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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1164952 |
審判番号 | 不服2005-23497 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-06 |
確定日 | 2007-09-27 |
事件の表示 | 特願2002- 58560「半導体パッケージの実装構造」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月12日出願公開、特開2003-258153〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成14年3月5日の出願であって、その請求項1?4に係る発明は、平成17年12月6日付け手続補正書により請求項の削除を目的として補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。 「回路面に半田ボールを有する半導体チップを内部に電気配線を有するキャリア基板に搭載してなる半導体パッケージの実装構造において、前記半導体チップの回路面の形成されていない面に、熱膨膨張係数の相異なる基板を熱膨張係数の低い側が前記半導体チップの回路面の形成されていない面に対向するように複数重ねて張り合わせた基板が具備されてなることを特徴とする半導体パッケージの実装構造。」 2.引用刊行物とその主な記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本出願前に国内において頒布された刊行物である特開平2001-274196号公報(以下、「引用文献1」という。)及び特開平2-116197号公報(以下、「引用文献2」という。)の主な記載事項は、次のとおりである。 (1)引用文献1:特開平2001-274196号公報 (1a):「【特許請求の範囲】 【請求項1】半導体チップと、 この半導体チップの一方表面側に接合され、上記半導体チップと電気接続された配線基板と、 上記半導体チップの他方表面側に接合され、上記配線基板と同じ材料からなる反り防止基板とを含むことを特徴とする半導体装置。」 (1b):「【0002】 【従来の技術】半導体装置の実装面積を減少させるために、半導体チップ自身とほぼ同等の大きさのICパッケージであるチップサイズパッケージについての開発が従来から行われている。チップサイズパッケージ型の半導体装置の一つの形態に、表面実装型のパッケージがある。この表面実装型のパッケージでは、薄型の半導体チップが、フィルム状の配線基板上に接合され、このフィルム状の配線基板が、電子機器内の実装基板上に実装される。半導体チップと接合される配線基板は、半導体チップの周縁部に配列された複数のパッドを再配線して配線基板の下面に二次元配列された半田ボールと接続する内部配線を有している。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところが上述のような構成では、極めて薄型の半導体チップを、これとは熱膨張係数の異なる配線基板に接合した構造であるので、環境温度の変化に伴って、パッケージに反りが生じるという問題がある。そこで、この発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、薄型の半導体チップを配線基板に接合した構造でありながら反りが生じることを防止できる半導体装置を提供することである。」 (1c):「【0010】半導体チップ1は、その活性表面を配線基板2に対向させて配置されている。この半導体チップ1の活性面には、半田ボール4が、その周縁に沿って複数個配列されて形成されている。この半田ボール4を介して、半導体チップ1が配線基板2と接合されており、これにより、半導体チップ1の内部回路が配線基板2に電気接続されている。配線基板2は、・・・半導体チップ1の半田ボール4に接続される内部配線(図示せず)を備えている。・・・ 【0011】一方、半導体チップ1の配線基板2とは反対側の表面には、絶縁板3がたとえば、接着剤によって貼り付けられて接合されている。この絶縁板3は、配線基板2を構成する絶縁材料と同じ絶縁材料を用いて作製されている。そして、この絶縁板3の厚さは、配線基板2の厚さとほぼ等しくされている。これにより、半導体チップ1の活性面および非活性面には、それぞれ等しい熱膨張係数の板状体である配線基板2および絶縁板3が接合されていることになる。したがって、環境温度が変化した場合に、半導体チップ1の活性面および非活性面において、熱膨張または熱収縮が等しく生じるから、当該半導体装置の使用時または保管時などに、パッケージに反りが生じるおそれがない。」 (1d):「【0014】第1の半導体チップ11は、上述の第1の実施形態における半導体チップ1の場合と同じく、その活性面に形成された半田ボール4を配線基板2に接合させることによって、この配線基板2を介して電子機器内のより大きな実装基板に電気接続できるようになっている。