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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1165217
審判番号 不服2006-12259  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-15 
確定日 2007-10-05 
事件の表示 平成 7年特許願第326241号「外用に適する組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月 3日出願公開、特開平 9-143063〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯
本願は、平成7年11月22日の出願であって、平成18年5月10日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月6日付で手続補正がなされたものである。

2.平成18年7月6日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年7月6日付の手続補正を却下する

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、平成18年4月7日付け手続補正書により補正された請求の範囲の請求項1、すなわち
「次の成分(A)及び(B)
(A)アスタキサンチン類
(B)次の薬効剤(a)ないし(d)の一種又は二種以上
(a)アデノシン三リン酸及びその塩、血清除蛋白抽出物、胎盤抽出物、酵母抽出物から選ばれた細胞賦活剤
(b)グリチルリチン酸、グアイアズレン及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、アロエ抽出物から選ばれた抗炎症剤
(c)システイン及びその誘導体並びにその塩、ソウハクヒ抽出物、トウキ抽出物、クララ抽出物、ホップ抽出物から選ばれたチロシナーゼ活性阻害剤
(d)ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びこれらの塩類、コラーゲン、エラスチン及びこれらの誘導体並びにその塩類から選ばれた保湿剤
を含有することを特徴とする外用組成物。」
を、
「次の成分(A)及び(B)
(A)アスタキサンチン類
(B)次の薬効剤(a)、(c)、または(d)の一種又は二種以上
(a)アデノシン三リン酸及びその塩、血清除蛋白抽出物、胎盤抽出物、酵母抽出物から選ばれた細胞賦活剤
(c)システイン及びその誘導体並びにその塩、ソウハクヒ抽出物、トウキ抽出物、クララ抽出物、ホップ抽出物から選ばれたチロシナーゼ活性阻害剤(d)ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びこれらの塩類、コラーゲン、エラスチン及びこれらの誘導体並びにその塩類から選ばれた保湿剤
を含有することを特徴とする美肌用、皮膚老化防止用、美白用、または肌荒れ改善用の外用組成物。」
とする補正を含むものである。

(2)補正の適否の判断
上記の補正は、(B)成分中の(b)を削除し、且つ外用組成物の用途を美肌用、皮膚老化防止用、美白用、または肌荒れ改善用と限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
しかし、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は以下の理由で特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2-1 引用刊行物の記載の概要
原審の拒絶理由において引用された刊行物の主要な記載は以下のとおりである。

・特開平5-155736号公報 (以下、引用例1という。)

(ア)【請求項1】オキアミの溶剤抽出液について、水素添加、加水分解などの化学反応を行うことなく、分子蒸留及びカラムクロマトグラフィー、さらには高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製して得られる濃橙赤色色素を含有することを特徴とする化粧料。(特許請求の範囲の請求項1)
(イ)オキアミの主色素はカロテノイド系のアスタキサンチンであり、溶剤抽出液はオキアミ色素として橙?赤色の食品色素に使用されている。・・・(段落【0003】)
(ウ)紫外線からの毛髪及び皮膚の保護としては、単に紫外線吸収剤が配合されている場合がほとんどで、その効果は十分とは言えない。 (段落【0005】)
(エ)また、皮脂の酸化を防止する目的としては、抗酸化剤であるビタミンE、ビタミンC、システインなどが配合されるようになったが、その効果は満足するものではなかった。(段落【0006】)
(オ)さらに、皮膚の老化防止については、各種保湿剤を配合したものや、細胞活性化を目的として、各種ビタミンや動植物抽出物などを配合したものがあったが、十分な効果をもたらすものではなかった。(段落【0007】)
(カ)また、本色素を配合した化粧料が、毛髪及び皮膚の紫外線による損傷防御効果に優れ、皮脂の酸化防止能を有し、皮膚の老化防止に対しても顕著な効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。(段落【0011】)
(キ)実施例7としてアスタキサンチンを配合した化粧水(段落【0041】)、実施例8として同成分を配合したエモリエントクリームの処方(段落【0044】)

・特開平7-277939号公報 (以下、引用例2という。)

