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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R
管理番号 1163680
審判番号 不服2004-14374  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-08 
確定日 2007-09-06 
事件の表示 平成7年特許願第277839号「自動車用電子ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成9年5月6日出願公開、特開平9-118183号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年10月25日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成19年6月18日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりである。(以下「本願発明」という。)
「自動車に搭載される信号線からの検出信号により制御処理を行う制御部と、この制御部からの制御出力により電力処理を行う駆動部と、この駆動部からの1つの電力出力を3系統以上に分岐する電力分岐回路と、この電力分岐回路の各系統端に接続されたハーネス接続用コネクタと、前記駆動部に接続されたジャンクションボックス接続用コネクタとを備え、前記検出信号は前記ハーネス接続用コネクタを介して前記制御部に入力されることを特徴とする自動車用電子ユニット。」

2.引用刊行物
これに対して、当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開昭61-202956号公報(以下「引用刊行物」という。)には、第1?6図とともに以下の事項が記載されている。
(1)「異なる配線経路をもって自動車の車体に配設され、上記車体の各部に装着された電装品との接続がなされる複数のワイヤハーネスと、該ワイヤハーネスの夫々の一端が連結される少なくとも信号用及び電力用のコネクタ部を1個ずつ有して車体に配されたインスツルメントパネルの近傍に設置されたセントラルボックスとを備えて成り、上記セントラルボックスが、上記信号用のコネクタ部,入力信号に応じて制御信号を発生する演算処理部、及び、該演算処理部と上記信号用のコネクタ部とを分岐接続する分岐接続部を含む小電流を扱う回路部と、上記電力用のコネクタ部、該電力用のコネクタ部に上記電装品に供給されるべき電力を配送するブスバー配線部、及び、該ブスバー配線部に組込まれて上記小電流を扱う回路部からの制御信号により制御され、上記電装品のうちの特定のものに対する電力供給を断続するスイッチング手段を含む大電流を扱う回路部とが設けられて構成されたことを特徴とする自動車の配線装置。」(特許請求の範囲)
(2)「このようにして、車体の各部に装着された各種電装品の相互接続が、上述の各ワイヤハーネス16,18,22,23,24,26及び28とセントラルボックス20とを介して行われているのであり、この場合、第2図に示される如く、例えば、セントラルボックス20に連結される各ワイヤハーネス16,18,22,23及び26のセントラルボックス20側の端部は、信号系のワイヤwと電力系のワイヤWとが夫々別個に結束され、これらに夫々小電流用のコネクタCSと大電流系のコネクタCLとが装着されたものとされており、各ワイヤハーネス中のワイヤは斯かるコネクタCS及びCLを介してセントラルボックス20に接続される。」(第3頁右下欄第9行?第4頁左上欄第2行)
(3)「この例は、大電流取扱回路部40と小電流取扱回路部70とを有し、大電流取扱回路部40に小電流取扱回路部70が着脱可能に組込まれるようにされている。大電流取扱回路部40はアッパーケース41及びロアーケース42を有し、アッパーケース41には、第3図及び第5図A及びBに示される如く、多数のヒューズ43が装着されるヒューズボックス45、例えばパワーウインド用のリレー46が装着されるコネクタ部47、小電流取扱回路部70が装着されるユニット装着枠部48、小電流取扱回路部70と大電流取扱回路部40との接続がなされるコネクタ部50、各ワイヤハーネスとの連結がなされるコネクタ部51等が設けられており、また、ロアーケース42にも、第5図B及びCに示される如く、各ワイヤハーネスとの連結がなされるコネクタ部51が設けられている。
・・・(中略)・・・
一方、大電流取扱回路部40に装着される小電流取扱回路部70は、第3図に示される如く、ユニットケース72を有しており、このユニットケース72の内部に、第4図に示される如くの、相互に接続された2枚のプリント配線基板74a及び74bが配されて構成されるものとされている。プリント配線基板74a及び74bには、各ワイヤハーネスとの連結がなされるコネクタ部76が取り付けられていて、ユニットケース72の外部に臨むようにされている。また、プリント配線基板74a及び74bには、これに加えて、小電流取扱回路部70の大電流取扱回路部40への装着がなされるとき大電流取扱回路部40のコネクタ部50に係合する接続端子部78、後述する演算処理部の主要部を構成する集積回路部品80、警報用ブザー82、さらには、第4図においては図示されていない種々の部品が取り付けられている。」(第4頁左上欄第8行?左下欄第9行)
