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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F15B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F15B |
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管理番号 | 1165199 |
審判番号 | 不服2007-11492 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-19 |
確定日 | 2007-10-04 |
事件の表示 | 特願2001- 34975「液圧制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月23日出願公開、特開2002-235701〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願(以下「本願」という。)は、平成13年2月13日を出願日とする出願であって、平成19年3月8日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年5月17日付で手続補正がなされたものである。 2.平成19年5月17日付の手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願の発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「スリーブと、そのスリーブに接続される吸入ポート、排出ポート及びシリンダポートと、前記スリーブに進退可能に嵌装され、シリンダポートと吸入ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための第1切替部、及びシリンダポートと排出ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための第2切替部を別々に備え且つ背反的に作動させるスプールと、シリンダポートと吸入ポートとを連通する流路とは別途形成されたシリンダポートと排出ポートとを連通する流路における第2切替部よりも上流側で作動液の流量制御を行う流量制御弁とをバルブハウジングに一体的に設け、吸入ポートから第1切替部を介してシリンダポートに至る作動液の制御を行うスプールのランドによってシリンダのリフトをロックすることを特徴とする液圧制御装置。」と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「スリーブに進退可能に嵌装され、シリンダポートと吸入ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための切替部」を「スリーブに進退可能に嵌装され、シリンダポートと吸入ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための第1切替部」に限定し、以下同様に、「シリンダポートと排出ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための切替部」を「シリンダポートと排出ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための第2切替部」に、「シリンダポートと排出ポートを連通する作動液の流路中にあって前記切替部よりも上流側で作動液の流量制御を行う流量制御弁」を「シリンダポートと吸入ポートとを連通する流路とは別途形成されたシリンダポートと排出ポートとを連通する流路における第2切替部よりも上流側で作動液の流量制御を行う流量制御弁」に限定し、さらに、請求項1に記載した発明を「吸入ポートから第1切替部を介してシリンダポートに至る作動液の制御を行うスプールのランドによってシリンダのリフトをロックする」ものと限定したものである。 したがって、上記補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的にするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(この発明を以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するか否か)について以下検討する。 (2)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された実願平5-52776号(実開平7-23793号)のCD-ROM(平成7年5月2日公開。以下「引用文献1」という。)には、「フォークリフト用電磁比例制御弁」と題して、図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0012】 【実施例】 図1および図2は、本考案の一実施例によるリフトシリンダ用セクション20の構造を示す。図1は一部を切欠いて示す断面図、図2は図1の切断面線II-IIから見た断面図をそれぞれ示す。これらの図において、下げパイロット弁21は、ソレノイド22に流す励磁電流に比例してパイロット圧を発生する。リフトシリンダの上昇のためにはソレノイド23を励磁する。これらのソレノイド22,23間にはケーシング24が配置される。ケーシング24内には、下降弁25、高圧選択弁26、チェック弁27、タンク通路28およびドレン通路29が設けられ、主スプール30が収納される。主スプール30には、メータイン制御部31、ブリードオフ制御部32および下降遮断部33が形成される。 【0013】 図の状態は、ソレノイド22,23がそれぞれ非励磁状態である中立位置を示す。油圧ポンプからの作動油は、タンク通路28へバイパスし、次のセクションに流入する。下降弁25、チェック弁27、下げパイロット弁21および高圧選択弁26によってタンク通路28やドレン通路29でのリークは防止され、負荷を確実に保持することができる。 【0014】 主スプール30の両側には、室34,35がそれぞれ形成される。