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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1166338 |
審判番号 | 不服2005-9037 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-05-13 |
確定日 | 2007-10-18 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第151623号「静電潜像の液体現像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年12月22日出願公開、特開平 7-334006〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成6年6月8日の出願であって、平成17年2月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年5月13日に、拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。 第2.平成17年5月13日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年5月13日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の概要 平成17年5月13日付けの手続補正には、特許請求の範囲の請求項1を以下のとおりに補正しようとする補正事項が含まれている。 「【請求項1】画像支持体上に形成された静電潜像を帯電した顕像化粒子であるトナーによって現像する静電潜像の液体現像装置であって、 絶縁性液体中にトナーが高濃度に分散された粘度100?10000mPa・sの液体現像剤を、 硬度が90°(JIS A) 以上のハードローラと硬度が15°?40°(JIS A) のソフトローラとを交互に当接させて配列した少なくとも二つのローラを介して現像剤支持体上に塗布する塗布手段と、 前記液体現像剤が塗布された現像剤支持体を介して前記画像支持体の潜像面に前記液体現像剤を供給する現像手段と、 を具備することを特徴とする静電潜像の液体現像装置。」 2.補正の適否の判断 上記補正事項は、補正前の請求項1に係る発明の構成である、「硬度が60°(JIS A) 以上のハードローラ」と「硬度が60°(JIS A) 以下のソフトローラ」について、それぞれ「硬度が90°(JIS A) 以上のハードローラ」と「硬度が15°?40°(JIS A) のソフトローラ」に硬度の範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで、本件手続補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。 (1)刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開昭51-130232号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1a)「本発明は液体現像技術を使用する静電写真複写に於ける改良に関する。 公知の静電写真複写装置に於いては、像形成表面に静電荷像が形成され、この静電荷像は付与装置により現像液が静電荷像に対して与えられる如き液体現像処理によって現像されるのであり、この付与装置は隆起部(ランド)と凹部(谷)とからなる表面を有し、この凹部は隆起部の間に現像液を保有する為に適せしめられているものである。現像液は静電荷像の静電力によって像の形状に像形成面に引かれる。 静電荷像の液体現像に関する好ましい方法は英国特許第880,597号に示されている。この装置に於いては、静電荷像を支持する部材の表面に対して現像液を与える為に付与ローラーが使用されている。この付与ローラーの凹部内の現像液レベルは調整即ち制量ブレードを使用することによって綿密に制御されている。 この装置によれば、作られる最終的な像の品質は制量ブレードによって行われる液量調整の均一制に大きく左右されることが見出されている。」(2頁左上欄18行?右上欄19行)、 (1b)「さて第5図を参照すれば、全体を12で示された電子写真部材が概略的に横断面にて示されており、・・・作動に於いて、電子写真部材12は暗所内に於いてここではコロナ源として示される帯電装置13により均一静電位に帯電される。・・・帯電された部材12は次に全体を14で示された露出ステーションに於いて光像に露光される。・・・このようにして形成された帯電模様は次に全体を15で示された現像ステーションにて可視状態になされるのであり、このステーションに於いては現像剤が光導電性表面に付与されるのである。現像ステーション32はランドと谷との表面模様を有する現像剤付与装置16であり、谷部はローラー装置18によって現像液層17から現像液の制御された量を供給される。」(5頁右上欄17行?左下欄19行)、 (1c)第5図には、現像ステーション32のローラー装置18は3つのローラーから成ることが示されている。 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開昭53-57039号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (2a)「粘度が5ないし1,000cp、トナー濃度が10-1ないし50%、トナー粒径が0.5ないし5μであることを特徴とする静電潜像用現像剤。」