第1の半導体チップ11と第2の半導体チップ12との間に介装される配線基板21は、第1の半導体チップ11に対しては、その活性面および非活性面の熱膨張の差を補償する反り防止基板として機能する。・・・」 (2)引用文献2:特開平2-116197号公報 (2a):「2種類の金属などを接合した部材を介在させると、バイメタルの原理により、昇温により大きく湾曲する特性が得られ、この湾曲する特性を活かして、基板の反りに対して反対方向に基板を反らせ、熱による基板の反りを相殺させることができる。 従来では、基板を硬くするなど一方向への反りを低減することに重きがおかれていたが、本発明では発生した反りを戻す復元性を基板にもたせるようにしたものである。」(2頁左下欄10?19行) 3.当審の判断 3-1.引用文献1記載の発明 (ア)引用文献1の摘示(1a)には、半導体チップの一方表面側に接合され、該半導体チップと電気接続された配線基板等を含む半導体装置が記載され、また、摘示(1b)には、該半導体装置は、チップサイズパッケージ型のものである旨が記載されているから、引用文献1には、半導体チップを配線基板に搭載してなる半導体パッケージの実装構造が記載されているといえる。 (イ)引用文献1の摘示(1a)の記載からみて、該実装構造は、半導体チップの他方表面側に接合され、配線基板と同じ材料からなる反り防止基板を含んでいるといえる。 (ウ)引用文献1の摘示(1c)には、半導体チップ1の活性面(一方表面側)には半田ボールが形成されている旨、配線基板は内部配線を備えている旨が記載されている。 以上の(ア)?(ウ)の事項を考慮し、摘示(1a)?(1c)の記載を整理すると、引用文献1には、次の「半導体パッケージの実装構造」の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されていると認められる。 引用文献1発明:「一方表面側に半田ボールが形成された半導体チップを内部配線を有する配線基板に搭載してなる半導体パッケージの実装構造において、半導体チップの他方表面側に接合され、配線基板と同じ材料からなる反り防止基板を含む、半導体パッケージの実装構造。」 3-2.本願発明1と引用文献1発明との対比 本願発明1と引用文献1発明を対比すると、 (カ)引用文献1発明における「配線基板」、「内部配線」は、それぞれ、本願発明1における「キャリア基板」、「(内部の)電気配線」に相当する。(以下、引用文献1発明における用語の代わりに、それに相当する本願発明1における用語を使用することがある。) (キ)引用文献1発明における半導体チップの前記「一方表面」は、半田ボールが形成された側の面であって、該半田ボールと電気接続された回路を具備する側の面といえるから、本願発明1における「回路面」に相当する。 (ク)引用文献1発明における半導体チップの前記「他方表面」は、本願発明1における「回路面の形成されていない面」に相当する。 以上の(カ)?(ク)の事項を勘案すると、両者は、 「回路面に半田ボールを有する半導体チップを内部に電気配線を有するキャリア基板に搭載してなる半導体パッケージの実装構造において、前記半導体チップの回路面の形成されていない面に基板が具備されてなる、半導体パッケージの実装構造。」である点で一致するが、次の点で相違する。 相違点:半導体チップの回路面の形成されていない面に具備された基板が、本願発明1では、「熱膨膨張係数の相異なる基板を熱膨張係数の低い側が前記半導体チップの回路面の形成されていない面に対向するように複数重ねて張り合わせた」ものであるのに対し、引用文献1発明では、「配線基板と同じ材料からなる反り防止基板」である点 3-3.相違点についての検討 摘示(1b)、(1d)等の記載からみて、引用文献1発明は、“半導体チップを接合した配線基板の構成では、極めて薄型の半導体チップを、これとは熱膨張係数の異なる配線基板に接合した構造であるので、環境温度の変化に伴って、パッケージに反りが生じる”という従来の技術における問題を解決するために、半導体チップの他方表面(回路面の形成されていない面)に、「配線基板と同じ材料からなる反り防止基板」を設けて、熱膨張の差に基づく反りを防止しようとするものといえる。 一方、各種板状体の熱膨張の差などに基づく反りを調整するために、“熱膨膨張係数の相異なる板状物を複数重ねて張り合わせたもの”を用いることは、次の周知例1の摘示(周1A)?(周1C)、周知例2の摘示(周2A)、刊行物2の摘示(2a)などの記載にみられるように、本出願前において周知の事項である。 してみれば、引用文献1発明において、熱膨張の差に基づく反りを防止する「配線基板と同じ材料からなる反り防止基板」に代えて“熱膨膨張係数の相異なる板状物を複数重ねて張り合わせたもの”を用い、その際に、熱膨張の差に基づく反りが防止されるように、「熱膨張係数の低い側が前記半導体チップの回路面の形成されていない面に対向するように」することは、前述の周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。 