(4)「ここで、大電流取扱回路部40には、上述のコネクタ部51に含まれるコネクタ部51a,51b,51c及び51dが設けられており、また、小電流取扱回路部70には、上述のコネクタ部76に含まれるコネクタ部76a,76b及び76cが設けられている。そして、大電流取扱回路部40と小電流取扱回路部70とは、上述の大電流取扱回路部40のコネクタ部50に小電流取扱回路部70の接続端子部78が係合することにより形成される接続点78a,78b,78c,78d及び78eにおいて相互間の電気的接続がなされている。
これら大電流取扱回路部40及び小電流取扱回路部70に対して、各種の外部電装品が次の如くに接続されている。即ち、バッテリ39がコネクタ部51aを通じて、また、ランプスイッチ52を介し、コネクタ部51dを通じて接続され、メータ照明ランプ53a及び53bがコネクタ部51b,51c及び76aを通じて接続され、テールライト54a及び54bがコネクタ部51cを通じて接続されている。また、テールライト・ワーニングランプ83及び車速センサ84がコネクタ部76bを通じて接続され、例えば、ドアロック装置等を制御する負荷制御ユニット87がコネクタ部76cを通じて接続され、キー照明ランプ55がコネクタ部51d及びコネクタ部76cを通じて接続されている。・・・(中略)・・・これら、外部電装品の接続は、コネクタ部51a,51b,51c,51d,76a,76b及び76cの夫々に連結される各ワイヤハーネスを通じてなされる。」(第4頁左下欄第17行?第5頁左上欄第10行)
(5)「また、小電流取扱回路部70の内部には、前述の集積回路部品80によって構成される演算処理部90と電流検出部91とが配されている。演算処理部90は入力インターフェース部90a,CPU(中央処理部)90b及びトランジスタ等のスイッチング手段を内蔵する出力バッファ部90cを備えて構成され、定電圧回路92から動作電圧が供給されるようになされている。出力バッファ部90cには、前述の警報用ブザー82が接続されている。・・・(中略)・・・そして、これら演算処理部90及び電流検出部91とコネクタ76a?76c及び接続点78a?78eとが分岐接続路を含む各接続路によって相互に接続されている。
斯かる構成のもとに、演算処理部90に設けられた定電圧回路92には、バッテリ39からの電圧が、コネクタ部51a、ヒューズ43a及び接続点78aを介して印加され、これにより定電圧回路92から得られる定電圧がCPU90b、出力バッファ部90c等に動作電圧として供給される。そして、演算処理部90の入力インターフェース部90aには、図示は省略されているが、種々の電装品を作動させるスイッチの操作等に基づいて得られる各種指令信号が入力され、それらに応じた動作が行われる。
例えば、入力インターフェース部90aに、メータ照明ランプ53a及び53bとキー照明ランプ55とをオンとするための指令信号が入力されると、演算処理部90の出力バッファ部90cの出力端92bに低レベルの電圧出力が得られ、これが、コネクタ部76aを通じてメータ照明ランプ53a及び53bの夫々の一端に印加され、また、コネクタ部76cを通じてキー照明ランプ55の一端に印加される。従って、このとき、バッテリ39からコネクタ部51a、ヒューズ43a及びコネクタ部51bを介してメータ照明ランプ53aを通じる電流、同じく、バッテリ39からコネクタ部51a、ヒューズ43a及びコネクタ部51cを介してメータ照明ランプ53bを通じる電流、及び、バッテリ39からコネクタ部51a、ヒューズ43a及びコネクタ部51dを介してキー照明ランプ55を通じる電流が夫々流れ、メータ照明ランプ53a及び53bとキー照明ランプ55とが点燈状態とされる。
入力インターフェース部90aに、パワーウインド・ユニット56を作動させるための指令信号が入力されると、出力バッファ部90cの出力端92dに低レベルの電圧出力が得られ、これが、接続点78dを介して、大電流取扱回路部40に設けられたリレー46の駆動コイル46aの一端に印加される。・・・(中略)・・・
そして、入力インターフェース部90aに、リアデフォッガー85を作動させるための指令信号が入力されると、出力バッファ部90cの出力端92cに低レベルの電圧出力が得られ、これが、接続点78e及び大電流取扱回路部40に設けられたコネクタ部51dを介して、リレー86の駆動コイル86aの一端に印加される。」(第5頁左上欄第18行?第6頁左上欄第8行)
(6)「このようにして、小電流取扱回路部70に設けられた演算処理部90の出力バッファ部90cから各種の電装品に制御信号が供給され、斯かる制御信号による制御がなされた電装品に対する大電流取扱回路部40からの電力供給が行われて、夫々の電装品の動作制御がなされることになる。
また、小電流取扱回路部70においては、車速センサ84からの車速検出信号が、コネクタ部76bを通じて供給され、これが、コネクタ部76cを通じて負荷制御ユニット87に供給されるとともに、演算処理部90の入力インターフェース部90aに供給されるようになされている。そして、例えば、入力インターフェース部90aに供給された車速検出信号が、車速が時速100Km以上であることを示すときには、演算処理部90の出力バッファ部90cから警報用ブザー82を作動せしめる信号が送出され、警報用ブザー82から警報が発せられる。」(第6頁左下欄第15行?右下欄第12行)
(7)第6図には、出力バッファ部90cの出力端92bからの線が2つに分岐され、一方は、コネクタ部76aを通じて、さらに2つに分岐してメータ照明ランプ53a及び53bの夫々の一端に接続され、他方は、コネクタ部76cを通じてキー照明ランプ55の一端に接続されることが図示されている。

