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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1165518
審判番号 不服2005-14470  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-28 
確定日 2007-10-11 
事件の表示 平成 9年特許願第104462号「排ガスフィルター浄化方法及び排ガスフィルター浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月10日出願公開、特開平10-299457〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本件出願は、平成9年4月22日の出願であって、平成17年3月23日付けの拒絶理由の通知に対して、同年5月23日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年8月23日付けの手続補正書によって明細書を補正する手続補正がなされたものである。

[2]平成17年8月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成17年8月23日付けの手続補正を却下する。


[理 由]
1.本件補正の内容
平成17年8月23日付けの手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成17年5月23日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(b)に示す請求項1乃至6の記載を、下記の(a)に示す請求項1乃至6と補正するものである。

(a)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 排ガス中のパティキュレートを捕集したフィルターに対し、酸素を含む気体を加熱して熱風としその熱風の流束断面についての温度分布のばらつきを補正して供給し、前記フィルターの断面に対する熱風の流速分布が、前記フィルター全断面の一様加熱分布となるように制御して加熱昇温させ前記フィルターを均一に加熱し、火炎伝搬による燃焼ではなく前記フィルターに捕集されたパティキュレートを一様に燃焼除去することを特徴とする排ガスフィルター浄化方法。
【請求項2】 フィルターの断面中心付近での流速をV0とし、フィルターの外周付近での流速をV1としたとき、V0≦V1の関係として加熱流体の流速分布を制御することを特徴とする請求項1記載の排ガスフィルター浄化方法。
【請求項3】 排ガス中のパティキュレート等を除去するフィルターと、このフィルターに流体を吹き付ける送風手段と、フィルターに吹き付ける流体を加熱する加熱手段と、フィルターに所定量のパティキュレート等が捕集されたとき送風手段と加熱手段のそれぞれの作動を制御する制御手段を備えた排ガスフィルター浄化装置であって、加熱手段により熱風を生成し、加熱手段とフィルターの間に、フィルターに向かう熱風の流束断面についての温度分布のばらつきを補正しその熱風の流速及びまたは流量分布が前記フィルター全断面の一様加熱分布となるように制御して加熱昇温させる流速制御部を備え前記フィルターを均一に加熱し、火炎伝搬による燃焼ではなく前記フィルターに捕集されたパティキュレートを一様に燃焼除去することを特徴とする排ガスフィルター浄化装置。
【請求項4】 流速制御部は通気孔を有する1枚または間隔をおいた複数枚の板状材の配列によって構成され、前記流速制御部の板状材は、金属素材であって且つ通気孔は複数の分布として設けていることを特徴とする請求項3記載の排ガスフィルター浄化装置。
【請求項5】 流速制御部の板状材は、複数の通気孔を有するセラミックスで構成されていることを特徴とする請求項4記載の排ガスフィルター浄化装置。
【請求項6】 流速制御部の板状材は、複数の通気孔を有する金属またはセラミックス等の板と通気孔を持たない金属またはセラミックス等の板のいずれかの一つまたは任意の2組の組み合わせにより構成されることを特徴とする請求項4記載の排ガスフィルター浄化装置。」

