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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1166638
審判番号 不服2004-1779  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-26 
確定日 2007-10-22 
事件の表示 特願2001- 39685「フルモーション・ビジュアル製品用の統合化デジタル・プロダクション・ライン」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月19日出願公開、特開2001-290938〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年2月16日(優先権主張 2000年3月24日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成15年10月23日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月25日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月25日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月25日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正内容
平成16年2月25日付の手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「フルモーション・ビジュアル製品を生成するためのシステムにおいて、
通信用のネットワークと、
フィルム撮影箇所に存在して、フルモーション・ビジュアル・コンテンツを取得するコンテンツ取得設備であって、取得したフルモーション・ビジュアル・コンテンツをデジタル化するデジタイザと、遠隔地においてデジタル化されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを修正するために、該コンテンツをフィルム撮影箇所からネットワークを介して遠隔地に電子的に送信する通信インターフェースとを備えたコンテンツ取得設備と、
フィルム撮影箇所に位置し、遠隔地からネットワークを介して送られてくる修正されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを受け取るコンピュータ端末であって、該コンピュータ端末に接続されかつフィルム撮影箇所に位置するモニタに、修正されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを表示させて、フルモーション・ビジュアル・コンテンツの少なくとも一部分を再取得すべきかどうかを判定させるための第1のコンピュータ端末と
からなることを特徴とするシステム。」
と補正された。
また、本件補正により、特許請求の範囲の請求項3は、
「請求項2記載のシステムにおいて、1シーンの電子的バージョンは、該1シーンの取得が完了した後に、コンテンツ取得設備の通信インターフェースによってネットワーク上に直接送信されるよう構成されていることを特徴とするシステム。」
と補正された。
また、本件補正により、特許請求の範囲の請求項4は、
「請求項1記載のシステムにおいて、該システムはさらにネットワークに接続されたアプリケーション・サーバを備え、該アプリケーション・サーバは、ネットワークからデジタル化されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを受け取り、該コンテンツに注釈を付加しかつ他のユーザと同一のフルモーション・ビジュアル・コンテンツを見ながら共同作業を行えるようにするために、少なくとも1人のユーザが、フルモーション・ビジュアル・コンテンツを見直して編集するためのアプリケーションを実行し、編集されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを、ネットワークを介して第1のコンピュータ端末の通信インターフェースに送信するよう構成されていることを特徴とするシステム。」
と補正された。
また、本件補正により、特許請求の範囲の請求項5は、
「請求項1記載のシステムにおいて、該システムはさらに、ネットワークに接続されかつ編集設備に配置された第2のコンピュータ端末を備え、該第2のコンピュータ端末は、ネットワークからデジタル化されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを受け取り、該コンテンツの少なくとも一部分からビジュアル・コンテンツを除去するか、該一部分にビジュアル・コンテンツを追加するか、又は該一部分にビジュアル・コンテンツを挿入するかの少なくとも1つを行うことによって、該部分を電子的に修正する編集プログラムを実行し、修正されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを、通信インターフェースからネットワークを介して第1のコンピュータ端末の通信インターフェースに送信するよう構成されていることを特徴とするシステム。」
と補正された。
また、本件補正により、特許請求の範囲の請求項6は、
「請求項1記載のシステムにおいて、該システムはさらにネットワークに接続されかつ特殊効果設備に備えられた第3のコンピュータ端末を備え、該第3のコンピュータ端末は、ネットワークからデジタル化されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを受け取り、該フルモーション・ビジュアル・コンテンツに特殊効果を電子的に付加するため編集プログラムを実行し、編集されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを通信インターフェースからネットワークを介して第1のコンピュータ端末の通信インターフェースに送信するよう構成されていることを特徴とするシステム。」
と補正された。
また、本件補正により、特許請求の範囲の請求項7は、
「請求項1記載のシステムにおいて、該システムはさらに、ネットワークに接続された第4のコンピュータ端末を備え、該第4のコンピュータ端末は、ネットワークから編集されたデジタル化されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを見直しのために受け取り、フィルム撮影位置にいるユーザと第4のコンピュータ端末の位置にいるユーザとの間で、フルモーション・ビジュアル・コンテンツの少なくとも一部分を取得する数分間に、完全に統合されたビジュアルをフィードバックさせるためのアプリケーション・プログラムを実行するよう構成されていることを特徴とするシステム。」
と補正された。