上記(1)?(6)の記載事項及び(7)の図示内容を、特に小電流取扱回路部70に着目して総合すると、引用刊行物には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「自動車の車体に配設される信号系のワイヤwと電力系のワイヤWとからなるワイヤハーネスと、
種々の電装品を作動させるスイッチの操作等に基づいて得られる指令信号が入力される入力インターフェース部90aとCPU(中央処理部)90b及びトランジスタ等のスイッチング手段を内蔵し出力端92bに電圧出力を出力する出力バッファ部90cを備え、指令信号に応じた動作が行われる演算処理部90と、
出力端92bからの出力を2つに分岐しさらにこれらとワイヤハーネスの接続されるコネクタ部76a,76cとをそれぞれ接続して、キー照明ランプ55とさらに分岐して2つのメータ照明ランプ53a及び53bを点燈状態とする分岐接続部と、
出力バッファ部90c等に定電圧回路92を介して動作電圧を供給する接続点78a及び出力バッファ部90c出力端92d,92cに接続される接続点78d,78eが形成され、大電流取扱回路部40のコネクタ部50に係合する接続端子部78とを備える小電流取扱回路部70。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「自動車の車体に配設される信号系のワイヤwと電力系のワイヤWとからなるワイヤハーネス」の信号系のワイヤwは、その機能・構造からみて、前者の「自動車に搭載される信号線」に相当し、同様に、後者の「ワイヤハーネスの接続されるコネクタ部76a,76c」は前者の「ハーネス接続用コネクタ」に相当する。
また、後者の「トランジスタ等のスイッチング手段を内蔵し出力端92bに電圧出力を出力する出力バッファ部90c」は、演算処理部90において、その出力がランプを駆動するためにトランジスタ等のスイッチング手段により電力増幅を行っていると解される。
後者の「指令信号が入力される入力インターフェース部90aとCPU(中央処理部)90b及び出力バッファ部90cを備え」る演算処理部90は、「種々の電装品を作動させるスイッチの操作等に基づいて得られる」「指令信号に応じた動作」が行われるのであるから、当該「指令信号に応じた動作」は、前者の制御部における「制御処理」と同等であるといえる。
そして、このような構成の演算処理部90の場合、引用刊行物の第6図でも矢印で示されるように、通常、出力バッファ部90cはCPU(中央処理部)90bからの出力により動作されるものであって電力増幅を行っているから、後者の「トランジスタ等のスイッチング手段を内蔵し出力端92bに電圧出力を出力する出力バッファ部90c」は前者の「電力処理を行う駆動部」に相当し、後者の演算処理部90から出力バッファ部90cを除いた「入力インターフェース部90aとCPU(中央処理部)90b」は前者の「制御部」に相当するといえる。したがって、後者の「出力バッファ部90c」は前者と同様に「制御部からの制御出力により電力処理を行う」ものであり、後者の「入力インターフェース部90aとCPU(中央処理部)90b」は前者の「制御処理を行う制御部」に相当する。
さらに、後者の「種々の電装品を作動させるスイッチの操作等に基づいて得られる指令信号」は、演算処理部90に、それに応じた動作を行わさせるものであるから、前者の「検出信号」とは、ともに制御部へ入力される制御信号である点で共通する。
また、後者の「出力端92bからの出力」はキー照明ランプ55と2つのメータ照明ランプ53a及び53bを点燈状態とするものであるから「電力出力」であるといえ、後者の「分岐接続部」はこの「電力出力」を分岐して、「ワイヤハーネスの接続されるコネクタ部76a,76c」に接続するものであるから、結局、後者の「分岐接続部」は、前者の「駆動部からの1つの電力出力を」「分岐する電力分岐回路」に対応し、「ハーネス接続用コネクタ」に「この電力分岐回路の各系統端」を「接続」するものといえる。
後者の「大電流取扱回路部40のコネクタ部50に係合する接続端子部78」は「出力バッファ部90c等に定電圧回路92を介して動作電圧を供給する接続点78a及び出力バッファ部90c出力端92d,92cに接続される接続点78d,78eが形成され」ているから、前者の「駆動部に接続されたジャンクションボックス接続用コネクタ」に相当する。
そして、後者の「小電流取扱回路部70」は、その構成・作用からみて、前者の「自動車用電子ユニット」に相当する。

