点による臨界的効果が生じるとも認められないことから、適宜選択しうる事項にすぎない。 請求人は、平成19年3月22日付け意見書において、音速による技術的意義として、超臨界となる旨を主張するが、かかる技術的意義は、当初明細書に記載されていない。また、かかる技術的意義が、当初明細書から自明であるなら、その程度のものにすぎず、この点に特許性は認められない。しかも、超臨界の利用については、当審で通知した拒絶理由に引用された「木村照、「9.洗浄」、エアロゾル研究、日本エアロゾル学会、平成6年3月20日、第9巻第1号、P26-36」に記載されている。 請求人は、平成19年6月1日付け意見書において、刊行物3発明における加速は、雪状片の大型化による速度の減衰を補うためである旨、主張している。しかし、刊行物3からは、一の技術思想として前記の「刊行物3発明」が認定でき、刊行物1発明への適用を阻害する要因があるとも認められない。 また、請求人は、刊行物1発明には、刊行物3発明を組み合わせる動機が存在しない旨、主張している。確かに、刊行物1には、動機が明記されているものではないが、前記のとおり、除去効果の観点からは、粒子を高速で吹き付けた方が望ましいことは明らかである。 よって、請求人の主張は採用できない。 5.むすび 本願発明は、刊行物1発明、刊行物3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-06-13 |
結審通知日 | 2007-06-19 |
審決日 | 2007-07-02 |
出願番号 | 特願平7-332860 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 金丸 治之 |
特許庁審判長 |
千葉 成就 |
特許庁審判官 |
加藤 昌人 豊原 邦雄 |
発明の名称 | エアロゾル表面処理 |
代理人 | 高橋 敬四郎 |