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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T
管理番号 1164408
審判番号 不服2004-20631  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-06 
確定日 2007-09-13 
事件の表示 平成11年特許願第101787号「画像処理装置、画像処理方法およびこれを行うソフトウエアを記録した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月24日出願公開、特開平11-353477〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成11年4月8日(優先権主張平成10年4月8日)の出願であって、平成16年9月1日付で拒絶査定がされ、これに対して同年10月6日に拒絶査定不服審判が請求され、その後当審において平成19年4月12日付で拒絶の理由が通知され、同年6月18日付で手続補正がなされたものである。

2. 本願発明
本願の請求項7に係る発明は、平成19年6月18日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項7に記載された次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「デジタル原画像信号を被写体輝度、入射光強度あるいは再生輝度に対応した露光量を表わす画像信号に変換し、
前記変換画像信号からボケ画像信号を生成し、前記変換画像信号と前記ボケ画像信号との加算比率を調整して、この調整された加算比率で前記変換画像信号と前記ボケ画像信号とを加算することにより、得られた変換画像信号に対し所定のスムージング処理を施してソフトフォーカス処理された変換画像信号を生成し、
得られたソフトフォーカス処理変換画像信号をデジタルソフトフォーカス画像信号に逆変換することを特徴とする画像処理方法。」

3. 引用例
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された特開昭63-059255号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「本発明はカラー画像複製処理方法、特に画像のカラー出力を行う際に原画の画質を電子的に向上させる処理を行うカラー画像複製処理方法に関するものである。」(2頁左下欄1行?4行)

イ 「補正されたアナログ画像信号は対数回路2に入力され、その対数がとられる。これによって、スキャナ1から出力された透明度(透過率)に関して線形な画像信号(データ)が濃度に関して線形な画像信号(データ)に変換される。この対数変換は、デジタル化した後で行うよりも演算量が少なくてすむので、画像信号がまだアナログ信号の内に行なう。
濃度が線形な画像信号はガンマ補正回路3に入力されガンマ補正をうける。ガンマ補正回路3は原画のガンマ特性曲線を補正する。ネガフィルムの場合、ガンマ値は0.5,ポジフィルムの場合は1.6程度である。
ガンマ補正は対数変換の後で行なわれる。これはY=Xのべき乗(ガンマ乗)演算を乗算、すなわちアナログ回路における増幅により行なうことができるからである。さらに、デジタル化を行なう段階ですでにガンマ補正が終了している方がよいので、ガンマ補正はデジタル化よりも前の段階で行なうのがよい。
原画がネガフィルムの場合、ガンマ補正回路3により信号の反転を行なってもよい。さらに、ガンマ補正回路3で異なるガンマ値への切り換えを行なうようにしてもよい。
ガンマ補正されたアナログ画像信号は8ビツトのA/D変換器4によりデジタル値に変換される。デジタル化された画像信号はメモリ5に入力され、R,G,Bの3原色成分がそれぞれ別に記憶される。」(5頁右上欄末行?右下欄8行)

ウ 「図示のように、本実施例の処理システムでは、透明度に関して線形な処理段はその前後を濃度に関して線形な処理段により挟まれている。」(6頁左下欄8行?10行)