そうすると、両者は、「制御信号により制御処理を行う制御部と、この制御部からの制御出力により電力処理を行う駆動部と、この駆動部からの1つの電力出力を分岐する電力分岐回路と、この電力分岐回路の各系統端に接続されたハーネス接続用コネクタと、前記駆動部に接続されたジャンクションボックス接続用コネクタとを備える自動車用電子ユニット。」である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。
相違点A:制御信号に関し、本願発明が「自動車に搭載される信号線からの検出信号」であって、「ハーネス接続用コネクタを介して」制御部に入力されるものであるのに対して、引用発明は「種々の電装品を作動させるスイッチの操作等に基づいて得られる指令信号」であって、どのような経路で制御部に入力されるのか不明である点。
相違点B:電力分岐回路に関し、本願発明が「3系統以上に分岐する」ものであるのに対して引用発明は2つに分岐するものである点。

そこで、上記相違点について検討する。
(1)相違点Aについて
制御信号について、引用発明は種々の電装品を作動させるスイッチの操作等に基づいて得られる指令信号である。そうすると、スイッチの操作等を検知する検知信号であるといえる。また、上記引用刊行物でも車速検出信号やテールライトの電流検出の信号により警報用ブザーやテールライト・ワーニングランプを制御・駆動することが示されており、ドアの開閉を検知して制御される車両室内灯や足下灯、前照灯や尾灯等の室外灯の点灯、或いは車外の明るさを検知して点灯・調光する計器灯等、検知信号により負荷を制御するものも車載用機器において周知であることから、制御信号を検知信号とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項であるとも認められる。
一方、引用発明の自動車用電子ユニットは、外部との接続が、本願発明と同様に、ハーネス接続用コネクタとジャンクションボックス接続用コネクタにより行われるものであって、その一方であるハーネス接続用コネクタには、電力分岐回路と自動車に搭載される信号線を有するワイヤハーネスが接続されるものである。
また、引用刊行物の車速検出信号は、2.(6)で摘示するようにコネクタ部76bを通じて、つまりハーネス接続用コネクタを介して入力されるものである。
そうすると、制御信号を信号線を介して入力するということは、制御信号が信号であることから当業者が適宜なし得ることといえ、制御信号の入力を行うコネクタとして、大電流取扱回路部40を介してではなく、車速検出信号と同様に、ハーネス接続用コネクタを選択することも、当業者が適宜なし得たことといえる。
さらにいえば、引用発明のワイヤハーネスは信号系のワイヤwと電力系のワイヤWとからなるのであるから、電力系のワイヤWで制御信号を伝送することは通常考えるものではなく、制御信号を信号系のワイヤwである信号線を介して自動車用電子ユニットの制御部に入力することは、当業者が容易になし得たことである。
さらに、駆動される出力と同じコネクタ及びハーネスを介して、出力に関する制御信号を入力することも、当業者が配線を整理・配置するに際し、普通になす程度のことでもある。
以上のように、上記相違点Aに係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易にできたものといえ、その効果についても、当業者が引用発明から予測し得たものと認められる。

(2)相違点Bについて
