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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1164831
審判番号 不服2005-8855  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-12 
確定日 2007-09-21 
事件の表示 特願2000-245246「データ処理サービス方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月20日出願公開、特開2002- 56033〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成12年8月11日の出願であって、本願の請求項1ないし3に係る発明は、本願明細書および図面の記載からみて、その請求項1ないし3にそれぞれ記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成17年2月7日付け、平成17年5月12日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「クライアントコンピュータからインターネットを経由して送信された製品設計に係る一次データを、アプリケーション・サービス・プロバイダのサーバコンピュータにアップロードし、前記サーバコンピュータに備えるアプリケーションソフトを用いて前記一次データをデータ形式の異なる金型設計用の二次データに変換処理するとともに、当該変換処理が完了したなら、前記サーバコンピュータにより、前記二次データを前記クライアントコンピュータからダウンロードできる状態に保存し又は指定した端末に直接転送するサービスを行うことを特徴とするデータ処理サービス方法。」

2 刊行物
(1)これに対して、原審拒絶理由で引用された、本願の出願日前である2000年(平成12年)8月4日に頒布されたものであって、特許を受ける権利を有する者が公開したものとはいえず、30条適用申請の対象ともされていない刊行物であるところの、「井上健太郎,設計データを変換するASPサービスが登場,日経システムプロバイダ,日本,日経BP社,2000年8月4日,第107号,49-51頁」(以下、「刊行物1」という)には次の事項が開示されている。
ア 「設計データを変換するCADのASPサービスが相次いで登場している。(中略)自社の2次元CAD(コンピュータによる設計)ソフトを使ったASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービスを試験的に開始した。日本ユニシスやNTTコミュニケーションズ(中略),図研なども3次元のCADソフトを所有する部品メーカーなどに向けて,ASP事業を立ち上げた。これらは設計データを取引先に合わせて変換したり,リアルタイムで設計データを交換したりするもの。」(49頁左欄3行目ないし21行目)
イ 「社内のCADソフトの種類を減らすには,異なる設計データを変換するツールを自社で購入するという手段もある。しかし,日本ユニシスやコクリエイト・ソフトウェアなどの変換ツールは1本100万円以上するため,小規模な部品メーカーのなかには購入をためらう場合も出てくる。そこで,こうした変換ツールの機能もASPで提供すれば,中小メーカーにもCADソフトの需要が広がってくるわけだ。」(49頁中欄3行目ないし右欄1行目)
ウ 「当面はデータ変換のASPが中心
その3次元CADソフトでは,既存のCADユーザー向けに設計データを変換するASPサービスから立ち上がりそうだ。
日本ユニシスが7月に発表した異なる設計データの変換サービスはその一つ(図2)。同社は自社製の3次元CADソフト,CADCEUSを自動車や電機メーカーの下請けである金型メーカーにも売り込んでいるが,金型メーカーは取引先の製造メーカーから様々なCADソフトを使った設計データを渡されることが多い。
そこで日本ユニシスは,1本100万?120万円で販売していた自社のデータ変換ツールをASP事業者として提供するサービスに踏み切った。(中略)
このASPサービスは,CADCEUSの販売代理店と日本ユニシスが共同で手掛ける。まず7月には,CADCEUSの有力な販売代理店である射出成型機メーカーの日精樹脂工業がデータ変換のASP事業を立ち上げた。(中略)
複雑な形状では変換がうまくいかないケースも考えられるため,いったん変換結果を表示して,満足いった場合にだけ料金を徴収するといった料金体系も考えているようだ。」(50頁中欄19行目ないし右欄37行目)
エ 50頁図2には、以下の点が開示されている。
日本ユニシスの代理店が実施したデータ変換のASPサービスである点。
インターネットを介して、CADCEUSのユーザー(金型業者)がProENGINEER、I-DEAS,CATIA形式の設計データを送る点。
CADCEUS(日本ユニシス製)のデータに各形式データを変換し、インターネットを介して、前記CADCEUS(日本ユニシス製)のデータを前記CADCEUSのユーザーに送る点。

上記アないしエによれば、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物発明」という)が開示されているといえる。
「既存の3次元CADユーザー向けに設計データを変換するデータ変換のASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービス方法であって、インターネットを介して、CADCEUSのユーザーである金型業者がProENGINEER、I-DEAS、CATIA形式の設計データを送り、各形式データからCADCEUSのデータに変換し、変換されたCADCEUSのデータを前記CADCEUSのユーザーに送る、データ変換のASPサービス方法。」

