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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J |
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管理番号 | 1166808 |
審判番号 | 不服2005-16308 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-08-25 |
確定日 | 2007-11-01 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 82137号「プラズマ表示装置用基板及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月15日出願公開、特開平11-283506〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成10年3月27日の出願であって、平成17年7月22日付(発送日同年7月26日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年8月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年9月22日付の手続補正書によって明細書を補正対象とする補正がなされたものである。 第2 平成17年9月22日付手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、 「【請求項1】背面板上に、複数のアドレス電極と、これを覆う誘電体層を備えるとともに、各アドレス電極間に配置された複数の隔壁を備えてなるプラズマ表示装置用基板において、上記隔壁と誘電体層が一体構造であり、上記隔壁がテーパー形状であり、上記誘電体層の厚みが3?50μmであって、誘電体層と隔壁の接続部が丸みを帯びていることを特徴とするプラズマ表示装置用基板。」 から 「【請求項1】背面板上に、所定ピッチで形成された複数のアドレス電極と、これらアドレス電極を覆う誘電体層と、各アドレス電極間に配置された隔壁とを備えてなるプラズマ表示装置用基板において、上記隔壁と上記誘電体層が一体構造であり、上記隔壁がテーパー形状であり、上記誘電体層の厚みが3?50μmであって、上記誘電体層と上記隔壁の接続部が丸みを帯びていることを特徴とするプラズマ表示装置用基板。」 に補正する補正事項を含むものである。(なお、下線は、補正箇所を明確にするため、当審で付したものである。) 2.補正の適否 上記の補正内容は、請求項1に係る発明特定事項である、「複数のアドレス電極」について、「所定ピッチで形成された」との限定付加する補正事項である。 したがって、上記補正事項は、平成18年法改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本件補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3.刊行物記載の発明・事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の平成9年10月31日に頒布された刊行物である特開平9-283017号公報(以下「刊行物1という」)には、図面とともに下記の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はガス放電パネルおよびその製造方法並びにそれらの製造装置に関するものであり、特にガス放電パネルの表示部を隔てる隔壁の製造方法およびその製造装置並びに前記製造方法により製造された隔壁を有するガス放電パネルに関するものである。」(段落【0001】) (イ)「【0003】これらの図に示すように、従来のガス放電パネルは、上部基板25上に複数の表示電極5aと、それら電極群を完全に覆うように誘電体6とを設け、下部基板26上には上部基板25上に設けた表示電極5aとは直交する複数のデータ電極5bと、それらデータ電極5bを覆うように誘電体6と、さらに隣接する表示空間と隔てるために隔壁4と、カラー表示を実現する蛍光体7を設け、上部基板25と下部基板26の各電極形成面を対向させて周囲を高い真空で封じ、その内部を例えばヘリウムとキセノを混合した放電ガスで置換してなるものである。これらガス放電パネルの表示電極5aとデータ電極5bの間に所定の電圧を印加し、放電ガスの原子を励起し、それらの励起された原子が安定状態に戻る時、例えば147nmの真空紫外線を放出し、蛍光体7が前記真空紫外線により励起発光することによって表示が可能となる。」(段落【0003】) (ウ)「【0033】(実施例5)次に本発明の第5の実施例について図7(a)を用いて説明する。まず、上部基板上25にスパッタリング等の手段で導電性の薄膜を形成した後、エッチング等の手段で前記導電性薄膜をパターニングして複数の表示電極5aを設け、それら表示電極5aを完全に覆うように、たとえば印刷、焼成等の手段で誘電体6を設け、さらに誘電体6の上部にスパッタリング等の手段でMgO等の材質からなる保護膜10を形成し上部基板25とする。 