(1頁、特許請求の範囲第1項)、 (2b)「本発明では、現像剤の粘度を高めることにより濡れと地汚れを減少させ、又トナー濃度を高めることにより、画像濃度をアップし、さらにトナー粒径を大きくすることによって、トナーの濃度が高くても地汚れが増加しないようにしたものである。」(1頁右下欄8行?13行)、 (2c)「本発明において粘度を調整するには(1)媒体液として粘度の高いものを使う、または(2)粘度を高める樹脂を使う、さらには(3)増粘添加剤を使うなどの手段があり、これらを単独であるいは組合せて適用すればよい。 上記(1)に該当するものとしては、高沸点のイソパラフィン系溶剤(エッソ化学製、アイソパーL、Mなど)、シリコーンオイル(信越化学製KF-96、KF-50など)、・・・などがある。」(1頁右下欄20行?2頁左上欄9行)、 (2d)実施例2には、フタロシアニンブルー20部、カーボンブラック10部、エポキシ樹脂5部、アルキッド樹脂50部を混練したもの10部にソルプレン1205を5部とアイソパーLを35部加え、撹拌混合して、粘度350cp、トナー濃度15%、トナー粒径3.5μmの現像剤を得たこと、これを用いて直径30mmのローラーを用い、現像試験を行ったところ、画像濃度は高く、地汚れ及びぬれの程度が少ない複写画像が得られたこと(2頁右下欄12行?3頁左上欄4行、右上欄の表)。 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開昭61-24453号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「印刷機におけるインキ装置」に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。 (3a)「一般に、この種の印刷機におけるインキ装置では、インキの供給が不連続に行われている。これを第3図を参照して説明すると、インキつぼ1内のインキ2は、回転するつぼローラ3によってそのローラ周面に皮膜として取り出され、これを揺動する移しローラ4が運び、それを多数のローラを含む練りローラ群5(練りローラ群5は、通常、金属やエボナイト等からなる剛性材料製のローラ5aとゴム等の弾性材料製のローラ5bとの組合わせからなる。)によって均等化し、均等化したインキが付けローラ6を通して版面7に供給される。」(1頁右下欄4行?15行)。 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された特開昭54-116229号公報(以下、「刊行物4」という。)には、ジアゾ複写機のローラ塗布式現像装置に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。 (4a)「現像皿23内に現像液22を入れ、汲上ローラ20がその1部を現像液内に浸漬するように回転可能に装着されている。汲上ローラ20は、その汲上げた現像液を軟質ローラ16の表面に塗布し、ついでこの軟質ローラ16に接する小径の硬質ローラ17により、現像に適した量迄少ない加圧力で効率よく現像液の絞りが行われる。最後にかく絞られた現像液は、硬質ローラ17に接する塗布ローラ18を介して、既述のごとく、感光紙の感光面に塗布される。」(2頁左上欄11行?19行)。 (2)対比、判断 上記記載事項(1a)ないし(1c)によれば、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。 「電子写真部材12上に形成された静電荷像を帯電した現像剤によって現像する液体現像技術を使用する静電写真複写装置であって、 液体現像剤を、3つのローラを介して現像剤付与装置16上に塗布するローラー装置18と、 前記現像剤が塗布された現像剤付与装置16を介して前記電子写真部材12の静電荷像面に前記現像剤を供給する現像手段とを具備する液体現像技術を使用する静電写真複写装置。」 補正発明と刊行物1に記載された発明を対比する。 刊行物1に記載された発明の「電子写真部材12」、「液体現像技術を使用する静電写真複写装置」、「現像剤」、「現像剤付与装置16」、「ローラー装置18」は、それぞれ補正発明の「画像支持体」、「静電潜像の液体現像装置」、「液体現像剤」、「現像剤支持体」、「塗布手段」に相当する。 また、刊行物1に記載された発明の「帯電した現像剤によって現像する」が、現像剤中の「帯電した顕像化粒子であるトナー」によって現像することであることは明らかである。 したがって、両者は、 「画像支持体上に形成された静電潜像を帯電した顕像化粒子であるトナーによって現像する静電潜像の液体現像装置であって、液体現像剤を、少なくとも二つのローラを介して現像剤支持体上に塗布する塗布手段と、前記液体現像剤が塗布された現像剤支持体を介して前記画像支持体の潜像面に前記液体現像剤を供給する現像手段と、を具備する静電潜像の液体現像装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:補正発明は、液体現像剤がトナーが高濃度に分散された100?10000mPa・sの高粘度のものであるのに対し、刊行物1に記載された発明は、液体現像剤のトナー濃度、粘度が特定されていない点。 相違点2:少なくとも二つのローラを介して現像剤支持体上に塗布する塗布手段が、補正発明では、硬度が90°(JIS A) 以上のハードローラと硬度が15°?40°(JIS A) のソフトローラとを交互に当接させものであるのに対し、刊行物1に記載された発明は、ローラがどのようなものか不明な点。 