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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1166805
審判番号 不服2005-15805  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-18 
確定日 2007-11-01 
事件の表示 平成 7年特許願第283503号「網点画像出力方法およびその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月16日出願公開、特開平 9-130605〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成7年10月31日の出願であって、平成17年7月11日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成17年8月18日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
本願の発明は、平成17年4月25日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載されたものと認められ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
入力される指定網点面積率に基づいてオンオフするレーザビームにより感光材料を露光走査することでその感光材料上に網点画像を記録し、これを現像して網点画像が記録されたフイルムを出力する網点画像出力方法において、
予めスクリーン線数等が異なる複数種類の網点出力条件に応じて、前記指定網点面積率と前記フイルム上の出力網点面積率とが等しくなるように階調を校正した後、
新たな網点画像をフイルム上に出力しようとする際、
1種類の網点出力条件に応じたテスト網点画像をフイルム上に出力し、
このフイルム上のテスト網点画像の網点面積率または濃度を測定し、
測定した網点面積率または濃度に基づいて前記レーザビームの露光量を前記指定網点面積率と前記出力網点面積率とが等しくなるように再設定して再校正することを特徴とする網点画像出力方法。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開平6-303429号公報(以下、「引用例1」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号で表示)
ア 「【0020】図1は、前記画像読取出力装置10の構成ブロックを示す。この画像読取出力装置10は、階調画像が記録された原稿フイルムFの読み取りを行う読取部20と、フイルム原版Gに網点画像を記録する記録部22とを備える。読取部20は、副走査搬送される原稿フイルムFからの画像情報を、集光光学系24を介してCCD26により主走査方向に読み取り、A/D変換部28に出力する。記録部22は、後述する網点画像データに基づきドライバ30から供給される駆動信号によりレーザダイオード32を駆動し、出力されたレーザビームLを副走査搬送されるフイルム原版Gに対して走査光学系34を介して主走査することにより網点画像を記録する。
【0021】前記画像読取出力装置10は、CPU36によって制御されており、前記CPU36には、データの入出力を行うキーボード38およびCRTディスプレイ40と、前記A/D変換部28と、A/D変換部28からの階調画像データに対して所望の画像処理を施す画像処理部42と、出力される網点画像の階調を補正するために前記階調画像データを補正する網点階調補正部44(階調画像データ補正手段)と、階調画像データを2値化して網点画像データとする網点2値化処理部46(変換手段)と、前記ドライバ30とが接続される。また、前記CPU36には、階調画像データを補正するための階調補正データを記憶する階調補正データ記憶部48と、階調画像データを2値化するための閾値データを記憶する閾値データ記憶部50とが接続される。さらに、前記CPU36には、前記階調補正データを作成するためのテストデータを発生させるテストデータ発生部52と、前記テストデータに基づいて作成された網点テスト画像を測定して得られた測定データを記憶する測定データ記憶部54と、前記網点テスト画像の網点面積率を測定する測定器56からの信号を取り込むインタフェース58とが接続される。なお、CPU36は、階調補正データ選択手段または閾値データ選択手段として機能する。
【0022】次に、前記の画像読取出力装置10を用いた網点画像データ補正方法について図3のフローチャートに従って説明する。
【0023】先ず、作業者は、どのような過程で、どのような装置を用いて、どのような記録媒体に網点画像を記録するのか、また、最終出力態様のスクリーン線数、スクリーン角度、網点形状をどのように設定するのか、といった出力条件を決定する(ステップS1)。この場合、例えば、図2に示す過程で、反転装置12、刷版作成装置14および印刷機16を用いて所定の記録紙に所定のインク等を用いて記録するものとする。
【0024】次に、作業者は、画像読取出力装置10のキーボード38からテストデータの出力指示をCPU36に対して行う。この場合、CPU36は、テストデータ発生部52を制御し、テストデータを網点2値化処理部46に対して出力させる。
【0025】なお、前記テストデータとしては、例えば、光学濃度の全域にわたって画像信号のレベルが連続的あるいは所定の間隔で離散的に変化するデータとすることが望ましい。例えば、階調画像データが0?255の範囲の256階調である場合、次に示す表のようにテストデータを設定することができる。
【0026】前記網点2値化処理部46は、閾値データ記憶部50からの閾値データとテストデータ発生部52からのテストデータとの大小比較を行うことにより、網点テストデータを生成し、これをドライバ30に供給する。前記ドライバ30は、前記網点テストデータに基づいてレーザダイオード32を駆動し、レーザビームLにより走査光学系34を介してフイルム原版G上に網点テスト画像を形成する。網点テスト画像の記録された前記フイルム原版Gは、反転装置12によってポジフイルムとされ、次いで、刷版作成装置14で刷版が作成された後、所定の印刷機16で所定の記録紙上に所定のインクで印刷されることで、最終的な網点テスト画像が得られる(ステップS2)。
【0027】そこで、ステップS2で得られた網点テスト画像の網点面積率を測定器56で測定し、その測定データをインタフェース58を介して測定データ記憶部54に記憶させる(ステップS3)。なお、この測定データは、例えば、図5Eに示すような特性となっている。
【0028】次に、CPU36は、前記測定データに基づき、ステップS3で得られた網点面積率をテストデータに対応した網点面積率とすることのできる階調補正データを求め、これを階調補正データ記憶部48に記憶させる(ステップS4)。なお、この階調補正データは、例えば、図5Eの実線で示す測定データの変動を補正するものであるから、破線で示すようなデータとすればよい。前記階調補正データは、作業者が所望する各出力条件毎に作成し、階調補正データ記憶部48に記憶させておくことができる。
【0029】以上のようにして階調補正データを作成した後、所望の階調画像が記録された原稿フイルムFから網点画像の記録された印刷物を作成する。」