エ 「第1図に示すように、画像処理回路6は符号10?17により示される直列に接続されたブロックから構成される。メモリ5に記憶された画像信号は、まずカラーマトリクス回路10に入力される。
カラーマトリクス回路10は原画,読み取り装置1,RGBフィルタなどにより生じる色エラー(疑似濃度)を補正し、原画画像にできるだけ近い色(RGBを単位とする色空間内で表現される)が得られるようにするためのものである。
図示のように、本実施例の処理システムでは、透明度に関して線形な処理段はその前後を濃度に関して線形な処理段により挟まれている。正確な補正のために、透明度に関して線形な処理段にもう一つカラーマトリクス回路を設けてもよい、しかし、原画(特にネガフィルムなど)の疑似濃度の補正が主であれば、電子回路のコストを低減するためカラーマトリクス回路10は濃度に関して線形な処理段にのみ設けるようにするのがよい。
カラーマトリクス回路10は入力画像信号a(x,y)に対応した出力画像信号a′(x,y)を格納したPROMなどから構成することができる。このようなメモリの内容は表(テーブル)のようにプログラムされるので、参照テーブル(LUT(ルック・アップ・テーブル))と呼ぶことができる。カラーマトリクス演算はメモリ5の出力側で行なうことができる。これはRGBの3原色成分がこの位置で初めて並列に現れるためである。
カラーマトリクス回路10の出力信号は逆対数回路11に入力され濃度に関して線形な画像信号の真数がとられる。逆対数回路11はRGBのそれぞれのチャンネルにそれぞれ設けられた3つの参照テーブルとして構成される。
このようにして、逆対数回路11の出力として、原画画像の構成要素の色を正確に表現した透明度が線形な画像信号が形成される。逆対数回路11を構成する参照テーブルも同様にPROMから構成することができる。
逆対数回路11の出力信号はグレーバランス回路12に入力される。グレーバランス回路12は色の分離、たとえば処理システムそのものに起因せずまた読み取り部で補正できないような、あるいは標準的グレーポイント(無彩色点)から外れた「暖かい」あるいは「冷たい」白などのカラーキャスト(色歪み)を補正する。グレーバランス回路12はグレー値、グレーバランスを補正するもので、コントラスト、鮮鋭度、および彩度を補正する処理段の入力側に設けられる。これにより、彩度を、補正グレー値あるいは所望のグレー値に基づいて変更することができる。
さらに、グレーバランス処理はRGB画像信号についても行なわれ、これにより後の輝度および色差信号への変換をすでにグレー補正されたRGB信号に基づいて行なうことができる。
グレーバランス回路12はスタティックRAMから構成された参照テーブルから構成され、そのデータは外部のホストコンピュータからロードし、RGBチャンネルごとに記憶するようにするとよい。
グレーバランス回路12から出力されたRGB画像信号は輝度および色差信号変換回路13に入力され、色の情報に依存しない輝度信号Yと、輝度の情報に依存しない2つの色差信号U,Vに変換される。この変換は下記のような公知の式に基づいて行なわれる。
Y1=0.31R1+0.6G1+0.1B1・・・(1)
U1=B1-Y1 ・・・(2)
V1=R1-Y1 ・・・(3)
この変換には入力信号として透明度に関して線形な画像信号が必要である。
変換された色差信号U1,V1は彩度調整回路14に入力され、輝度信号Y1はコントラスト調整回路15に入力される。
彩度調整回路14は彩度をコントラスト調整回路15が出力する補正された輝度信号Y2に基づき自動的に補正する。彩度を多段にわたって変化させることができるような入力を行なえるキーボードを用いてあらかじめ彩度を選択することもできる。
コントラスト調整回路15は輝度信号Y1を入力し、階調の変化または調整および局部高周波成分の強調を行なう、すなわちコントラスト調整回路15は画像の全体的および局部的なコントラスト処理を行なう。
補正された輝度信号Y2および色差信号U2,V2は輝度および色差信号変換回路16に入力され、前記の(1)?(3)式に基づいて再度RGB信号R2,G2,B2に変換される。
輝度および色差信号変換回路16から出力される信号R2,G2,B2は透明度に関して線形な画像信号(データ)で、これらの信号は第2の対数回路17に入力される。対数回路17は画像信号R2,G2,B2の対数をとり、その結果濃度が線形な画像信号が形成される。このようにして得られた濃度が線形な画像信号はメモリ8に記憶される。」(6頁右上欄18行?7頁左下欄14行)

オ 「コントラスト調整回路15は2次元のデジタルフィルタから構成され、このフィルタは基本的に画像信号の局所周波数領域を強調または抑圧するように構成される。
これは、画像信号f(x,y)を低域フィルタ(LPF)に入力すると低域信号m(x,y)が得られ、この低域信号mを元の画像信号fから差動増幅器により減算すると高域信号f-mを得られるというフィルタ理論に基づいている。この高域信号f-mは直線的に増幅され、低域信号m(x,y)と加算回路により加算される。ここで得られる出力信号をg(x,y)とする。上記処理に等価なフィルタ式は次のように示される。
g(x,y)=m(x,y)+K・{f(x,y)-m(x,y)} ・・・(4)」(7頁右下欄11行?8頁左上欄5行)