(ク)【請求項1】 次の成分(A)及び(B)
(A)フローデマニータ抽出物
(B)活性酸素除去剤、抗酸化剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、チロシナーゼ活性阻害剤及び保湿剤から選ばれる薬効剤の一種又は二種以上を含有することを特徴とする皮膚外用剤。(特許請求の範囲の請求項1)
(ケ) 従来より、乳液、クリーム、・・・洗浄料等の化粧品や、軟膏剤、クリーム剤・・等の医薬品には、これらに所定の薬効を付与することを目的として薬効成分が加えられている。
例えば、日焼け等により生じる皮膚の黒化や炎症・・・ソバカス等の現象を防止するために、カラミン等や、アスコルビン酸類、グルタチオン、コロイドイオウ、ハイドロキノン、コウジ酸、シンナミックアルデヒド等が配合されており、また、肌荒れ改善、皮膚老化防止、細胞賦活の他、切創やひげそり後の傷の治療・・・火傷などの改善等の創傷治療を目的に、アラントイン、アロエ抽出物、人参抽出物、シコンエキス、胎盤抽出物、牛血液除蛋白物、発酵代謝物等の薬効成分が配合されている。(段落【0002】)
(コ)【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、これらの薬効成分を配合した皮膚外用剤では、薬効成分の効果が十分でなかったり、あるいは、製剤中で変質するなどして所期の薬効が得られない場合が多く、その改善が望まれていた。(段落【0003】)
(サ)( 活性酸素除去剤及び抗酸化剤 ) 活性酸素除去剤としては、例えば、SOD、マンニトール、ベーターカロチン等のカロテノイド類、ハイドロキノン、ビリルビン、コレステロール、トリプトファン、ヒスチジン、クエルセチン、クエルシトリン、カテキン、カテキン誘導体、没食子酸、没食子酸誘導体、オウゴン抽出物などのフラボノイドを成分中に含む植物抽出物等が挙げられる。(段落【0011】)
(シ) また抗酸化剤としては、例えば、ビタミンAアセテート・・・ビタミンE及びその誘導体並びにそれらの塩、グルタチオン及びその誘導体並びにそれらの塩、BHT及びBHA等が挙げられる。(段落【0012】)
(ス)(細胞賦活剤)細胞賦活剤としては、例えば、デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸・・・;血清除蛋白抽出物・・胎盤抽出物、鶏冠抽出物、ローヤルゼリーなどの動物由来の抽出物;酵母抽出物・・等を挙げることができる。(段落【0014】)
(セ)(抗炎症剤) 抗炎症剤としては、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ε-アミノカプロン酸、酸化亜鉛、ジクロフェナクナトリウム、カンゾウ抽出物、アロエ抽出物、シコン抽出物、サルビア抽出物、アルニカ抽出物、カミツレ抽出物、シラカバ抽出物、オトギリソウ抽出物、ユーカリ抽出物、ムクロジ抽出物等が挙げられる。(段落【0016】)
(ソ)(チロシナーゼ活性阻害剤)
チロシナーゼ活性阻害剤としては、システイン及びその誘導体・・ソウハクヒ抽出物、トウキ抽出物・・クララ抽出物・・ホップ抽出物・・等が挙げられる。(段落【0018】)
(タ)(保湿剤)保湿剤としては、皮膚の構成成分であり、従来から化粧料に配合されているムコ多糖類及びタンパク質が利用できる。(段落【0022】)
(チ)このうちムコ多糖類としては、例えばヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、・・が挙げられ、特にヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びこれらの塩類を好適に用いることができる。(段落【0023】)
(ツ)また、タンパク質としては、例えばコラーゲン、エラスチン、ケラチン及びこれらの誘導体並びにその塩類を挙げることができ、特にコラーゲンが好ましい。(段落【0024】)

・日本香粧品科学会第19回学術大会 講演要旨 1994年 p66 (以下、引用例3という。)

アスタキサンチン(Ax)がβ-カロテンに比べ強力な抗酸化作用を有していること、紫外線(UVB)照射によって引き起こされる紅斑および色素沈着にAxが及ぼす効果についてオキアミより抽出、精製したAx5%オイル(I)と合成Axより調整したアスタキサンチンジオレエート(II)を用いて検討した結果、共に色素沈着を抑制したこと。
(II)は統計的に有意でなかったが、(I)(II)の差はAx以外の成分がAxの経皮吸収を促進させて、あるいはAxとの相加あるいは相乗効果によりその効果を増大させているとも考えられること。

・特開昭63-83017号公報 (以下、引用例4という。)

(1)バイカリン(2)バイカレイン(3)セネガサポニン(4)オンジサポニンの内、いずれか1種類以上を含有するか、又は前記(1)?(4)のいずれか1種類以上と共に、(5)アスタキサンチン(6)β-カロチン(7)シコニンのいずれか1種類以上を含有することを、特徴とする皮膚塗布塗擦料(特許請求の範囲)が記載され、アスタキサンチンやβ-カロチン、シコニン・・は、可視部に光線の吸収能がある一方、セネガサポニン又はオンジサポニンやバイカリン、バイカレインは、紫外部に光線の吸収値を有することから、この両物質を組合せたことが示されている(第4頁右上欄)

2-2 対比、判断

引用例1には、オキアミの溶剤抽出液を精製して得られる濃橙赤色色素を含有する化粧料が記載されている(記載ア、キ)。
本願補正発明と引用例1の化粧料とを対比すると、引用例1の化粧料に含まれるオキアミの色素は主としてカロテノイド系のアスタキサンチンであり(記載イ)、該化粧料は、皮膚の紫外線による損傷防御効果、皮脂の酸化防止、皮膚老化防止に効果がある(記載カ)ものであるから、両者は
「アスタキサンチン類を含有する皮膚老化防止用外用組成物。」
である点で一致し、前者は更に上記の(a)(c)または(d)の一種又は二種以上の成分を含有するのに対し、後者はこれらの併用成分についての記載がない点で相違する。