(b)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 排ガス中のパティキュレートを捕集したフィルターに対し、酸素を含む気体を加熱して熱風としその熱風の流束断面についての温度分布のばらつきを補正して供給し、前記フィルターの断面に対する熱風の流速分布が、前記フィルター全断面の一様加熱分布となるように制御して加熱昇温させ、前記フィルターに捕集されたパティキュレートを一様に燃焼除去することを特徴とする排ガスフィルター浄化方法。
【請求項2】 フィルターの断面中心付近での流速をV0とし、フィルターの外周付近での流速をV1としたとき、V0≦V1の関係として加熱流体の流速分布を制御することを特徴とする請求項1記載の排ガスフィルター浄化方法。
【請求項3】 排ガス中のパティキュレート等を除去するフィルターと、このフィルターに流体を吹き付ける送風手段と、フィルターに吹き付ける流体を加熱する加熱手段と、フィルターに所定量のパティキュレート等が捕集されたとき送風手段と加熱手段のそれぞれの作動を制御する制御手段を備えた排ガスフィルター浄化装置であって、加熱手段により熱風を生成し、加熱手段とフィルターの間に、フィルターに向かう熱風の流束断面についての温度分布のばらつきを補正しその熱風の流速及びまたは流量分布が前記フィルター全断面の一様加熱分布となるように制御して加熱昇温させる流速制御部を備え、前記フィルターに捕集されたパティキュレートを一様に燃焼除去することを特徴とする排ガスフィルター浄化装置。
【請求項4】 流速制御部は通気孔を有する1枚または間隔をおいた複数枚の板状材の配列によって構成され、前記流速制御部の板状材は、金属素材であって且つ通気孔は複数の分布として設けていることを特徴とする請求項3記載の排ガスフィルター浄化装置。
【請求項5】 流速制御部の板状材は、複数の通気孔を有するセラミックスで構成されていることを特徴とする請求項4記載の排ガスフィルター浄化装置。
【請求項6】 流速制御部の板状材は、複数の通気孔を有する金属またはセラミックス等の板と通気孔を持たない金属またはセラミックス等の板のいずれかの一つまたは任意の2組の組み合わせにより構成されることを特徴とする請求項4記載の排ガスフィルター浄化装置。」

すなわち、本件補正により補正された請求項1については、
本件補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「加熱昇温させ」に関し、「前記フィルターを均一に加熱し」と付加し、さらに、「燃焼除去」に関し、「火炎伝搬による燃焼ではなく」と付加するものであるから、本件補正は平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正により補正された請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、単に「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて、以下に検討する。