【0034】次に下部基板26上に上部基板25上に設けた表示電極5aとは直交する複数のデータ電極5bと、それらデータ電極5bを覆うように下部誘電体層16をそれぞれ上部基板25と同様の方法で形成する。 【0035】次に所定の柔らかさを有する隔壁部材を所定の厚さで面状に下部基板26表面に形成し、形成すべき隔壁に対応する形状を設けた押圧型3で隔壁部材1を全面均等な圧力で押圧成形し、続いて押圧型3を隔壁部材1から離型し、例えば120℃、10分で乾燥した後、450℃、30分の温度条件で熱処理することにより隔壁を形成する。 【0036】次に上部基板25と下部基板26の電極形成面を対向させ、密着させる。続いて基板周辺をフリットガラス等の封着材で封着し、両基板と封着材で囲まれた内部を真空にした後、例えばヘリウムとキセノンの混合ガスで置換後封着してなるガス放電パネルである。 【0037】図7(a)においては下部誘電体層16を形成後、隔壁4を形成する方法を示したが、図7(b)に示すように隔壁部材1を誘電体材料で形成しておき、それに押圧型8を押圧して隔壁4と同時に下部誘電体層16を形成してもよい。」(段落【0033】?【0037】) (エ)図面の図7(b)には、隔壁4と下部誘電体層16が一体構造である構成、及び、下部誘電体層16と隔壁4との接続部が丸みを帯びている構成が示されている。 上記摘記事項(ウ)における「【0037】図7(a)においては下部誘電体層16を形成後、隔壁4を形成する方法を示したが、図7(b)に示すように隔壁部材1を誘電体材料で形成しておき、それに押圧型8を押圧して隔壁4と同時に下部誘電体層16を形成してもよい。」から、隔壁4と下部誘電体層16が一体構造であることが読み取れる。 したがって刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。 <刊行物1記載の発明> 「下部基板26上に、データ電極5bと、このデータ電極5bを覆う下部誘電体層16と、隔壁4とを備えてなるガス放電パネルにおいて、隔壁4と下部誘電体層16が一体構造であり、下部誘電体層16と隔壁4との接続部が丸みを帯びているガス放電パネル。」 4.対比 本件補正発明1と刊行物1記載の発明を対比する。 その技術的意義からみて、後者の「下部基板26」、「下部誘電体層16」、「隔壁4」は、前者の「背面板」、「誘電体層」、「隔壁」にそれぞれに相当する。 上記摘記事項(イ)におけるガス放電パネルの動作についての記載内容からみて、後者の「ガス放電パネル」は、前者の「プラズマ表示装置用基板」に相当する。 後者の「データ電極5b」は、前者の「アドレス電極」と、「誘電体層に覆われた電極」である限りにおいて一致している。 そうすると、両者は次の一致点及び相違点を有している。 <一致点> 「背面板上に、電極と、この電極を覆う誘電体層と、隔壁とを備えてなるプラズマ表示装置用基板において、隔壁と誘電体層が一体構造であり、誘電体層と隔壁との接続部が丸みを帯びているプラズマ表示装置用基板。」 <相違点1> 本件補正発明1においては、誘電体層に覆われた電極である「アドレス電極」が「所定ピッチで形成され」ており、「各アドレス電極間」には「隔壁」が配置されているのに対し、刊行物1記載の発明においては、「データ電極5b」が所定ピッチで形成されているか否かが明らかでなく、また、「データ電極5b」の間に「隔壁4」が配置される構成を備えていない点。 <相違点2> 本件補正発明1においては、「隔壁がテーパー形状」であるのに対し、刊行物1記載の発明においては、当該構成を備えていない点。 <相違点3> 本件補正発明1においては、「誘電体層の厚みが3?50μm」であるのに対し、刊行物1記載の発明においては、「下部誘電体層16」の厚みが特定されていない点。 5.判断 上記の各相違点について検討する。 <相違点1について> プラズマ表示装置用基板において、背面板側における、誘電体層に覆われた電極であるアドレス電極を所定のピッチで形成し、且つ、当該アドレス電極間に隔壁を配置することは周知の技術である(例えば、特開平8-185802号公報の段落【0022】、あるいは、特開平9-17343号公報の段落【0042】、【0044】を参照)。そして、刊行物1記載の発明及び当該周知の技術は共に、プラズマ表示装置用基板技術に属するものであることからすれば、刊行物1記載の発明に対し、上記の周知技術を適用することにより、上記相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に成し得たものといえる。 <相違点2について> プラズマ表示装置用基板において、隔壁をテーパー形状とすることは周知の技術である(例えば、特開平10-21839号公報の段落【0021】及び図面の図1?3、あるいは、大脇健一、吉田良教 編「プラズマディスプレイ」共立出版株式会社(1983-11-15発行)p.183 図8.4、図8.5を参照)。