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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1164590
審判番号 不服2004-25097  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-09 
確定日 2007-09-12 
事件の表示 平成11年特許願第103732号「入浴剤並びに入浴方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月24日出願公開、特開2000-297031〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年4月12日の出願であって、その請求項1?2に係る発明は、平成16年10月1日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、請求項1に記載された発明を「本願発明1」、請求項2に記載された発明を「本願発明2」という。)

「【請求項1】タウリンを10?50重量%含有することを特徴とする炭酸ガス発泡性入浴剤。
【請求項2】タウリンと炭酸ガス発泡性入浴剤を同時に併用することを特徴とする入浴方法。」

2.引用例の記載の概要
原査定の拒絶の理由で引用した、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開昭60-215618号公報(引用文献2、以下、「引用例A」という。)及び特開昭61-145110号公報(引用文献1、以下、「引用例B」という。)には以下の事項が記載されている。

引用例A;

(A-1)「炭酸塩と酸を含有する弱酸性入浴剤において、生薬を配合したことを特徴とする弱酸性入浴剤。」(1頁左下欄5?6行、【特許請求の範囲】)

(A-2)「入浴剤は一般に芒硝、硼砂、イオウ、食塩、炭酸塩等の無機塩類混合物に香料、着色料、植物エキス、有機酸等を配合したもので、浴湯に香り、色調を与えたり、皮膚面に適度な刺激を与えることにより血液の循環を活発にし、疲労回復、新陳代謝を促進するものである。これらの浴用剤の中で、炭酸塩と酸を組合せた発泡性入浴剤があり、これは浴湯中に炭酸ガスの気泡を発生させて、リラックス感や爽快感を高め、入浴を楽しくする効果を有する。」(1頁左下欄13行?同頁右下欄2行)

(A-3)「本発明者は、…炭酸塩と酸を含有し、浴湯のpHが弱酸性を呈する入浴剤とすることにより、炭酸ガスを浴液中に留め、血行を促進し、湯冷めを惹起しない弱酸性入浴剤を開発した。更に今般、本発明者は、これに皮脂分泌促進剤を配合すると血行促進効果と湯上がり肌のしっとり感効果が相乗的に高められることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、炭酸塩と酸を含有する弱酸性入浴剤において、生薬を配合した弱酸性入浴剤を提供するものである。」(1頁右下欄8?18行)

(A-4)「本発明入浴剤には、一般に配合されている、香料、色素、あるいはビタミン類、温泉の有効成分、蛋白分解酵素、海草エキス、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、シリコン等を配合して、効果を一層高めることができる。」(2頁右下欄5?9行)

引用例B;

(B-1)「タウリンを配合してなることを特徴とする浴剤。」(1頁左下欄5行、【特許請求の範囲】)

(B-2)「本発明の目的は、皮膚の保水状態を保ち、皮膚保護を行いうる浴剤を提供することである。
更に本発明の目的は、皮膚に栄養分を供給し、皮膚の美容及び健康を保ちうる浴剤を提供することである。」(1頁右下欄13?17行)

(B-3)「本発明の浴剤は、通常の浴剤に添加される構成成分を配合することができる。即ち、例えば塩化ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸などの無機塩類、クエン酸、ピロリドンカルボン酸などの有機酸類、…などを適宜混合してもよい。」(2頁左上欄19行?同頁右上欄4行)

(B-4)「本発明の浴剤は、入浴時にタウリン等を皮膚より吸収せしめるので、皮膚の保護、美容及び健康の目的を達成しうるものである。」(2頁右上欄6?8行)

(B-5)実施例1?2にはタウリンを含む浴剤の処方例(タウリンの含有量3重量%(実施例1)、2重量%(実施例2))が記載されている(2頁右上欄9行?同頁左下欄5行)

3.対比判断
3-1.本願発明1と引用例Aとを対比する
引用例Aには「炭酸塩と酸を含有する弱酸性入浴剤において、生薬を配合したことを特徴とする弱酸性入浴剤。」(A-1)が記載されている。(以下、「引用発明A1」という。)
この入浴剤は炭酸塩と酸の配合により炭酸ガス発泡性を有するものである。((A-2)、(A-3))

そこで本願発明1と引用発明A1とを対比すると、両者は、「炭酸ガス発泡性入浴剤」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)本願発明1はタウリンを10?50重量%含有しているのに対して、引用発明A1はこの点についての記載がない点