2.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願平4-7907号(実開平5-69313号)のCD-ROM(以下、単に「引用文献」という。)には、図1?3とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案はエンジンからの排気ガスに含まれるパテイキュレ-トを浄化するためのパテイキュレ-トトラップに関する。」(段落【0001】)
(イ)「【0004】
【考案が解決しようとする課題】
このような再生時には、上記ケ-ス内に燃焼用空気を供給するようにしている。ケ-ス内に供給された燃焼用空気の流速分布は、ケ-スの内壁に沿う周辺部分の方が中央部分に比べて遅くなるという、不均一が生じることが避けられない。その結果、上記フィルタの周辺部分よりも中央部分に多くの燃焼用空気が流れ、それに応じてパテイキュレ-トの燃焼状態が左右されるから、フィルタの周辺部分のパテキュレ-トが燃え残るということがある。
【0005】
この考案は上記事情にもとずきなされたもので、その目的とするところは、ケ-ス内の周辺部分と中央部分とに燃焼用空気をほぼ均一に流がしてフィルタに付着したパテイキュレ-トを燃え残ることなく良好に燃焼させることができるようにしたパテイキュレ-トトラップを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この考案は、エンジンから排出される排気ガスの通路に一端と他端とが連通して設けられたケ-スと、このケ-ス内に設けられ上記排気ガスに含まれるパテイキュレ-トを捕捉するフィルタと、上記ケ-ス内の上記フィルタの上流側に対向して設けられた通気性を備えた熱反射板と、この熱反射板と上記フィルタとの間に設けられフィルタに捕捉されたパテイキュレ-トを燃焼させるヒ-タと、上記ヒ-タによって上記フィルタに捕捉されたパテキュレ-トを燃焼させる再生時に上記ケ-ス内に上記熱反射板を通して燃焼用空気を供給する供給手段とを具備し、上記熱反射板は、上記燃焼用空気に対する流通抵抗が周辺部分よりも中央部分の方が大きく設定されていることを特徴とする。
【0007】
【作用】
上記の構成においては、熱反射板によってヒ-タの熱が上流側に逃げづらくなるから、フィルタに効率よく作用するばかりか、上記熱反射板の燃焼用空気に対する流通抵抗によってフィルタの断面全体にほぼ均一に燃焼用空気を流すことができる。」(段落【0004】?【0007】)
(ウ)「【0009】
図2において、1はたとえば直噴式のデイ-ゼルエンジンである。このエンジン1にはエキゾ-ストマニホ-ルド2が接続されている。このエキゾ-ストマニホ-ルド2には排気通路を形成する排気管3の一端が接続されている。この排気管3の中途部にはマフラ4が設けられ、他端側は第1の分岐部5と第2の分岐管6とに分岐されている。第1の分岐部5には、中途部に第1の制御弁7と、パテイキュレ-トトラップ8が順次設けられている。上記第2の分岐部6には中途部に第2の制御弁9が設けられている。
【0010】
上記パテイキュレ-トトラップ8は、図1に示すように両端面が閉塞された円筒状のケ-ス11を有する。このケ-ス11の内部には、フィルタ12と、このフィルタ12の上流側にヒ-タ13および通気性を備えた熱反射板14が順次内蔵されている。
【0011】
上記フィルタ12は径の異なる複数の円筒状のフィルタ本体12aが同心状に設けられている。これらフィルタ本体12aの一端側の隙間は1つおきに第1の閉塞部材12bによって閉塞され、他端側は一端側の閉塞されていない隙間が第2の閉塞部材12bによって閉塞されている。したがって、パテイキュレ-トトラップ9のケ-ス11内に流入した排気ガスは、図1に矢印で示すように各フィルタ本体12a間の隙間に流入し、各フィルタ本体12aを厚さ方向に通過して流出するから、その排気ガス中に含まれるパテイキュレ-トが上記フィルタ本体12aの周壁によって捕捉されることになる。
【0012】
上記熱反射板14は、上記ヒ-タ13の熱が上流側に逃げるのを阻止し、フィルタ12に有効に作用させるためのものであり、耐熱性を有する材料、たとえば糸状セラミックスを円盤状に成形して構成されるている。この熱反射板14は、その成形時、上記糸状セラミックスが硬化する前に、図3(a)に示すように一方の側面を周辺部分から中央部分にゆくにしたがって圧縮率が次第に高くなるよう、凹球面状に圧縮している。それによって、上記熱反射板14は中心部分の嵩密度が周辺部分の嵩密度に比べて高く設定される。つまり、熱反射板14の流通抵抗は、その中央部分の方が周辺部分に比べて大きく設定されている。この熱反射板14の流通抵抗の分布状態を図3(b)に示す。
【0013】
上記排気管3の上記パテイキュレ-トトラップ9の上流側近傍には供給管15の一端が接続されている。この供給管15の他端には燃焼用空気を供給するブロア16が接続されている。このブロア16から供給された燃焼用空気は上記排気管3の接続端部3aからケ-ス11内へ流出し、上記熱反射板14およびフィルタ12を通過してケ-ス11から流出する。上記排気管3の接続端部3aは、その先端面が閉塞され、周壁に多数の流出孔3bが穿設されている。それによって、上記ブロア16からの燃焼用空気はケ-ス11の断面全体にわたってほぼ均一に分布されるようになっている。
【0014】
上記第1の制御弁7、第2の制御弁9およびブロア16はコントロ-ラ17からの制御信号によって開閉制御され、上記ヒ-タ13は同じく上記コントロ-ラ17からの制御信号によって通電制御される。つまり、ヒ-タ13は自動車に搭載されたバッテリ18の給電回路19に接続されている。この給電回路19には、ヒ-タ13への通電を制御するスイッチ21が直列に設けられている。そして、上記スイッチ21が上記コントロ-ラ17からの制御信号によって開閉制御されることで、上記ヒ-タ13への通電が制御されるようになっている。
【0015】
上記エンジン1の回転数は回転センサ22によって検出され、トルクはトルクセンサ23によって検出される。これらセンサによって検出された検出信号は上記コントロ-ラ17に入力される。このコントロ-ラ17は上記回転センサ22とトルクセンサ23からの検出信号にもとづいて上記ヒ-タ13への通電を制御、つまりフィルタ12に捕捉されたパテイキュレ-トを燃焼させるようになっている。」(段落【0009】?【0015】)
(エ)「【0018】
パテイキュレ-トトラップ8に導入された燃焼用空気は熱反射板14を通過してヒ-タ1(「ヒ-タ13」の誤記。)によって加熱されたのち、フィルタ12を通過することで、このフィルタ12に堆積したパテイキュレ-トを燃焼させる。上記熱反射板14は図3(a)に示すように圧縮されることで図3(b)に示す流通抵抗の分布状態、つまり中心部分が周辺部分よりも流通抵抗が高く形成されている。そのため、ケ-ス11内に流入した燃焼用空気の流速(流量)がケ-ス11の内周壁に沿う周辺部分が中央部分よりも低い状態であっても、上記熱反射板14を通ることによって図3(c)に示すようにほぼ均一化される。つまり、ケ-ス11の断面内における流量がほぼ均一となる。
【0019】
上記フィルタ12の断面における熱分布は上記燃焼用空気の流速分布とほぼ比例する。つまり、フィルタ12の断面における熱分布を上記熱反射板14によって均一にすることができる。それによって、上記フィルタ12に堆積したパテイキュレ-トを燃え残りが生じないよう、全体にわたってほぼ均一に燃焼させることができる。
【0020】
なお、この考案は上記一実施例に限定されず、種々変形可能である。たとえば、上記一実施例では熱反射板の圧縮率、つまり嵩密度を変えることで流速分布を変えるようにしたが、それ以外の方法、たとえば中央部分の厚さを周辺部分の厚さよりも厚くして抵抗を大きくすることで流速分布を変えるようにしてもよい。また熱反射板の材料はセラミックスに限られず、排気ガスに対する耐熱性を備えた材料であればよい。」(段落【0018】?【0020】)
(オ)「【0022】
そのため、パテイキュレ-トトラップの再生時、ケ-ス内に供給された燃焼用空気は、その周辺部分の流量が中央部分に比べて少なくなることなく、全体にわたってほぼ均一な流量で流れるから、上記ケ-ス内のフィルタに堆積したパテイキュレ-トを全体にわたってほぼ均一に燃焼させることができる。」(段落【0022】)

