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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1165495
審判番号 不服2004-17737  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-26 
確定日 2007-10-11 
事件の表示 平成11年特許願第247754号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月14日出願公開、特開2000-312752〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年4月28日に出願された特許出願(特願平11-122536号)の一部が特許法第44条第1項の規定により平成11年9月1日に新たな出願とされたものであって、平成16年7月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年8月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成16年9月27日付けで手続補正がなされ、当審から平成18年9月25日付けで拒絶理由が通知され、平成18年11月27日付けで明細書に係る手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成18年11月27日付けの手続補正によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「所定条件の充足により、変動表示後に確定表示され、確定表示された種類により遊技者にとって価値のある特別遊技状態の生起の有無を報知する特別図柄が表示される図柄表示部を備えた図柄表示装置と、一連の特別図柄表示パターンに対応するコマンドを図柄表示装置へ発信する主制御装置とが設けられており、
図柄表示装置は、コマンドを記憶手段に格納するコマンド処理手段と、
記憶手段から取得したコマンドに基づいて図柄を図柄表示部に表示する表示処理手段とを含み、
主制御装置は、前記所定条件の充足により、特別図柄の変動時間及び確定表示する特別図柄の種類を決定するとともに、特別図柄に関する変動時間を指定する第1コマンドを、第1コマンドの示す変動時間に対応したタイマの駆動開始時のみにおいて発信した後、確定表示する特別図柄の種類を指定する第2コマンドを発信し、さらに、当該タイマにより変動時間の経過が示された場合のみにおいて、確定表示の実行を指令する第3コマンドを発信する一方、
図柄表示装置のコマンド処理手段は、受信したコマンドに基づいて、記憶手段に内部コマンドを生成するものであり、少なくとも、第1コマンドを受信することなく第2コマンドを受信した場合に、エラー表示を指令する内部コマンドを生成することを特徴とする遊技機。」

3.先願及び先願発明
(1)当審拒絶理由通知
当審は、平成18年9月25日付けの拒絶理由で、本願の請求項1乃至4に係る発明は、下記の先願1乃至3に記載された発明と同一であり、しかも、本願の請求項1乃至4に係る発明の発明者が先願1乃至3の発明者と同一であるとも、また、本願の出願の時において、本願の出願人と先願1乃至3の出願人とが同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない旨通知した。
先願1:特願平11-42347号(特開2000-237410号)
先願2:特願平10-377438号(特開2000-197743号)
先願3:特願平10-372881号(特開2000-189636号)

(2)先願発明
i.先願1である特願平11-42347号(特開2000-237410号公報参照)の明細書又は図面には、以下の事項が記載されている。
【請求項1】 表示状態が変化可能な複数の表示領域を有する可変表示部を含み、変動開始の条件の成立に応じて前記表示領域に表示される識別情報の変動を開始し、識別情報の表示結果があらかじめ定められた特定表示態様となったことを条件として遊技者に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であって、遊技の進行を制御する遊技制御手段と、前記可変表示部の表示制御を行う表示制御手段と、を備え、前記遊技制御手段は、大当りとするか否か決定する大当り決定手段と、前記可変表示部の表示内容を決定する表示内容決定手段と、表示内容決定手段の決定にもとづいて、少なくとも変動時間を特定しうる情報と停止識別情報を特定可能な情報とを出力可能なコマンド出力手段とを含み、前記表示制御手段は、リーチとなる識別情報変動パターンを構成する複数の変動態様のうち、最終停止図柄に応じて少なくとも2つの変動態様期間を可変制御して変動期間を受信したコマンドで特定される変動時間に保つ変動期間可変手段を含むことを特徴とする遊技機。