したがって、上記アないしオの記載及び図面から、引用例には、「原画の画質を電子的に向上させる処理方法であって、濃度が線形な画像信号であるRGB信号を、逆対数回路で、濃度に関して線形な画像信号の真数をとって、原画画像の構成要素の色を正確に表現した透明度が線形な画像信号を形成し、色差信号変換回路で、輝度信号Y1と色差信号U1,V1に分離し、コントラスト調整回路は輝度信号Yを入力して、画像の全体的および局部的なコントラスト処理を行ない、彩度調整回路は色差信号U1,V1を入力して彩度を補正し、補正された輝度信号Y2および色差信号U2,V2は、輝度及び色差信号変換回路に入力して、再度RGB信号に変換し、第2の対数変換回路によって濃度が線形な画像信号を形成する、原画の画質を電子的に向上させる処理方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4. 対比
引用発明の「原画の画質を電子的に向上させる処理方法」は、原画像に対して所定の画像処理を行う方法であるから、本願発明の「画像処理方法」に相当する。
引用発明の「濃度が線形な画像信号であるRGB信号」は、引用例の前掲イの記載から、スキャナから出力された透明度に関して線形な画像信号を、対数をとることにより濃度に関して線形な画像信号に変換し、デジタル化したものであるから、本願発明の「デジタル原画像信号」に相当する。
引用発明の「濃度が線形な画像信号であるRGB信号を、逆対数回路で、濃度に関して線形な画像信号の真数をとる」ことは、デジタル原画像信号を、逆対数変換することであるから、本願発明の「デジタル原画像信号を被写体輝度、入射光強度あるいは再生輝度に対応した露光量を表わす画像信号に変換する」ことに相当する。そして、引用発明の「透明度が線形な画像信号」は、本願発明の「デジタル原画像信号を被写体輝度、入射光強度あるいは再生輝度に対応した露光量を表わす画像信号」及び「変換画像信号」に相当する。
引用発明の「第2の対数変換回路によって濃度が線形な画像信号を形成する」ことは、変換画像信号を対数変換することにより元の濃度に関して線形な画像信号に変換するものであるから、本願発明の「逆変換する」ことに相当する。
引用発明の、変換画像信号に対する「コントラスト処理」、あるいは、「彩度の補正」処理は、「透明度が線形な画像信号」に対して行われる、画質を変更するための画像処理であるから、「変換画像信号に画像処理を施して、画像処理された変換画像信号を生成する」処理であるといえる。そうすると、引用発明の「コントラスト調整回路は輝度信号Yを入力して、画像の全体的および局部的なコントラスト処理を行ない、彩度調整回路は色差信号U1,V1を入力して彩度を補正し、補正された輝度信号Y2および色差信号U2,V2は、輝度及び色差信号変換回路に入力して、再度RGB信号に変換し、第2の対数変換回路によって濃度が線形な画像信号を形成する」ことは、「変換画像信号に画像処理を施して、画像処理された変換画像信号を生成し、該画像処理済の変換画像信号を、該画像処理済のデジタル画像信号に逆変換する」ことであるといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「デジタル原画像信号を被写体輝度、入射光強度あるいは再生輝度に対応した露光量を表わす画像信号に変換し、前記変換画像信号に画像処理を施して、画像処理された変換画像信号を生成し、該画像処理済の変換画像信号を、該画像処理済のデジタル画像信号に逆変換する、画像処理方法」で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明は、変換画像信号に対して行われる画像処理として、ソフトフォーカス処理を行うものであり、そのための構成として、「変換画像信号からボケ画像信号を生成し、前記変換画像信号と前記ボケ画像信号との加算比率を調整して、この調整された加算比率で前記変換画像信号と前記ボケ画像信号とを加算することにより、得られた変換画像信号に対し所定のスムージング処理を施してソフトフォーカス処理された変換画像信号を生成し、得られたソフトフォーカス処理変換画像信号をデジタルソフトフォーカス画像信号に逆変換する」との事項を備えているのに対して、引用発明は、変換画像信号に対して行われる画像処理として、コントラスト処理、あるいは、彩度の補正処理を行うものであり、前記ソフトフォーカス処理に関する事項を備えていない点。