本願発明において、電力分岐回路を3系統以上とすることの技術的意義が明確にされておらず、かつこれに関する関連構成についても限定されていないことから、引用発明の2系統に分岐するものと作用効果に格別の差異が認められず、引用発明の電力分岐回路を3系統以上とすることは、駆動・制御されるものの数や配置に応じて、当業者が適宜なし得る設計的事項であると認められる。
さらに、引用発明は、キー照明ランプ55とさらに分岐した2つのメータ照明ランプ53a及び53bと合計3つのランプを点燈状態とするものであるから、これをそれぞれ別途の系統として、3系統とすることも当業者にとって適宜なし得る設計的事項である。
したがって、上記相違点Bに係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易にできたものといえる。

そして上記相違点A及びBを合わせ考えても、本願発明の効果が格別であるとはいえない。

なお、請求人は平成19年6月18日付け意見書において、ア.引用刊行物では信号を小電流取扱回路部70内のみで処理し駆動制御を行うことが明記されておらず、信号は大電流回路部40を介して入力する場合もあることから、本願発明と異なる旨、イ.引用刊行物では大電流回路部40にコネクタ部51が設けられているから、大電流回路部40が本願発明のジャンクションボックスに相当し、電力分岐回路はヒューズ43と考えられるから、本願発明と相違し、従来例と同様の問題点を有する旨主張している。
しかしながら、ア.について、本願発明は、駆動部により駆動されるものの、駆動部に接続される一端とは反対側の端部がどのように構成されるか限定されておらず、かつ、明細書の段落【0021】に「エンジンルームランプLP1、フートランプLP2、リアドアランプLP3のそれぞれが例えば図外の別系統で点灯制御され」と記載されていることからみて、引用発明との格別の技術上の差異が認められない。また、イ.について、本願発明においてもジャンクションボックス用コネクタを有するものであって、ここにはジャンクションボックスが接続されるものである。さらに、大電流回路部40にコネクタ部51が設けられているとしても、キー照明ランプ55とメータ照明ランプ53a及び53bは小電流取扱回路部70のコネクタ部76a,76cを介して接続されるものであり、出力バッファ部90cの出力端92bからの出力を分岐してコネクタ部76a,76cに接続されるものであるから、本願発明の電力分岐回路に相当するものである。そして、本願発明は、上記ア.で述べたようであるから、引用発明の小電流取扱回路部70の演算処理部90においても、本願発明と同様の制御・駆動するものといえ、大電流回路部40のヒューズ43が電力分岐回路であるとはいえず、かつ、その効果においても本願発明と引用発明とに格別の差異があるはいえない。よって、上記請求人の主張は採用できない。

したがって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
以上のように、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-03 
結審通知日 2007-07-10 
審決日 2007-07-23 
出願番号 特願平7-277839
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 卓志  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 平上 悦司
柿崎 拓
発明の名称 自動車用電子ユニット  
代理人 三好 秀和  

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