上記相違点1について検討すると、刊行物2には、液体現像剤の粘度を高くすること、それにより、濡れと地汚れを減少させ、又トナー濃度を高めることにより、画像濃度をアップできることが記載され、液体現像剤の粘度を350cp(350mPa・s)とした例が示されている。また、液体現像剤の粘度が高すぎると、トナーの均一な分散性が低下し、液体現像剤中でトナーが移動しにくくなること、絶縁性液体が乾燥しにくくなることは容易に予測されることである。 したがって刊行物1に記載された発明において、濡れと地汚れを減少させ、画像濃度を高くするとともに、トナーの分散性、移動性、現像剤の乾燥性を考慮し、液体現像剤をトナーが高濃度に分散された、粘度100mPa・s?10000mPa・sのものとすることは、刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易になしうることである。 相違点2について検討すると、刊行物1には、現像剤支持体に現像液を均一に塗布することが必要であることが記載されているところ、液体を均一に塗布するために、塗布装置を金属のようなハードロールとゴムの様なソフトロールを交互に配列した少なくとも二つ以上のローラにより構成することは刊行物2、3に記載されているように本願出願前周知の技術である。 また、ハードローラ、ソフトローラの硬度を限定したことに格別の技術的意義はなく、かつ補正発明程度のハードローラ及びソフトローラは、例えば特開昭54-140536号公報の実施例に記載されているように本願出願前普通に用いられている程度のものであって、ローラの硬度は、目的とする現像液の層厚、ローラの周速、ローラ同士の圧接の程度等に応じて、当業者が、適宜選択しうる程度のことである。 したがって、刊行物1記載の発明において、塗布手段を、硬度が90°(JIS A) 以上のハードローラと硬度が15°?40°(JIS A) のソフトローラとを交互に当接させたものとすることは、刊行物3、4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易になしうることである。 そして、補正発明の効果は全体として刊行物1ないし4に記載された発明から予測できる程度のことである。 したがって、補正発明は、刊行物1ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.むすび 以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、補正却下の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願の請求項に係る発明 平成17年5月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成15年12月26日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されたとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりのものである。 「【請求項1】 画像支持体上に形成された静電潜像を帯電した顕像化粒子であるトナーによって現像する静電潜像の液体現像装置であって、絶縁性液体中にトナーが高濃度に分散された100?10000mPa・sの高粘度の液体現像剤を、硬度が60°(JIS A) 以上のハードローラと硬度が60°(JIS A) 以下のソフトローラとを交互に当接させて配列した少なくとも二つのローラを介して現像剤支持体上に塗布する塗布手段と、前記液体現像剤が塗布された現像剤支持体を介して前記画像支持体の潜像面に前記液体現像剤を供給する現像手段と、を具備することを特徴とする静電潜像の液体現像装置。」 2.引用刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された特開昭51-130232号公報(以下、「刊行物1」という。)、特開昭53-57039号公報(以下、「刊行物2」という。)、特開昭61-24453号公報(以下、「刊行物3」という。)、及び特開昭54-116229号公報(以下、「刊行物4」という。)には、前記「第2.2.(1)」に記載したとおりの事項が記載されていると認める。 3.対比、判断 本願請求項1に係る発明は、塗布装置を構成するハードローラが「硬度が60°(JIS A) 以上」、ソフトローラが「硬度が60°(JIS A) 以下」であって、補正発明で限定されていた、「硬度が90°(JIS A) 以上のハードローラ」、「硬度が15°?40°(JIS A) のソフトローラ」を含むものである。 そうすると、請求項1に係る発明の構成を全て含み、さらに限定した補正発明が、前記「第2.2.(2)」に記載したとおり、刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、請求項1に係る発明も、同様の理由により、刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-05-21 |
結審通知日 | 2007-05-25 |
審決日 | 2007-06-06 |
出願番号 | 特願平6-151623 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大仲 雅人 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
岡田 和加子 小宮山 文男 |
発明の名称 | 静電潜像の液体現像装置 |
代理人 | 奥山 雄毅 |