ケーシング24の室35寄りの上方には、リフトシリンダに接続されるリフトシリンダポート36が設けられる。室34内には主スプール30を中立位置に戻すスプリング37が収納される。 【0015】 ソレノイド23を励磁すると、室34にパイロット圧力が発生し、主スプール30はスプリング37に抗して右側にストロークする。これによってブリードオフ制御部32が閉じられ、ポンプ圧力が上昇する。メータイン制御部31が開口して、作動油はチェック弁27を押上げ、リフトシリンダポート36へ流れ、リフトシリンダを上昇させる。 【0016】 ソレノイド22を励磁すると、下げパイロット弁21が作動する。下げパイロット弁21からの二次圧は室35に供給され、主スプール30をスプリング37に抗して左側にストロークさせる。下げパイロット弁21からのパイロット圧は、下降弁25のスプールを復帰スプリング38に抗して左側にストロークさせるためにも作用する。リフトシリンダポート36からの作動油は、下降弁25の流量制御部39と、主スプール30の下降遮断部33を経てタンク通路28に流出する。なお下降操作時は、主スプール30の下降遮断部33は開いている。このように、下降弁25および主スプール30の下降遮断部33が直列に接続されるのは、チェック弁27が設けられているからである。下降弁25または主スプール30のいずれか一方にロック現象が発生しても、他方が復帰すればリフトシリンダポート36とタンク通路28との間は遮断される。」 ・「【0021】 【考案の効果】 以上のように本考案によれば、負荷圧が減圧弁の二次圧より高いときは、油圧ポンプを回転させることなく下降操作のためのパイロット圧を得ることができ、エネルギロスを削減することができる。なお負荷圧力が減圧弁の二次圧より低い場合も、油圧ポンプを回転させれば下降操作は可能である。さらに、中立時のリフトシリンダのポートからの作動油のリークを僅少にし、確実に負荷を保持することができる。さらにまた、リフトシリンダの下降時には、下降弁と主スプールとが直列に接続されるので、いずれか一方がスティックでロック現象が発生しても、他方を中立位置に戻すことによって負荷保持が可能となり、安全性が向上する。」 ・図1には、スリーブ、スリーブに接続される吸入ポート、スリーブに接続されるタンク通路28、スリーブに接続されるリフトシリンダポート36及び主スプール30がケーシング24に一体的に設けられていることが示されている。 ・図1及び5には、主スプールがメータイン制御部31と下降遮断部33を背反的に作動させることが示されている。 ・図1には、リフトシリンダポート36とタンク通路28とを連通する流路における下降遮断部33よりも上流側の流量制御部39がケーシング24に一体的に設けられることが示されている。さらに、図5には、下降弁25の中の流量制御部(符号は明記されていないが、39であることは自明)が流量制御弁であることが示されている。 ・図1には、吸入ポートからメータイン制御部31を介してリフトシリンダポート36に至る作動油の制御を行う主スプール30のメータイン制御部31のランド及びメータ制御部31とリフトシリンダポート36の間の通路に設けられたチェック弁27によってリフトシリンダの負荷を保持することが示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献1には次の発明が記載されていると認めることができる。 「スリーブと、そのスリーブに接続される吸入ポート、タンク通路28及びリフトシリンダポート36と、前記スリーブに左右両側にストローク可能に嵌装され、前記リフトシリンダポート36と前記吸入ポートを連通する作動油の流路の開放を行うためのメータイン制御部31、及び前記リフトシリンダポート36と前記タンク通路28を連通する作動油の流路の開放を行うための下降遮断部33を別々に備え且つ背反的に作動させる主スプール30と、前記リフトシリンダポート36と前記吸入ポートとを連通する流路とは別途形成された前記リフトシリンダポート36と前記タンク通路28とを連通する流路における前記下降遮断部33よりも上流側の流量制御弁とをケーシング24に一体的に設け、前記吸入ポートから前記メータイン制御部31を介して前記リフトシリンダポート36に至る作動油の制御を行う前記主スプール30の前記メータイン制御部31のランド及び前記メータイン制御部31と前記リフトシリンダポート36の間の通路に設けられたチェック弁27によって前記リフトシリンダの負荷を保持するリフトシリンダ用セクション20。」(以下「引用発明」という。) (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「タンク通路28」は本願補正発明の「排出ポート」に相当し、以下同様に、「リフトシリンダポート36」は「シリンダポート」に、「左右両側にストローク」は「進退」に、「作動油」は「作動液」に、「メータイン制御部31」は「第1切替部」に、「下降遮断部33」は「第2切替部」に、「主スプール30」は「スプール」に、「ケーシング24」は「バルブハウジング」に、「吸入ポートからメータイン制御部31を介してリフトシリンダポート36に至る作動油の制御を行う主スプール30の前記メータイン制御部31のランド」は「吸入ポートから第1切替部を介してシリンダポートに至る作動液の制御を行うスプールのランド」に、「リフトシリンダ」は「シリンダ」に、「負荷を保持する」は「リフトをロックする」に、「リフトシリンダ用セクション20」は「液圧制御装置」にそれぞれ相当する。 引用発明の「吸入ポートからメータイン制御部31を介してリフトシリンダポート36に至る作動油の制御を行う主スプール30の前記メータイン制御部31のランド及び前記メータイン制御部31と前記リフトシリンダポート36の間の通路に設けられたチェック弁27によってリフトシリンダのリフトを負荷を保持する」と本願補正発明の「吸入ポートから第1切替部を介してシリンダポートに至る作動液の制御を行うスプールのランドによってシリンダのリフトをロックする」は、引用発明の「吸入ポートからメータイン制御部31を介してリフトシリンダポート36に至る作動油の制御を行う主スプール30の前記メータイン制御部31のランド」は本願補正発明の「吸入ポートから第1切替部を介してシリンダポートに至る作動液の制御を行うスプールのランドによってシリンダのリフトをロックする」に相当するから、本願補正発明と引用発明は、「少なくとも吸入ポートから第1切替部を介してシリンダポートに至る作動液の制御を行うスプールのランドによってシリンダのリフトをロックする」の概念で共通している。 