5. 当審の判断
[相違点]について
画質を変更する画像処理として、「画像信号からボケ画像信号を生成し、所定の加算比率で前記画像信号と前記ボケ画像信号とを加算することにより、得られた画像信号に対し所定のスムージング処理を施してソフトフォーカス処理を行う」ことは、周知技術である。
例えば、原査定の拒絶理由で引用された特開平09-116770号公報には、「
【0032】すなわち、オペレータが、キーボード69を用いて、ソフトフォーカス画像の生成を指示すると、指示信号が画像処理装置に入力され、データバス65を介して、色調変換手段110に送られ、色調変換手段110の変換パラメータが、次式のように設定される。
【0033】
【数4】
┌ ┐ ┌ ┐
| R1 | | R |
| G1 | = M| G |
| B1 | | B |
└ ┘ └ ┘
同時に、指示信号が、輝度信号変換手段111に送られて、輝度信号変換手段111の変換パラメータが、次式のように設定される。
【0034】
【数5】
Y = α [ a b c ] M-1画像データは、このように、変換パラメータが設定された色調変換手段110により、色調が変換され、あらかじめ定められた割合αにしたがって、周波数処理手段103のメインパスとバイパスとに送られ、バイパスに送られた画像データは、輝度信号変換手段111、ローパスフイルタ112およびダイナミック・レンジ圧縮手段113による信号処理を受け、画像データ合成手段114により、メインパスを介して、画像データ合成手段114に入力された画像データと合成される。こうして、ローパスフイルタ112によって生成されたボケ画像に対応する画像データが、合成されるため、合成された画像データに基づいて、ソフトフォーカス画像を再生することが可能になる。また、色調変換手段110および輝度信号変換手段111の変換パラメータは、それぞれ、上述のように、合成された画像データの色信号R’、G’、B’が、周波数処理手段103に入力される画像データの色信号R、G、Bと等しくなるように設定されているため、彩度を低下させることなく、所望のように、ソフトフォーカス画像をカラーペーパー90上に生成することが可能になる。
」と記載されている。
また、画像処理一般において、処理の程度を規定するパラメータを任意に調整可能等することは、普通に行われていることであるから、前記周知技術における「所定の加算比率」を、任意に調整可能とすることは当業者が実施の際に適宜行うべき事項にすぎない。
したがって、引用発明の、変換画像信号に対して行われるコントラスト処理、あるいは彩度の補正処理も、画質を変更する画像処理であるから、引用発明において、前記コントラスト処理、あるいは彩度の補正処理に代えて、周知技術の画質を変更する画像処理である前記ソフトフォーカス処理を用いて、「変換画像信号からボケ画像信号を生成し、前記変換画像信号と前記ボケ画像信号との加算比率を調整して、この調整された加算比率で前記変換画像信号と前記ボケ画像信号とを加算することにより、得られた変換画像信号に対し所定のスムージング処理を施してソフトフォーカス処理された変換画像信号を生成し、得られたソフトフォーカス処理変換画像信号をデジタルソフトフォーカス画像信号に逆変換する」ことは、当業者が容易に想到できたものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明、及び、周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。

6. むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-10 
結審通知日 2007-07-17 
審決日 2007-07-31 
出願番号 特願平11-101787
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 松永 稔
脇岡 剛
発明の名称 画像処理装置、画像処理方法およびこれを行うソフトウエアを記録した記録媒体  
代理人 福島 弘薫  
代理人 渡辺 望稔  
代理人 三和 晴子  

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