(2)ここで、上記記載事項(ア)?(オ)及び図1?3から、次のことがわかる。
(カ)上記(ウ)及び図1?2から、パテイキュレ-トはフィルタ12に捕捉されるので、この「捕捉」とは実質的に「捕集」と同じ意味であるので、パテイキュレ-トを捕捉したフィルタ12は「パテイキュレ-トを捕集したフィルタ12」ということであり、また、フィルタ12に捕捉されたパテイキュレ-トは「フィルタ12に捕集されたパテイキュレ-ト」ということであることがわかる。
(キ)上記(ウ)?(エ)及び図1?2から、熱反射板14は、ヒータ13の熱が上流側に逃げるのを阻止するので加熱されるのは明らかである。とすると、燃焼用空気は、熱反射板14の通過時から加熱され、さらにヒ-タ13によって加熱されるので、熱反射板14の通過時からの燃焼用空気は「熱風」であることがわかる。
(ク)上記(ウ)?(エ)、(キ)及び図1?3から、「熱風」はケ-ス11の断面内でほぼ均一てあり流束状態で流れるので、熱反射板14の通過時からのケ-ス11を流れる「熱風」の断面が「熱風の流束断面」であることがわかる。
(ケ)上記(ウ)?(エ)、(カ)?(ク)及び図1?3から、「熱風の流束断面」についての熱分布は反射板14によってほぼ均一化されるので、物理的に見て、「熱風の流束断面」についての温度分布も反射板14によってほぼ均一化されることになり、「熱風の流束断面についての温度分布のばらつきを補正して供給」するものであることがわかる。
(コ)上記(イ)?(ケ)及び図1?3から、フィルタ12の断面における熱分布が、フィルタ12に堆積したパテイキュレ-トを燃え残りが生じないよう、全体にわたってほぼ均一に燃焼させるので、この状態では当然ながらフィルタ12全断面の一様加熱分布となるものであり、結局、反射板14とヒ-タ13とによる「熱風の流速分布」がフィルタ12の断面における熱分布をもたらすので、「熱風の流速分布が、フィルタ12全断面の一様加熱分布となるように制御されて加熱昇温させ前記フィルタ12を均一に加熱」することがわかる。
(サ)上記(イ)?(エ)及び図1?3から、パテイキュレ-トを燃え残りが生じないよう、全体にわたってほぼ均一に燃焼させるのものであるので、「パテイキュレートを一様に燃焼除去する」ものであることがわかる。
(シ)上記(ア)?(サ)及び図1?3から、パテイキュレ-トトラップにおけるフィルタ12に捕捉された排気ガスに含まれるパテイキュレ-トを浄化する方法が記載されているので、このことは排気ガスフィルタ12の浄化方法であることがわかる。