【0038】図7は、表示制御基板80内の回路構成を、可変表示部9の一実現例であるCRT82および主基板31の出力バッファ回路(出力ドライバ)63とともに示すブロック図である。表示制御用CPU101は、制御データROM102に格納されたプログラムに従って動作し、主基板31から入力バッファ回路105における入力バッファ105aを介してストローブ信号が入力されると、入力バッファ105aを介して表示制御コマンドを受信する。なお、主基板31の出力バッファ回路63は、基本回路53の出力ポートから信号を入力して主基板31から出力する回路であるが、片方向(主基板31から表示制御基板80に向かう方向)にしか信号を伝えない。
【0039】 そして、表示制御用CPU101は、受信した表示制御コマンドに従って、CRT82に表示される画面の表示制御を行う。具体的には、表示制御コマンドに応じた指令をVDP103に与える。VDP103は、キャラクタROM86から必要なデータを読み出す。VDP103は、入力したデータに従ってCRT82に表示するための画像データを生成し、その画像データをVRAM87に格納する。そして、VRAM87内の画像データは、R,G,B信号に変換され、D-A変換回路104でアナログ信号に変換されてCRT82に出力される。
【0048】 次に、表示制御基板80に送出されるコマンドデータをRAM55の所定の領域に設定する処理を行った後に(表示制御データ設定処理:ステップS4)、コマンドデータを表示制御コマンドデータとして出力する処理を行う(表示制御データ出力処理:ステップS5)。
【0051】 次に、遊技制御に用いられる大当り判定用乱数等の各判定用乱数を示す各カウンタを更新する処理を行う(ステップS10)。
図10は、各乱数を示す説明図である。各乱数は、以下のように使用される。(1)ランダム1:大当りを発生させるか否か決定する(大当り判定用=特別図柄決定用)(2)ランダム2-1?2-3:左右中のはずれ図柄決定用(3)ランダム3:大当り時の図柄の組合せを決定する(大当り図柄決定用=特別図柄判定用)(4)ランダム4:はずれ時にリーチするか否か決定する(リーチ判定用)(5)ランダム5:大当り予告を行うか否か決定する(大当り予告用)(6)ランダム6:リーチ時の変動時間を決定する(リーチ用)
【0061】 大当たりと判定されたときには、基本回路53は、大当り図柄判定用乱数の値にもとづいて停止図柄を決定する。ここで、リミッタが作動中でないならば、大当り図柄判定用乱数の値に従って全図柄を含むテーブルから停止図柄を決定する(ステップS54,S55)。リミッタが作動している場合には、基本回路53は、大当り図柄判定用乱数の値に従って確率変動を引き起こす図柄の組合せ(確変図柄)を含まない図柄のテーブルから停止図柄を決定する(ステップS54,S56)。リミッタは、連続して確変図柄による大当たりが発生すること、すなわち連続して高確率状態が継続することを制限するためのものである。例えば、4回連続して高確率状態が継続するとリミッタが作動状態になる。従って、リミッタ作動状態では、確率変動が行われる特別図柄を含まないテーブルから停止図柄が決定される。
【0073】 リーチ動作設定処理(ステップS303):リーチ判定用乱数の値に応じてリーチ動作するか否か決定するとともに、リーチ用乱数の値に応じてリーチ時の変動期間を決定する。すなわち、図12に示された処理の後半が実行される。
【0074】 全図柄変動開始処理(ステップS304):可変表示部9において全図柄が変動開始されるように制御する。このとき、表示制御基板80に対して、左右中最終停止図柄と変動期間を指令する情報とが送信される。また、可変表示部9に背景やキャラクタも表示される場合には、それに応じた表示制御コマンドデータが表示制御基板80に送出されるように制御する。