そして、本願明細書段落【0022】を参酌するに、隔壁をテーパー形状とすることの技術的意義は(正面板側の)開口面積を確保することにあるのであり、その作用効果は、隔壁がテーパー形状であることによって得られ、隔壁と誘電体層との一体構造には関与しないものである。してみれば、刊行物1に記載の発明に対し、これと同じプラズマ表示装置用基板技術に属するものである上記の周知技術を適用することにより、上記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に成し得たものといえる。 <相違点3について> 前記の<相違点1について>において挙げた、背面板側における、誘電体層に覆われた電極であるアドレス電極を所定のピッチで形成し、且つ、当該アドレス電極間に隔壁を配置する周知技術において、その誘電体層の厚さは8?50μm(特開平8-185802号公報の段落【0022】を参照)、あるいは20μm(特開平9-17343号公報の段落【0042】?【0043】を参照)の程度である。そして、本願明細書段落【0023】を参酌するに、誘電体層の厚みを3?50μmとすることの技術的意義は、この数値範囲より小さいと保護層としての効果が乏しくなり、その数値範囲を越えると放電発生に高い電圧が必要となることから選択されたものであり、その作用効果は、背面板側における、誘電体層に覆われた電極であるアドレス電極を所定のピッチで形成し、且つ、当該アドレス電極間に隔壁を配置するプラズマ表示装置用基板構造において誘電体層の厚みを当該範囲に特定したことで得られるのである。してみれば、刊行物1に記載の発明に対し、同様なプラズマ表示装置用基板構造を有し、その誘電体層の厚みを8?50μm、あるいは20μmとする上記の周知技術を適用することにより、同厚みを3?50μmに含まれる数値として上記相違点3に係る構成とすることは当業者が容易に成し得たものといえる。 <本件補正発明1の作用効果について> そして、本件補正発明1の作用効果は、刊行物1に記載の発明及び上記周知技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではない。 したがって、本件補正発明1は刊行物1記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 6.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 1.本願発明 平成17年9月22日付手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、願書に最初に添付された明細書及び平成15年12月26日付手続補正書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。 <本願発明1> 「【請求項1】背面板上に、複数のアドレス電極と、これを覆う誘電体層を備えるとともに、各アドレス電極間に配置された複数の隔壁を備えてなるプラズマ表示装置用基板において、上記隔壁と誘電体層が一体構造であり、上記隔壁がテーパー形状であり、上記誘電体層の厚みが3?50μmであって、誘電体層と隔壁の接続部が丸みを帯びていることを特徴とするプラズマ表示装置用基板。」 2.刊行物記載の発明・事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び同刊行物に記載された発明・事項は、前記、「第2 3.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明1は、前記「第2」で検討した本件補正発明1の発明特定事項である、「複数のアドレス電極」について、「所定ピッチで形成された」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本件補正発明1が前記「第2 5.」に記載したとおり、前記刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明1も同様の理由により、刊行物1記載の発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおり、請求項1に係る発明が特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2ないし3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-30 |
結審通知日 | 2007-09-04 |
審決日 | 2007-09-18 |
出願番号 | 特願平10-82137 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01J)
P 1 8・ 575- Z (H01J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小島 寛史、小川 亮 |
特許庁審判長 |
杉野 裕幸 |
特許庁審判官 |
上原 徹 小川 浩史 |
発明の名称 | プラズマ表示装置用基板及びその製造方法 |