(3)上記(ア)?(シ)並びに図1?3の記載を総合すると、引用文献には、次のような発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「排気ガス中のパテイキュレートを捕集したフィルタ12に対し、燃焼用空気を加熱して熱風としその熱風の流束断面についての温度分布のばらつきを補正して供給し、前記フィルタ12の断面に対する熱風の流速分布が、前記フィルタ12全断面の一様加熱分布となるように制御して加熱昇温させ前記フィルタ12を均一に加熱し、前記フィルタ12に捕集されたパテイキュレートを一様に燃焼除去する排気ガスフィルタ12の浄化方法。」


3.対比・判断
(1)本願補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明の「排気ガス」、「パテイキュレート」、「フィルタ12」、「燃焼用空気」及び「排気ガスフィルタ12の浄化方法」は、それらの機能及び形状や構造からみて、本願補正発明の「排ガス」、「パティキュレート」、「フィルター」、「酸素を含む気体」及び「排ガスフィルター浄化方法」にそれぞれ相当する。
したがって、本願補正発明と引用文献記載の発明は、
「排ガス中のパティキュレートを捕集したフィルターに対し、酸素を含む気体を加熱して熱風としその熱風の流束断面についての温度分布のばらつきを補正して供給し、前記フィルターの断面に対する熱風の流速分布が、前記フィルター全断面の一様加熱分布となるように制御して加熱昇温させ前記フィルターを均一に加熱し、前記フィルターに捕集されたパティキュレートを一様に燃焼除去する排ガスフィルター浄化方法。」
である点で一致し、次の<相違点>で相違する。

<相違点>
パティキュレートの燃焼に関し、本願補正発明では、「火炎伝搬による燃焼ではな」いのに対し、引用文献記載の発明では、「火炎伝搬による燃焼ではな」いのか否か不明である点。

(2)判断
上記<相違点>について以下に検討する。
排ガスフィルター浄化方法において、火炎伝搬による燃焼がフィルターに不具合を生じさせること及びこのような不具合を解消しようとしてパティキュレートの燃焼に関し火炎伝搬による燃焼ではないようにすることは従来周知の事項(以下、「周知事項」という。例えば、特開平7-127434号公報の特に段落【0005】?【0006】、【0016】及び【0028】、特開平7-102945号公報の特に段落【0006】、【0008】?【0009】及び【0026】参照。)である。
とすると、引用文献記載の発明において、パティキュレートの燃焼に際し、前述した周知事項を考慮して本願補正発明のようにすることは、当業者が容易に想到し得る程度のものと認められる。

(3)まとめ
以上のように、本願補正発明のような構成とすることは、引用文献記載の発明及び前述した周知事項に基いて、当業者が格別な困難性を伴うことなく容易に想到しうる程度のものと認められ、しかも、本願補正発明は、全体構成でみても、引用文献記載の発明及び前述した周知事項から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。
よって、本願補正発明は、引用文献記載の発明及び前述した周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

[3]本願発明について
1.本願発明の内容
平成17年8月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1乃至6に係る発明は、平成17年5月23日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、前記[2]の1.(b)の請求項1に記載したとおりである。

2.引用文献記載の発明
原査定の拒絶理由に引用された引用文献(実願平4-7907号(実開平5-69313号)のCD-ROM)の記載事項は、前記[2]の2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、実質的に、前記[2]で検討した本願補正発明における発明特定事項である「「前記フィルターを均一に加熱し」の点及び「火炎伝搬による燃焼ではなく」の点の限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記[2]の3.(1)?(3)に記載したとおり、引用文献記載の発明及び前述した周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-03 
結審通知日 2007-08-07 
審決日 2007-08-27 
出願番号 特願平9-104462
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 石井 孝明
柳田 利夫
発明の名称 排ガスフィルター浄化方法及び排ガスフィルター浄化装置  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  

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