【0075】 全図柄停止待ち処理(ステップS305):変動期間が終了するのを待ち、変動期間が経過すると、可変表示部9において表示される全図柄を停止すべきことを示す全図柄停止コマンドが表示制御基板80に送出されるように制御する。
【0080】 上述したように、始動入賞口14に打球が入賞すると、基本回路53は、ステップS11(図9参照)の特別図柄プロセス処理において、大当たりとするかはずれとするか、停止図柄および可変表示期間を決定するが、その決定に応じた表示制御コマンドを表示制御基板80の表示制御用CPU101に与える。表示制御用CPU101は、主基板31からの表示制御コマンドに応じて可変表示部9の表示制御を行う。
【0086】 図18は、図柄の可変表示期間を特定可能な表示制御コマンドおよび全図柄の停止を指示する表示制御コマンドを示す説明図である。図18に示すように、この例では、可変表示期間を特定可能な表示制御コマンドとして、「はずれ」、「確変時全図柄変動」、「リーチ短期間」、「リーチ中期間」および「リーチ長期間」がある。
【0100】 図26は、主基板31から変動時間として14.5秒(リーチ短期間)が通知されたときに表示される変動パターンの例を示す。表示制御用CPU101は、リーチ短期間が通知されると、14.5秒の複数の変動パターンのうちの何れの変動パターンを用いるのかを独自に決定する。決定方法として、例えば所定の乱数を発生させ乱数値に応じて変動パターンを選択する方法を用いることができる。図26には、複数の変動パターンとして(A)?(C)の3パターンが例示されている。
なお、主基板31のCPU56がリーチ種類まで決定し、決定したリーチ種類に応じた変動パターンを示すコマンドを送るようにしてもよい。
【0134】 この実施の形態では、CPU56は、図柄の変動を開始させるときに、図18に示された変動時間を特定可能なコマンドA0,A2,B1,B2,B3のいずれかを表示制御基板80に送出する。また、続けて、既に決定されている左右中の停止図柄を示す表示制御コマンドを表示制御基板80に送出する。よって、ステップS304aのコマンド送信完了処理では、それら全てのコマンドの送出が完了したか否か確認される。なお、CPU56は、左右中の停止図柄を示す表示制御コマンドを送出してからコマンドA0,A2,B1,B2,B3のいずれかを送出してもよい。
【0136】 表示制御コマンドの送出が完了すると、CPU56は、表示制御基板80に通知した変動時間を測定するための変動時間タイマをスタートする(ステップS304b)。そして、ステップS305に移行するように、特別図柄プロセスフラグを更新する(ステップS304c)。
【0137】 図32は、図14に示された特別図柄プロセス処理における全図柄停止待ち処理(ステップS305)を示すフローチャートである。ステップS305では、CPU56は、変動時間タイマがタイムアップしたか否か確認する(ステップS305a)。タイムアップしたら、全図柄停止を指示する表示制御コマンドを設定する(ステップS305b)。そして、表示制御コマンドデータ送出要求をセットし(ステップS305c)、ステップS306に移行するように、特別図柄プロセスフラグを更新する(ステップS305d)。なお、表示制御コマンドデータ送出要求は、メイン処理(図9参照)中の表示制御データ設定処理(ステップS3)で参照される。
【0138】 以上のように、特別図柄プロセス処理において、CPU56は、変動の開始時に変動時間を特定可能な情報と停止図柄を指示する情報とを表示制御基板80に送出し、変動時間タイマがタイムアップしたら、すなわち指示した変動時間が終了したら、全図柄変動を指示する情報を表示制御基板80に送出する。その間、CPU56は、表示制御基板80に表示制御コマンドを送出しない。従って、主基板31のCPU56の表示制御に要する負荷は大きく低減されている。
【0149】 主基板31からの表示制御コマンドは、IRQ2割込によって表示制御用CPU101に受信される。図38は、表示制御用CPU101のIRQ2割込処理を示すフローチャートである。IRQ2割込処理において、表示制御用CPU101は、まず、データ受信中フラグがセットされているか否か確認する(ステップS601)。セットされていなければ、この割込が表示制御コマンドデータにおける第1バイトの表示制御データ送出による割込である。そこで、ポインタをクリアするとともに(ステップS602)、データ受信中フラグをセットする(ステップS603)。そして、ステップS604に移行する。ポインタは、表示制御用CPU101が内蔵しているRAMにおける表示制御コマンドデータ格納エリアにおける何バイト目に受信データを格納するか指し示すものである。