周知例1:特開昭61-26227号公報 (周1A):「2、特許請求の範囲 半導体基板と基板表面上に形成した単数または複数の導体または絶縁体の層、及び基板裏面に形成した複数の導体または絶縁体の層よりなる半導体装置であって、前記基板表面上に形成した各層に発生するそれぞれの膜応力と膜厚の積の総和と、前記基板裏面に形成した各層に発生するそれぞれの膜応力と膜厚の積の総和の符号が互いに同じで、かつ両者の大きさがほぼ等しいことを特徴とする半導体装置。」(1頁左下欄4?13行) (周1B):「発明の目的 本発明は、半導体基板表面上に形成された単数または複数の層によって生じる熱応力を相殺する複数の膜厚の層を半導体基板裏面に形成することにより、半導体基板表面に発生する応力をなくし、半導体装置の電気的諸特性を大きく改善することを目的とする。」(2頁右上欄1?7行) (周1C):「半導体基板とその上に形成された半導体基板とは線膨張係数の異なる第2層の間に生じる熱応力を求める簡単な式は従来から得られている。かかる場合と同様に、半導体装置を真直ばりと仮定して、半導体基板1と基板上に形成した単数または複数の層2よりなる半導体装置において半導体基板表面に発生する応力が求められる。即ち、半導体基板1と基板上に形成した各層の力がつり合う条件および互いにとなり合う層のそれぞれの変形量が両層の界面で同じ条件から、半導体表面に発生する応力σsを表わす次の(1)式が得られる。 σs=(4/hs)Σh(i)・σ(i) ・・・(1) 但し、 σ(i)=E(i)∫(αs-α(i))dT σs :半導体基板表面に発生する曲り応力、 σ(i):基板上に形成された第i層に発生する熱応力、 hs :半導体基板の厚さ、 h(i):基板上に形成された第i層の厚さ、 αs :半導体基板の線膨張係数、 α(i):基板上に形成された第i層の線膨張係数、 E(i):基板上に形成された第i層のヤング率、 T(i):基板上に形成された第i層の形成温度、 なお、応力が正の場合は引張応力、負の場合は圧縮応力を示す。」(1頁右下欄5行?2頁左上欄9行、なお、この記載中の式は、一部記号を省略して簡略表記したものである。) 周知例2:特開平11-163467号公報 (周2A):「【特許請求の範囲】 【請求項1】 一方の面側に湾曲した半導体素子本体とヒートシンクとが接合され、この接合状態では前記半導体素子本体の湾曲が矯正されている半導体素子において、前記ヒートシンクが熱膨張率の異なる複数の材料層で構成され、温度変化に伴う前記ヒートシンクの形状変化によって前記半導体素子本体の前記矯正がなされていることを特徴とする半導体素子。」 そして、本願発明1では、半導体チップの回路面の形成されていない面に具備された基板について、「熱膨膨張係数の相異なる基板を熱膨張係数の低い側が前記半導体チップの回路面の形成されていない面に対向するように複数重ねて張り合わせた」と規定されているだけで、複数(例えば、3枚)の基板におけるそれぞれの板厚と熱膨張係数、各基板の熱膨張係数と半導体チップの熱膨張係数との関係などが規定されていないから、本願発明1は、本願明細書段落【0031】に記載された「熱応力によるパッケージ全体の反りを緩和させ、半田の破壊を防止して半田接続の信頼性を向上させることができる」という効果を必ず奏するとは認められない。〔例えば、反りは、各基板の板厚にも依存するから(例えば、摘示(周1C)の記載参照)、3枚の基板のうち中間の基板の熱膨張係数を最も高く、半導体チップの回路面の形成されていない面に対向する基板(以下、「回路面側基板」という。)の熱膨張係数を最も低くした場合であっても、回路面側基板の板厚が薄く、その力(応力×板厚)が反対側の基板の力を下回る場合には、3枚の基板は、全体として、半導体パッケージの反りを緩和するように反るとは認められない。また、2枚の基板のうち、半導体チップの回路面の形成されていない面に対向する基板(以下、「回路面側基板」という。)の熱膨張係数を低くした場合であっても、それら2枚の基板の熱膨張係数がどちらも半導体チップの熱膨張係数より低い場合には、回路面側基板と半導体チップとの熱膨張の差に基づくバイメタルと同様の作用により、半導体パッケージの反りが増幅されるので、半導体パッケージの反りが緩和されるとは認められない。〕 また、本願発明1が仮に前記効果を奏するとしても、前述の周知事項を併せ考慮すると、前記効果は、引用文献1発明に比べて格別に顕著なものとは認められない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-07-26 |
結審通知日 | 2007-07-31 |
審決日 | 2007-08-14 |
出願番号 | 特願2002-58560(P2002-58560) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮本 靖史、池渕 立 |
特許庁審判長 |
綿谷 晶廣 |
特許庁審判官 |
川真田 秀男 小川 武 |
発明の名称 | 半導体パッケージの実装構造 |
代理人 | 下坂 直樹 |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 谷澤 靖久 |