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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1165253 |
審判番号 | 不服2004-15472 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-26 |
確定日 | 2007-10-04 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第223933号「ゲームセンター用コインの預かり装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月 6日出願公開、特開平 9-117567〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成5年12月8日(国内優先権主張、平成5年10月29日)を出願日とする特願平5-340841号の一部を、平成8年8月26日に新たな特許出願としたものであって、平成16年4月19日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年5月28日に意見書が提出され、同年6月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年8月19日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成16年8月19日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。 「コイン投入部から投入されたコインを計数して受け入れる計数機構と、 前記計数機構から前記コインを受け入れ該コインを貯蔵するコイン貯蔵部と、 前記コイン貯蔵部から所定数のコインを排出するコイン計数排出機構と、 装置使用者の掌紋又は指紋を検知する入力部と、 前記検知された掌紋又は指紋に基づき払い出しの適否を判別し前記計数機構の計数データに基づき前記コイン計数排出機構の排出を制御する処理部とを備えたことを特徴とするゲームセンター用コイン預かり装置。」 3.引用発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平5-216865号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、遊戯場等における遊戯用具、例えば、コイン,メダル,パチンコ玉等の管理装置及び該管理装置を用いた管理システムに関する。 【0004】【課題を解決するための手段】遊戯用具の自動預け入れ,払い出し機能をもつ管理装置に、指紋入力装置・音声入力装置・カメラなどの身体的特徴を入力できる装置と、入力した身体的特徴を処理する装置と、処理された特徴を登録(記憶)する装置と、登録されている特徴と入力された特徴を比較して個人を識別する処理装置を備え、識別の結果により預け入れ,払い出し機能を制御する。 【0005】【作用】預け入れ時に入力された身体的特徴が処理登録され、払い出し時に入力された身体的特徴(指紋,声紋,顔画像等)と登録されている特徴が一致したときのみ払い出しを可能とするため、人手を介さずに確実に本人の確認,払い出しが可能であり、盗難などの心配がない。・・・ 【0008】・・・入力された指紋画像は処理部によって処理され、特徴量が求められる。確認のためディスプレイ3に再度指紋入力が指示され(step3)、2度目の入力画像から同様にして求めた特徴量と最初に求めた特徴量が比較され、一致したときその特徴量が記憶、登録される(step4)。続いて、コイン,メダル,パチンコ玉等投入の指示がディスプレイ3に表示され(step5)、利用者は預けたいコイン,メダル,パチンコ玉等を投入口2に入れる。預け入れ装置11は投入された個数を数え、登録された特徴量と共に記憶し、内容をディスプレイ3に表示(step6)し、または、必要に応じてプリントアウト(step7)する。 【0009】・・・入力された指紋画像から特徴量が求められ、すでに登録されている特徴量と比較され(step9)、一致する特徴量が登録されていればその人物を利用者と判断し、払い出し装置12は記憶内容に従って払い出し動作を行う(step10)。一致する特徴量が登録されていなければその人物は利用者ではないと判断し、払い出し不可(step11),再入力要求(step12)などがディスプレイ3に表示される。 との記載が認められる。 摘記した上記の記載によれば、引用文献には、 「投入口2に投入されたコインの個数を数える預け入れ装置11と、 コインの払い出し動作を行う払い出し装置12と、 利用者の指紋を入力する指紋入力部1と、 入力された指紋と登録されている指紋が一致したときのみ払い出しを可能とし、前記預け入れ装置11で数えた個数の記憶内容に従って払い出し装置12の払い出し機能を制御する遊戯場等におけるコインの管理装置。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「投入口2に投入されたコイン」は、本願発明の「コイン投入部から投入されたコイン」に相当し、 以下同様に、「コインの個数を数える預け入れ装置11」は「コインを計数して受け入れる計数機構」に、 「コインの払い出し動作を行う」は「所定数のコインを排出する」に、 「払い出し装置12」は「コイン計数排出機構」に、 「利用者」は「装置使用者」に、 「指紋入力部1」は「入力部」に、 「前記預け入れ装置11で数えた個数の記憶内容に従って」は「前記計数機構の計数データに基づき」に、 「払い出し機能を制御する」は「排出を制御する」に、 「遊戯場等におけるコイン」は「ゲームセンター用コイン」に、それぞれ相当する。 