【0161】 主基板31から表示制御基板80に最初に送信される表示制御コマンドは、変動時間を示すコマンドと左右中図柄の停止図柄を指定するコマンドである。また、予告ありなしの情報も受信されている。それらは、表示制御データ格納エリアに格納されている(図38におけるステップS605参照)。なお、以下、変動時間を示すコマンドとともに送られてきた停止図柄を、仮停止図柄と呼ぶ。
【0162】 図41は、リーチ動作設定処理(ステップS750)を示すフローチャートである。リーチ動作設定処理において、表示制御用CPU101は、まず、変動時間を特定可能な表示制御コマンドから、リーチにもならないはずれか否か判断する(ステップS751)。具体的には、コマンドA0またはA2を受信していたらはずれである。
【0163】 はずれであるならば、左右の仮停止図柄が異なっているものであるか否か確認する(ステップS752)。一致していた場合には、右仮停止図柄を1図柄ずらしたものとする(ステップS753)。そして、左右中の仮停止図柄を所定の記憶エリアに格納する(ステップS754)。また、監視タイマに7.9秒を設定する(ステップS752)。7.9秒は、はずれ時の変動時間7.8秒に対して余裕を持たせた値であり、監視タイマがタイムアウトする前に全図柄停止を指定するコマンドを受信できなかったときには所定の処理が行われる。
【0164】 ステップS751において、はずれでなかったら、すなわち、コマンドB1,B2,B3のいずれかを受信していたら、左右の仮停止図柄が同一か否か確認する(ステップS756)。異なっていた場合には、右仮停止図柄を左仮停止図柄と同じものにする(ステップS757)。そして、左右中の仮停止図柄を所定の記憶エリアに格納する(ステップS754)。また、表示制御用CPU101は、コマンドB1,B2またはB3に応じた変動時間に0.1秒を加算した値を監視タイマに設定する(ステップS759)。
【0169】 次いで、表示制御用CPU101は、選択された変動パターンに応じたプロセステーブルを使用することを決定する(ステップS763)。各プロセステーブルには、その変動パターン中の各変動状態(変動速度やその速度での変動期間等)が設定されている。また、各プロセステーブルはROMに設定されている。そして、表示制御用CPU101は、表示制御プロセスフラグの値を全図柄変動開始処理(ステップS780)に対応した値に変更する(ステップS764)。
【0181】図46は、全図柄停止待ち処理(ステップS840)を示すフローチャートである。全図柄停止待ち処理において、表示制御用CPU101は、全図柄停止を指示する表示制御コマンドを受信しているか否か確認する(ステップS841)。全図柄停止を指示する表示制御コマンドを受信していれば、記憶されている仮停止図柄で図柄を停止させる制御を行う(ステップS842)。そして、次の表示制御コマンドの受信までの時間を監視するために、コマンド無受信タイマをスタートさせる(ステップS843)。
【0182】 全図柄停止を指定する表示制御コマンドを受信していない場合には、監視タイマがタイムアウトしているかどうか確認する(ステップS845)。タイムアウトした場合には、何らかの異常が発生したと判断して、可変表示部9にエラー画面を表示する制御を行う(ステップS846)。
【0187】 そして、遊技制御手段は変動期間が終了した時点で全図柄停止を示す表示制御コマンドを表示制御手段に与え、表示制御手段は、全図柄停止を示す表示制御コマンドによって図柄を確定する。従って、図柄は、遊技制御手段が管理するタイミングで確実に確定する。この実施の形態のように、遊技制御手段が図柄の変動開始に関連する時点で変動時間を特定可能な情報と停止図柄に関する情報を送信し、その後、表示制御手段が独自に変動パターンを決めたり図柄の差し替え制御等を行ったりする場合には、表示制御のかなりの部分が表示制御手段によって実行されていることになる。
【0188】・・・また、全図柄停止を指示する表示制御コマンドが受信できない場合にエラー表示を行うようにすれば、異常が生じたことは直ちに認識される。

ii.前記摘示の記載及び図面によれば、先願1には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