(2)補正の目的
補正前の請求項1の記載と補正後の請求項1の記載からみて、請求項1に係る本件補正は、以下の補正事項を含む。
(ア)「通信用のネットワークと、」の記載を追加する補正。
(イ)「得られた」を「取得したフルモーション・ビジュアル・コンテンツをデジタル化するデジタイザと、遠隔地においてデジタル化された」に変更する補正。
(ウ)「該コンピュータ端末に接続されかつフィルム撮影箇所に位置するモニタに、修正されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを表示させて、」の記載を追加する補正。

そこで、上記補正事項(ア)?(ウ)の補正の目的について以下に検討する。
補正前の請求項1には、通信用のネットワークがシステムを構成することが記載されているとは認められないので、上記補正事項(ア)は、コンテンツ取得設備とコンピュータからなる補正前のシステムについて、新たに、通信用のネットワークを追加するものであり、補正前の請求項1に記載された事項を限定的に減縮するものとは認められないので、上記補正事項(ア)は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとは認められない。

補正前の請求項1には、取得したフルモーション・ビジュアル・コンテンツをデジタル化することが記載されているとは認められないので、上記補正事項(イ)は、補正前の請求項1に係る発明の取得設備に、新たに、取得したフルモーション・ビジュアル・コンテンツをデジタル化するデジタイザを追加するものであり、補正前の請求項1に記載された事項を限定的に減縮するものとは認められないので、上記補正事項(イ)は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとは認められない。

補正前の請求項1には、該コンピュータ端末に接続されかつフィルム撮影箇所に位置するモニタに、修正されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを表示させることが記載されているとは認められないので、上記補正事項(ウ)は、補正前の請求項1に係る発明のコンピュータに、新たに、該コンピュータ端末に接続されかつフィルム撮影箇所に位置するモニタを追加するとともに、当該コンピュータの処理に、修正されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを表示させる処理を追加するものであり、補正前の請求項1に記載された事項を限定的に減縮するものとは認められないので、上記補正事項(ウ)は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとは認められない。

また、上記補正事項(ア)?(ウ)は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてなされたものとは認められないので、上記補正事項(ア)?(ウ)は、特許法第17条の2第4項第4号に掲げられた明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものに該当するとは認められない。

さらに、上記補正事項(ア)?(ウ)が、特許法第17条の2第4項第1号に掲げられた請求項の削除、又は、同第3号に掲げられた誤記の訂正を目的とするものに該当しないことは明らかである。

したがって、上記補正事項(ア)?(ウ)は、特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、上記補正事項(ア)?(ウ)を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成16年2月25日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年10月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「フルモーション・ビジュアル製品を生成するためのシステムにおいて、
フィルム撮影箇所に存在して、フルモーション・ビジュアル・コンテンツを取得するコンテンツ取得設備であって、得られたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを修正するためにネットワークを介して遠隔地に電子的に送信させるコンテンツ取得設備と、
フィルム撮影箇所に位置し、遠隔地からネットワークを介して送られてくる修正されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを受け取るコンピュータであって、フルモーション・ビジュアル・コンテンツの少なくとも一部分を再取得すべきかどうかの判定を実行するコンピュータと
からなることを特徴とするシステム。」

4.原査定の拒絶の理由の概要
拒絶理由通知及び拒絶査定の記載からみて、原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「請求項1?8には、システムについて、依然として、概括的な機能のみを特定するものであり、当該システムの動作がコンピュータのハードウェア資源を用いて具体的に実現されたソフトウェアによる情報処理であると把握できる程度に具体的に記載されていないから、これらの請求項に係る発明は自然法則を利用した技術的思想の創作である発明には該当しない。
したがって、請求項1?8に係る発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。」

