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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04C
管理番号 1164953
審判番号 不服2005-23680  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-08 
確定日 2007-09-27 
事件の表示 特願2000-315159「スクリュ圧縮機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月26日出願公開、特開2002-122084〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成12年10月16日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成17年8月11日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「互いに噛合する一対のスクリュロータをロータケーシング内に収容したスクリュ圧縮機本体と、前記スクリュロータのうちの一方を駆動するモータを収容したモータケーシングとが一体的に結合されると共に、前記スクリュロータのうちの一方と前記モータとが互いにその軸を共有するスクリュ圧縮機において、前記軸の両端部を軸受により支持し、前記モータと前記スクリュロータとの間を中間軸受により支持し、3点支持構成としたことを特徴とするスクリュ圧縮機。」(以下「本願発明」という。)

2.刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-97186号公報(以下「引用刊行物」という。)には、「オイルフリースクリュー圧縮機」と題して、図面と共に次の記載がある。

・ 「【0030】次に、本発明の他の実施例を図5により説明する。この図5に示した部品と上記実施例に示した部品とが同一の場合には、同一の符号を付している。本実施例が図1に示した実施例と異なる点は、圧縮機本体1の雄ロータ2の軸と、高速モータ21のモータ軸とを一体に構成した点である。言い換えれば、雄ロータ軸と高速モータの回転軸とを連結した以外の、圧縮機本体1a及び高速モータ側の個々の部品は基本的に上気実施例と同一である。
【0031】モータケーシング23aには、ステータコア27およびステータコイル28が取付けられている。雄歯形が中間に形成された雄ロータ2aの吸込側軸部2bには、高速モータのロータコア26が取付けられている。この雄ロータ2aは、雄歯形部より軸端側を吐出側軸受7、13で、ロータコア26よりさらに端部側を反負荷側軸受30aで回転自在に支持されている。雌ロータ3aは、雄ロータ2aと同様に吐出側を吐出側軸受7、13で吸込み側を吸込み側軸受6aで支持されている。ただし、上記実施例とは異なり吸込み側端部には歯車が取付けられていない。雄ロータおよび雌ロータの吸込み側軸受7、13としては円筒ころ軸受及び組合わせアンギュラ軸受を、雌ロータ側の吸込側軸受6aとしてはグリース潤滑のころ軸受6aを用いている。圧縮機本体及び拘束モータで発生する熱を放熱するための冷却構造として、ケーシング2の外周部及びモータケーシング23の外周部にそれぞれ放熱フィン48、49が形成されている。
【0032】このように構成した本実施例では、先の実施例と比べて雄ロータ側の吸込側軸受及び軸封装置、高速モータ側の負荷側軸受及び軸封装置、高速モータの動力を伝達するギヤが不要となり、圧縮機本体を含めた駆動系装置の小形化および低コスト化が可能となる。なお、本実施例では雄ロータの軸をモータ軸と共用しているが、雌ロータの軸をモータ軸と共用してもよいことは言うまでもない。
【0033】次に、上記何れかの実施例に記載された圧縮本体及び電動機が一体に形成されたオイルフリースクリュー圧縮機をパッケージ内に配置する様子を、図6および図7を用いて説明する。」

・ 図5には、ケーシング4とモータケーシング23aとが一体に結合されている構造が示されている。

この記載事項及び図示内容を総合すると、引用刊行物には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「雄ロータ2aと雌ロータ3aをケーシング4内に収容した圧縮機本体1aと、前記雄ロータ2aを駆動する高速モータ21を収納したモータケーシング23aとが一体に結合されると共に、前記雄ロータ2aと前記高速モータ21とがモータ軸を共有するオイルフリースクリュー圧縮機において、前記モータ軸の雄歯形部より軸端側の吐出側軸受7,13とロータコア26よりさらに端部側の反負荷側軸受30aにより支持したオイルフリースクリュー圧縮機。」

3.対比
(1)本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「雄ロータ2aと雌ロータ3a」は、本願発明の「互いに噛合する一対のスクリュロータ」に相当し、以下同様に、「ケーシング4」は「ロータケーシング」に、「圧縮機本体1a」は「スクリュ圧縮機本体」に、「雄ロータ2aを駆動する高速モータ21を収容したモータケーシング23a」は「スクリュロータのうちの一方を駆動するモータを収容したモータケーシング」に、「雄ロータ2aと高速モータ21とがモータ軸を共有する」は「スクリュロータのうちの一方とモータとが互いにその軸を共有する」に、「オイルフリースクリュー圧縮機」は「スクリュ圧縮機」に、「モータ軸の雄歯形部より軸端側の吐出側軸受7,13とロータコア26よりさらに端部側の反負荷側軸受30aにより支持した」態様は「軸の両端部を軸受により支持し」た態様に、それぞれ相当する。

すると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。

(2) 一致点
「互いに噛合する一対のスクリュロータをロータケーシング内に収容したスクリュ圧縮機本体と、前記スクリュロータのうちの一方を駆動するモータを収容したモータケーシングとが一体的に結合されると共に、前記スクリュロータのうちの一方と前記モータとが互いにその軸を共有するスクリュ圧縮機において、前記軸の両端部を軸受により支持したスクリュ圧縮機。」

(3) 相違点
本願発明は、「モータとスクリュロータとの間を中間軸受により支持し、3点支持構成とした」構成を有するのに対し、引用発明はかかる構成を有しない点。

4. 判断
相違点について検討する。
一般に、両端を支持された回転軸であれば、回転軸の剛性、長さ等を要因として回転軸の中心付近で振動を生ずる可能性があることは、振動工学における技術常識である。
またモータと圧縮機の軸とを共用した圧縮機において、両端の軸受に加え、モータと圧縮部との間にも軸受を設けた構成は、例えば、特開平1-273894号公報(第1図の部材14参照)、特開平11-182488号公報(図3参照)にもあるように、出願前周知の技術といえる。
ここで引用刊行物には、「このように構成した本実施例(注:図5に示された実施例)では、先の実施例と比べて雄ロータ側の吸込側軸受及び軸封装置、高速モータ側の負荷側軸受及び軸封装置、高速モータの動力を伝達するギヤが不要となり、圧縮機本体を含めた駆動系装置の小形化および低コスト化が可能となる。」との記載がある。このように雄ロータ側の吸込側軸受、すなわちモータと雄ロータとの間にある軸受が不要となるのは、引用刊行物の実施例の軸の長さと剛性のものであれば、雄ロータの軸とモータの回転軸とを共用し、かつ、軸両端を支持することにより、回転軸の軸ぶれが無視できる程度のものとなるとの理由によるものと解するのが相当である。
そうすると、引用発明において、上記技術常識及び周知の技術を踏まえ、回転軸の長さや剛性に応じて、振動が生じないようモータと雄ロータとの間にも軸受を設け、上記相違点に係る本願発明の構成を想到する程度のことは、当業者であれば容易になし得たものというべきである。
そして、本願発明の全体構成により奏される効果も、引用発明及び技術常識並びに周知の技術から当業者であれば予測し得る範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び技術常識並びに周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、特許法29条2項により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-25 
結審通知日 2007-07-31 
審決日 2007-08-13 
出願番号 特願2000-315159(P2000-315159)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F04C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田谷 宗隆  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 渋谷 善弘
谷口 耕之助
発明の名称 スクリュ圧縮機  
代理人 梶 良之  

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