「変動開始の条件の成立により、変動表示後に最終停止表示され、最終停止表示された図柄の組合せが特定表示態様である場合に遊技者に所定の遊技価値が付与可能となる大当たり遊技状態の生起の有無を報知する特別図柄が表示される可変表示部9に接続される表示制御基板80と、一連の特別図柄の表示制御に対応する表示制御コマンドを表示制御基板80へ送信する主基板31とが設けられており、
表示制御基板80は、表示制御コマンドを表示制御データ格納エリアに格納する表示制御用CPU101と、
表示制御データ格納エリアから取得した表示制御コマンドに基づいて特別図柄を可変表示部9に表示するVDP103とを含み、
表示制御コマンドには、特別図柄の変動時間を指定する表示制御コマンドと、左右中の停止図柄を指定する表示制御コマンドと、全図柄の最終停止表示を指示する表示制御コマンドが含まれており、
主基板31は、変動開始の条件の成立により、特別図柄の変動時間及び最終停止表示する特別図柄の種類を決定するとともに、表示制御基板80に特別図柄に関する変動時間を指定する表示制御コマンドを送信し、続けて左右中の停止図柄を指定する表示制御コマンドを送信すると、表示制御基板80に送信した変動時間に対応した変動時間タイマをスタートさせるとともに、
当該変動時間タイマにより変動時間の経過が示された場合のみにおいて、全図柄の最終停止表示を指示する表示制御コマンドを送信し、
表示制御用CPU101は、受信した表示制御コマンドに応じた指令をVDP103に与えるものであって、表示制御データ格納エリアに格納された前記表示制御コマンドに基づいてROMに設定されたプロセステーブルから図柄変動データを取得して、該図柄変動データに設定されている制御内容でVDP103の制御状態を変更するとともに、監視タイマがタイムアウトしても全図柄の最終停止表示を指示する表示制御コマンドを受信しない場合には、可変表示部9にエラー画面を表示する制御を行う遊技機。」

4.対比判断
(1)本願発明と先願発明との対比
そこで、本願発明と先願発明とを対比すると、先願発明における「変動開始の条件の成立」、「最終停止表示」、「遊技者に所定の遊技価値が付与可能となる大当たり遊技状態」、「可変表示部9」、「表示制御基板80」、「表示制御データ格納エリア」、「表示制御用CPU101」、「VDP103」、「主基板31」、「特別図柄に関する変動時間を指定する表示制御コマンド」、「左右中図柄の停止図柄を指定する表示制御コマンド」、「変動時間タイマ」、「全図柄の最終停止表示を指示する表示制御コマンド」は、それぞれ、本願発明における「所定条件の充足」、「確定表示」、「遊技者にとって価値のある特別遊技状態」、「図柄表示部」、「図柄表示装置」、「記憶手段」、「コマンド処理手段」、「表示処理手段」、「主制御装置」、「特別図柄に関する変動時間を指定する第1コマンド」、「確定表示する特別図柄の種類を指定する第2コマンド」、「タイマ」、「確定表示の実行を指令する第3コマンド」に相当する。
また、先願発明における「受信した表示制御コマンドに応じた指令をVDP103に与える」ことは、本願発明における「内部コマンドを生成する」ことに相当するとともに、先願発明における「監視タイマがタイムアウトしても全図柄の最終停止表示を指示する表示制御コマンドを受信しない場合には、可変表示部9にエラー画面を表示する制御を行う」ことは、本願発明における「第1コマンドを受信することなく第2コマンドを受信した場合に、エラー表示を指令する内部コマンドを生成する」ことと対比して、「コマンドの受信エラーが発生した場合に、エラー表示を指令する内部コマンドを生成する」ことにおいて共通する。
そうすると、本願発明と先願発明とは、下記の点で、それぞれ一致並びに一応相違するものと認められる。

一致点.「所定条件の充足により、変動表示後に確定表示され、確定表示された種類により遊技者にとって価値のある特別遊技状態の生起の有無を報知する特別図柄が表示される図柄表示部を備えた図柄表示装置と、一連の特別図柄表示パターンに対応するコマンドを図柄表示装置へ発信する主制御装置とが設けられており、
図柄表示装置は、コマンドを記憶手段に格納するコマンド処理手段と、
記憶手段から取得したコマンドに基づいて図柄を図柄表示部に表示する表示処理手段とを含み、