前記アの記載によると、引用例1には、
「網点画像データに基づきドライバ30から供給される駆動信号によりレーザダイオード32を駆動し、出力されたレーザビームLを副走査搬送されるフイルム原版Gに対して走査光学系34を介して主走査することにより網点画像を記録する画像読取出力装置において、
最終出力態様のスクリーン線数といった出力条件を決定し(ステップS1)、ステップS3で得られた網点面積率をテストデータに対応した網点面積率とすることのできる所望する階調補正データを各出力条件毎に求め、これを階調補正データ記憶部48に記憶させる(ステップS4)網点画像データ補正方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

同じく原査定の拒絶の理由で引用された特開平7-66973号公報(以下、「引用例2」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号で表示)
イ 「【0002】【従来の技術】従来の画像形成装置、例えばレーザプリンタでは、原画像信号に基づいてレーザを駆動して、レーザビームを、像担持体で、ある一様に帯電された感光ドラムに照射すると共に、感光ドラム上でレーザビームを走査することにより、露光を行って静電潜像を形成し、これを現像器によりトナー現像して、濃淡画像を形成している。
【0003】ここで、原画像信号は、例えば8ビット= 256階調のデジタル画像信号、すなわち階調値信号であり、その階調値(PWM=0?255 )に対する画像濃度の特性(γカーブ)は例えば図18に示すようになる。このような画像形成装置では、画像形成時ごとに、図19に示すように、画像形成前の感光ドラム4上の非画像部に、高濃度側の所定の階調値(例えば 200)の信号により所定の大きさの基準濃度画像(パッチ)Pを形成し、この基準濃度画像の濃度をセンサ40により検出し、その検出値を基準レベルと比較して、実際の濃度が基準レベルより高いか低いかを判定し、この判定結果に基づいて現像器へのトナーの補給を制御することにより、トナー濃度を制御して、画像濃度制御を行っている。」
ウ 「【0010】【作用】階調値信号の補正(γ補正)は、主に低濃度部、中間濃度部に対して行われるため、高濃度部への影響は少ない。このため、高濃度部の画像濃度は現像性(現像スリーブ回転数、トナー濃度等)で決め、これにより現像性を固定する。
【0011】現像性の設定による高濃度側の固定後、中間濃度部を合わせるため、例えばレーザパワーを調整して、露光強度を設定する。ここで、レーザパワーを変化させても、高濃度部の画像濃度の変化は少ない。露光強度の設定後、実際の階調値-画像濃度特性を基準特性に合わせるように、階調値信号を補正するための階調補正特性を設定する。」

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「網点画像データ」は入力される「指定網点面積率」といえ、引用発明において、網点が網点画像データに基づいてレーザダイオードをオンオフさせ、得られるレーザビームにより感光材料を露光操作することでその感光材料上に網点画像を記録し、これを現像して網点画像が記録されたフィルム原版Gが得られることは当業者にとって明らかな事項であり、また、引用発明は網点画像出力を行う画像読取出力装置における網点画像データ補正方法であるから、引用発明は本願発明と同じ「入力される指定網点面積率に基づいてオンオフするレーザビームにより感光材料を露光走査することでその感光材料上に網点画像を記録し、これを現像して網点画像が記録されたフイルムを出力する網点画像出力方法」に関するものといえる。
引用発明の「テストデータに対応した網点面積率」が「指定網点面積率」といえること、及び引用発明の「ステップS3で得られた網点面積率」が「フイルム上の出力網点面積率」に対応したものであることは、いずれも当業者にとって明らかな事項であるから、引用発明の「最終出力態様のスクリーン線数といった出力条件を決定し(ステップS1)、ステップS3で得られた網点面積率をテストデータに対応した網点面積率とすることのできる所望する階調補正データを各出力条件毎に求め、これを階調補正データ記憶部48に記憶させる(ステップS4)」処理は、「スクリーン線数等が異なる複数種類の網点出力条件に応じて、前記指定網点面積率と前記フイルム上の出力網点面積率とが等しくなるように階調を校正」する処理といえる。