5.当審の判断
発明の詳細な説明の記載からみて、本願発明のシステムは、コンピュータを備えたコンピュータシステムであり、その発明の実施にソフトウエアを必要とする、いわゆるコンピュータ・ソフトウエア関連発明である。
こうしたソフトウエアを利用するコンピュータ・ソフトウエア関連発明が、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、発明はそもそもが一定の技術的課題の解決手段になっていなければならないことから、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって、所定の技術的課題を解決できるような特有の構成が具体的に提示されている必要があるというべきである。
そこで、請求項1の記載を便宜上以下の(a)?(c)に分けて、ソフトウエアにより実現される処理がハードウエア資源を用いてどのように実現されるか具体的に提示されているか検討する。
(a)「フルモーション・ビジュアル製品を生成するためのシステムにおいて、」
(b)「フィルム撮影箇所に存在して、フルモーション・ビジュアル・コンテンツを取得するコンテンツ取得設備であって、得られたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを修正するためにネットワークを介して遠隔地に電子的に送信させるコンテンツ取得設備と、」
(c)「フィルム撮影箇所に位置し、遠隔地からネットワークを介して送られてくる修正されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを受け取るコンピュータであって、フルモーション・ビジュアル・コンテンツの少なくとも一部分を再取得すべきかどうかの判定を実行するコンピュータとからなることを特徴とするシステム。」

上記(a)の記載について検討すると、上記(a)の記載は、システムの機能の概要を特定しているにすぎない。

上記(b)の記載について検討すると、システムのコンテンツ取得設備が用いるハードウエア資源として「ネットワーク」が記載されているものの、「ネットワーク」に関する記載は、単にフルモーション・ビジュアル・コンテンツの受信・送信経路を特定するにすぎず、上記(b)の記載は、単に、システムの機能を「フィルム撮影箇所に存在して、フルモーション・ビジュアル・コンテンツを取得する」こと、及び「得られたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを修正するためにネットワークを介して遠隔地に電子的に送信させる」ことに特定するに留まり、これらの機能が、コンテンツ取得設備に備えられたハードウエア資源を用いてどのようにして実現されるのか具体的に提示されているとは認められない。

上記(c)の記載について検討すると、システムのコンピュータが用いるハードウエア資源として「ネットワーク」が記載されているものの、「ネットワーク」に関する記載は、単にフルモーション・ビジュアル・コンテンツの受信経路を特定するにすぎず、上記(c)の記載は、システムの機能を「フィルム撮影箇所に位置し、遠隔地からネットワークを介して送られてくる修正されたフルモーション・ビジュアル・コンテンツを受け取る」こと、及び「フルモーション・ビジュアル・コンテンツの少なくとも一部分を再取得すべきかどうかの判定を実行する」ことに特定するに留まり、これらの機能がコンピュータに備えられたハードウエア資源を用いてどのように実現されるか具体的に提示されているとは認められない。

さらに、請求項1の記載の全体をみても、本願発明のシステムの機能が記載されているものの、当該機能がシステムが備えるハードウエア資源を用いてどのように実現されるのか具体的に提示されているとは認められない。

以上の検討によれば、本願発明のシステムの機能が、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって、どのように実現されるのか、という点に関しては、何ら具体的に記載されておらず、かつ、情報処理が、請求項の記載から当業者にとって自明であると認められるものではない。
そうすると、本願発明は、その技術的課題を解決できるような特有の構成を具体的に提示するものであるとはいえず、一定の技術的課題の解決手段であるとは到底いえないから、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-28 
結審通知日 2007-05-29 
審決日 2007-06-12 
出願番号 特願2001-39685(P2001-39685)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06Q)
P 1 8・ 1- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 達也  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 森次 顕
久保田 昌晴
発明の名称 フルモーション・ビジュアル製品用の統合化デジタル・プロダクション・ライン  
代理人 社本 一夫  
代理人 増井 忠弐  
代理人 大塚 住江  
代理人 小林 泰  
代理人 千葉 昭男  
代理人 富田 博行  

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