主制御装置は、前記所定条件の充足により、特別図柄の変動時間及び確定表示する特別図柄の種類を決定するとともに、特別図柄に関する変動時間を指定する第1コマンドを、第1コマンドの示す変動時間に対応したタイマの駆動開始時のみにおいて発信した後、確定表示する特別図柄の種類を指定する第2コマンドを発信し、さらに、当該タイマにより変動時間の経過が示された場合のみにおいて、確定表示の実行を指令する第3コマンドを発信する一方、
図柄表示装置のコマンド処理手段は、受信したコマンドに基づいて、記憶手段に内部コマンドを生成するものであり、コマンドの受信エラーが発生した場合に、エラー表示を指令する内部コマンドを生成する遊技機。」

相違点.コマンドの受信エラーが発生した場合に、エラー表示を指令する内部コマンドを生成するコマンド処理手段が、本願発明は、第1コマンドを受信することなく第2コマンドを受信した場合に、エラー表示を指令する構成を備えているのに対し、先願発明は、該構成を備えていない点。

(2)相違点の検討
先願発明には、図柄表示装置のコマンド処理手段が、第2コマンドを受信すると監視タイマをセットして、該監視タイマがタイムアウトしても第3コマンドを受信しない場合には、図柄表示部にエラー画面を表示する制御を行う技術、すなわち、第2コマンドを受信したにもかかわらず第3コマンドを受信しない場合にエラー表示を指令する内部コマンドを生成する技術が開示されているところ、本願発明は、先願発明に開示される前記第3コマンドを受信しない場合にエラー表示を指令する技術を含むことのみならず、第1コマンドを受信することなく第2コマンドを受信した場合にもエラー表示を指令する技術を発明の構成要件とするものである。
ところで、普遍的な通信の技術分野において、複数のデータを送受信するときに一部のデータが抜けてしまうという受信エラーに対処するために、複数のデータに既知の通し番号を付けて送信し、受信側で前記通し番号により第1番目のデータを含め抜けたデータがないかどうか受信エラーをチェックする技術が周知(例えば、特開平4-30251号公報〔第3頁右上欄?右下欄〕、特開昭63-73740号公報〔第1頁左下欄?右下欄の従来の技術〕参照)であり、また、一般社会で利用されるファクシミリ通信においても、受信者が既知の頁番号に基づいて、途中頁の欠落エラーのみならず、第1頁を受信することなく第2頁を最初に受信した場合に第1頁の欠落エラーが発生したとチェックできることも常識といえる。
しかして、本願発明と先願発明の両者は、既知の順序で送受信される複数のコマンドの受信エラーをチェックするという技術的課題を同じくするものであり、送受信される複数のコマンドのいずれにおいても受信エラーが発生する可能性があることは明らかであるから、通信の技術分野におけるデータ抜けによる受信エラーをチェックする前記周知技術や、ファクシミリ通信における受信頁の欠落エラーがチェックできる前記常識を背景に、先願発明において、第3コマンドの受信エラーのみならず第1コマンドの受信エラーについてもチェックできるようにするために、第1コマンドを受信することなく第2コマンドを受信した場合にエラー表示を指令するような構成を採用することは、当業者にとって前記技術的課題を解決するための具体化手段として単なる設計上の微差にすぎない。
また、本願発明の作用効果は、先願発明及び前記設計上の微差に基づくものとして、当業者に自明なものである。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、先願発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願の時において、本願の出願人と先願の出願人とが同一であるとも認められないので、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、先願1に記載された発明(先願発明)と同一であるので、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-09 
結審通知日 2007-08-16 
審決日 2007-08-28 
出願番号 特願平11-247754
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 小田倉 直人
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 井上 敬也  
代理人 園田 清隆  
代理人 上田 恭一  
代理人 石田 喜樹  

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