そこで、この相違点につき検討するに、上記の(a)成分であるアデノシン三リン酸及びその塩、血清除蛋白抽出物、胎盤抽出物、酵母抽出物、(c)成分であるシステイン及びその誘導体並びにその塩、ソウハクヒ抽出物、トウキ抽出物、クララ抽出物、ホップ抽出物、(d)成分であるヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びこれらの塩類、コラーゲン、エラスチン及びこれらの誘導体並びにその塩類は、それぞれ細胞賦活剤、チロシナーゼ活性阻害剤、保湿剤としてよく知られているものであることは引用例2(記載ス、ソ、タ、チ、ツ)に記載のとおりである。
ところで、引用例1(記載ウ、エ、オ)に見られるように、化粧料に添加される特定の有効成分(紫外線吸収成分、皮脂酸化防止成分、皮膚老化防止成分など)は十分な効果が得られることは少ないことが指摘され、引用例2(記載コ)においても化粧料に加えられる特定の薬効剤の効果が十分でないことが同様に指摘されている。この点を改善すべく引用例2では、細胞賦活剤(胎盤抽出物、酵母抽出物等)、チロシナーゼ活性阻害剤(トウキ抽出物、クララ抽出物、ホップ抽出物等)、保湿剤(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、エラスチン)等の1種又は2種以上を美白作用を有するフローデマニータ抽出物と組合せて効果の増強を図った皮膚外用剤(記載ク及び引用例2の段落【130】【131】)が開示されているが、このように化粧料に使用される各種薬効成分を組み合わせてその効果の増強を図ることは引用例2のみならず当業界における常套の手段である。
そして、引用例2には細胞賦活剤、チロシナーゼ阻害剤、保湿剤等と共にフローデマニータ抽出物と併用される活性酸素除去剤としてβーカロチンがあげられているが、この成分はアスタキサンチンと同様にカロテノイド類に属するものであること(記載サ)、また、合成アスタキサンチンより、オキアミから抽出、精製して得たアスタキサンチンのほうが色素沈着抑制効果が大きいのは、抽出液中のアスタキサンチン以外の成分(アスタキサンチンと共にオイル中に抽出されて来る随伴成分と解される)が効果増大に寄与していると考えられる旨の引用例3の記載、及びアスタキサンチンやβ-カロチンをバイカリン、バイカレイン、セネガサポニン、オンジサポニンと併用する例も引用例4により知られていることを考慮するならば、アスタキサンチンは単独使用するよりも、むしろ他の有効成分と併用することが有利な成分であることは当業者にとって明らかであったといえる。
そうすると、引用例1のアスタキサンチンを含有する化粧料について、より十分な皮膚老化防止効果を奏する化粧品とするべく、既に化粧料の有効成分としてその作用がよく知られている(a)(c)(d)の成分の1種又は2種以上との併用を試みることは当業者が容易になし得ることであり、その効果にしても当業者の予測しうる範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1?4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

請求人は、本願補正発明により相乗効果と言いうる顕著な効果が奏される旨上申しているが、(a)(c)(d)の成分による作用増強は組み合わせる成分に特異的なものではなく、幅広い成分に対して奏されるものであることは引用例2に限らず特開昭61-171405号公報、特開平6-65041号公報、特開平4-321615号公報、特開平6-65045号公報、特開平3-193712号公報等の報告に見られるように当業界においてすでによく知られていることであるから、アスタキサンチンにおける効果も当業者の予測の範囲のものである。

なお、請求人は当審の審尋に対する平成19年6月18日付け回答書において、実験報告書を提出し、ビタミンE、マニトール、ヒスチジンとヒアルロン酸との併用による肌荒れ効果と本願明細書の実施例18のアスタキサンチンとヒアルロン酸との併用による肌荒れ改善効果を比較し、実施例18での効果は顕著であるとし、さらに本願発明の(B)成分を更に(d)の保湿剤にのみ限定する用意があると主張している。
しかしながら、(d)の保湿成分はそれ自体の肌荒れ防止作用もよく知られ他の各種有効成分と併用される化粧品添加成分として周知であること、実験報告書の処方は実施例18の処方は試験成分を除いた成分において大きく異なり、さらに本願明細書における実験ではアスタキサンチンの使用量が0.1%であるのに対し、ビタミンE、マニトール、ヒスチジンは0.015%しか使用されていないため、効果の差を客観的に評価するに足るものではないことから、上記主張は採用することができない。

3.本願発明について

平成18月7月6日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成18月4月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「(2)の2-1」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の(B)の選択肢中にさらに成分(b)が加わり、かつ外用組成物の美肌用、皮膚老化防止用、美白用、または肌荒れ改善用との用途限定がないものである。
そうすると、本願発明は本願補正発明をそっくり包含するものであるから、本願発明も前記「(2)の2-2」に記載したと同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1ないし4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-26 
結審通知日 2007-07-31 
審決日 2007-08-15 
出願番号 特願平7-326241
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安居 拓哉今村 玲英子  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 福井 悟
谷口 博
発明の名称 外用に適する組成物  
代理人 特許業務法人小野国際特許事務所  
代理人 小野 信夫  
代理人 小野 信夫  
代理人 特許業務法人小野国際特許事務所  

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