なお、流量制御弁が作動液の流量制御を行うことは自明なことである。 すると、本願補正発明と引用発明は次の点で一致する。 「スリーブと、そのスリーブに接続される吸入ポート、排出ポート及びシリンダポートと、前記スリーブに進退可能に嵌装され、シリンダポートと吸入ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための第1切替部、及びシリンダポートと排出ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための第2切替部を別々に備え且つ背反的に作動させるスプールと、シリンダポートと吸入ポートとを連通する流路とは別途形成されたシリンダポートと排出ポートとを連通する流路における第2切替部よりも上流側で作動液の流量制御を行う流量制御弁とをバルブハウジングに一体的に設け、少なくとも吸入ポートから第1切替部を介してシリンダポートに至る作動液の制御を行うスプールのランドによってシリンダのリフトをロックする液圧制御装置。」 一方で、本願補正発明と引用発明は次の相違点で相違する。 <相違点> 「少なくとも吸入ポートから第1切替部を介してシリンダポートに至る作動液の制御を行うスプールのランド」が、本願補正発明においては、前記ランドのみによるものであるのに対し、引用発明においては、前記ランドに加えて「第1切替部とシリンダポートの間の通路に設けられたチェック弁」によるものである点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 引用発明の上記「チェック弁」は、作動液のリークを防止する観点から付加されているものであるが、かかる観点を考慮せずに、単に作動液の圧力損失の低減を目的として、引用発明から上記「チェック弁」を省略して相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が格段の困難性を伴うことなくなし得たことである。 本願補正発明の全体が奏する効果も、引用発明から当業者が予測し得た範囲内のものである。 したがって、本願補正発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願補正発明については、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。 3.本願の発明について 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は平成18年2月8日付の手続補正で補正された明細書及び図面の記載からみて、以下のとおりのものであると認める。 「スリーブと、 そのスリーブに接続される吸入ポート、排出ポート及びシリンダポートと、 前記スリーブに進退可能に嵌装され、シリンダポートと吸入ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための切替部、及びシリンダポートと排出ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための切替部を別々に備え且つ背反的に作動させるスプールと、 前記シリンダポートと排出ポートを連通する作動液の流路中にあって前記切替部よりも上流側で作動液の流量制御を行う流量制御弁とをバルブハウジングに一体的に設けたことを特徴とする液圧制御装置。」(以下「本願発明」という。) (1)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から、「スリーブに進退可能に嵌装され、シリンダポートと吸入ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための切替部」の「スリーブに進退可能に嵌装され、シリンダポートと吸入ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための第1切替部」への限定を省いたものであり、以下同様に、「シリンダポートと排出ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための切替部」の「シリンダポートと排出ポートを連通する作動液の流路の開放を行うための第2切替部」への限定、「シリンダポートと排出ポートを連通する作動液の流路中にあって前記切替部よりも上流側で作動液の流量制御を行う流量制御弁」の「シリンダポートと吸入ポートとを連通する流路とは別途形成されたシリンダポートと排出ポートとを連通する流路における第2切替部よりも上流側で作動液の流量制御を行う流量制御弁」への限定を省いたものであり、さらに付加された「吸入ポートから第1切替部を介してシリンダポートに至る作動液の制御を行うスプールのランドによってシリンダのリフトをロックする」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-07-31 |
結審通知日 | 2007-08-07 |
審決日 | 2007-08-20 |
出願番号 | 特願2001-34975(P2001-34975) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F15B)
P 1 8・ 575- Z (F15B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐伯 憲一 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
渋谷 善弘 谷口 耕之助 |
発明の名称 | 液圧制御装置 |
代理人 | 江口 裕之 |
代理人 | 喜多 俊文 |