また、引用文献全体の記載等からみて、以下のことが言える。 a.引用発明の指紋入力部1は指紋を入力するものなので、利用者の指紋を検知していることは明らかである。 b.引用文献には、入力された指紋と登録されている指紋が一致したときのみ払い出しを可能とするために、入力された指紋画像から特徴量を求め、すでに登録されている特徴量と比較して、一致する特徴量が登録されていれば、払い出し装置12は記憶内容に従って払い出し動作を行い、一致する特徴量が登録されていなければ、払い出し不可としている旨記載されているので(3.で摘記した段落0009を参照)、引用発明が指紋入力部1によって検知された指紋に基づきコイン払い出しの適否を判別していることは明らかである。 c.引用発明の「管理装置」は、コインを預かってその個数を記憶する機能を有しているので、本願発明の「コイン預かり装置」に実質的に相当している。 以上を総合すると、両者は、 「コイン投入部から投入されたコインを計数して受け入れる計数機構と、 所定数のコインを排出するコイン計数排出機構と、 装置使用者の指紋を検知する入力部とを備え、 前記検知された指紋に基づき払い出しの適否を判別し前記計数機構の計数データに基づき前記コイン計数排出機構の排出を制御するゲームセンター用コイン預かり装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]本願発明は、計数機構から前記コインを受け入れ該コインを貯蔵するコイン貯蔵部を備えているのに対し、引用発明では、コイン貯蔵部を備えているか否か明らかでない点。 [相違点2]本願発明は、コイン計数排出機構がコイン貯蔵部から所定数のコインを排出するように構成しているのに対し、引用発明では、払い出し装置12から払い出されるコインがどのようにして供給されるのか明らかでない点。 [相違点3]本願発明は、「処理部」で「検知された掌紋又は指紋に基づき払い出しの適否を判別し前記計数機構の計数データに基づき前記コイン計数排出機構の排出を制御」しているのに対し、引用発明では、「入力された指紋と登録されている指紋が一致したときのみ払い出しを可能とし、前記預け入れ装置11で数えた個数の記憶内容に従って払い出し装置12の払い出し機能を制御する」機能を有する本願発明の「処理部」に相当する構成を備えているかどうか明らかでない点。 5.判断 そこで、上記各相違点について検討する。 [相違点1、2について] 引用発明は、コイン貯蔵部を備えているか否か明らかでなく、払い出し装置12から払い出されるコインがどのようにして供給されるのかも明らかではないが、コインの預け入れと払い出し機能を有しているので、何らかのコイン供給機構を有している。 そして、コイン又はパチンコ球を払い出すために、利用者が投入したコイン又はパチンコ球を受け入れて貯蔵部に収容すると共に、払い出し要求があった時にはその貯蔵部から計数機構にコイン又はパチンコ球を供給することは、例えば、特開昭63-77476号公報(特に、第2頁左下欄第7?13行及び第3頁左上欄下から3行?同頁右上欄第11行)、特開昭61-88391号公報(特に、第2頁左下欄第10?16行、第3頁左上欄第15?19行、第3頁右下欄第5?13行及び第4頁左上欄第10?15行)、実願昭59-142548号(実開昭61-57985号)のマイクロフィルム(特に、明細書第5頁末行?第6頁第4行及び第7頁第1?9行)及び特開平4-316190号公報(特に、段落0003)に記載されているように、遊技機の分野において、従来周知の技術であるから、引用発明に該従来周知の技術を適用して、預け入れ装置11が受け入れたコインを貯蔵するコイン貯蔵部を設けるとともに、該コイン貯蔵部から払い出し装置12にコインを供給するように構成することは、当業者が容易に想到し得る。 [相違点3について] 引用文献の段落0004に「登録されている特徴と入力された特徴を比較して個人を識別する処理装置を備え」と記載され、一般に処理装置に複数の判断機能や制御機能を併せ持たせることは、従来普通に行われていることであるので、引用発明において、「入力された指紋と登録されている指紋が一致したときのみ払い出しを可能とし、前記預け入れ装置11で数えた個数の記憶内容に従って払い出し装置12の払い出し機能を制御する」ための「処理部」を設けることは、当業者が適宜実施する設計的事項である。 よって、上記相違点1?3に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 さらに、本願発明の作用効果も、引用発明及び従来周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。 6.むすび したがって、本願発明は、引用発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-07-30 |
結審通知日 | 2007-07-31 |
審決日 | 2007-08-23 |
出願番号 | 特願平8-223933 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 仁之 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
川島 陵司 小田倉 直人 |
発明の名称 | ゲームセンター用コインの預かり装置 |
代理人 | 須藤 雄一 |