以上を踏まえると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
【一致点】
入力される指定網点面積率に基づいてオンオフするレーザビームにより感光材料を露光走査することでその感光材料上に網点画像を記録し、これを現像して網点画像が記録されたフイルムを出力する網点画像出力方法において、
スクリーン線数等が異なる複数種類の網点出力条件に応じて、前記指定網点面積率と前記フイルム上の出力網点面積率とが等しくなるように階調を校正する網点画像出力方法。
【相違点】
本願発明が、予めスクリーン線数等が異なる複数種類の網点出力条件に応じて、指定網点面積率とフイルム上の出力網点面積率とが等しくなるように階調を校正した後、新たな網点画像をフイルム上に出力しようとする際、「1種類の網点出力条件に応じたテスト網点画像をフイルム上に出力し、このフイルム上のテスト網点画像の網点面積率または濃度を測定し、測定した網点面積率または濃度に基づいてレーザビームの露光量を指定網点面積率と出力網点面積率とが等しくなるように再設定して再校正する」のに対して、引用発明が当該処理を行わない点。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例2の前掲イの箇所には、濃淡画像を形成する際に、画像形成時ごとに、テスト画像といえる基準濃度画像を形成し、濃度を検出し、検出した濃度と基準レベルとに基づいて画像濃度制御を行う処理(以下、「引用例2記載の発明」という。)が記載されている。
引用発明と引用例2記載の発明とは、濃淡画像を形成するという共通する技術分野に属するから、引用発明に引用例2記載の発明を適用し、画像形成時ごと、すなわち「予めスクリーン線数等が異なる複数種類の網点出力条件に応じて、指定網点面積率とフイルム上の出力網点面積率とが等しくなるように階調を校正した後、新たな網点画像をフイルム上に出力しようとする際」に、テスト画像を形成し、濃度を検出し、検出した濃度と基準レベルとに基づいて画像濃度制御を行い、網点画像出力の再校正を行うことは当業者が容易に想到し得ることといえる。
「入力される指定網点面積率に基づいてオンオフするレーザビームにより感光材料を露光走査することでその感光材料上に網点画像を記録し、これを現像して網点画像が記録されたフイルムを出力する網点画像出力方法」である引用発明において、テスト画像の形成、濃度の検出、検出した濃度と基準レベルとに基づく画像濃度制御による再校正処理を「テスト網点画像をフイルム上に出力し、このフイルム上のテスト網点画像の網点面積率または濃度を測定し、測定した網点面積率または濃度に基づいて」、「指定網点面積率と出力網点面積率とが等しくなるように」行うことは当業者にとって自明の事項であり、また、「レーザビームの露光量」といえる、レーザーパワーを調整して露光強度を設定することにより画像濃度を制御することは、引用例2の前掲ウの箇所に記載されているように濃淡画像を形成する技術分野において周知技術である。
そして、1種類のみの網点出力条件を用いる網点画像は一般的なものであり、1種類のみの網点出力条件を用いる新たな網点画像をフイルム上に出力しようとする際に画像濃度制御による再校正処理を行う場合、出力しようとする新たな網点画像で用いる種類のみの網点出力条件に応じてフイルム上に出力したテスト網点画像に基づいて画像濃度制御による再校正処理を行えば足りることは明らかであるから、引用発明に引用例2記載の発明を適用する際に前記周知技術を採用し、前記当業者に自明な事項に基づいて、画像濃度制御による再校正処理を、「1種類の網点出力条件に応じたテスト網点画像をフイルム上に出力し、このフイルム上のテスト網点画像の網点面積率または濃度を測定し、測定した網点面積率または濃度に基づいてレーザビームの露光量を指定網点面積率と出力網点面積率とが等しくなるように再設定して」行うことは当業者が適宜なし得る事項といえる。

一方、本願発明の奏する効果を検討してみても、引用例1及び2に記載された発明、及び前記周知技術から想定される範囲を越える格別なものとはいえない。

5 結論
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明、及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-22 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-18 
出願番号 特願平7-283503
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仲間 晃  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 松永 稔
伊知地 和之
発明の名称 網点画像出力方法およびその装置  
代理人 田久保 泰夫  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 鹿島 直樹  
代理人 千葉 剛宏  

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