以下、相違点について検討する。
引用例Aには、「入浴剤には、一般に配合されている、ビタミン類、温泉の有効成分、蛋白分解酵素、海草エキス、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、シリコン等を配合して、効果を一層高めることができる」(A-4)と記載されていて、生薬以外の薬効成分をさらに配合できることが記載されている。
一方、引用例Bには、「タウリンを配合してなることを特徴とする浴剤」(B-1)が「無機塩類、有機酸類等の通常の浴剤に添加される構成成分を配合することができ」(B-3)て、「皮膚の保水状態を保ち、皮膚保護を行い、皮膚に栄養分を供給し、皮膚の美容及び健康を保ちうること、及び入浴時にタウリン等を皮膚より吸収せしめるので、皮膚の保護、美容及び健康の目的を達成しうる」((B-2)、(B-4))と記載されている。
そうすると、引用発明Aにおいて、タウリンの有する皮膚の保護、美容効果((B-2)、(B-4))を期待して、炭酸ガス発泡性入浴剤にタウリンを配合することは当業者であれば容易になし得ることであり、そして引用例Bは、タウリンの配合量を実施例記載の数値(B-5)に限定するものではないので、その配合量にしても、引用例Bの3重量%の値に限らずその割合を10?50重量%と増加させてみることは当業者であれば容易になし得ることである。

してみれば、本願発明1の、タウリンを10?50重量%含有することを特徴とする炭酸ガス発泡性入浴剤は引用例A及び引用例Bに記載された発明に基づいて当業者であれば容易になし得ることである。

3-2.本願発明2と引用例Aとを対比する
引用例Aには、「生薬を配合したことを特徴とする炭酸ガス発泡性入浴剤」が記載されている。そして、入浴剤は入浴するために用いるものであるから、引用例Aには「生薬を配合したことを特徴とする炭酸ガス発泡性入浴剤を用いる入浴方法」が実質的に記載されているといえる。(以下、「引用発明A2」という。)
そこで本願発明1と引用発明A2とを対比すると、両者は、「炭酸ガス発泡性入浴剤を用いる入浴方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)本願発明2はタウリンと炭酸ガス発泡性入浴剤を同時に併用している点

以下、相違点について検討する。
引用例Aには、「入浴剤には、一般に配合されている、ビタミン類、温泉の有効成分、蛋白分解酵素、海草エキス、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、シリコン等を配合して、効果を一層高めることができる」(A-4)と記載されていて、薬効成分を配合できることが記載されている。
一方、引用例Bには、「タウリンを配合してなることを特徴とする浴剤」(B-1)が「無機塩類、有機酸類等の通常の浴剤に添加される構成成分を配合することができ」(B-3)て、「皮膚の保水状態を保ち、皮膚保護を行い、皮膚に栄養分を供給し、皮膚の美容及び健康を保ちうること、及び入浴時にタウリン等を皮膚より吸収せしめるので、皮膚の保護、美容及び健康の目的を達成しうる」((B-2)、(B-4))と記載されている。

そして、入浴にあたり、合わせ用いられる薬効成分と炭酸ガス発泡性入浴剤とを予め製剤化し一体化したものを使用するか、薬効成分と炭酸ガス発泡性入浴剤を、入浴時に同時に併用する方法を採用するかは当業者であれば任意に選択し得ることである。

してみれば、本願発明2の、タウリンと炭酸ガス発泡性入浴剤を同時に併用することを特徴とする入浴方法は引用例A及び引用例Bに記載された発明に基づいて当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明1?2の効果にしても、当業者であれば容易に予測し得る範囲内のものである。

(請求人は平成16年10月1日付けの意見書及び平成17年3月22日付けの審判請求に係る手続補正書中で、比較実験を示し、「タウリンと発泡性入浴剤を併用した場合(本願発明)と、発泡性入浴剤単独の場合とを比較すると、乳酸値減少効果はタウリンと発泡性入浴剤を併用した場合(本願発明)の方が1.9?2.4倍となっている」旨記載しているが、この比較実験は「市販の炭酸ガス発泡性入浴剤を浴湯に投入して溶解した後 、試験液としたものと、本願発明の実施例1で示される、炭酸ナトリウム30重量部、炭酸水素ナトリウム 15重量部、コハク酸20重量部、無水ボウ硝5重量部及びタウリン35重量部を主成分とした混合物からなる50gを打錠成形し、これを浴湯に投入して 溶解した後、試験液としたものとを使用し、パネラーに、入浴させ、ジョギングを行った後、採血を行い、疲労物質である乳酸値について測定し、採血後、直ちに同じ入浴剤の浴湯に入浴し、更に採血を行い同様に乳酸値を測定した」ものであり、そもそも比較対象のもととなる発泡性入浴剤の組成や発泡能が明らかではないから、かかる比較実験の結果からタウリンと発泡性入浴剤の併用による肝臓賦活作用を議論することはできない。)

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1?2は引用例A及び引用例Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2007-07-02 
結審通知日 2007-07-10 
審決日 2007-07-23 
出願番号 特願平11-103732
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 悟  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 谷口 博
弘實 謙二
発明の名称 入浴剤並びに入浴方法  
代理人 西村 公佑  
代理人 高木 千嘉  

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