(2)また、原審拒絶理由で引用された、本願の出願日前である2000年(平成12年)5月15日に頒布された「吉田勝,CAMにWeb技術活用の動き,日経デジタルエンジニアリング,日本,日経BP社,2000年5月15日,第30号,24-25頁」(以下、「刊行物2」という)には、次の事項が記載されている。
「エンドユーザはWebブラウジングでシステムにアクセスし,(中略)計算サーバのバックエンドでは市販CAMの計算エンジンが作動しており,パス計算が終了するとメールが送られてくる。メールを受け取ったらブラウザ上で結果を確認し,ダウンロードするという仕組みだ。」(24頁左欄25行目ないし中欄5行目)

3 本願発明と刊行物発明との対比
本願発明と刊行物発明を対比すると、
(1)刊行物発明の「ProENGINEER、I-DEAS、CATIA形式の設計データ」は、本願発明の「製品設計に係る一次データ」に相当し、CADCEUSのユーザーである金型業者の設計データを送る手段がクライアントコンピュータであることは自明であるから、刊行物発明の「インターネットを介して、CADCEUSのユーザーである金型業者がProENGINEER、I-DEAS、CATIA形式の設計データを送る」ことは、本願発明でいう「クライアントコンピュータからインターネットを経由して送信された製品設計に係る一次データを、アプリケーション・サービス・プロバイダのサーバコンピュータにアップロード」することに相当する。
また、刊行物発明の「CADCEUSのデータ」は本願発明の「金型設計用の二次データ」に相当し、各形式データからCADCEUSのデータに変換するのはアプリケーション・サービス・プロバイダのサーバコンピュータにある変換用のアプリケーションソフトであるのは自明といえ、刊行物発明は「各形式データからCADCEUSのデータに変換」するから、本願発明でいう、「前記サーバコンピュータに備えるアプリケーションソフトを用いて前記一次データをデータ形式の異なる金型設計用の二次データに変換処理する」ことに相当する方法の存在が認められる。
また、刊行物発明は、変換されたCADCEUSのデータを前記CADCEUSのユーザーに送るものであり、クライアントコンピュータから見れば当該データをダウンロードすることに他ならないから、刊行物発明と本願発明とは、「当該変換処理が完了したなら、前記サーバコンピュータにより、前記二次データを前記クライアントコンピュータからダウンロードできるサービスを行う」点で一致している。
もっとも、クライアントコンピュータからダウンロードする点において、本願発明は、「前記クライアントコンピュータからダウンロードできる状態に保存し又は指定した端末に直接転送する」のに対し、刊行物発明は、その点が明らかでない。
また、刊行物発明の「ASPサービス方法」はデータ変換というデータ処理を行うサービスであるから、刊行物発明と本願発明とは「データ処理サービス方法」である点で一致している。

(2)したがって、両者は「クライアントコンピュータからインターネットを経由して送信された製品設計に係る一次データを、アプリケーション・サービス・プロバイダのサーバコンピュータにアップロードし、前記サーバコンピュータに備えるアプリケーションソフトを用いて前記一次データをデータ形式の異なる金型設計用の二次データに変換処理するとともに、当該変換処理が完了したなら、前記サーバコンピュータにより、前記二次データを前記クライアントコンピュータからダウンロードできるサービスを行うことを特徴とするデータ処理サービス方法。」である点で一致し、次の点で相違しているものと認められる。
a クライアントコンピュータからダウンロードする点において、本願発明は、「前記クライアントコンピュータからダウンロードできる状態に保存し又は指定した端末に直接転送する」のに対し、刊行物発明は、その点が明らかでない点

4 相違点aについての検討
上記相違点の「前記クライアントコンピュータからダウンロードできる状態に保存し又は指定した端末に直接転送する」は択一的記載であって、そのうち、クライアントコンピュータからダウンロードできる状態に保存することは、上記2(2)にあるように適宜なしうる程度のことであるから、「前記クライアントコンピュータからダウンロードできる状態に保存し又は指定した端末に直接転送する」ようにすることは適宜なしうる程度のことであり、また、上記相違点に基づく本願発明の効果に格別顕著なものがあるともいえない。

5 むすび
したがって、本願発明は、刊行物1,2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-17 
結審通知日 2007-07-18 
審決日 2007-08-01 
出願番号 特願2000-245246(P2000-245246)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 幸雄  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 加藤 恵一
松永 稔
発明の名称 データ処理サービス方法  
代理人 下田 茂  

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